0159.荷物の搬入出
トラックに戻ると、工員クルィーロの他、高校生のロークとパン屋のレノも荷台に上がって、太いコードを束ねる最中だ。
ソルニャーク隊長とメドヴェージのおっさんが、束ねたコードを二巻ずつ抱えて国営放送ゼルノー支局の廃墟に入る。
小学生二人の姿は見えない。
「お兄ちゃん、ティスとアマナちゃんは?」
「トラックの前にある小さい破片を片付けてもらってるんだ」
「後、重い機材ばっかだから、君らもそっち手伝ってくれよ」
クルィーロとレノが答えると、ピナはトラックの前に回った。湖の民の薬師もそちらを手伝いに行く。
残った少年兵モーフは、レノとロークからコードを一巻ずつ受け取り、放送局へ取って返した。
何故、魔法使いのクルィーロが場を仕切るのかわからない。だが、隊長とおっさんが何も言わずに従うので、モーフも黙ってそれに倣った。
そうやって、コード、アンプ、スピーカー、マイクなどを次々と運び出し、イベントトラックの荷台がほぼ空になった。
小部屋に近いスピーカーが一機だけ、ネジで床に固定されて動かない。
「ま、こんくらいでいいだろ」
金髪の魔法使いは、ツナギの袖で額の汗を拭って荷台を下りた。
スピーカーの他、床置き型の照明も四つ残る。
「会議室にあった折り畳み式の長机、あれを四つ入れましょう」
「そんなの持ってって、どうすンだ?」
少年兵モーフは、堪え切れなくなって魔法使いの工員に聞いた。
魔法使いの工員クルィーロが荷台を指差して答える。
「床に直接置いたんじゃ、たくさん積めないだろ?」
「普通は、中に荷物を整理して積める棚や台車があるんだがな」
メドヴェージに補足され、モーフにも何となく想像がついた。
「机を棚の代わりにするんだ?」
「うん。脚同士をガムテープで固定して……」
脚をがっちり固定して、長机四台を一体化する。
荷物は段ボールや袋に収納して、机の下には重い物、上に軽い物、天板下の棚には細かい物を置く。
荷物を取り出しやすく、落ちた時に危険がないようにそう積むのだと言う。
ベッド代わりの長椅子も、同様に二脚ずつ一体化する。
「椅子ベッドは、ギリギリ二台は乗せられるかな」
モーフが頷いてみせると、魔法使いの工員クルィーロは、少年兵の肩をポンと叩いて作業を促した。
魔法使いに気安く触られたが、特に嫌悪感はない。
理由はわからないが、今は目の前の作業を急いだ。
☆ベッド代わりの長椅子……「0110.廃墟を調べる」参照




