3 歴史
説明会?です。
アイリはすぐに戻ってきた。手にはバッチリ本を持っているが、とても薄かった。
(絵本なのかな?よくよく考えれば当たり前か)
「ミサーナ様、本をお持ちしました」
アイリは笑顔で報告し、そのまま近くの椅子に座り読み聞かせの体勢になった。ミサーナとしては普通に本を読みたかったが、目的はあくまで暇つぶしなので早速読んでもらうことにする。
「昔々あるところに……」
読み聞かせが終わった。話の内容としては『アリとキリギリス』が一番近い。
最後はキリギリスがアリから食料を盗もうとして殺されるバッドエンドだったが…
「このお話はですね、頑張れる内に頑張っておかないとあとで辛くなる、というお話なんですよ。ミサーナ様には少し難しいかもしれませんね」
(どんな世界でもこういう話はあるんだなぁ)
ミサーナが内心で感心していると、アイリが本を渡してくれた。今のうちから文字に触れておけば、後で勉強する時に楽だろうという配慮かららしい。ミサーナの中で彼女の株が上がった。
早速本を開いてみると、文字が筆記体だった。前世でも筆記体の勉強はしていないので、辛うじてしか読めない。現代英語ではブロック体しか使わなかったのだ。本を開いて硬直していると、アイリが丁寧に教えてくれた。ミサーナの中の彼女の株が更に上がった!
ミサーナが二歳になった日、遂に自分で図書室に行くことが許可された。今まではアイリに持ってきてもらうだけだったので、彼女が選んだ本しか読めなかったが、これで好きな物を選べる。
そして、ミサーナは早速図書室へと来ていた。
「凄い…」
そこは図書室というより図書館といった広さで、いつか写真で見た大英図書館の様な威容を誇っており、一生かけても全てを読み終えるのは不可能な程の本があった。
「そうでしょう?此処には国中の本が集まっているんですよ」
アイリが自慢気に話しているが、そうなるのも無理はないだろう。それほど、この図書館の存在感は圧倒的だった。
ミサーナがしばらく感動していると、アイリに声をかけられた。
「ミサーナ様、本を読まないのですか?」
その声でハッと我に返る。
(そうだった、此処には本を読みに来たんだった。とりあえず歴史書とかを…)
そこで気付いた。この天井近くまで詰まっている本の中からどうやって本を探すのかと…。しかし、アイリに尋ねるとすぐに答えが返ってきた。
「図書室には魔道具があって、それで探せるんですよ」
そう言いながら、机の上の紙に歴史書と書くと、奥の方から本が飛んで来た。文字通り、宙に浮いて。ミサーナが唖然としている中、アイリが飛んで来た本を渡してくれる。読んでみると、それは確かに歴史書であった。
(そういえば、剣と魔法の世界って言ってたな…)
もう二年も前になる神様との会話を思い出しつつ、ミサーナは読書に耽る。
それから三日程かけて歴史書を読み終えた。内容としては、嘘臭くてファンタジー。まずこの国の歴史は二千年くらい。これは、本当なら凄いと思う。だが、二千年続いたという証拠が何も無い。千年ぐらい前の証拠はあるらしいが、その前は全て口伝えのあやふやな情報だった。千年分の情報を口伝えだけで受け継げる訳がないだろう。なので、多分嘘。精々千五百年ぐらいがいい所だ。
次に、確定している情報は八百年ぐらい前に、魔族と戦争していたという事だ。これは、証拠も残っているらしいので間違いなだろう。魔族というのは、名前の通り魔法の得意な種族で、数は少ないが一人一人が強いらしい、現在は絶滅寸前の状態。
それで戦争を起こした理由は、神託があったから。これが嘘臭い。神様は確かにいるが、あの神様が態々争いを起こそうとするとは思えない。まぁ、昔は荒んでいたのかもしれないが…
戦争の結果についても、この国が勝っている。その理由は勇者が大活躍を見せたから。これも微妙なところではある。でも聖剣とやらが残っているらしいし、魔法もあるぐらいなので多分いたのだろう。
魔族に勝った後は、百年ぐらいして獣人族との戦争。獣人族は獣と人のハーフみたいな見た目をした、まんま獣人。今は人族の奴隷にされているらしい。それでこちらの戦争は、聖剣を使いこなした王子、つまりご先祖様が大活躍して無事勝利。戦争を起こした理由は、またも神託。
そのあとしばらくは平和だったが、最近になって今度は人間の帝国と小競り合いを繰り返しているらしい。
大まかな歴史はこんな感じだった。ちょっとこの国、戦争好き過ぎじゃないだろうか?一応、王女なので駆り出されることは無いと思うが、元日本人としては非常に怖い。
(これは…えらい国に転生したかもしれない…)
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