2 俺、王女様だ
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これからも頑張りますのでよろしくお願いします!!
朋が気がつくと、なんだかとても暖かいところにいた。暗く、手足もうまく動かせない。液体に浸っているようなのに、息苦しさも感じない、そんな場所にいた。
(あぁ、ここは子宮の中かな?それで今は胎児なのか。人間って胎児でも意識はあるものなのなんだな)
そこまでは考えられたが、朋の意識は再び途切れてしまった。
次に目覚めると、もう産まれていた。手足はまだ上手く動かせないし、目もよく見えない。動いてみようと少しジタバタしていると、上から声を掛けられた。
「How are you today?」
(女の人?なんか話しかけられてる?けど、英語?異世界なのに英語なのか…。とりあえず、中学の頃のホームステイの経験が生きる!センター試験の勉強も無駄にならなかった!)
「It's a fine day outside,isn't it?」
(えーとこれは、外の天気すごくいいですよね?とかかな?よし、分かる)
朋がそう考えていると、話しかけられていた女性に抱き上げられ、窓際まで連れて行かれた。赤ん坊の視力はあまり良くないので、景色は楽しめないがとても眩しい。
(というか、目覚めたばかりなのにもう眠たくなってきた。あ、もう限…界…)
大体三ヶ月くらいの時間が経った。朋は自分の情報を少しは把握することができていた。
その過程で言葉はほぼ完璧に分かるようになっている。それで情報については、まず朋の新しい名前はミサーナと言うらしい。名前で分かる通り、女の子だ。それと、家族構成は父と母、兄が一人と姉が二人いる。それ以外にもいるかもしれないが自分で動けないミサーナではそれぐらいしか分からなかった。
(神様、注文はしなかったけど性別ぐらいは配慮して欲しかったよ…)
と、内心で神様に文句を言っていると横から声を掛けられる。
「ミサーナ様、調子はいかがですか?それでは、今日も少し外に出てみましょうね」
そう言ってきた女性はアイリ、緑色の髪をした美人さんで多分乳母さんだと思う。ミサーナのことを様付けで呼ぶので、母親ではないのだろう。様付けで呼ばれているが家名は分からない。多分、富豪か貴族だとは思うのだが。
そして、アイリに抱き上げられて部屋の外に出ると、子供が二人いた。一人はジーニー、歳は多分12歳ぐらい。もう一人はフリーダ、歳は8歳ぐらいだろう。二人とも金髪碧眼の美少女でミサーナの姉らしい。
(姉二人がこれだけ可愛いし、俺…私の容姿にも相当期待が持てる)
「アイリ、ミサは元気?」
そうジーニーがアイリに聞いている。
「はい、とても元気ですよ。今日も私が起こす前には起き上がって待っていましたからね」
「そう、じゃあいいわ」
ジーニーは満足気に頷いてさっさと何処かへ行ってしまう。フリーダもそれについて行く。姉との接触、終了。
その後もアイリに抱かれて、部屋の周りをぐるっと一周してきたが真新しいものはなにも無かった。
さらに半年程経つと、ミサーナはハイハイが出来るようになっていた。自分での行動範囲はあまり変わらないが、これは大きな変化だろう。それに伴ってアイリが連れて行ってくれる場所が増えた。前は外には出してくれなかったのに、今はおねだりすれば十分程度なら外の庭に出ることができる。おねだりといっても外を指差して、あーあーと言うだけだったが…。
それと、ミサーナの家名も分かっている。
ミサーナ・フォン・ザンツェルトというらしい。
富豪ではなく貴族だった。それから、今いるこの国の名前もアイリが教えてくれた。
ザンツェルト王国
国の名前と家名が同じ。つまり、ミサーナは王女様であった。
(神様、奴隷の子供以外で頼んだら王女って極端すぎじゃないですか?それともこの世界には、奴隷以外は王族しかいない?そんな訳ないか)
とりあえず、一人で歩けないとなにもできないので、のんびり歩く練習でも始めるミサーナだった。
転生してから丁度一年の月日が流れた。何故判るのかというと、つい先程誕生日を祝われたところだったからだ。そこで初めて父と母、そして兄の名前が分かった。父の名前がケーニッヒ、金髪金眼の渋いイケメンで、母がマルギット、青色の髪と碧眼の美女だった。兄がフレーゲル、母の青色の髪と父の金眼を持つ美少年である。
王族が美男美女しかいないというのは本当だった。
ちなみに、鏡を見て分かったミサーナの容姿は、サラサラの銀髪と海の様な青い瞳を持つ美幼女だ。
それから、最近ミサーナはようやく歩けるようになった。基本常に誰かが見ているので勝手に動くことはできない。というか、動いたら捕まってしまう。
(暇だ、暇すぎる。せっかく動けるようになったのに…せめて本が読みたい。)
そんなことを言える訳もないので、今日も赤ん坊らしく眠ることしか出来ない。
誕生日から二ヶ月程経ち、ようやく話せるようになった。まぁ、いきなり普通に話すのは不自然なので、舌足らずっぽく喋るようにしている。
「おなか、ちゅいた」
「あぁ、ご飯ですね。今持ってまいります」
(きちんと話せば要求が伝わる。言葉って素晴らしい)
話せるようになったとはいえ、暇なことには変わらないし、いい加減に一人で動きたい。と言っても一人で動くのはまず不可能なので、どうにかして暇つぶし、本か玩具が欲しい。
(次にアイリが戻ってきたら頼もう)
ミサーナが決意を固めていると、すぐにアイリが戻ってきた。手には食事を持っている。
「ミサーナ様、ご飯をお持ちしましたよ」
「ありがとう、アイリ」
お礼を言うと、アイリは驚いた様な顔をする。流石に少しやり過ぎたかな。
(まぁ、いいか)
気にしないことにして、ご飯を食べさせて貰った。
そんなことより、今は本だ。玩具でもいいがやっぱり情報を集めるのも兼ねて、本が好ましい。なので早速頼んでみる。
「本、ほしい」
「本、ですか?」
今度こそ本当に驚いた顔をしているアイリ。一歳児が本を要求するのは無理があっただろうか?
「はい、本ですね。わかりました。すぐに持ってきます」
そう言ってアイリは足早に出て行った。
「…あれ?」
2/27 ミサーナの容姿の説明を入れ忘れていたので追加しました。