勇者閑話 召喚
ちょっと遅れましたが、令和ですね。
令和は更新頑張りたいと思います。多分、きっと
いつもの学校、いつもの皆、いつもの放課後。
いつも通りの日常は、いつも簡単に壊れる。
長田勇気は普通の高校生である。
他の人より何かが優れている訳でもなく、何かが劣っている訳でもない、そういう人間だ。
そんな彼は今、とても退屈していた。
「なんかデッカイ事でも起きねぇかなぁ」
「……いきなり何言ってるの?」
勇気の何気ない言葉に反応したのは、彼の幼馴染である三澤優子だ。
「んー?だって暇じゃん?最近は」
「あたしはそんな事ないと思うけど?」
優子がそう言うと、勇気は欠伸をしながら答えた。
「お前はそうかもしれないけどさ、俺はそうじゃないんだよ。毎日毎日代わり映えしないし」
「そうかしら?あたしはこのままで良いわよ」
優子の答えに、若干不機嫌になったように口を尖らせる勇気。
だが、優子が呆れたように見つめると、すぐに顔を普通に戻す。
「で、退屈なあなたは一体どんな事を期待してるわけ?」
そう問いかけられると、勇気はその質問を待っていたと言わんばかりに語り始めた。
「そうだなぁ、学校にテロリストが攻めてくるとかどうかな?」
「小学生かよ」
「あとは最近流行りの異世界召喚とか?」
転生は痛そうだから却下、などと宣う彼を心底呆れたように見つめる優子。事実、呆れているのだが、幸か不幸か彼はそれに気付いていなかった。
「まぁ……どっちを期待しても意味ないだろうし、ラノベでも読んでれば?」
「優子は夢が無いなぁ」
「あなたよりはマシだと思うけどね」
辛辣な言葉だが、優子に勇気を拒絶したような雰囲気は無く、二人の間には和やかな空気が造られている。
「ねぇ――」
その時、光が二人を包んだ。
「え!?」
「な、何だ!?」
二人が驚いている間にも光は収まらず、更に強く、激しくなっていく。
そして光が収まり、消えた時、そこに二人は居なかった。
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ザンツェルト王国では、この日嘗てない出来事が起ころうと、否、起こそうとしていた。
「準備は」
「抜かりなく」
国王の短い問い掛けに、同じく短く答える王宮の魔導師長。
ミサーナにプライドをへし折られたものの、それほど手間取ることも無く、準備を終わらせた。その実力は本物だ。
「では、始めろ」
「は!魔力注入を開始せよ!」
魔導師長の指示により、魔法使い達が巨大な魔法陣に魔力を注ぎ始める。無論、それも詠唱をしながらのため、効率は良くない。
だが、それでも確かに魔法陣には魔力が充填されていた。
魔力を注いでいた魔法使いが数人倒れ始めた辺りで、魔法陣が輝き始めた。
時間が経つにつれ、更に魔法使いが力尽き倒れるが、輝きは止むどころか増していく。
そして、輝きが最高潮に達したその時、光が弾けた。
その場の全員から一時的に視力を奪ったその光が収まり、見えるようになった眼で魔法陣を確認する。
そこには、一人の青年と少女が居た。
王国の者が見たことも無い様な服を着用し、見たことも無い顔立ちをした、一組の男女だ。
「~~~~~!?」
「~~!~~~~!?」
二人は何やら意味のわからない言葉を使い、話している。ただ、どうやら困惑しているらしいのは伝わってきた。
「初めまして、勇者殿」
国王がそう言って微笑み、手を差し伸べた。
そして二人は――その手を、掴んだ。




