第十三章 あらすじと人物紹介
※ 登場人物紹介の一行目は呼称。年齢は初登場時点。
文頭の★は視点があるキャラ。
用語と地名は「野茨の環シリーズ 設定資料」でご確認ください。
【思考する梟】などの術の系統の説明は、「野茨の環シリーズ 設定資料」の「用語解説07.学派」にあります。
◆第十三章 生活 あらすじ
移動販売店プラエテルミッサの一行は、ラクリマリス王国のドーシチ市で、薬を作る契約を交わす。二カ月間、商業組合長の屋敷に留まり、生活の補償を得られることになった。
議員宿舎で軟禁生活を送るラクエウス議員は、クラピーフニク議員の協力で、外部との連絡を細々と繋ぐ。
呪医セプテントリオーと葬儀屋アゴーニは、ネモラリス人有志の隠れ家で、ゲリラ活動に協力するが、アーテル軍の襲撃で拠点のひとつを失う。
薬師アウェッラーナは、【思考する梟】学派の製薬術を学ぶ薬師候補生の講師を引き受けた。
◆登場人物紹介
■移動販売店見落とされた者■
★湖の民の薬師 アウェッラーナ 呼称は「榛」の意。
湖の民。フラクシヌス教徒。髪と瞳は緑色。
隔世遺伝で一族唯一の長命人種。外見は十五~六歳の少女(実年齢は五十八歳)
父と姉兄、甥姪ら身内で支え合って暮らす。実家はネーニア島中部の国境付近に位置するゼルノー市ジェリェーゾ区で漁業を営む。
ゼルノー市ミエーチ区にあるアガート病院に勤務する薬師。
魔法使い。使える術は、【思考する梟】【青き片翼】【漁る伽藍鳥】【霊性の鳩】など色々な系統を少しずつ。
入院中の父を星の道義勇軍に殺され、他の家族や親戚は行方不明。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は製薬部門の責任者。
ドーシチ市商業組合長の屋敷で、大量の魔法薬を二カ月で製造する契約を結ぶ。
ちょっとした防護の術が掛かった薄手のコートを着用。
真名は「ビィエーラヤ・オレーホヴカ・リスノーイ・アレーフ」
★パン屋のレノ 呼称は「馴鹿」の意。髪の色と足が速いことから。
力なき陸の民。フラクシヌス教徒。十九歳。濃い茶色の髪の青年。
ネーニア島のゼルノー市スカラー区にあるパン屋「椿屋」の長男。
両親と妹二人の五人家族。パン屋の修行中。
テロと戦争で店と両親を失い、妹と親友たちと共に助け合って避難生活を送る。
力なき民でも使える術の存在を知り、少しでも使えるようになりたいと思う。
成り行きで、移動販売店プラエテルミッサの店長になった。
調理服っぽい白い服にエプロン。
◆ピナティフィダ(愛称 ピナ) 呼称は生まれた季節に咲く花の名。
力なき陸の民。フラクシヌス教徒。中学生。二年三組。濃い茶色の髪。
レノの妹、エランティスの姉。しっかり者。
状況を見極めて必要な教えを乞い、理解して実践できる判断力と行動力を持つ。
幼い頃から家業のパン屋を手伝い、料理上手で商売のコツも心得る。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は、パン部門と販売と広報。
コート、マフラー、手袋を着用。
◆エランティス(愛称 ティス) 呼称は生まれた季節に咲く花の名。
力なき陸の民。フラクシヌス教徒。小学生。五年二組。濃い茶色の髪。
レノとピナティフィダの妹。アマナの同級生。大人しい性格。
家事や店の手伝い経験があり、ある程度パンやクッキーを作れる。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は、パン部門と販売補助と広報。
コート、マフラー、手袋を着用。
★工員 クルィーロ 呼称は「翼」の意。
力ある陸の民。フラクシヌス教徒。工場勤務の青年。二十歳。金髪。
パン屋の息子レノの幼馴染で親友。ゼルノー市スカラー区在住。
両親と妹のアマナとの四人家族。隔世遺伝で、家族の中で一人だけ魔力がある。
魔法使いだが修行を怠り、使える術の系統は【霊性の鳩】が少しだけ。
最近、少し【操水】が上手くなった。
機械に興味があり、ゼルノー市グリャージ区のジョールトイ機械工業の音響機器工場に就職。
両親は共働き。父は出張が多く、星の道義勇軍のテロ当時は首都クレーヴェルに居た。母は隣のマスリーナ市の職場にバス通勤し、生存は絶望視される。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は、販売部門と機材管理。
工場の青いツナギを着用。
◆アマナ 呼称は生まれた季節に咲く花の名。
力なき陸の民。フラクシヌス教徒。クルィーロの妹。金髪。
小学生。五年二組。エランティスの同級生。ゼルノー市スカラー区在住。
音楽と魔術の融合に興味があり、【歌う鷦鷯】学派の解説書などを読む。
少しでも平和に近付く為、みんなに呼掛ける歌を作詞する。勉強家。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は、販売補助と広報。
コート、マフラー、手袋を着用。
★お針子 アミエーラ 呼称は「宿り木」の意。
陸の民。キルクルス教徒。十九歳の女性。金髪。青い瞳。仕立屋のお針子。
工員の父と二人暮らし。祖父母と母と弟妹は病死。弟妹はいずれも幼い頃に亡くなり、人数も記憶にない。
母方の祖母が力ある民。隔世遺伝で魔力を持つが、何も教わっておらず魔法を使えない。
力なき民のフリでキルクルス教徒として生きるか、信仰を捨て、魔術を教わって力ある民として生きるか迷う。
河の畔でトラックの一行と出会い、行動を共にする。
ドーシチ市の屋敷で、湖の民の薬師アウェッラーナに自分が何者か明かし、祖母の手帳を見せた。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は、蔓草細工部門と縫製。
自治区では、魔術的な真名を名づける習慣がない。
真名は「イフェイオン・ユニフローラム・ステルラ・カエルラ」で、母が秘かに付けた。
鍋や食器、非常食、祖母の手帳三冊、クフシーンカ店長から預かった大伯母カリンドゥラ宛の手紙などを所持。
仕立屋の店長にもらった魔法のコートと肌着を着用。【耐寒】などの術で少し守られる。
★少年 ローク 呼称は「角」の意。
力なき陸の民。商業高校の男子生徒。十七歳。ディアファネス家の一人息子。
ゼルノー市セリェブロー区在住。家族と相容れず、家出する。
ネーニア島のリストヴァー自治区外で暮らす隠れキルクルス教徒。
両親は隠れ信徒団体の役員。祖父は相談役で、この辺りの隠れ信徒を束ねる司祭のような立場だった。
祖父と両親の卑怯さを嫌悪しつつ、その庇護に甘える自分を恥じる。
毎週、休日の礼拝に参加させられ、報告会で自治区民の様子を聞かされて育つ。
祖父たち自治区外の隠れ信徒と、自治区の過激派が結託したテロ計画を知りながら、漫然と放置した。保身に走り、後悔しがち。
家族の手前、信仰繋がりのベリョーザ一家とは仕方なく仲が良いフリをする。
中学校で仲良くなったヴィユノークたちとは、家族に内緒で付き合い続けた。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は、販売部門。
事前準備をして家出した為、防寒着をしっかり着込み、ラジオなど色々な物を所持する。
★ファーキル 呼称は「松明」の意。
力なき陸の民。キルクルス教徒。男子中学生。十五歳。
アーテル共和国北部、ヴィエートフィ大橋の袂にあるイグニカーンス市在住。
ぱっとしない外見で大人しい。頭はいいが、親と同級生からは蔑ろにされる。
インターネットで国内外の情勢と魔術について知り、行動を起こす。運び屋に代金を払い、単身、アーテル軍の空襲を受けたネーニア島に渡った。
報道機関も立ち入らない廃墟に足を踏み入れ、SNSに写真をUP、空襲被害の惨状を伝える。
ネモラリス共和国領内で、移動販売店見落とされた者の一行と出会い、以後、行動を共にする。
アーテル共和国人だが、ラクリマリス王国のグロム市民であると偽る。
各種SNSなどのアカウント名は、全て「真実を探す旅人」で統一。
真実を伝える為なら、命を捨てても構わないと考える。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は、販売部門補助。
コートとマフラーを着用。【魔力の水晶】、タブレット端末を所持。
呪符屋にもらった魔法の手袋は右が【退魔】、左は【不可視の盾】の術を使う為の補助具。
■星の道義勇軍■
★少年兵 モーフ 呼称は「苔」の意。
力なき陸の民。キルクルス教徒。星の道義勇軍の少年兵。十五~十六歳くらい。
リストヴァー自治区のバラック地帯出身。アミエーラの近所のおばさんの息子。
祖母と母、足が不自由な姉とモーフの四人家族。父は、かなり前に工場の事故で亡くなった。
以前は工場などの下働きで家計を支えた。自分の年齢さえはっきりしない。
貧しい暮らしに嫌気が差し、家出してキルクルス教徒の団体「星の道義勇軍」に入った。
自治区外に出て他の暮しを知り、フラクシヌス教徒や魔法使いと共に避難生活を送る内に考えが変わる。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は、蔓草細工部門。
以前はボロボロの格好だったが、ファーキルにもらったトレーナーと交換品でもらった服に着替えた。
◆隊長 ソルニャーク 呼称は「雑草」の意。
力なき陸の民。キルクルス教徒。おっさん。冷静な判断力を持つ知識人。
星の道義勇軍・第三小隊の隊長。モーフたちの上官。狂信はせず、自爆攻撃には否定的。
陸の民らしい大地と同じ色の髪に彫の深い精悍な顔立ち。空を映す湖のような瞳は、強い意志と知性の光を宿す。
半世紀の内乱以前は、自治区外に居住。
内乱終結後、家族と共に自治区に移住。両親は農業技術者として自治区西部の開拓を指導し、緑地を整備して住民に解放した。
十六歳の頃、両親と弟二人が理不尽な理由で殺され、唯一人生き延びた。以降、バラック地帯に身を隠し、工場で働いて暮す。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は、蔓草細工部門の責任者。
◆元トラック運転手 メドヴェージ 呼称は「熊」の意。
力なき陸の民。キルクルス教徒。星の道義勇軍の一兵士。おっさん。
リストヴァー自治区のバラック地帯出身。歌が上手い。
以前はトラック運転手として、自治区と隣接するゼルノー市グリャージ区の工場を往復した。
仕事で重傷を負い、ゼルノー市立中央市民病院への入院経験がある。入院中に妻子を亡くし、キルクルス教徒の団体「星の道義勇軍」に入った。
みんなに「国民健康体操」を教える。
移動販売店プラエテルミッサでの役割は、トラックの運転と蔓草細工部門補助。
■国会議員■
★ラクエウス議員 現在の呼称は「罠」の意。
力なき陸の民。敬虔なキルクルス教徒。老人。クフシーンカの弟。
ネモラリス共和国リストヴァー自治区出身の国会議員。無党派。自治区の発展の為、尽力する政治家。
幼い頃に竪琴の才能を見出され、家族と離れて寄宿学校で本格的に音楽を学ぶ。若い頃は、ラキュス・ラクリマリス交響楽団の竪琴奏者で音楽を生業とした。
半世紀の内乱中に妻子を失う。自治区への移住後、交響楽団時代の人脈を駆使して国会議員となる。
空襲後、調査団を組織し、ネーニア島東部の現地調査を行った。
魔哮砲の使用継続に反対を表明し、首都クレーヴェルの議員宿舎に軟禁される。
若い頃の呼称はハルパトール、「竪琴奏者」の意。
◆与党の若手議員クラピーフニク 呼称は「鷦鷯」の意。歌好きに因む。
力ある陸の民の青年。ネモラリス共和国の国会議員。
与党「秦皮の枝党」所属。古参議員の方針に異を唱え、議員宿舎で軟禁生活。
歌が好きで、竪琴奏者でもあるラクエウス議員に懐く。
■ネモラリス政府軍■
★ルベル 呼称は「赤」の意。髪の色から呼ばれる。
力ある陸の民の男性。フラクシヌス教徒。実家はネモラリス島北東部のウーガリ山中にあるアサエート村。
ごつい体格で厳つい顔。「怒ってるの?」と聞かれやすい顔立ちのせいか、恋人などは居ない。
ネモラリス政府軍の魔装兵。兵学校を卒業して数年の若者。
ネーニア治安部隊の隊員だったが、テロ鎮圧作戦中に戦争が始まり、急遽、水軍の守備隊に転属させられる。
軍用魔道機船に乗り組み、見張りとして空襲の警戒にあたる。末端の兵卒。【飛翔する蜂角鷹】学派の術を修め、偵察などを主な任務とする戦闘員。
魔哮砲の正体に疑問を抱き、この戦争に関する報道発表などの情報を精査する。
軍服は魔法の【鎧】。
■ネモラリス人の有志ゲリラ■
★市民病院の呪医 セプテントリオー 呼称は「北極星」の意。
湖の民の男性。フラクシヌス教徒。湖の女神パニセア・ユニ・フローラ派。
長命人種で、外見は三十代前半くらい。実年齢は四百歳以上。
王国軍の軍医だったが、共和制移行時に王国軍が解体された際、共和国軍の軍医にならず、公立病院に転職した。
ゼルノー市立中央市民病院に勤務する唯一の呪医。【青き片翼】学派を修め、主に外科領域の治療を担当。
オリョールの説得に応じ、アーテル共和国領ランテルナ島にあるゲリラの隠れ家で負傷者の治療を行う。
ラキュス・ラクリマリス王国時代の生まれ。元フナリス群島の島民。半世紀の内乱中に一族を殺され、家名は捨てた。
白衣には魔法の防護が多重に掛かり、魔法の【鎧】並に頑丈。
◆葬儀屋 アゴーニ 呼称は「火」の意。
湖の民の男性。フラクシヌス教徒。髪と瞳は緑色。【導く白蝶】学派を修めた葬儀屋。口は悪いが人情に厚く、割と面倒見がいい。
死は誰にでも平等に訪れるので、なるべく分け隔てなく遺体の処理をしたいが、優先順位をつけざるを得ない場合もあり心苦しく思う。
オリョールの説得に応じ、アーテル共和国領ランテルナ島にあるゲリラの隠れ家で遺体の処理を行う。
商売柄、服には【魔除け】や【退魔】など呪文の刺繍がある。自前の魔力が尽きない限り、着用中は常に術で守られる。
◆警備員 オリョール 呼称は「狗鷲/勇士」の意。
力ある陸の民の男性。髪と瞳は明るい土色。二十代半ばくらい。
医療産業都市クルブニーカの製薬会社に雇われた警備員。森へ素材採取へ行く薬師の護衛だった。【急降下する鷲】学派の術を修めた魔法戦士。
現在は、ネモラリス人の有志ゲリラに参加し、ランテルナ島を拠点にアーテル領内で破壊工作を行う。
◆手伝いの老婦人 シルヴァ 呼称は「森」の意。
力ある陸の民の女性。ネモラリス人の有志ゲリラ。
親戚に「難民支援」と称して、ランテルナ島にある別荘を提供させた。
負傷者の看護と別荘の管理、情報収集を担当する。
ランテルナ島民の家を情報収集の拠点にするなど、強かな一面がある老婆。
◆ゲリラ兵 クリューヴ 呼称は「嘴」の意。
力ある陸の民の男性。ネモラリス人の有志ゲリラ。
ランテルナ島を拠点にアーテル領内で破壊工作を行う。
術者としては弱く【霊性の鳩】学派しか使えない。負傷して拠点で伏せるが、セプテントリオーに助けられた。
◆警備員 ウルトール 呼称は「復讐者」の意。
力ある陸の民の男性。【急降下する鷲】学派の術を修めた魔法戦士。
ネモラリス人の有志ゲリラ。アーテル領内で破壊工作を行う。
元は森の研究所を守る警備員だった。
◆警備員 ジャーニトル 呼称は「門番」の意。
湖の民の男性。二十代半ば。【急降下する鷲】学派の術を修めた魔法戦士。
ネモラリス人の有志ゲリラ。アーテル領内で破壊工作を行う。
医療産業都市クルブニーカの製薬会社に雇われた警備員。森へ素材採取へ行く薬師の護衛だった。
科学文明には、あまり詳しくない。
◆警備員 パーリトル 呼称は「護衛」の意。
力ある陸の民の男性。黒髪。髭面のおっさん。【急降下する鷲】学派の術を修めた魔法戦士。
ネモラリス人の有志ゲリラ。アーテル領内で破壊工作を行う。
医療産業都市クルブニーカの製薬会社に雇われた警備員。森へ素材採取へ行く薬師の護衛だった。
■ドーシチ市民■
◆ドーシチ市商業組合長 ラトゥーニ 呼称は「真鍮」の意。
力ある陸の民。年配の男性。長命人種。大富豪。スヴェチーニク家の家長。
ラクリマリス王国西部にあるドーシチ市の商業組合長。
甥のアウセラートルを後継者と定め、商業組合の業務を補佐させる。
スヴェチーニク家は、旧ラキュス・ラクリマリス王国時代には貴族で、ドーシチ市一帯を治める地方領主だった。
◆契約者アウセラートル 呼称は「鷹匠」の意。
力ある陸の民。大柄な男性。長命人種。外見は三十代半ば程度。外見の厳つさに似合わず腰が低い。
ラクリマリス王国西部にあるドーシチ市の商業組合長ラトゥーニの甥。
【渡る白鳥】学派の術を修め、伯父を補佐する。




