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オケアノスオブイースポーツエリア  作者: 桜崎あかり


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第12話『トップランカー』その2

・2021年9月25日付

細部調整

 ステージ3のフィールドには、一部のプレイヤーと怪盗、アルストロメリアの姿があった。


 人数的には7人、ラスボスであるアルテミシアを含めてもフィールドは広めにとってあるのだろう。さすがにすし詰めだったら、ゲームにならない以前の問題である。


「ステージ3のフィールドは、ある程度の広さが確保されなければ成立はしない――それ程の難易度だ」


 カトレアは――このスペースの広さが想定の範囲内とはいえ、相手が相手なので不安要素がないと言えば嘘になるだろう。


 ラスボスのアルテミシアを偽物と言い放った段階で――不安は現実になると思っていたからである。カトレアは彼女の正体を察していた。


【一体、何が始まる?】


【あのメンバーだと、どうなるのか想像が出来ない】


【メンバーと言うよりも、アルストロメリアだな】


【それ以上に気になるのは――乱入した人物だ】


【ランスロット、何をする気なのか?】


 実況スレではランスロットの単語も出始めている。


 つまり、今までは影で動いていた気配のする彼女が――本格的に行動を意味していた。


 他のプレイヤーには注目されていないので、おそらくはアルストロメリアとランスロット以外はスルーでよいのだろうか?


 スルーと言うよりは、もしかすると知名度のない無名プレイヤーかもしれない。


 しかし、カトレアがタブレット端末で別の実況スレを立ち上げると、モブプレイヤーの一名だけだが名前が判明する。


 その名前は――まさかの単語だった。これにはカトレアも思考が三秒停止するレベル。


「シナリオブレイカーが――駆けつけたのか?」


 実況スレを見てシナリオブレイカーと言う単語を見つけ、その人物が目の前の中継モニターに表示された時には――言葉を失った。


 カトレアとしては思わず開いた口を隠すように右手を構えた――が、その顔を周囲が見る事はなかったと言う。


「シナリオブレイカー?」


「一体、何を知っているのか――カトレアは」


「企業機密を握っているかもしれない」


 周囲のスタッフからは、そんな声が聞こえていた。


 それさえも聞こえないほどに雑音をシャットアウトしているのが今の彼女である。


【シナリオブレイカーって、どっちだ?】


【砥石伝説の方だろう。別のARゲームでもシナリオブレイカーでエントリーしている人物はいたのだが】


【プロゲーマーの場合、なり済まし防止で同じ名前で別人が登録は出来ないはず】


【それが可能と言う事は、シナリオブレイカーはゲーマーの名前ではないのかも】


【その話題は、今のタイミングで言う物か?】


 実況スレでは微妙な話題が流れている。


 しかし、この微妙とも言えるような話題でもカトレアには重要な話題だ。


 ARゲームを荒らしまわると言う都市伝説があると言うシナリオブレイカー。その正体を知るチャンスでもあったからである。



 フィールドではアルテミシアが登場したのだが、ゲームの方は始まっていない。


 これはゲーム中におけるマッチング待ちの状態になっている事に由来する。この時も持ち時間は消費しないので、プレイヤーは一安心だろう。


 7人はいるのだが、このステージでは10人と設定されていた。何故に10人設定なのかは他のプレイヤーにも分からない。


 しかし、それを把握していたのはアルストロメリアである。一足先にヘルプファイルを確認し、ルールの詳細をチェックしていたのだ。


 他のプレイヤーはランスロットの出現で焦っている状況であり、その内にチェックしていたのかもしれない。


 唯一の例外があるとすればランスロット本人かもしれないが、彼女もチェックしていないのだ。一体、どういう事なのか?


『我を偽物と言った事――後悔するがよい!』


 他のメンバーを見下ろすかのような表情で、偽物と言われて激怒したアルテミシアが反論する。


 しかし、この反論は後に大きな過ちとなってしまう。これはカトレアも偽物と把握するきっかけとなった。


『お前は、ひとつ――大きなミスをしている』


 見下ろすようなアルテミシアに対し、ランスロットは何も武器を持っていない右手をアルテミシアに向けた状態で断言する。


 彼女には――事情が呑み込めているようだ。それに加えて、さりげなく駆けつけたシナリオブレイカーも気付いているようである。


『本来のボスアバターはアドリブで台詞を返したりはしない。AIでも使用されていれば話は別だが――』


 ランスロットのボイスチェンジャーも途中からノイズ交じりで、声がどちらにも聞こえている。


 これに対して何かを感じたのは、シナリオブレイカーだった。それに加えて、カトレアも気付いているだろう。


「このタイミングでノイズが――って、仕方がないわね」


 ランスロットはボイスチェンジャーをオフにして、本来の声でしゃべり始めた。女性らしい事が―ーこの段階で判明する。


 その声に気付き、ある発言をしようとしたのがシナリオブレイカーだった。


「プロゲーマー、アルテミシア――ここにいたのか!?」


「まさか――アイオワに気付かれた?」


 シナリオブレイカーは、ランスロットがアルテミシアだと分かった段階で――何もない空間から2メートルの長さを誇るビームランチャーを構えた。


 しかし、ランスロットことアルテミシアは右手の指を唐突に鳴らし、瞬時にビームランチャーのCGを消滅させて事無きを得る。


 ここまでの状態になるのに、わずか10秒にも満たない。それ程の瞬間動作が展開されていた。しかし、アルストロメリアには目で追えそうな気配だが、現段階では無理である。


『こういう事だったのか――』


 ARメットで素顔を隠したプレイヤーが、更にエントリーする。これで8人になった。


 他にも2名がマッチングし、これで10人は揃う。その一方でマッチングメンバーの顔触れに焦り始めるのは、シナリオブレイカーことアイオワだ。


 言葉に出来ない焦りをエントリーされたばかりのプレイヤーネームで反応する。アルストロメリアも似たような状況に陥るが、別のタイミングで彼女とは遭遇していた。


『シナリオブレイカーがアイオワだった事には驚きだが――』


 まさかの8人目にマッチングした人物、それはビスマルクだったのである。これには他のプレイヤーも言葉に出来ない。


 シナリオブレイカーもアルテミシアとの言い争いを止めるほどなので、相当な豪華メンバーによるマッチングになったのだろう。

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