第12話『トップランカー』その3
・2021年9月25日付
細部調整
遂にマッチングの10人は揃った。
メンバーにはアルストロメリア、ビスマルク、シナリオブレイカーことアイオワ、更にはランスロットの正体――アルテミシアも含まれている。
「これだけの人数が揃った以上は――」
カトレアは悩む。中継を見ている限りでは積みと言う場面ではない。
しかし、実況スレやまとめサイトでは――潮時と言える状況になりつつあった。
「この顔触れは――まさか?」
アルストロメリアとシナリオブレイカーが遭遇した事に関して、カトレアは何かを懸念していた。
しかし、それ以上に――マッチングメンバーのリストには、予想外とも言える人物がエントリーしていたのである。
それを見てカトレアは――頭を抱えそうになっていた。
「よりによって彼女まで――ここに集まったと言うの?」
ここで叫んでしまうと、更にスタッフの動揺を誘うだろう。それを考えて、カトレアは敢えて黙る事にする。
しかし、プレイヤーネームを見て勘の鋭いスタッフであれば――すぐに分かってしまう。
【迂闊だった。まさかガングートもいたとは】
【彼女とシナリオブレイカーは因縁があった気配もする。このままでは炎上するぞ】
【だからと言ってチートや不正行為等の理由がないマッチングは止められない】
【何が始まるのか――】
【それは、我々にもわからない。見定めるしか、方法はないだろう】
実況スレとは別のスレでは、このようなやり取りがあったらしい。
まとめサイト恒例の虚構記事やフェイクニュースと呼ばれる物の類かどうかは――分からないが。
ランスロットの一言はメタ的な意味でも周囲に衝撃を与えていた。
目の前にいるアルテミシアが偽物だと言うのである。
そうなると、目の前のアルテミシアを倒してもステージクリアにならないのでは――という動揺が一部プレイヤーにあった。
『ゲームがクリアできなくなるわけではない。目の前のアルテミシアは――運営側が設定したアルテミシアとは違うと言う意味だ』
(それって――目の前のアルテミシアはプレイヤーと言う事なの?)
ランスロットの一言を聞き、アルストロメリアは思う。目の前のアルテミシアと名乗る偽物は、赤い怪盗と同じようにプレイヤーだと言うのか?
仮にそうだった場合――不正プレイ扱いで強制ログアウトもありえるだろう。つまり、このマッチング自体が無効とされることだ。
『この私を倒すだと? なめた真似を――?』
アルテミシアもARメットをしている為か、その顔を見る事は出来ないと言うよりも――変化したのか?
もしくは化けの皮が気付かない内に剥がれたのか――それを周囲の人間は知らない。
「どうやら、貴様の正体も割れたようだな――」
他のモブプレイヤーの集まっている辺りから声がする。アルストロメリア、シナリオブレイカーとは違う方角を振り向くと――。
目の前にいた人物を見て、誰もが驚く。しかし、その驚き度合いが高かったのは――偽者のアルテミシアではなく、プロゲーマーのアルテミシアである。
「ガングート――」
ランスロットは怒りの感情を抑える。そうでもしないと、目の前の偽者を倒すことは不可能に等しい。
倒すと言っても、ボスのライフを0にすれば勝利である。ゲームのルールに従えば――と誰もが思った。
一番の衝撃とは、偽アルテミシアのライフが非表示になっていたことである。
ボスのライフが見えないのはRPG等ではよくあることだが、アクションゲームでゲージが見えないケースはレアかもしれない。
しかし、それは近年のARゲームに絞り込んでの話だ。ロケテスト段階ではゲージも見えていたはずなのに――どういう事なのか?
『本来の無敵アーマーは解除されたようだが、それでもこの無尽蔵の体力を――削りきれるかな?』
明らかな挑発である。しかし、勝ち目がない訳ではない。自分で無敵アーマーが解除されたと宣言している以上、切り札は失ったも同然だ。
体力ゲージが見えないだけで、無制限と言うのはハッタリであると周囲は考えている。
「そう言う発言をしたプレイヤーがどうなるか――教えてあげようか?」
シナリオブレイカーはメイン武装のロングソードを構え、その刃を偽アルテミシアに向ける。
彼女には策があるのだろうか――。周囲のモブプレイヤーは若干不安になっている。しかし、アルストロメリアは悲観していなかった。
「あなたは明らかに負けフラグを立てたのよ! それも、とっておきの!」
アルストロメリアが左手の指をパチンと鳴らして、シールドビットを展開する。それ以外では、右手にビームサーベルを構えた。
それと同時に楽曲が流れ出し、遂にバトルは始まったのである。ある意味でもファンタジートランスの今後を占う最終決戦が――。




