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すべて ひとしい ひとつの花  作者: 髙津 央
第八章 北へ

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157/3505

0157.新兵器の外観

 防空艦レッススの甲板は真っ暗だった。

 敵機から新兵器【魔哮砲(まこうほう)】を隠す為に【幻術】で闇を作ったのか。


 ……いや、違う。


 魔装兵ルベルは船室で一人、首を横に振った。【遠望】の眼に【幻術】は効かない。本当に闇がそこにあるのだ。

 闇を中心に【遠望】の視点を動かした。上下左右、全て完全な黒。光を通さないそれはトラック程度の塊だ。周囲の様子は普通に見える。


 哨戒任務で、敵機の警戒などに使用する【飛翔する蜂角鷹(ハチクマ)】学派の【索敵】の視線は、雲などの遮蔽物(しゃへいぶつ)を何度でも透過し、肉体を持たない魔物なども視認する。強力な分、魔力の消耗も激しい。


 今、個人的に使う【遠望】の視線は、同じ【飛翔する蜂角鷹(ハチクマ)】学派の術だが、遮蔽物を手前のひとつしか越えられない。船の装甲を越えた後は霧にも遮られる。


 ルベルは首を傾げ、赤毛の頭を掻いた。

 ほんの軽い気持ちで使った【遠望】では、闇の中身までは見えないのだ。


 闇の(そば)に何人も兵士がつく。

 一人は、軍服の(えり)に【花の耳】の花弁(はなびら)がひとつ見えた。その顔に緊張が走り、魔法の通信機から送られる声に耳を(そばだ)てる。

 どうやら、ルベルと交替した見張りから敵襲の報が入ったらしい。


 ルベルは寝台に腰掛けたまま姿勢を正した。視覚を拡大する【遠望】の術では、音声まではわからない。

 通信兵が何事か早口に告げると、闇の(かたわ)らに(ひか)える兵が動いた。闇に向き直る。



 ルベルは【遠望】の角度を変えた。

 その兵は身振りを交え、何事か指図するようだ。

 闇が、動いた。

 のっぺりとした黒い塊が、生物的な動きで波打ち伸び上がる。


 人の背丈の三倍くらいに伸びると、その先端が膨らんだ。丸く、広い。ルベルは兵学校の教本で見た「パラボラアンテナ」を連想した。

 それは、アーテルの方角を向いて動きを止めた。

 闇に指示を出した兵と【花の耳】の一部を持つ通信兵も同じ方角を注視する。


 通信兵が口を開いた。直後に別の兵の口も動く。

 アンテナの正面が青白く光った。光はすぐに消え、闇の塊がふにゃふにゃと脱力して元の形に戻る。

 ルベルには、疲れた生き物が(うずくま)ったように思えた。


 ……あれが……【魔哮砲(まこうほう)】……?


 心が乱れ、【遠望】の術が切れる。

 魔装兵ルベルはベッドに横たわり、酷使して熱を帯びた目を閉じた。

☆防空艦レッススの甲板……「0154.【遠望】の術」参照


 挿絵(By みてみん)

【飛翔する蜂角鷹ハチクマ】学派の魔法戦士の証。

 直接、魔物などを倒す術よりも仲間を守る術が多い。

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野茨の環シリーズ 設定資料
シリーズ共通設定の用語解説から「すべて ひとしい ひとつの花」関連の部分を抜粋。
用語解説01.基本☆人種など、この世界の基本
用語解説02.魔物魔物の種類など
用語解説05.魔法☆この世界での魔法の仕組みなど
用語解説06.組合魔法使いの互助組織の説明
用語解説07.学派【思考する梟】など、術の系統の説明
用語解説15.呪歌魔法の歌の仕組みなど
用語解説11.呪符呪符の説明など
用語解説10.薬品魔法薬の説明など
用語解説08.道具道具の説明など
用語解説09.武具武具の説明など
用語解説12.地方 ラキュス湖☆ラキュス湖周辺の地理など
用語解説13.地方 ラキュス湖南 印暦2191年☆「すべて ひとしい ひとつの花」時代の地図と説明
用語解説19.地方 ラキュス湖南 都市☆「すべて ひとしい ひとつの花」時代の都市と説明
地名の確認はここが便利
用語解説14.地方 ラキュス湖南 地理☆湖南地方の宗教や科学技術など
用語解説18.国々 アルトン・ガザ大陸☆アルトン・ガザ大陸の歴史など
用語解説20.宗教 フラクシヌス教ラキュス湖地方の土着宗教の説明。
用語解説21.宗教 キルクルス教世界中で信仰されるキルクルス教の説明。
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