閑話 疲れた王様
私はケーニッヒ。ザンツェルト王国の国王をしている。
つい先程、娘によく似た吸血鬼を取り逃がしたところだ。
本当に惜しいことをした。捕らえてさえいれば、幾らでも使い道はあった。そして、この国はより発展出来た筈だったのに。
それはまぁ、いい。だが、本当に惜しいのはその娘、ミサーナだ。見目が良く、魔法を使いこなす頭の良い娘だった。
私の子供達は全員が優秀だ。
長男のフレーゲルもミサーナ程ではないが十分に賢く、人格的にも優れていると家臣達にも評判が良い。王の座を譲るにも相応しいだろう自慢の息子だ。
そして、長女のジーニーと次女のフリーダは仲が良く、二人とも勉強は苦手だったが、その分社交は得意な、ある意味では王女に相応しい姉妹だ。
だが、その後生まれたミサーナは次元が違った。一歳にして本を欲しがり、少し教えられれば字を理解した。
そして、二歳で大人と同じ程度の速度で図書室の歴史書を読破し、その後は私の書斎に来て魔法を使えるようになった。
この時はとても喜んだ。それこそ、フレーゲルが生まれた時と同じくらい喜んだかもしれない。
何故なら、王族から魔法使いが生まれるなど、数百年ぶりの奇跡だからだ。使い道は幾らでもある。それどころか政治的にならば、なんでも出来た筈だ。
更に、勉強も得意。特に、算術は習う前から普通にできたらしい。
それでも、社交が苦手だったり、最近では剣の練習等の女性らしくない趣味を持っていたらしいが、それを補って余りあるほどの価値がミサーナにはあった。
しかし、吸血鬼が出て来てから、ミサーナは一度も姿を見せていない。
ミサーナは間違いなく妻が産んだ私の娘だ。
それが実は吸血鬼で、たった今逃げ出したなど、昨日の私に言っても信じないだろう。だが、確かにミサーナは今居ない。
どう言う事だ?途中で入れ替わったのか?それとも最初から……
いや、やめよう。どれだけ考えても無駄だ。
だが、もしもミサーナが吸血鬼と入れ替わっただけだとしたら、元のミサーナはどうなったのだ?
魔族に攫われたとなればもう手遅れかもしれないが、もしかしたらはあるかもしれない。
いや、仮に生きていたとしても、どうしようもないな。手掛かりはあの吸血鬼のみで、それももう逃げられている。
逃げる先は魔族の住んでいると言われている国だろうが、場所は分からないし規模も不明。完全に手詰まりだ。
まぁ、無駄になるかもしれないが、手配はしておいたほうが良いか。
国内でしか意味が無い手配でも、しないよりはマシだろう。
それよりも、今回の件で少し疲れた。
一休みしたところで別に問題はあるまい。
そう思いながらソファーに横になると、それだけで身体が動かなくなった。
瞼が重い。一休みと思ったが、一眠りでも変わらないだろう。
そう考えながら、ケーニッヒ王は眠りについた。
王様視点で書こうとおもったら、ビックリするぐらい書くことが無くて、こんなんになりました。ごめんなさい




