第十二章 あらすじと人物紹介
※ 登場人物紹介の一行目は呼称。
文頭の★は視点があるキャラ。
用語と地名は「野茨の環シリーズ 設定資料」でご確認ください。
【思考する梟】などの術の系統の説明は、「野茨の環シリーズ 設定資料」の「用語解説07.学派」にあります。
★第十二章 王国 あらすじ
移動販売店プラエテルミッサの一行は、ラクリマリス王国内で行商しながら、ひとまずグロム港を目指すと決めた。
宿舎で休息する魔装兵ルベルは、マスリーナ港で発生した巨大な魔獣との戦闘を振り返る。
呪医セプテントリオーと葬儀屋アゴーニは、ランテルナ島にあるゲリラの隠れ家のひとつに身を寄せた。
首都クレーヴェルに帰還したラクエウス議員は、久し振りの休日を得て、息抜きに出掛けた。
アーテル政府の情報筋が「ネモラリス軍が魔法生物を兵器利用している」との談話を発表。各方面が、その報道に揺れる。
★登場人物紹介
■移動販売店見落とされた者■
★湖の民の薬師 アウェッラーナ 呼称は「榛」の意。
湖の民。フラクシヌス教徒。髪と瞳は緑色。
隔世遺伝で一族唯一の長命人種。外見は十五~六歳の少女(実年齢は五十八歳)
父と姉兄、甥姪ら身内で支え合って暮らす。実家はネーニア島中部の国境付近に位置するゼルノー市ジェリェーゾ区で漁業を営む。
ゼルノー市ミエーチ区にあるアガート病院に勤務する薬師。
魔法使い。使える術は、【思考する梟】【青き片翼】【漁る伽藍鳥】【霊性の鳩】など色々な系統を少しずつ。
ドーシチ市商業組合長の屋敷で、大量の魔法薬を製造する契約を結んだ。
真名は「ビィエーラヤ・オレーホヴカ・リスノーイ・アレーフ」
★パン屋のレノ 呼称は「馴鹿」の意。髪の色と足が速いことから。
力なき陸の民。フラクシヌス教徒。十九歳。濃い茶色の髪の青年。
ネーニア島のゼルノー市スカラー区にあるパン屋「椿屋」の長男。
両親と妹二人の五人家族。パン屋の修行中。
テロと戦争で店と両親を失い、妹と親友たちと共に助け合って避難生活を送る。
力なき民でも使える術の存在を知り、少しでも使えるようになりたいと思う。
成り行きで、移動販売店プラエテルミッサの店長になった。
調理服っぽい白い服にエプロン。
◆ピナティフィダ(愛称 ピナ) 呼称は生まれた季節に咲く花の名。
力なき陸の民。フラクシヌス教徒。中学生。二年三組。濃い茶色の髪。
レノの妹、エランティスの姉。しっかり者。
状況を見極めて必要な教えを乞い、理解して実践できる判断力と行動力を持つ。
幼い頃から家業のパン屋を手伝い、料理上手で商売のコツも心得る。
コート、マフラー、手袋を着用。
◆エランティス(愛称 ティス) 呼称は生まれた季節に咲く花の名。
力なき陸の民。フラクシヌス教徒。小学生。五年二組。濃い茶色の髪。
レノとピナティフィダの妹。アマナの同級生。大人しい性格。
家事や店の手伝い経験があり、ある程度パンやクッキーを作れる。
コート、マフラー、手袋を着用。
★工員 クルィーロ 呼称は「翼」の意。
力ある陸の民。フラクシヌス教徒。工場勤務の青年。二十歳。金髪。
パン屋の息子レノの幼馴染で親友。ゼルノー市スカラー区在住。
両親と妹のアマナとの四人家族。隔世遺伝で、家族の中で一人だけ魔力がある。
魔法使いだが修行を怠り、使える術の系統は【霊性の鳩】が少しだけ。
最近、少し【操水】が上手くなった。
機械に興味があり、ゼルノー市グリャージ区のジョールトイ機械工業の音響機器工場に就職。
両親は共働き。父は出張が多く、星の道義勇軍のテロ当時は首都クレーヴェルに居た。母は隣のマスリーナ市の職場にバス通勤し、生存は絶望視される。
工場の青いツナギを着用。
◆アマナ 呼称は生まれた季節に咲く花の名。
力なき陸の民。フラクシヌス教徒。クルィーロの妹。金髪。
小学生。五年二組。エランティスの同級生。ゼルノー市スカラー区在住。
音楽と魔術の融合に興味があり、【歌う鷦鷯】学派の解説書などを読む。
少しでも平和に近付く為、みんなに呼掛ける歌を作詞する。
コート、マフラー、手袋を着用。
★お針子 アミエーラ 呼称は「宿り木」の意。
陸の民。キルクルス教徒。十九歳の女性。金髪。青い瞳。仕立屋のお針子。
工員の父親と二人暮らし。祖父母と母と弟妹は病死。弟妹はいずれも幼い頃に亡くなり、人数も記憶にない。
母方の祖母が力ある民。隔世遺伝で魔力を持つが、何も教わっておらず魔法を使えない。
力なき民のフリをして、このままキルクルス教徒として生きるか、信仰を捨て、魔術を教わって力ある民として生きるか迷う。
仕立屋の店長にもらった魔法のコートと肌着を着用。【耐寒】などの術で少し守られる。
河の畔でトラックの一行と出会い、行動を共にする。
自治区では、魔術的な真名を名づける習慣がない。
真名は「イフェイオン・ユニフローラム・ステルラ・カエルラ」で、母が秘かに付けた。
鍋や食器、非常食、祖母の手帳三冊、クフシーンカ店長から預かった大伯母カリンドゥラ宛の手紙などを所持。
★少年 ローク 呼称は「角」の意。
力なき陸の民。商業高校の男子生徒。十七歳。ディアファネス家の一人息子。
ゼルノー市セリェブロー区在住。家族と相容れず、家出する。
ネーニア島のリストヴァー自治区外で暮らす隠れキルクルス教徒。
両親は隠れ信徒団体の役員。祖父は相談役で、この辺りの隠れ信徒を束ねる司祭のような立場だった。
祖父と両親の卑怯さを嫌悪しつつ、その庇護に甘える自分を恥じる。
毎週、休日の礼拝に参加させられ、報告会で自治区民の様子を聞かされて育つ。
祖父たち自治区外の隠れ信徒と、自治区の過激派が結託したテロ計画を知りながら、漫然と放置した。保身に走り、後悔しがち。
家族の手前、信仰繋がりのベリョーザ一家とは仕方なく仲が良いフリをする。
中学校で仲良くなったヴィユノークたちとは、家族に内緒で付き合い続けた。
事前準備をして家出した為、防寒着をしっかり着込み、ラジオなど色々な物を所持する。
★ファーキル 呼称は「松明」の意。
力なき陸の民。キルクルス教徒。男子中学生。十五歳。
アーテル共和国北部、ヴィエートフィ大橋の袂にあるイグニカーンス市在住。
ぱっとしない外見で大人しく、学校ではいじめられる。
頭はそこそこいいが、親と同級生からは蔑ろにされる。
インターネットで国内外の情勢と魔術について知り、行動を起こす。
運び屋に代金を払い、単身、アーテル軍の空襲を受けたネーニア島に渡った。
ネモラリス共和国領内で、移動販売店見落とされた者の一行と出会い、以後、行動を共にする。
コートとマフラーを着用。【魔力の水晶】を所持。
呪符屋にもらった魔法の手袋は右が【退魔】、左は【不可視の盾】の術を使う為の補助具。
■星の道義勇軍■
★少年兵 モーフ 呼称は「苔」の意。
力なき陸の民。キルクルス教徒。星の道義勇軍の少年兵。十五~十六歳くらい。
リストヴァー自治区のバラック地帯出身。アミエーラの近所のおばさんの息子。
祖母と母、足が不自由な姉とモーフの四人家族。父は、かなり前に工場の事故で亡くなった。
以前は工場などの下働きで家計を支えた。自分の年齢さえはっきりしない。
貧しい暮らしに嫌気が差し、家出してキルクルス教徒の団体「星の道義勇軍」に入った。
◆隊長 ソルニャーク 呼称は「雑草」の意。
力なき陸の民。キルクルス教徒。おっさん。冷静な判断力を持つ知識人。
星の道義勇軍・第三小隊の隊長。モーフたちの上官。狂信はせず、自爆攻撃には否定的。
陸の民らしい大地と同じ色の髪に彫の深い精悍な顔立ち。空を映す湖のような瞳は、強い意志と知性の光を宿す。
半世紀の内乱以前は、自治区外に居住。
内乱終結後、家族と共に自治区に移住した。両親は農業技術者として、自治区西部の開拓を指導し、緑地を整備して住民に解放した。
両親と弟二人が理不尽な理由で殺され、唯一人逃げ切って生き延びた隊長は、当時十六歳。バラック地帯に身を隠し、工場で働いて暮すようになった。
◆元トラック運転手 メドヴェージ 呼称は「熊」の意。
力なき陸の民。キルクルス教徒。星の道義勇軍の一兵士。おっさん。
リストヴァー自治区のバラック地帯出身。歌が上手い。
以前はトラック運転手として、自治区と隣接するゼルノー市グリャージ区の工場を往復した。
仕事で重傷を負い、ゼルノー市立中央市民病院への入院経験がある。入院中に妻子を亡くし、キルクルス教徒の団体「星の道義勇軍」に入った。
■アミエーラの関係者■
★仕立屋の店長 クフシーンカ 呼称は「睡蓮」の意。
力なき陸の民。キルクルス教徒。一人暮らしの老婆。気前がいい。
リストヴァー自治区の団地地区で、仕立屋を営む。
アミエーラの祖母フリザンテーマの親友。存命中はお互いに助け合った。
リストヴァー自治区選出の国会議員ラクエウスの姉。議員への繋ぎ役として一目置かれ、顔が広い。
★ラクエウス議員 現在の呼称は「罠」の意。
力なき陸の民。敬虔なキルクルス教徒。老人。クフシーンカの弟。
ネモラリス共和国リストヴァー自治区出身の国会議員。無党派。自治区の発展の為、尽力する政治家。
空襲後、調査団を組織し、ネーニア島東部の現地調査を行った。
◆フリザンテーマ 呼称は「菊」の意。
力ある陸の民。フラクシヌス教徒。アミエーラの祖母。
クフシーンカの幼馴染で親友。
夫は力なき陸の民でキルクルス教徒。内戦終了後はリストヴァー自治区に移住した。魔法使いであることを隠す為、知人の居ないバラック地帯で暮らす。アミエーラが幼い頃に死亡。
◆カリンドゥラ
力ある陸の民。長命人種。
アミエーラの祖母フリザンテーマの姉。仕立屋の店長クフシーンカの幼馴染。
無事なら現在もネモラリス島に居る筈。
■ネモラリス政府軍■
★ルベル 呼称は「赤」の意。髪の色から呼ばれる。
力ある陸の民の男性。フラクシヌス教徒。実家はネモラリス島北東部のウーガリ山中にあるアサエート村。
ごつい体格で厳つい顔。「怒ってるの?」と聞かれやすい顔立ちのせいか、恋人などは居ない。
ネモラリス政府軍の魔装兵。兵学校を卒業して数年の若者。
ネーニア治安部隊の隊員だったが、テロ鎮圧作戦中に戦争が始まり、急遽、水軍の守備隊に転属させられる。
軍用魔道機船に乗り組み、見張りとして空襲の警戒にあたる。末端の兵卒。【飛翔する蜂角鷹】学派の術を修め、偵察などを主な任務とする戦闘員。
魔哮砲の正体に疑問を抱く。
軍服は魔法の【鎧】。
■無所属■
★市民病院の呪医 セプテントリオー 呼称は「北極星」の意。
湖の民の男性。フラクシヌス教徒。髪と瞳は緑色。
長命人種なので若く見える。外見は三十代前半くらい。実年齢は四百歳以上。
ゼルノー市立中央市民病院に勤務する唯一の呪医。【青き片翼】学派を修め、主に外科領域の治療を担当。
オリョールの説得に応じ、アーテル共和国領ランテルナ島にあるゲリラの隠れ家に行く。
ラキュス・ラクリマリス王国時代の生まれ。元・フナリス群島の島民。半世紀の内乱中に一族を殺され、家名は捨てた。
白衣には魔法の防護が多重に掛かり、魔法の【鎧】並に頑丈。
◆葬儀屋 アゴーニ 呼称は「火」の意。
湖の民の男性。フラクシヌス教徒。髪と瞳は緑色。【導く白蝶】学派を修めた葬儀屋。口は悪いが人情に厚く、割と面倒見がいい。
死は誰にでも平等に訪れるので、なるべく分け隔てなく遺体の処理をしたいが、優先順位をつけざるを得ない場合もあり心苦しく思う。
オリョールの説得に応じ、アーテル共和国領ランテルナ島にあるゲリラの隠れ家に行く。
商売柄、服には【魔除け】や【退魔】など呪文の刺繍がある。自前の魔力が尽きない限り、着用中は常時、それらの術で守られる。
■ネモラリス人の武闘派ゲリラ■
◆警備員 オリョール 呼称は「狗鷲/勇士」の意。
力ある陸の民の男性。髪と瞳は明るい土色。二十代半ばくらい。
医療産業都市クルブニーカの製薬会社に雇われた警備員。森へ素材採取へ行く薬師の護衛だった。【急降下する鷲】学派の術を修めた魔法戦士。
現在は、ネモラリス人の有志ゲリラに参加し、ランテルナ島を拠点にアーテル領内で破壊工作を行う。
◆ゲリラ兵 クリューヴ 呼称は「嘴」の意。
力ある陸の民の男性。ネモラリス人の有志ゲリラ。
ランテルナ島を拠点にアーテル領内で破壊工作を行う。
負傷して拠点で伏せるが、セプテントリオーに助けられた。
■ラクリマリス王国人■
◆ドーシチ市商業組合長 ラトゥーニ 呼称は「真鍮」の意。
力ある陸の民。年配の男性。長命人種。大富豪。
ラクリマリス王国西部にあるドーシチ市の商業組合長。
甥のアウセラートルを後継者と定め、商業組合の業務を補佐させる。
◆契約者アウセラートル 呼称は「鷹匠」の意。
力ある陸の民。大柄な男性。長命人種。外見は三十代半ば程度。外見の厳つさに似合わず腰が低い。
ラクリマリス王国西部にあるドーシチ市の商業組合長ラトゥーニの甥。
【渡る白鳥】学派の術を修め、伯父を補佐する。




