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転生王女は元男の子  作者: いでりん
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14 森での出会い

『空を飛ぶ』


 大体の人が、一度は夢見ることではないだろうか。

 そう言うミサーナも、前世ではよくそんなことを考えていた。




 そして現在、ミサーナはその夢を叶えている。

 そうなった理由は、とても不本意だが。


 つい先程、生まれ育った場所から逃げ出したところだ。


 行く当ては特にないが、とりあえずは国を出るべきだと考えてはいるが、まだミサーナは王都から逃げ出したところで、国を出れていない。

 国を出るまでは、危険があると考えて間違いないだろう。




 そんなわけで、今ミサーナは森の空を飛んでいる。

 場所は分からないが、王都からは相当離れたので、暫くは大丈夫な筈だ。

 近くに丁度いい木陰があり、周りに人もいないようなので、少し休むことにした。

 ついでに所持品も確認する。


 今着ている服とドレスが一着、剣が一本、金貨が十枚に、銀貨が二十枚。


 アイリから貰ったお金だが、間違いなく大金だ。本当に宿で一週間暮らすだけで全て溶けるのだろうか。

 まあ、流石にあり得ないと思うので、多分アイリの基準がおかしかっただけだろう。


 ただ、この世界の物価を知らないミサーナとしは、少し不安もある。

 もしかしたら、この世界では金貨一枚で一万円ぐらいの価値しかないのかもしれないからだ。もう少しお金についても調べておくべきだった。


 まあ、今更悔やんでも仕方ないので、他のことを考えることにする。


 とりあえず、装備は大丈夫だ。剣さえあれば、後は魔法でどうとでもなる……筈だ。

 まともに実戦を経験していないので、本当に大丈夫かはわからない。


 今後については特に決めていないが、冒険者になろうと考えている。というか、それくらいしか出来る仕事がない。

 幸い、出自や年齢は問わないそうなので、ミサーナでも問題なくなれるだろう。


 細かいことは、またその時に考えればいい。




 そんなことを考えていると、目の前の茂みから、ガサゴソと物音が聞こえてきた。

 動物かなにかだろうと思い無視していると、茂みから『ソレ』が出て来た。




 ゴブリンだ。

 ゲームの定番、雑魚モンスターの代表、みんな大好きゴブリンがいた。


 突然の出会いに硬直するミサーナ。

 ミサーナを見てどう思ったのか、ゴブリンが叫んだ。すると、他の場所からもゴブリンが出て来た。完全に囲まれた形だ。


 しかし、ミサーナはそれどころではない。

 ゴブリンがいた。ファンタジーなら、どんな作品でも大体出て来るモンスターだが、生で見る機会など絶対にない。

 だが、それを見れたことで久し振りに感動した。魔法を使えた時並みの感動だ。


 見た目は緑色。それから、とても不細工で醜い。身長は、ミサーナより少し小さいくらいだろうか。

 格好は腰布を巻いただけの簡素なもので、手には棍棒を握っている。

 絵に描いたようなゴブリンだった。


 それに感動していると、ミサーナにゴブリン達がにじり寄って来た。

 どう対応するべきか悩む。普通に考えるなら逃げるべきだ。だが、今後のことを考えるなら、戦うのも悪い選択ではないと思う。


 悩んでいる間にも、ゴブリン達は近づいてきている。


「試しに、やってみようか」

「グギャッ、グギャー!」


 最初に出て来たゴブリンが叫んだ。

 それを合図にして、他のゴブリン達も飛び掛かって来ている。


 とりあえず、『飛行』で空に逃げるミサーナ。これでゴブリン達は手を出せない。


「グギャギャ!グギィ!!」


 なにを言っているのかは分からないが、怒っているのはよく分かった。

 流石に剣で戦うのは怖いので、魔法で攻撃する。使うのは『火矢』だ。


 そして、今気づいたが、魔法に詠唱が必要なくなっている。つまり、ミサーナは魔族と同じように魔法が使えるということだ。

 なんとなく不愉快だったが、気にせずに魔法を使う。


 周りに展開し、狙いを定め、撃つ。


 それだけのイメージで、魔法を使うことが出来た。そして、初弾は見事に命中。それと同時にゴブリンの頭が砕け、鮮血が飛び散る。


「グ、グギャー!」


 余りにも呆気ない仲間の死に怯えたのか、残りのゴブリン達が一斉に逃げ出した。が、ミサーナはそれを逃がさないように、連続して魔法を展開し、放つ。


 たったそれだけで、ゴブリン達は呆気なく死んだ。

 それぞれ頭を撃ち抜かれるか、胸を貫かれて鮮血を撒き散らしている。


 今、ミサーナの魔法で、八匹いたゴブリン達は抵抗も出来ずに死んだ。


『飛行』を解除して地上に降りると、そこには強い血の匂いが漂っている。

 だが、その匂いは今のミサーナにはただの美味しそうな香りでしかない。

 それに自分で嫌悪感を覚えつつも、戦果には満足する。


 一人でこれだけのことが出来れば、一先ずは安心だろう。

 そして、初めて動物…それも人型を殺したが、驚くほどなにも感じない。

 普通、初めて生物を手にかけた時は、少なからず動揺するものだと思っていた。

 しかし、今ミサーナが感じているのは高揚感と、そして陶酔感だけだ。


 多分、人を殺した時はまた違うと思うのだが、現状そういう予定はない。


 これならば、大丈夫そうだ。


 それを教えてくれたゴブリン達に感謝しつつ、纏めて火葬する。

 骨だけになった後は、普通に埋めた。


「行くか」


 結局、あまり休憩にはならなかったが、成果はあった。


 それを噛み締め、『飛行』で飛び立つ。


 行くべき場所は国外。

 志すは冒険者。


 目指すものは、まだ遠い。

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