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転生王女は元男の子  作者: いでりん
13/36

12 いつも通り

 今日はミサーナの誕生日だ。

 めでたく十歳、日本では半成人とか言われていた年齢になった。

 そしてこの世界では、子供が自立する平均年齢でもある。


 そして、今日の夜はミサーナの誕生パーティーがある。他の名前も知らない貴族が大量に集まる面倒な行事だ。

 考えるだけで鬱になるので、ここ数年はあまり気にしないようにしている。

 気にしたところで行われるのだから、頭を空っぽにしていた方が楽なのだ。




 それはともかく、誕生日だろうと日課は続ける。

 なので、いつも通りに魔法の練習をしてから、剣の練習に向かう。

 だが、訓練場に着くと、いつもと様子が違った。

 普段なら、叫びながら剣を打ち合っているのだが、今日は一箇所に集まってざわざわと騒いでいる。

 何事かと思っていると、ヨハンの姿が目に入った。とりあえず駆け寄って今の事態について尋ねる。

「ヨハン、これどうしたの?」

「あっ、ミ、ミサーナ様。いえ、別に大したことではありません。新人が怪我をしただけですから」



 ヨハンによると、先週入ってきた新人がバランスを崩しただけらしい。前から転んだので、歯が欠けて血が止まらないそうだ。思った以上にしょうもない理由だった。


「回復魔法、いる?」

「使って下さると助かりますが、魔力は大丈夫ですか?」

「練習にもなるし、余裕あるから多分大丈夫だと思うよ」


 そう言いながら、ミサーナが人の中心に向かおうとすると、一気に道ができた。

 歩きやすいので構わないのだが、なんとなく申し訳ない気分になるのは、やはり元が庶民だからだろうか。

 できた道の奥を見ると、複数の騎士に一人の騎士が介抱されていた。


 そこには確かに血溜まりができていた。

 何というか、痛そう

      「美味そう」


 ………。

「え?」

 慌てて口を手で塞ぐミサーナ。

(今、なんて言った?美味そう?血が美味そうって、サイコパスなんてレベルじゃないだろ。何言ってるんだ?)


 思い出したように周りを見渡し確認するが、幸い誰にも聞かれていなかったようだ。

 その事にホッとする。


 とりあえず、考えるのは後回しにして、回復魔法を唱える。

「『治癒』」


 そう言うと、騎士の怪我をした部分が光りだし、見る見るうちに怪我が治っていく。血も既に止まったようだ。


 騎士も、痛みが治ったようで、ミサーナにお礼を言おうと顔を上げ、そして、動きが止まった。

 その顔は驚愕と恐怖に染まっている。

「お、お前は誰だ!!」


 そう叫んで、ミサーナに剣を向けた。

 騎士の行動に他の騎士達が動揺する。


 だが、ミサーナはそれどころではなかった。向けられた剣に、自分の顔が映っている。



 その顔の眼は、いつかと同じような、綺麗なだった。





 ミサーナが気づいたのとほぼ同時に、他の騎士達も気づいたようだ。

 各々違う顔をしているが、皆共通して驚きを顔に浮かべている。

「眼が……紅い……」


 誰かが、そう呟いた。それは、とても小さな呟きだったが、その声は、とても明瞭に響いた。




『赤い眼は吸血鬼の特徴』

 この世界の人々なら、誰でも知っている常識。それは、騎士もまた例外ではない。


 ただ眼が赤いだけの人間なら、非常に少ないが、ごく稀にいる。だが、今まで青かった人間の眼が、赤色に変わる。そんなことはありえない。

 つまり、ミサーナは吸血鬼確定だ。


 図鑑の文字がミサーナの頭をチラつく。吸血鬼はモンスター。狩られる対象となっている。


(どうする何か言わないとどうしよう逃げるべきいやそれは危ない何か言い訳を……)

「そこまでだ!偽物め!本物のミサーナ様はどうした!」


 ミサーナが思考を巡らせている内に、騎士達の準備ができたようだ。皆、ミサーナに剣を向けている。これでは、言い訳しても通用しそうにない。


 正直、戦って勝つだけなら難しくない。ミサーナには魔法があるが、騎士には無い。それだけの差で、間違いなく勝てる。

 だが、それでは意味がない。この場を切り抜けられても、今後絶対に詰む。




 ………ここは逃げるが正解だろう。


 そう結論を出し、『飛行』で逃走する。目的地は特に決めていないが、まずは騎士達から離れることが先決だ。


 訓練場から逃げ出す瞬間、アイリがこちらを見ていた気がした。表情までは見えなかったが、どう思っているのだろう。


 今後のことを考えようにも、どうしてもアイリの姿がチラついて集中できない。

 そんな覚束ない思考をしながら飛んでいると、突如、王宮に警報が鳴り響いた。


 いつだったか、アイリに教えてもらった覚えがある。この警報は確か、による襲撃。









 日常は、いつも突然に、終わる

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