18 久しぶり
遅くなってマジすみません。タイトルが「久しぶり」なのは、別に更新が遅くなったからとかではないですはい。
あと、本文も大分短いです。ごめんなさい。
「お久しぶりです、ミサーナ様。この不肖イーガスがお迎えにあがりました」
少女が森に居ると、男に声をかけられた。声をかけて来たのは、二十代くらいの執事風の格好をした人物だ。
話しかけられた少女は、突然の出来事に驚き、固まっている。当然だ。今少女が居るのは森のかなり奥で、周りにはオークの死体が転がっており、その血臭が漂っている。もし旅人が通りがかっても、間違いなく避けて通るような場所となっている。だが、そんな少女の反応に気づいていないのか、男は尚も話し続ける。
「遅参、申し訳ありません。さあ、早く我らの国に帰りましょう」
そう言ってニッコリと笑った。
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ルナが冒険者になって、一月程経った。
あれからほぼ毎日依頼をこなし、貯金も貯まってきて、生活はかなり順風満帆だと言える。そして今日もまた、ギルドで依頼を受けてきたところであった。
内容は『オークの討伐』
既に何度かこなした仕事だ。なので、特に気負わず森に向かった。
ちなみに現在の装備は、軽めの皮鎧を着ている。剥ぎ取り用の短剣も購入済みである。鎧の効果はまだ発揮されたことはないが、それなりに値段は張ったので、性能は高い筈だ。
森に入りオークを探し始めるが、中々見つからない。それ自体は珍しくはないものの、ウルフや他の動物も見かけないというのはとても珍しい。普段ならば、ゴブリン辺りが襲いかかってきてもおかしくないのだが。
その後三時間程歩き回り、森のかなり奥の方まで来ている。
そして、そこでようやく五匹のオークを見つけた。
オークの狩り方はゴブリンと然程変わらない。気づかれない内に後ろから『氷槍』を撃つだけだ。ただ、ゴブリンよりも硬いので、少し多く魔力を込めなければならない。
「『氷槍』」
だが、それもルナの持つ魔力からすると微々たるものだ。少なくとも、気にするほどの量ではない。
ルナが放った魔法はオークの心臓を的確に貫き、その命を奪った。周りはオークの血によって、赤く染められている。相変わらず匂いは良く、とても食欲をそそられる。
しかし、それを無視してオークを『収納』に仕舞う。オークの肉は食用で美味しいため、全身が高く売れるのだ。
そうして三匹目のオークを仕舞い、四匹目を仕舞おうとしたところで、ソレは現れた。
「お久しぶりです、ミサーナ様。この不肖イーガスがお迎えにあがりました」
男がいた。いや、その表現は正しくない。正確には、突然そこに男が出て来たのだ。もっと言えば、この男は転移魔法を使いここに来ている。
それだけでも充分驚くべきことだが、それより、コイツは今何と言った?ルナのことを『ミサーナ様』と呼んだのだ。ルナは王宮を出てから、一度たりともその名前を名乗ったことは無い。つまりコイツは以前のルナ……ミサーナを知っているということだ。だが、当時の王宮には転移魔法を使える人間はいなかった。国の者とは考えにくい。
そもそもあの国の人間なら迎えに来たなどとは言わず、暗殺に来るだろう。というか、国の人間だとしてもおかしい。王宮から『飛行』で証拠も残さず逃げ出したはずなのに、この短期間で見つけられるというのは有り得ない。
そんなルナの動揺に気付いていないのか、男は尚も話し続ける。
「遅参、申し訳ありません。さあ、早く我らの国に帰りましょう」
「国?ミサーナ?何の話?」
ここまで知られている相手にでは意味が無いかもしれないが、とりあえず惚けてみる。
しかし、やはり意味が無かったようだ。
「フフフ、ご冗談を。何の話かは貴女が一番よく分かっているでしょう。まあ、戻る気が無いのは分かりました。気は進みませんが、無理矢理連れて行くとしましょうか」
そう言って両手を広げた男の周りに、大量の『火球』が展開された。その数、凡そ五十。たった一瞬でそれだけの魔法を発動するなど、今のルナでも不可能だ。ありえない。
そして何よりも、この男は詠唱を行わなかった。
『無詠唱で魔法を使えるのは魔族のみ』
いつか読んだ本の記述が、ルナの頭を過る。
だが、今はその思考に浸っている余裕は無い。そんな事をしていれば、この魔法にも耐えきれず死ぬことになる。
「降参して頂けると、嬉しいのですが?」
「却下で」
「そうですか、残念ですね……。では、死なない程度に頑張って下さい」
大して残念でもなさそうな口調で、男が答える。
そして、累計五十にも及ぶ『火球』が、ルナに降り注いだ!




