26 ぼっち卒業?
雑な上に薄くて短いです。ごめん
あの後、何事もなく課外授業が終了し、帰宅した。
一つ気になるのが、先生が助けに来なかった事だ。
ただでさえ人不足なのに、生徒が怪我でもして死んでしまったらどうするつもりなのだろうか。そこら辺が納得出来ない。
とはいえ、情報が足りない現状では考えても意味が無い。「多分」とか「恐らく」以上の結論が出るとは思えないし。
取り敢えずは、何事もなくて良かったでいいだろう。
考えるのは、何かあってからでも構わない。
さて、日付と場所は変わって学校だ。
いつも通りのんびりと授業を受けているミサーナだったが、今日はいつもと少しだけ様子が違った。
(なんか……視線を感じる……)
別に、それ自体はそれほど珍しい事では無い。
学校でのミサーナは最初の頃こそクラスメイトに見下されていたが、今はそうではない。
元々、能力は相当高く、性格も悪くはない。オマケに顔も良い。
入学してからの一ヶ月で、ミサーナの実力を察せない愚か者は、少なくともクラスメイト達にはいなかった。
だが、入学初日に取った態度は消えない。
十歳ほどの子供にとって、一度取った態度を変え、ミサーナと仲良くするのはハードルが高かった。彼らにもプライドがあるのだから、当たり前と言えば当たり前だ。
そんな訳で、クラスメイトからの評価は変わったのだが、その態度は変わらず、遠巻きに見られることが多くなった。
のだが、今日の視線はいつもと少し違った。
具体的に言うと、あまり負の感情を感じない。
いつもの視線からは羨望などの羨むような感じているのだが、今日の視線はそういったものは無く、感謝や尊敬のようなものを感じている。
それが誰からの視線なのか、言うまでもないだろう。
昨日助けたアリアという少女からのものだった。
その視線になんとも言えない居心地の悪さを感じながらも、時間は進んで行く。
殆ど授業に集中出来ないまま、その日の時間割が終了した。
「あ、あの!ミサーナ……さん!」
そして、ミサーナを含め生徒達が帰ろうとする中、ミサーナを引き止める声がした。
「えーと、何?」
「アリアです!」
「知ってるけど……」
あんまりと言えばあんまりな会話に、ミサーナの頬が軽く引き攣る。
「えっと、その、昨日のお礼がしたくて……一緒にお茶でもどう……ですか?」
おずおずといった様子でアリアがそう言った。
なんというか、無理をしている感がすごい。
頑張ってミサーナの機嫌を損ねないように話しているのだろう。
ミサーナとしては、何故そんな事をしているのか意味が分からないのだが、昨日の出来事を振り返り、気付いた。
アリア達から見たミサーナは、自分達がどうにも出来なかったモンスターを僅か二撃で仕留め、礼を求めることも無く去って行こうとしたヤバい人だ。
これがただのクラスメイトなら良かったのだろうが、ミサーナは最近どころかずっとクラス総出で無視し、いびって来た奴である。
そんな人が何も言わずに自分達を助けて行く。
ハッキリ言って気味が悪い。
ミサーナも彼女らの立場なら、同じ様な態度を取るだろう。
「あの……ダメ、ですか?」
ミサーナが黙っていると、その沈黙を拒否と受け取ったのか、アリアがビクビクしながら聞いてきた。
「いや、ダメじゃないよ。一緒に行こう」
ダメなわけが無い。
ぼっち卒業への念願の第一歩だ。何があろうと断れない。
「ほ、本当!……ですか!?」
「うん、ホントホント。あと、敬語は使わなくて良いから」
「えと、はい……じゃなくて、うん、わかった。あ、リオン……昨日一緒に居た子も呼んでいい?」
「良いよ」
それも断る理由が無い。友達候補は多いに越したことはないのだから。
「あ、ありがとう!呼んでくるからちょっと待ってて!」
そう言って、少し後ろの方で様子を見ていた少年も連れてきたアリアと共に、三人で喫茶店に向かった。
「へぇー!じゃあ、あの魔法はアナタが考えたの?」
「まぁ、そうだね」
「すごいじゃない!ねぇ、アタシにその魔法教えてくれない?」
軽くお喋りをしようと喫茶店に入ってから二十分程経ち、一つわかった事がある。
アリアは勢いがすごい。
もうトークが止まらない。
絶え間なく話題が続き、ミサーナが暇を持て余す事もなく、ただただ相槌を打つことしか出来なかった。
リオンはミサーナと似たようなもので、アリアのマシンガントークに相槌を打つ以外は何も喋らない。
正直疲れる。
アリアもあれだけ話していて疲れないのだろうか。
まあ、終始楽しそうなので大丈夫なのだろう。
さて、何やかんやあったが、次に遊ぶ約束と魔法を教える約束もしたので、多分仲良くなれたと思うミサーナであった。




