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第3話『プロゲーマー』

・2021年9月17日付

細部調整、3話と3.5話の区切りはなろう版ではカット。


 3月1日、一部のアンテナショップでは『ファンタジートランス』の正式稼働準備が始まっていた。


 準備と言っても開店前に行うので、大抵の店舗では午前10時~午前11時位にはプレイが可能になっているだろう。


 しかし、正式稼働したからと言ってすぐにプレイできる訳ではないのはARゲームプレイヤーであれば誰もが知っている。


「ゲームが実際にプレイ可能となるのは、まだ時間がかかるか」


「先にデータの更新をしておくか――」


 一部のプレイヤーは継続に該当する為、先にセンターモニターや受付窓口でデータの更新を行う。

これによってスムーズにファンタジートランスをプレイ出来るようになる。


 基本的に旧シリーズから新シリーズと言う続編関係やアップデート系は、一度でもアンテナショップかセンターモニターでデータを更新を行う必要性があった。


 それを行わずにプレイしようとすると、データエラーを起こす。この辺りはアーケードゲームの続編が出た際のアップデートとは異なるだろうか。


 この手続きは前作データがない場合には必要がなく、その際はゲームプレイ時にアプリダウンロードと共にプレイデータが作成される。


 ARアーマーに関しては、このプレイデータがなければ生成が出来ないのだ。

この手続きを忘れて、実機でデータ更新が出来ると考えてしまうと――大変な事になるだろう。



 同日、草加市にあるオケアノス、その中でも一番目立つ建造物と言えば――草加ARゲームマルチフィールドである。


 そこでは既に先行稼働がされていたので――手っ取り早くファンタジートランスがプレイ出来るのは、ここと考えたプレイヤーで混雑していた。


 既に整理券がARガジェット経由のデジタルタイプが配布され、ランダムで番号が呼ばれるとプレイ出来る――という仕組み。


 プレイに使用するフィールドの広さもあって、2つのフィールドが使えない。ある意味でも悩ましい仕様を持つ。


 ただし、フィールド内は数名しかログインできないと言う訳ではなく、100人位は同時ログインが出来るだろう――と思われる。


「ゲームがプレイ出来るようになるまで、更新作業でも――って思ったけど、先行稼働で更新しているからOKなのね」


 整理券発行をしようとセンターモニターの前まで来た一人の女性、彼女は眼を隠すように深く帽子を被っており、外見はスマートだろう。


 その一方で、胸は揺れないが90位はあるかもしれない。それを目撃したギャラリーは、若干動揺をし始めていた。


 長身のプロゲーマーと言えば、複数名存在するが――リズムゲームでのプロゲーマーと言うと更に絞り込める――それこそ、指折り数える程度。


 彼女の場合は長身と言っても175あるかどうかなので、この事例に該当するかと言われると微妙なラインだが。


「あいつは――まさか?」


「プロゲーマーがARゲームにも来たと言うのか?」


「ARゲームにメーカー公認プロゲーマーがいるわけがない。彼らは、あくまでも個人単位のプロゲーマーだ」


「それでも自称ではないプロゲーマーだろう? 実力差が大変な事にならないのか?」


「ソレは問題ない。マッチングではプロゲーマーの称号を持っているかどうかで変化するゲームもある位だ」


 周囲が動揺する理由は、ただ一つしかない。彼女が実はプロゲーマーであることだ。

これに関しては彼女も隠すつもりはないのだが――場所が場所だけにトラブルが起こるのは回避したい。下手をすれば、出入り禁止は回避出来ないから。


《整理券を発行しました。番号を確認の上でお待ちください》


 センターモニターでは、彼女の整理券を発行したというアナウンス表示があるのだが――そこに書かれていた名前を見て驚愕するプレイヤーが数名、言葉を失う物も何人かいる。


(馬鹿な――彼女が来ているのか?)


 彼女の次に整理券を発行しようとしたプレイヤーは、別の意味でも危険な人物を発見したと思った。


「ちょっと待ってくれ――彼女が、ここをメインフィールドにしていたなんて」


 別の男性プレイヤーも言葉を失いかけていた。そこに表示されていた名前は、騙りでもなければ同じHNの別人でもない。


 正真正銘の本物と言える人物だったのである。これには、他の別ゲームで待機していたプロゲーマーの面々も――驚いている所から、衝撃度合いが分かるだろうか。


「本当は黙っているつもりだったけど――その通りよ。私の名前は――ビスマルク。プロゲーマーのビスマルクよ――」


 帽子に付けられたピンバッジの『Bis』という特徴的なワンポイントもあるが、彼女の場合は別格とも言えるカリスマを持っていた。同姓同名は何人かいるかもしれないが、彼女は間違いなくプロゲーマーの一人であるビスマルクだった。


 

 帽子に付けられたピンバッジの『Bis』という特徴的なワンポイント――それは周囲のギャラリーが衝撃を受けるには、充分だったかもしれない。


 だからこそ、あえて名前を名乗った可能性もあるが、真相は本人にしか分からないだろう。彼女の名前はビスマルク――プロゲーマー認定をされると、同じ名前のプレイヤーネームが使えなくなるという点が大きい。


 これによってネット炎上狙いの『なりすまし』や夢小説的な部分で広まっている『なりきり』等を防ぐ事が可能と言える。


「ビスマルク以外でのプロゲーマーは――」


 それを遠くで見ていたプロゲーマーの一人は、ある検索ワードと共にプロゲーマー検索を始める。

ARゲームにおけるプロゲーマーは、基本的に自己申告制度と言う訳ではなく――ある一定以上のスキルを持っている事が条件となっていた。


 過去にプロゲーマー認定をARゲームで受けた人間は、一握りである。VRゲームのプロゲーマーが多いという現状もあるのだが――。


 プロゲーマーライセンスは、最近になって色々なゲームでも実績があれば発行が可能になっている。仮にライセンスを取ったとしても有名になれるとは限らない。就職では大きく影響する経歴ではなかったのかもしれないが。


 それでも彼らは、プロゲーマーライセンスを求める。就職では役に立たないと思うが、動画投稿サイトやSNSでは大きな意味を持つ。


 ARゲームでもプロゲーマーライセンス自体は存在し、それを持ったプロゲーマーもいる。ビスマルクは、その事例の一人だ。


 そのライセンスがなければプロゲーマーを名乗れない訳ではない。ARゲームでは、作品ごとにプロゲーマーにも匹敵する称号が存在するからだ。


 称号の名前はランカーと言う他のARゲームでは通じず、その作品限定ではあるが――それだけランキング上位に憧れるプレイヤーは多い。


 しかし、ビギナーズラックでランキング上位に入られる訳はないので、プロゲーマーライセンスとどちらが難易度が高いと言われると――議論はされているが、結論は出ていないようだ。


「なるほど――現段階では、彼女がこのゲームのプロゲーマーと言う立ち位置か」


 しかし、検索結果はビスマルク以外の人物が出てこない。これには、少し彼も驚いたのだが――微妙な誤差は想定済みだ。


 ARゲームは過去のデータ等が一切通じないジャンルと言う事も有名である。それを踏まえると――たった一人だけのプロゲーマーと言うのも納得していた。


 稼働したてのゲームと言う事で、プレイ人口はこれから増えるのだろうし――そこからプロゲーマーに近い実力者も出るだろう。


「こちらとしては――別のゲームをプレイして、様子を見ていく事になるだろうな」


 彼は、ファンタジートランスへの参戦は現状で見送り――これからの動向次第という事にする。稼働し始めたARゲームでは、ふとしたことでネットが炎上すると言う傾向が今までもあった。それを見極めるつもりだろう。



 それから様々なゲーマーやランカーがファンタジートランスへ参戦していき、やがては動画サイトに様々なプレイ動画がアップされ始める。


 一番の注目を浴びているのはビスマルクの様なプロゲーマーと思われがちだが――ファンタジートランスに限れば、そこまで需要がある訳ではない。


「プレイ動画も再生数が多いが、ARゲームなのに――この傾向は意外だ」


「自分もそう思っている。センターモニターで見ても、驚かされる光景だろう」


 センターモニターで動画ランキングを見ていたギャラリーも、この傾向には驚きを感じるだろうか。


 ARゲームの場合は魅せプレイに代表されるプレイ動画、初心者救済を目的としたテクニック動画が再生数のトップになるケースが多い。


 しかし、ファンタジートランスはリズムゲームとしての側面も持っている。その為か、その楽曲を視聴できる動画が再生数トップを飾っているのだ。


 確かにリズムゲームのメインは音楽なので、このランキングも間違ってはいないのだろう。しかし、ARゲームのプレイヤーからすれば――疑問弐思うのは無理もない。


「プロゲーマーライセンス自体も――イースポーツが注目され始めたのも、日本では遅かった位だ」


「それだけ、ゲームに対する風当たりが悪かったのだろう。デスゲーム禁止のアレも含めて――」


「デスゲームは違うな。おそらくは――ネット炎上が問題視されているのだろうな」


「イースポーツが世界を動かすスポーツと認識されて10年は経過する――と言うのも本当がどうか疑わしい」


「まるでラノベだな。世界観的な意味で」


 動画を見ているギャラリーも、この状況には色々な意味でも複雑なのだろう。イースポーツが世界を動かすと言われても実感がわかないし、プロゲーマーの称号があれば優遇される訳でもない。


 どちらにしても――様々な考えがぶつかり合っていると言えるのかもしれないし、議論が活発なのはコンテンツ流通的な意味でも望ましいと考える勢力がいる程である。



 3月下旬にはバージョンアップが告知され、様々なプレイヤーが一喜一憂する。そして、これをきっかけにプレイを考えるユーザーもいるだろう。


 初期バージョンでは特定武装で簡単に無双が出来る、チェックを素通りする不正ガジェットが確認されたり――色々とネットでは叩かれていた。


それだけでまとめサイトはネット炎上させ、アフィリエイト収益を――と言うのは過去にも何度か行われているのだが、結局は繰り返されるのだろうか?


 オケアノスの方も、これに関しては放置できるような問題ではない事を把握しており、他のジャンルでネット炎上を起こそうと言う勢力を駆逐している。


 しかし、炎上勢力を駆逐しても増えるスピードの方が速ければ――再びネット大炎上が起き、それこそリアルウォー待ったなしとか叫ばれるだろう。


「オケアノス側も本気だが、それ以上に炎上勢力が――と言う事か」


 ファンタジートランスのサーバールームである映像を確認していたのは、男性スタッフの一人だろう。


 彼は不審人物が確認された――と運営に報告するのだが、上層部はスルーを決め込むらしい。一体、何が起きているのか?


 その一方で、同じ映像を見ていたカトレアの方は――ある人物が持っているガジェットに注目をしている。


 あのガジェットは、もしかすると――試作型という可能性が高い。一体、上層部は何を隠しているというのだろうか?


「上層部は、ファンタジートランスを――代理戦争のフィールドにでもしようと言うのか?」


 カトレアの着用する賢者を思わせるようなローブは、ARアーマーと言う事でCGなのだが――スーツの方は他の男性スタッフが着用している物とデザインが違う。


 女性用と言う事で基本デザインが違う――訳でもないようだが、市販品とはカラーリングも違っているのが特徴らしい。


「今までにもARゲームを私利私欲に利用しようとした勢力はいたし、そうした問題を想定したと思われるラノベやWEB小説もあった――」


 カトレアは別の映像にも類似ガジェットがある事に驚きを感じていた。そして、近くを見回すとテーブルの上に何かタブレット端末らしきものが置かれている。


 その内容は――カトレア自身も衝撃を受ける内容と言っても過言ではない。何と、秘密裏に封印されていたARガジェットのデザイン案がタブレット端末に入っていたのだ。


「これではっきりとした。イースポーツを利用したウォーゲームなんて――あってはならない」


 デスゲームは禁止が明言されている物の――事故の類に関しては、曖昧な部分が多い。

これを決めた人物は、何を想定してデスゲーム禁止を決めたのか? 色々と疑わしい部分があった。

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