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転生王女は元男の子  作者: いでりん
1/36

1 転生

初めまして、いでりんと申します。

この小説は見切り発車で始めたので、更新ペースは遅いと思われます。

文章も拙いですが、読んで頂けると嬉しいです。

 向田むこうだともは二人兄妹の兄として、ごく普通の家に生まれた。両親は共働きであまり家に居なかったが、その分家に居るときは優しくしてくれたし、3歳下の妹も優しく素直に育った。

 そして朋は、年頃にしては珍しく、妹や誰にでも優しく接する好青年に育っていた。

 学校での成績もどちらかといえば優秀な方で、交友関係も広い。彼女などというものは、一度たりとも出来なかったが、一般的に見れば完璧な高校生活を送っていた。


 その日は、丁度朋のセンター試験の日で、朋の住んでいる地域にしては珍しく大雪が降っていた。普段は雪なんて滅多に降らないし、降ったとしても、積もる事なんて殆ど無かったが、この日は、軽く30cmは積もっていた。それは、雪に慣れていない朋にとっては鬱陶しく、邪魔なものだった。


 そんな時、8歳ぐらいの子供が雪で遊んでいるのが見えた。滅多に降らない雪で雪だるまを作っている。

 それは、見ていてとても微笑ましい光景であった。

 しかし次の瞬間、その光景は終わりを告げる。

 子供の奥からトラックが走って来ている。恐らく、雪で滑って止まれなくなったのだろう。子供の方はまだ気づいていない。このままだと、子供は死んでしまう。いくら雪でクッションがあるとはいえ、トラックの重さでぶつかられたら、ひとたまりも無い。


 気がつくと、朋の身体は勝手に動いていた。子供の前に飛び出し、腕を掴んで放り投げる。

(あぁ...試験の勉強、全部無駄になった...)


 そんな事を考えている内に、トラックは目の前に来ている。ブレーキは効いていないし、今からだともう避けられない。そしてトラックにぶつかり、強い衝撃が走り、身体が宙に浮く。そして朋の意識が暗転した。






「目が覚めたようですね。向田 朋さん」

 朋が意識を取り戻すと、20歳ぐらいの女性が自分のことを見ていた。

「えっと…ここは…。確かトラックに轢かれて...あれ?」

「はい、あなたはお亡くなりになりました」

「えぇ...?」


 この人、頭大丈夫かな?と一瞬思ったが、身体に全く痛みは無いし、あの状況で無事に済んだとも思えない。それに、落ち着いて周りを確認してみると、全体的に白い。床や天井、女性の着ている服も全て白色だ。というか、痛みどころか身体の感覚がない。

 これは一体どういう事なのかと、朋が戸惑っていると、女性が説明してくれた。


「私はあなた方の世界では神と呼ばれている者です。この度はあなたに頼みたい事があり、此処に呼ばせていただきました。それでは、事情を説明させていただきます。あなたは子供を庇い、トラックに轢かれました。そこまでは覚えていますね?」

「は、はい」

「では、その後のことを説明します。あなたがトラックに轢かれた後、すぐに子供の母親が救急車を呼んでくれましたが、救急隊の健闘虚しくあなたはお亡くなりになりました。あのトラックはあなたにぶつかった事で大幅に減速し、他の被害者を出すことなく停車しました。子供は無事ですよ。」

「そうですか」


 朋がそう言うと、女性は少し悲しげに微笑んで事情を説明してくれた。

 女性の話によると、神様の仕事とは世界の管理で、滅んだりしないように見守り、時々手を貸す事らしい。ちなみに、うっかり失敗して滅んだりすると上司から怒られ、同僚からは馬鹿にされてしまうらしい。そして、地球という惑星は後40年程で滅んでしまうらしく、朋が助けたあの子供は将来研究者となり、40年で滅んでしまう地球の寿命を飛躍的に伸ばし、更に地球の寿命を削らないエコエネルギーを開発して、人類の発展に大きく貢献するとのこと。理論も説明してくれたが、朋にはよく分からなかった。

 神様にとって、地球の人間は比較的管理のしやすい、良い文明なのだそうだ。


「それでですね。あなたを此処に呼んだのはあの子を助けてくれたお礼をする為です。あのままでは、本当に地球は滅んでいたのですから」

「お礼、ですか?」

「はい、地球を救った人に贈るには少ないかもしれませんが、新しい人生。記憶を持ったままの転生、というやつです。もちろん、転生せずに普通に生まれ変わることも可能ですよ」


 転生。ゲームやライトノベルなどを嗜んでいた朋にとっては、よく聞く言葉だ。最近はそれを題材にしたものがよくあった。


「転生する場所はピートという世界で、文明的には中世のヨーロッパぐらいですかね。地球よりも文明は遅れているので、転生してもすぐに死んでしまうかもしれません。そこで、快適に生活してもらう為に何か優れた能力と生活環境を約束できます。では、あなたはどんなものを望みますか?」

「あの、質問なんですけど、その世界ってやっぱり魔法とかあったりしますか?」

「魔法ですか?えぇ、ありますよ。ですが、かなり才能が絡みますので…能力として付けておきますか?」

「お願いします!」


 朋は即答していた。やっぱり剣や魔法に憧れる辺り、朋も男の子ということだろう。もしも魔法が使えたら、と考えたのは一度や二度ではない。


「はい、わかりました。他にはありますか?」


 女性は楽しそうに笑いながら朋に聞いてくる。

 他に欲しいものはあるだろうか?考えてみるが特には思いつかない。

(強いて言うなら自立出来るまでの生活ぐらいは保証してほしい。それぐらいかな?)


「えーと、最低でも自立出来るまでの生活は保証してほしいです。それ以外は…まぁ、奴隷の子供とかでなければなんでもいいです」


 そう朋が言うと、女性は驚いたような顔をして訊き返してきた。


「え?それだけですか?もっと色々注文出来ますよ?」

「えぇ…もう思いつかないんですけど…」


 女性は驚きを通り越して、戸惑ったような顔になっていたが納得して頷いた。

「そうですか、それでは転生の準備に入らせていただきます。と言っても特にすることは無いので、軽く説明だけしておきます。今からあなたが転生する世界は魔物の脅威に晒された、剣と魔法の世界です。盗賊なども多く、人は死にやすい。そんな世界です。今からそんな世界に転生させる私に言える事ではないかもしれませんが、どうか幸せに長く生きれるように祈っております。それでは準備も出来たので、いってらっしゃいませ」


 朋が最後に見たのは、笑いながらそう言う女性の姿だった。


 


 

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