第11話『セカンドステージ』その6
・2021年9月23日付
細部調整
アルストロメリアの動きは、一般プレイヤーからすれば明らかにおかしいと言うレベル。それで片付けられる。
しかし、プロゲーマーやシリーズ体験者等からすれば――彼女の動きはあっさりと説明できるらしい。
「あの動きはそう言う事だろう。こっちにとっては常識すぎる」
そんな声がギャラリーから聞こえる。周囲は歓声等で沸いている事に対し、その人物は冷静だった。
目の前にいたのは、チャラ男と間違えられそうなシャツにサングラスの人物――男性だろうか?
「長年のプレイ経験が、再プログラミングされ――整理されていく事であの動きになっている。それに――プロゲーマーのプレイ動画がヒントになって、上手く整理された動きに昇華させたのも大きいな――」
他にも彼は語っていたが――まとめサイト等で書かれている様な事よりは有力と言えるかもしれない。
しかし、彼の姿は語りつくした後に姿を消していた。一体、彼は何を伝えたかったのだろうか?
【結局、彼女もプロゲーマーに近い人物か】
【そろそろ、絞り込みでも行うか?】
【そう言うのはプレイが全て終わってからだ。炎上させるような行為でも確認されれば、モラルの問題で選考からは弾くだろう】
【しかし、ARゲームが公式協議にもなっていないのに――先走り過ぎでは?】
【そう言う状況にしたのが、ARゲームのイースポーツ化を加速させる団体だろう】
【プロゲーマー育成と言う意味でオケアノスが存在しているとは限らないのに?】
【オケアノス誕生経緯は色々とあるが、我々に出来る事は限られている】
【ARゲーム運営は何を考えて、今回の炎上事件を放置するのか?】
【犯人捜しだろう? 今までも似たような事例はあったはず】
【こちらが動くのは、次のステージか――】
ネット上のコミュニティのやり取りがまとめサイトに掲載されたが、これらもスルーされていく宿命にある。
まとめサイト自体が芸能事務所からお金をもらってマッチポンプを行っている――という記事が拡散されていた事もあって、信用されなくなったのかもしれない。
SNSでいつの間にかフェイクニュースを拡散し、無関係な会社等を炎上させているのも――まとめサイトの取り上げ方が問題視されている為、と言われていた。
フィールドで展開されていたアルストロメリア劇場とも言える流れは、他のプレイヤーが手を止めてしまう様な物だった。
「この曲であれば、何度か聞いた事もあるし――」
彼女の腕は残像が出来るレベルで的確に動き、ターゲットをビームサーベルで当てていく。
まるで、弾幕のように現れるターゲットも出現位置が分かっているような足取りで動き、次々と当てていくのは――モニターで視聴するギャラリーも言葉を失うレベルだった。
「これが――演奏するという事! そして、ゲームをプレイしているという感覚よ」
彼女の眼は本気だったのに加えて――その動きはプレイ中でも成長していくような気配。
チートと言う言葉では片付けてはいけないプレイを、彼女は周囲に披露していたのである。これは――衝撃を受けないわけがない。
楽曲としては、リズムが取りにくいようなジャンルではないので、他のプレイヤーも遅れる事はないはずだが――アルストロメリアよりも動きが遅く見える。
スローモーションになっている訳でもなく、映像処理の関係で動作に遅延が発生している訳でもない。
これは単純な話、アルストロメリアの動きに他のプレイヤーが追い付いていないのだ。
『アレがリアルチートなのか?』
『こっちは目で追うのがやっとなのに――』
『信じられない――このままでは!?』
このようおな状況が、楽曲演奏終了までの間は続いた。その時間は1分40秒――100秒間である。結論として、アルストロメリアの無双状態だったのは言うまでもないが――。
「やはり、彼女は――」
カトレアはアルストロメリアのプレイを見て――タブレット端末で何かのニュースを検索し始めた。
そのニュースには、別のゲームでトップランカーとなった一人の女性の写真が記事に使われている。
【ARパルクールトランス、トップランカーに――】
その時期を見たカトレアは、改めてアルストロメリアのプレイ動画をチェックし始めた。
その動きは――明らかに素人の動きではない。ファンタジートランスは初心者なのかもしれないが、他のゲームを経験していれば――あそこまでの的確な動作は不可能である。
カトレアの動画をチェックする目は――真剣そのものだった。まるで、彼女がトップランカーと関係があるのでは――と。




