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転生王女は元男の子  作者: いでりん
27/36

25 課外授業

はい、遅くなりました。

ちゃんと更新するとか言ってこのザマですよ。

ごめんなさいね。

 入学してから、一ヶ月が経った。


 友達?知らんな。




 さて、ミサーナは今日も今日とて学校なのだが、本日の授業はいつもと毛色が違った。


「はい、二人組を作ってくださーい」


 死刑宣告であった。

 ミサーナが固まっているのを後目に、クラスメイト達が着々と二人組を作って行く。


 ちなみに、このクラスの人数は九人。奇数だ。

 必ず一人余り者が出る訳だが、誰がそうなるかは言わなくとも分かるだろう。


「じゃあ、皆さん二人組を作れたようなので、今日は森に行きますよ。ミサーナさんは……一人でも大丈夫でしょう!」


 お前人を馬鹿にするのも大概にしろよ、という言葉をどうにか喉の奥に留めたのは、一重にミサーナの性根の良さ故であろう。


 胸の奥に少し暗い色の感情を仕舞いこみ、ミサーナとクラスメイト一同は森へと向かった。




「では、本日の授業内容を発表します」


 舞台を森へ移し、先生が生徒達に向かって口を開いた。


「今日は皆さんにモンスターを狩ってもらいます。これが出来ないと魔人族として生きていけませんからね」


「「「はーい!」」」


 どういう訳か全員テンションが高い。

 対してミサーナのテンションはと言えば……。


「はぁ……」


 絶望的に低かった。

 別にモンスター狩りが嫌いな訳では無い。

 だが、別に好きな訳でも無いし、先生公認のぼっちでやらされるのは苦痛でしかない。


 しかし、先生はそんな事欠片も思慮には入れてくれない。

 ミサーナが現実逃避をしている間に、先生からの説明が終わったようだ。ちゃんとは聞いていなかったが、多分、熊系のモンスターには手を出すなとか、そんな感じだった。


「それでは解散!怪我に気を付けて狩ってください!」


 その言葉を切っ掛けに、クラスメイト達が森へと散開した。


(『ファイアバレット』とかの練習と思って真面目にやるかな……)


 むしろ、そう思わないとやってられない。

 皆に習い、ミサーナもゆっくりと森へ入っていった。




「ふむふむ」


 ミサーナが森へ入ってから三十分程、彼女の目の前に居るモンスターは、風穴を空け、絶命していた。


「いやー、結構イイ感じだねぇ」


 理由は言わずもがな、『ファイアバレット』である。

 森に入り割とすぐにモンスター、ボアと出会ったミサーナは、早速『ファイアバレット』の試し打ちを行った。

 生物に撃ったことは一度も無かったので、良い練習になると思ったのだ。


 結果、普通に有効だった。

 膝を撃てば関節を砕けたし、正面から頭を撃つと、後ろに貫通していった。護身用にと持たされていた短剣で突いてみても、毛皮は切れなかったので、硬さはそれなりなのだろう。

 魔力を調整すれば貫通もしなさそうだったので、かなり使い勝手の良い魔法と言えた。


「ふんふ〜ん〜♪」


 ルンルン気分でボアことイノシシを『収納』する。渋っていた割に、存外楽しんでいるようだ。

 そして、次の獲物を探そうとしたその時、何処からか悲鳴が聞こえた。


「ん?」


 それも、結構近くで。

 今森に居るのはクラスメイトだろう。


「……行ってみるか」


 ミサーナは悲鳴へと走りだした。




 悲鳴の元へ辿り着くと、そこにはクラスメイトの男女ペアがいた。

 名前は確か、リオンとアリアだったか。

 彼と彼女の前には熊のモンスター、ブラックベアが立っている。

 確か、熊系には手を出すなと言われていたはずだが、どうしたのだろうか。


「グォオオ!」


「くっ!こっちに来るな!」


 ミサーナがぼんやりと見ている間に、状況は切迫してきている。

 自力でどうにか出来そうなら、いちゃもんを付けられる前に離れようと思っていたのだが、これはどうするべきだろう。

 放っておけば先生が助けに来るかと思ったが、その気配を感じない。


 正直な話、ミサーナに二人を助ける理由は無い。

 助けても自分達でもどうにか出来たとか言いそうであるし。そもそも自分をイジメ、とまでは行かないにせよ、それに近い事をしてきた相手だ。今なら合法的に抹殺できる。

 であれば、このまま見守っておくのが正解だ。


 だが、ミサーナがとった行動は、それと真逆の行動だった。


「えっ!?」


「まぁ、見殺しも目覚め悪いし……」


「グォッ!」


「それが出来たら死んでないね」


『火球』を放ち、ブラックベアを無理やり退がらせ、ブラックベアと彼らの間に立ち塞がった。


「あっ、アンタ!」


「獲物は貰うから、異論は認めない」


 そう言って、『火球』のダメージから復帰したブラックベアに短剣を振り抜く。


「無茶よ!」


 アリアの言う通り、ミサーナの短剣では毛を切ることは出来ても、毛皮を切り裂くことは出来なかった。


「良いね、試させてもらうよ」


「グォオオ!!」


 ブラックベアが腕を振り、ミサーナを砕かんとする。

 しかし、ミサーナはそれをあっさりと躱し、短剣にとある魔法を纏わせた。

 それは『風刃』。

 イーガスとの戦い以来、食事用ナイフにしか使われなかった魔法剣が今、敵を切り裂く為の短剣に使用された。


 そんな事には気付かないブラックベアは、己の攻撃を簡単に躱すミサーナに腹を立てたのか、更に大きく腕を振り抜く。

 だが、そんな怒りに任せた大振りな攻撃が当たるはずもなく、『風刃』を纏った短剣が、その腕を冗談のように切断した。


「オォッ!?!?」


「なっ!?」


 鮮血が飛び散り、ブラックベアの左腕が落下する。

 そして、感じたことも無いであろう痛みに混乱するブラックベアの首を、その勢いに任せ断ち切った。


 倒れ込んだ巨体の首と腕から、鮮血が溢れ出る。

 鼻腔をくすぐるその香りに、彼と彼女が顔を顰め、ミサーナが頬を緩めた。


 これ以上この匂いを嗅いでいると我慢できなくなりそうなので、さっくりとブラックベアを『収納』する。


 次いで、短剣を確認する。

 幸い、欠けたり等の不具合は見つからなかったが、少しだけ刃の部分が削れていた。

 ノーリスクとは行かないらしい。

 けれど、検証結果としては十分だ。


「じゃあ、次から気を付けなよ」


 そう言って、そのまま立ち去ろうとするミサーナ。


「ま、待って!」


「……何?」


 ミサーナがこれ以上ないくらい億劫そうに振り返る。


「えっと、その、えー、あー、その……あり、がとう……それだけ……」


「……どういたしまして」


 内心死ぬほど驚いていたミサーナだったが、どうにか普通に返事をすることが出来た。

 そして、今度こそ振り返らず立ち去る。


 その日の悲鳴は、それっきり起こらなかった。

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