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すべて ひとしい ひとつの花  作者: 髙津 央
第四十二章 切断

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第四十二章 あらすじと人物紹介

★第四十二章 切断 あらすじ

 小説「冒険者カクタケア」シリーズがアーテル共和国外へ拡散する。

 ネモラリス共和国の外交官らは駐在国でワクチンの調達に奔走する。

 アーテル共和国内で、インターネット回線が使用不能になった。


 ◆一行目は呼称。

 用語と地名は「野茨の環シリーズ 設定資料」でご確認ください。

 【思考する梟】などの術の系統の説明は、「野茨の環シリーズ 設定資料」の「用語解説07.学派」にあります。


★登場人物紹介

 ■移動販売店見落とされた者(プラエテルミッサ)

 FMの認可を取りつけ、現在は移動放送局としてネモラリス島内で放送する。


 ◆湖の民の薬師(くすし) アウェッラーナ 呼称は「(ハシバミ)」の意。

 湖の民の女性。フラクシヌス教徒。髪と瞳は緑色。

 隔世遺伝で一族唯一の長命人種。外見は十五~十六歳(実年齢は六十歳前)

 実家は、ネーニア島のゼルノー市ジェリェーゾ区で漁業を営む。

 星の道義勇軍のテロで入院中の父を殺され、兄以外の家族と親戚は行方不明。

 ゼルノー市ミエーチ区にあるアガート病院に勤務する薬師(くすし)

 半世紀の内乱中、医療者から癒しの術を断片的に教わったが、戦後、改めて大学に通い、系統立てて学習し直した。

 使える術の系統は【思考する(フクロウ)】【青き片翼(かたよく)】【(すなど)伽藍鳥(ペリカン)】【霊性の(ハト)

 魔法薬だけでなく、食糧調達の面でもみんなの命綱。

 薄手のコートを着用。裾や袖に力ある言葉の刺繍があり、【耐寒】などちょっとした防護の術が掛かる。

 真名(まな)は「ビィエーラヤ・オレーホヴカ・リスノーイ・アレーフ」


 ◆老漁師 アビエース 呼称は「(モミ)/船/槍」の意。

 湖の民。フラクシヌス教徒。髪と瞳は緑色。常命人種。六十代前半。

 アウェッラーナの兄。【(すなど)伽藍鳥(ペリカン)】学派の術を修めた漁師。ゼルノー漁協所属の漁船「光福三号」の船長。湖上無線通信士の免許を持つ。

 開戦前までは、ネーニア島のゼルノー市ジェリェーゾ区で漁業を営む。

 星の道義勇軍のテロ直後から、妻子と甥たちと共に行方不明だった。他の身内はネミュス解放軍に合流すると主張。光福三号を乗っ取り首都へ向かう。

 唯一人反対したアビエースはネモラリス島内を転々とし、ヴィナグラート市の水産加工場で働いていたところ、アウェッラーナと再会。移動販売店プラエテルミッサに加わった。


 ◆パン屋の青年 レノ 呼称は髪色と足の速さに因む「馴鹿(トナカイ)」の意。

 力なき陸の民。フラクシヌス教徒。十九歳。濃い茶髪の青年。

 ネーニア島のゼルノー市スカラー区にあるパン屋「椿屋」オレオール家の長男。

 両親と妹二人の五人家族だった。帰還難民センターの【明かし水鏡(みかがみ)】で父の死亡と母の存命を知るが、母は所在不明。

 パン屋の修行中。仕事柄、料理が得意。食べられる雑草に詳しい。勉強はあまり得意ではない。

 テロと戦争で店と父を失い、妹と親友たちと共に助け合って避難生活を送る。

 力なき民にも使える術の存在を知り、少しでも魔法を使えるようになりたい。

 妹たちを守る為、ソルニャーク隊長と少年兵モーフから銃の扱いを教わる。武闘派ゲリラの後方支援で呪符職人を手伝ったが、実働部隊には加えられなかった。

 移動販売店見落とされた者(プラエテルミッサ)の店長。


 ◆ピナティフィダ(愛称 ピナ) 生まれた時期に咲く花の名が呼称。

 力なき陸の民。フラクシヌス教徒。中学生。二年三組。濃い茶髪。

 レノの妹、エランティスの姉。しっかりしたお姉さん。家事全般が得意。

 その時その場で必要な教えを乞うて理解し、実践できる判断力と行動力がある。

 幼い頃から家業のパン屋を手伝い、菓子作りが上手く、商売のコツも心得る。

 針子のアミエーラに裁縫、呪医セプテントリオーに力なき民でも使える呪歌【癒しの風】を教わる。

 パドールリクらと共に首都を脱出。星の道義勇軍と放送局の二人と合流した。


 ◆エランティス(愛称 ティス) 生まれた時期に咲く花の名が呼称

 力なき陸の民。フラクシヌス教徒。小学生。五年二組。濃い茶髪。

 レノとピナティフィダの妹。アマナの同級生。真面目で大人しい性格。

 兄と同じで勉強はあまり得意ではなく、うっかり失言しがち。

 母と姉に教わって家事や家業を手伝い、パンやクッキーを作れる。

 針子のアミエーラに裁縫、呪医セプテントリオーに力なき民でも使える呪歌【癒しの風】を教わる。

 首都脱出の際、爆発に巻き込まれ、片足の足首から先を切断。王都ラクリマリスの施療院に入院して治療を受ける。退院後、移動放送局プラエテルミッサと合流した。


 ◆パン屋のおかみ ファリナ・オレオール 呼称は「麦粉」の意。

 力なき陸の民。フラクシヌス教徒。濃い茶色の髪。

 ネーニア島のゼルノー市スカラー区にあるパン屋「椿屋」のおかみ。

 星の道義勇軍のテロから避難する際、家族とはぐれて行方不明。光福三号に拾われ、トポリ市まではアウェッラーナの一族と時計屋、乾物屋と共に避難した。

 漁師アビエースの情報によると、ネーニア島トポリ市郊外の政府軍基地の食堂で働くらしい。


 ◆工員 クルィーロ・オルラーン 呼称は「翼」の意。

 力ある陸の民。フラクシヌス教徒。工場勤務の青年。二十歳。金髪。

 パン屋の息子レノの幼馴染で親友。ゼルノー市スカラー区在住。

 隔世遺伝で、家族の中で一人だけ魔力がある。魔法使いだが修行を怠り、使える術の系統は【霊性の(ハト)】が少しだったが、開戦後は改めて勉強し直し、使える術を増やす。

 機械に興味があるので、ゼルノー市グリャージ区のジョールトイ機械工業の音響機器工場に就職。アマチュア無線の免許を持つ。

 両親と妹のアマナとの四人家族だった。

 帰還難民センターの【明かし水鏡(みかがみ)】で母の死亡を知る。本社の社宅に身を寄せる父と再会を果たした。

 ランテルナ島で、呪医セプテントリオーに防禦魔法【不可視(みえず)の盾】と呪歌【癒しの風】を教えてもらった。

 基地襲撃作戦からの帰還直後、武闘派ゲリラに襲われたアミエーラを助けた。

 移動販売店の面々と共に首都を脱出、星の道義勇軍と放送局の二人と合流した。

 アウェッラーナが教え子からもらった最下級の【耐寒】【耐暑】【衝撃緩和】などの防護の術が掛かったマントを譲られ、しばらくは作業服やTシャツの上にマントを羽織るヘンな恰好で過ごす。

 フィアールカがタブレット端末と共に「普通の服に見えるが、防護の術が掛かった服」を用意してくれた。


 ◆アマナ・オルラーン 生まれた時期に咲く花の名が呼称

 力なき陸の民。フラクシヌス教徒。クルィーロの妹。金髪。

 小学生。五年二組。エランティスの同級生。ゼルノー市スカラー区在住。

 家のお手伝いを積極的にするいい子。勉強家。

 音楽と魔術の融合に興味があり、【歌う鷦鷯(ミソサザイ)】学派の解説書などを読む。

 針子のアミエーラに裁縫、呪医セプテントリオーに力なき民でも使える呪歌【癒しの風】を教わる。

 本を読むのが好き。


 ◆パドールリク・オルラーン 呼称は「狗鷲(イヌワシ)」の意。

 力なき陸の民。フラクシヌス教徒。クルィーロとアマナの父。金髪。

 ゼルノー市スカラー区在住。会社員。出張が多い。テロと戦争が始まった当時は首都クレーヴェルに出張中だった。

 移動販売店の面々と共に首都を脱出、星の道義勇軍と放送局の二人と合流した。

 首都脱出直前に退職。現在は無職で移動放送局を手伝う。

 力なき民だが、半世紀の内乱中は呪符で戦った経験があり、幾つか【急降下する鷲】学派の呪文を知る。


 ◆お針子 アミエーラ 呼称は「宿り木(ヤドリギ)」の意。

 陸の民。キルクルス教徒。十九歳の女性。金髪。青い瞳。仕立屋のお針子。

 リストヴァー自治区のバラック地帯出身。泥棒が同情するレベルの赤貧。

 工員の父親と二人暮らし。祖父母と母と弟妹は病死。弟妹はみんな幼い頃に亡くなり、人数も憶えていない。

 母方の祖母が力ある民。隔世遺伝で魔力を持つが、知識がない為、魔法を使えなかった。

 力なき民のフリをしてキルクルス教徒として生きるか、信仰を捨て力ある民として生きるか迷う。

 王都ラクリマリスで大伯母カリンドゥラと出会う。力ある民であることを受け容れ、移動販売店と別れて大伯母と行動を共にする。

 ラクエウス議員らの直接の武力に依らずラキュス湖南地方に平和を取り戻す活動に協力、アミトスチグマに移動。

 現在は魔法の修行中。縫製技術を活かし【編む葦切】学派を修めるか、大伯母と同じ【歌う鷦鷯】学派を修めるか思案中。

 自治区では、魔術的な真名を名づける習慣がない。アミエーラは父が付けた名。

 母が付けた真名(まな)は「イフェイオン・ユニフローラム・ステルラ・カエルラ」


 ◆少年 ローク・ディアファネス 呼称は「角」の意。

 力なき陸の民。商業高校の男子生徒。十七歳。一人息子。

 ゼルノー市セリェブロー区在住。家族とは相容れなくなり、家出。

 ネーニア島のリストヴァー自治区外で暮らす隠れキルクルス教徒。

 両親は、隠れキルクルス教徒の信者団体役員。祖父は隠れキルクルス教徒を束ねる司祭のような立場。祖父と両親を卑怯と思いつつ、その庇護に甘んじた自分を恥じる。

 信仰繋がりでベリョーザと婚約させられる。家族の手前、仕方なく仲が良いフリをするが、表面的な付き合い。

 中学校で仲良くなったヴィユノークたちとは、家族に知られないよう、こっそり友達付き合いを続けた。

 毎週、休日礼拝に参加させられ、自治区の様子を聞かされた。祖父ら隠れ信徒と自治区の過激派が結託したテロ計画を知りながら、漫然と放置した。

 保身に走り、後悔しがち。

 ソルニャーク隊長とメドヴェージには、当初からキルクルス教徒であると見抜かれていた。

 ソルニャーク隊長に銃の扱い方を教わる。武闘派ゲリラのアクイロー基地襲撃作戦に加えられ、管制塔襲撃部隊の一員として戦った。

 呪医セプテントリオーに力なき民でも使える呪歌【癒しの風】を教わる。

 友達のヴィユノークが作ってくれた【魔除け】の護符、【魔道士の涙】を所持。アウェッラーナの教え子からもらった【不可視(みえず)の盾】の手袋を左手だけ装備。

 戦争を終わらせる為、レーチカ市に避難した家族の許へ行き、隠れキルクルス教徒の議員らの情報収集をする。

 星の標によってルフス神学校に送られ、従うフリをして聖職者クラスでアーテルの情報を収集する。

 冬休み、同級生のスキーヌムを唆してランテルナ島に脱出。ゲンティウスの呪符屋でアルバイトをして生計を立てつつ、運び屋フィアールカの依頼でアーテル本土の情報を収集する。

 ラゾールニクから紹介された同志クラウストラと行動を共にすることが増えた。


 ◆呪医 セプテントリオー・ラキュス・ネーニア 呼称は「北極星」の意。

 湖の民の男性。髪と瞳は緑色。フラクシヌス教徒。長命人種で外見は三十代前半くらい。【青き片翼】学派を修めた呪医。

 ゼルノー市立中央市民病院に勤務。主に外科領域を担当。

 移動販売店見落とされた者(プラエテルミッサ)の一行に【不可視(みえず)の盾】や呪歌【癒しの風】などを教えた。

 説得に応じ、アゴーニと共にランテルナ島で武闘派ゲリラに協力したが、ある事件をきっかけに(たもと)を分かつ。

 スニェーグに王都ラクリマリスに来るよう言われたが、先にゼルノー市の様子を見に行く。ラクリマリス領への移動中、リストヴァー自治区に立ち寄る。クフシーンカ店長に託された針子のサロートカと共に、ラクエウス議員・針子のアミエーラ宛の手紙を携えて自治区を出る。

 王都でシェラタン当主に協力を求められたが拒絶し、ラクエウス議員らの活動に参加する。

 ラキュス・ラクリマリス王国時代から生き、実年齢は四百歳以上。王国時代は軍医で、クロエーニィエと同じ騎士団に所属した。

 元・フナリス群島の島民。ラキュス・ネーニア家の遠縁の分家。半世紀の内乱中に一族を殺され、「ラキュス・ネーニア」の家名は捨てた。

 ラクエウス議員らと共に、直接の武力に依らず、湖南地方に平和を取り戻す活動に参加、難民キャンプでの医療支援に従事する。

 難民キャンプがある程度落ち着いた現在は、移動放送局プラエテルミッサと行動を共にする。


 ◆葬儀屋 アゴーニ 呼称は「火」の意。

 湖の民の男性。髪と瞳は緑色。フラクシヌス教徒。長命人種。【導く白蝶】学派の術を修めた葬儀屋。

 口は悪いが人情に厚く、割と面倒見がいい。

 死は誰にでも平等に訪れるので、なるべく分け隔てなく遺体の処理をしたいが、優先順位をつけざるを得ない場合もあり心苦しく思う。

 説得に応じ、セプテントリオーと共にランテルナ島にあるゲリラの隠れ家に身を寄せる。アーテル本土の拠点を破壊されてからは、オリョールたちを案じつつ、食糧調達などを手伝ったが、ある事件をきっかけに袂を分かつ。

 その後、単独で情報収集に奔走。アミトスチグマやアーテル、ネモラリス島などを転々とする。

 クーデターを機に首都クレーヴェルを脱出。レーチカ市内に潜伏中、星の道義勇軍の三人と出会い、合流した。

 商売柄、服には【魔除け】や【退魔】などの呪文を刺繍してある。自前の魔力が尽きない限り、着用中はそれらの術が常に葬儀屋を守る。

 実年齢は五百歳以上。ラキュス・ラクリマリス王国時代生まれ。王国軍に協力したことがあり。軍医としてのセプテントリオーを噂で耳にした。

 現在は、移動放送局プラエテルミッサと行動を共にする。


 ◆DJ レーフ 芸名は「獅子」の意。

 力ある陸の民。男性。金髪。フラクシヌス教徒。ネモラリス人。

 FMクレーヴェルのDJ。二十代前半くらい。総合無線通信士の免許を所持。

 FMクレーヴェルは、半世紀の内乱前からある老舗のFM放送局。本社スタジオは、首都クレーヴェルの樫の木通りに所在する。

 クーデターの戦闘に巻き込まれ、家族と住まいを同時に失った。

 ネモラリス政府軍が放送局を押さえるどさくさに紛れ、局の車でスタッフ数名と共に首都を脱出した。

 ウーガリ古道の休憩所で出会った星の道義勇軍らと行動を共にする。

 ラクリマリス王国のAMシェリアクで、特番「花の約束」のDJを務めた。


 ◆アナウンサー ジョールチ 呼称は「ドングリ」の意。

 力ある陸の民。男性。黒髪。五十代前半。フラクシヌス教徒。ネモラリス人。

 国営放送の首都クレーヴェル本局のアナウンサー(声だけ第一章「005.通勤の上り坂」から登場)

 数年前に調査報道の一線から退く。総合無線通信士の免許を所持し、放送機材の扱いも心得る。

 クーデターの戦闘に巻き込まれ、本局のスタジオから命からがら脱出した。個人でも報道の使命を果たすべく、首都内部を【跳躍】で移動しながら情報収集。

 DJレーフの車に拾われ、ウーガリ古道の休憩所で出会った星の道義勇軍らと行動を共にする。

 家族はクーデターの戦闘に巻き込まれ全滅した。

 報道人の使命を全うする為なら命も惜しくない。


 ■星の道義勇軍■

 星の道義勇軍は元々テロ組織ではなく、リストヴァー自治区の生活向上を目指す奉仕団体だった。


 ◆少年兵 モーフ 呼称は「苔」の意。

 力なき陸の民。キルクルス教徒。年齢は本人も知らず十五~十六歳くらい。

 星の道義勇軍の少年兵。リストヴァー自治区のバラック地帯出身。

 アミエーラの近所のおばさんの息子。父は大火以前に事故で死亡。祖母と母、足が不自由な姉とモーフの四人家族だった。

 貧しさ故に最終学歴は小学校中退。

 工場などで下働きをして生活費を稼いだ。貧しい暮らしに嫌気が差し、家出してキルクルス教徒の団体「星の道義勇軍」に入った。

 自治区を出て、フラクシヌス教徒や魔法使いと共に避難生活を送る内に考えが変わる。

 ネモラリス人の武闘派ゲリラに銃の扱い方を教えた。アクイロー基地襲撃作戦に加わり、陽動部隊の一員として警備員オリョールと共に戦った。基地襲撃作戦からの帰還直後、武闘派ゲリラに襲われたピナティフィダを助ける。

 現在は、移動放送局プラエテルミッサと行動を共にする。


 ◆隊長 ソルニャーク 呼称は「雑草」の意。

 力なき陸の民。キルクルス教徒。星の道義勇軍・第三小隊の隊長。モーフたちの上官。四十代半ばのおっさん。

 知識人。冷静な判断力を持つ。狂信せず、自爆攻撃には否定的。

 陸の民らしい大地と同じ色の髪に彫の深い精悍な顔立ち。空を映す湖のような瞳は、強い意志と知性の光を宿す。

 ウーガリ山脈の麓にある農村出身。内乱終結後、家族と共に自治区へ移住した。

 両親は農業技術者として自治区西部の開拓を指導し、緑地を整備して住民に解放したが、両親と弟二人は殺された。

 唯一人生き残ったソルニャークは当時十六歳。バラック街に身を隠し、工場で働いて暮す。

 ネモラリス人の武闘派ゲリラに銃の扱い方を教えた。アクイロー基地襲撃作戦では、管制塔襲撃部隊の指揮を執り戦った。

 当初からファーキルをアーテル人、ロークをキルクルス教徒と見抜いたが、黙っていた。

 現在は、移動放送局プラエテルミッサと行動を共にする。


 ◆元トラック運転手 メドヴェージ 呼称は「熊」の意。

 力なき陸の民。キルクルス教徒。星の道義勇軍の一兵士。おっさん。

 リストヴァー自治区のバラック地帯出身。

 以前はトラック運転手として、自治区と隣接するゼルノー市グリャージ区の工場を往復した。

 労災で重傷を負い、ゼルノー市立中央市民病院への入院経験がある。

 入院中に妻子を亡くし、キルクルス教徒の団体「星の道義勇軍」に入った。

 少年兵モーフを目に掛け、我が子のように可愛がるが、不器用な愛情表現はモーフにあまり伝わらず、鬱陶しがられる。

 歌が上手い。みんなに「国民健康体操」を教える。

 手先も器用で蔓草細工を作り、街で食糧などと交換する。手仕事の職人としてクロエーニィエと意気投合する。

 ファーキルがアーテル人で、ロークがキルクルス教徒であると見抜いたが、黙っていた。

 現在は、移動放送局プラエテルミッサと行動を共にする。


 ■ネットとリアルで活動する者■


 ◆ファーキル 呼称は「松明(たいまつ)」の意。

 力なき陸の民。キルクルス教徒。男子中学生。十五歳。魔術マニア。

 アーテル共和国北部イグニカーンス市の市民。

 ぱっとしない外見で大人しく、頭はいいが、親と同級生から(ないがし)ろにされ、学校でいじめられる。

 違法に接続したインターネットで、国内外の情勢と魔術について知り、行動を起こす。僅かな荷物とヤミで手に入れたタブレット端末だけを持って、単身ネーニア島に渡った。

 危険故に他国の報道機関も立ち入らない廃墟に足を踏み入れ、写真をSNSに公開し、空襲被害の惨状を伝える。

 ネモラリス共和国の北ザカート市付近で移動販売店の一行と出会い、しばらく行動を共にするが、王都ラクリマリスで別れ、ラゾールニクらと共に情報支援活動を行う。

 アーテル共和国人だが、ラクリマリス王国のグロム市民であると偽る。

 ソルニャーク隊長とメドヴェージには当初から嘘を見抜かれていた。運び屋フィアールカと呪符屋のゲンティウス店長は元より知るが、口外しなかった。

 呪医セプテントリオーに力なき民でも使える呪歌【癒しの風】を教わる。

 コートとマフラー、【魔道士の涙】と呪文をまとめた手帳を所持。

 呪符屋にもらった魔法の手袋は、右が【退魔】、左は【不可視(みえず)の盾】の術を使う為の補助具。

 SNSなどのアカウント名は、全て「真実を探す旅人」で統一。

 アーテル共和国が報道しない真実を伝える為なら、命を捨てても構わない。

 真実を伝える為に、ファーキル自身は身元を偽り続けると言う矛盾を抱える。

 移動販売店の面々と別れた後、改めて、ラクエウス議員らの「直接の武力に依らず、ラキュス湖南地方に平和を取り戻す活動」に情報支援員として参加する。


 ◆情報ゲリラ ラゾールニク 呼称は「露草(つゆくさ)」の意。

 力ある陸の民の男性。金髪。露草色の瞳。印象の薄い地味な顔立ち。

 ネモラリス人の有志ゲリラ。アーテルの市井に紛れ、情報収集を行う。

 武闘派との情報伝達の不備で甚大な被害が発生した反省から、時折、治療拠点に派遣される。

 タブレット端末を使いこなし、インターネットと国際情勢に詳しい。

 偽の記者証を使い、フリージャーナリストのフリで情報収集を行うこともある。

 現在はラクエウス議員らと共に、直接の武力に依らず、湖南地方に平和を取り戻す活動に参加する。


 ◆運び屋 フィアールカ 呼称は「(スミレ)」の意。

 湖の民の女性。外見は二十代半ばだが、長命人種なので実際にはかなりの高齢。

 ランテルナ島の地下街チェルノクニージニクにある呪符屋を拠点にする。

 魔法使いだが、タブレット端末を使いこなすなど、科学文明にも馴染む。

 かつては、湖の女神パニセア・ユニ・フローラに仕える神官として、ネーニア島西部に位置する南ザカート市の神殿に勤めた。(外伝「明けの明星」参照)

 半世紀の内乱で南ザカート神殿が喪われ、王都ラクリマリスに異動になる。

 内乱終結後、アーテル領で生まれた力ある民やランテルナ島民をラクリマリス領に逃がす「運び屋」の活動を始める。

 魔法に頼らねば生きて行けないラキュス湖地方では、無用の争いを招くキルクルス教の教えは不要だと主張。

 現在はラクエウス議員らと共に、直接の武力に依らず、湖南地方に平和を取り戻す活動に参加する。


 ◆同志クラウストラ 呼称は「(かんぬき)、遮断物」の意。

 黒髪の女性。力ある陸の民。深い藍色の瞳。長命人種。外見は高校生くらい。

 ラゾールニクたち同様、直接の武力に依らず、湖南地方に平和を取り戻す活動に参加。様々な学派の魔法とタブレット端末を使いこなす。

 アーテル共和国領内で女子高生のフリをして情報収集をする。

 作戦毎に容姿を【化粧】の首飾りで変更する。ロークとの待ち合わせの目印として、青い薔薇の髪飾りを着けた。

 ファクスと言う偽名を使う。


 ■無所属■


 ◆ラキュス・ネーニア家の当主 シェラタン

 湖の民の女性。長命人種。フラクシヌス教徒で湖の女神派。ネーニア家の当主。

 ラキュス・ネーニア家は、旧ラキュス・ラクリマリス王国時代、陸の民の王家ラクリマリス家と共同統治を行った。

 共和制移行時に下野して一般国民となり、半世紀の内乱で国が分割された後も変わらず、公式の場に姿を見せなかった。

 【贄刺(にえさ)百舌(もず)】学派の術を修めた儀式魔術の管理者。

 開戦後、アーテル空軍の大編隊を迎撃するなどネモラリス政府軍に協力したが、クーデター勃発後、王都ラクリマリスの大神殿に身を寄せ、世間から姿を隠す。

 呼称のシェラタン・ラキュス・ネーニアは広く国民に知られる。

 呼称のシェラタンは星の名「合図」に由来する。

 家名のラキュスは「湖/水/墓」の意だが、この地方では、湖の女神の涙の神話から「涙」の意も持つ。ネーニアは「歌/呪文/悲歌/挽歌/子守唄」の意。


 ◆警備員 ジャーニトル 呼称は「門番」の意。

 湖の民の男性。緑髪で緑の瞳。科学文明についてはあまり詳しくない。

 元は森へ素材の採取へ行く薬師の用心棒だった。【急降下する(ワシ)】学派の術を修めた魔法戦士。

 ネモラリス人の有志ゲリラ。アーテル領内で破壊工作を行う。

 アーテル本土の拠点を破壊されてからは、ネモラリス領の北ザカート市の廃墟に移動。森林地帯で魔獣などを狩り、呪符や魔法の道具の素材を集め、武力を蓄えていた。

 アクイロー基地襲撃作戦では、管制塔襲撃部隊の一員として戦い、負傷した。

 政府軍がアーテル本土の攻撃を開始したことを受け、ネモラリス憂撃隊を辞めてアミトスチグマの難民キャンプに行く。

 ヤーブラカ市の鱗蜘蛛退治の為、モーシ綜合警備株式会社の本社に戻り、正式に「警備員」に復帰した。


 ■針子のアミエーラの身内■


 ◆フリザンテーマ 呼称は「菊」の意。

 力ある陸の民。フラクシヌス教徒。アミエーラの祖母。クフシーンカの幼馴染で親友。【歌う鷦鷯(ミソサザイ)】学派を修めた呪歌の(うた)い手。

 力なき陸の民でキルクルス教徒の夫と結婚。内戦終了後はリストヴァー自治区に移住した。

 自治区では、魔法使いであることを隠す為、知り合いのいないバラック地帯で生活した。

 アミエーラが幼い頃に死亡。


 ◆カリンドゥラ 呼称は「金盞花(キンセンカ)」の意。

 力ある陸の民。長命人種。フラクシヌス教徒。

 アミエーラの祖母フリザンテーマの姉。仕立屋の店長クフシーンカの幼馴染。

 顔はアミエーラにそっくり。百歳近いが、長命人種なので外見は二十歳前後。

 【歌う鷦鷯(ミソサザイ)】学派を修めた呪歌の(うた)い手。歌手としての芸名は、ニプトラ・ネウマエ。「浄め水」「旋律」の意。

 半世紀の内乱前にプロデビュー。主に聖歌や古典を歌うソプラノ歌手だが、近年は歌謡曲のカバーもする。

 武力に依らず終戦を目指す活動に協力。王都ラクリマリスの神殿などで慈善コンサートを行い、難民支援を行う。

 自宅は仕事の都合で、ネモラリス島の首都クレーヴェルと港町レーチカ市の二カ所にある。


 ■国会議員■


 ◆両輪の軸党の党首 アサコール 呼称は「ポプラ」の意。

 力ある陸の民。男性。フラクシヌス教の少数派、岩山の守護神スツラーシの信者。ネモラリス共和国の国会議員。野党中道派の「両輪の軸党」の党首。

 与党多数派の方針に異を唱え、議員宿舎で軟禁生活を送った。外部と連携して蜂起。議員宿舎を脱出した。

 アミトスチグマの支援者の許へ身を寄せ、難民キャンプの運営や情報発信などに携わる。

 有志と連絡を密にし、第三国発信のニュースによる情報操作と経済工作で、アーテルに打撃を与える。

 現在はラクエウス議員らと共に、直接の武力に依らず、湖南地方に平和を取り戻す活動の中心的な役割を担う。亡命議員。


 ◆両輪の軸党の議員 モルコーヴ 呼称は「ニンジン」の意。赤毛に因む。

 力ある陸の民。女性。フラクシヌス教の少数派、岩山の守護神スツラーシの信者。ネモラリス共和国の国会議員。野党中道派の「両輪の軸党」の党員。

 与党多数派の方針に異を唱え、議員宿舎で軟禁生活を送った。外部と連携して蜂起。議員宿舎を脱出した。

 現在はアサコール党首らと共に、直接の武力に依らず、湖南地方に平和を取り戻す活動に参加。料理が得意。亡命議員。


 ◆与党の若手議員クラピーフニク 呼称は「鷦鷯(ミソサザイ)」の意。

 力ある陸の民。フラクシヌス教徒。主神派。三十代半ばの男性。

 ネモラリス共和国の国会議員。与党「秦皮(トネリコ)の枝党」所属。

 古参議員の方針に異を唱え、議員宿舎で軟禁生活を送った。

 両輪の軸党の蜂起に乗じ、ラクエウスと共に宿舎を脱出。音楽仲間スニェーグの許に一時、身を寄せる。

 その後、ラクリマリスの王都郊外に跳び、ラクエウスとは別行動。

 直接の武力に依らず、湖南地方に平和を取り戻す活動に参加し、王都郊外の支援者の許でネモラリス難民の支援や情報収集を行う。亡命議員。

 最近はすっかりタブレット端末の扱いに慣れた。

 呼称は子供の頃、歌が好きだったことに因む。


 ◆秦皮(トネリコ)の枝党の議員パドスニェージニク 呼称は「雪の花」の意。

 力なき陸の民。男性。隠れキルクルス教徒。レーチカ市のベテラン国会議員。秦皮の枝党の古参幹部。

 人脈が広く、多数の議員らが屋敷を出入りする。教育関係にも顔が利く。リベルタース国際貿易から企業献金を受ける。

 ネモラリス各地の隠れキルクルス教徒と付き合いがあり、アーテル・ラニスタ連合軍の空襲後、家族単位で複数保護する。


 ◆リャビーナ市選出の国会議員 パジョーモク 呼称は「地吹雪」の意。

 力なき陸の民。男性。リャビーナ市在住。

 ネモラリス共和国のベテラン国会議員。与党。秦皮(トネリコ)の枝党の幹部。

 地盤はリャビーナ市だが、党幹部として、ネモラリス島内各地に会合用の物件を多数所有する。

 半世紀の内乱時代は無党派の立場から、信仰によって国を分割する和平案を推進。終戦後は秦皮の枝党に入った。

 隠れキルクルス教徒。

 密かにアーテルに渡り、ルフス光跡教会で匿われたが、礼拝堂が双頭狼の襲撃を受けた際、魔装兵ルベルらに助けられ、ネモラリス領に連れ戻された。

 北ザカート市の廃ビルを修繕した拠点で軟禁中。


 ◆ゼルノー市選出の国会議員 イーヴァ 呼称は「柳」の意。

 力なき陸の民。女性。白髪混じりの茶髪。隠れキルクルス教徒。

 今期、無所属から秦皮(トネリコ)の枝党に変わった。ネモラリス共和国の国会議員。信仰は異なるが、選挙区が隣接する為、ラクエウス議員とは旧知の仲。

 人懐こい雰囲気のおばちゃん。アーテル・ラニスタ連合軍の空襲後、所在・安否共に不明。

 パジョーモク議員の別荘に身を寄せたと判明。ネモラリス島のチェルニーカ市内に仮事務所を構え、陳情などを受け付ける。


 ◆クリペウス 呼称は「円い銅の盾」の意。

 力ある陸の民。ネモラリス人。長命人種。男性。フラクシヌス教徒の主神派。

 ネモラリス共和国の首相。秦皮(トネリコ)の枝党の党首。


 ◆ファルトール 呼称は「鳥商人」の意。

 湖の民。常命人種。ネモラリス人。男性。フラクシヌス教徒の湖の女神派。

 ネモラリス共和国の副首相。湖水の光党の党首。


 ◆ポデレス大統領 姓は「司祭の長衣」の意。

 力なき陸の民。アーテル人。男性。キルクルス教徒。

 アーテル共和国の大統領。キルクルス教信者団体「聖光の輪」の代表者。

 続投を目指して大統領予備選に出馬。当然のように予備選を通過。


 ◆レプス 姓は「兎」の意。

 力なき陸の民。アーテル人。男性。キルクルス教徒。

 アーテルの大統領補佐官。星の標の幹部。前任者の急な退官後、大統領が直接任命した。自宅でポーチカとメドソースに惨殺された。


 ◆ヤグアール 呼称は「ジャガー」の意。

 力ある陸の民。常命人種。ラクリマリス人。男性。フラクシヌス教徒の主神派。

 ラクリマリス護憲党の国会議員。王政派。

 自身の事務所で抱える政策秘書シストスが、隠れキルクルス教徒だと知らない。

 ラクリマリス王国は半世紀の内乱後、王政復古した。議会は一応、形だけ存続する。最終決定は国王が下すが、臣民の意見を集約した提案などは可能。


 ■立候補者■

 ◆ザーイエッツ 姓は「野兎」の意。

 アーテル人。男性。力なき民。キルクルス教徒。

 星道(せいどう)(いしぶみ)党の立候補者。主な支持層は星道の職人と製造系の企業、一般人。

 ネモラリス共和国を「ラキュス湖地方全体の覇権を狙う邪悪な国家」と糾弾。徹底抗戦を呼びかける。

 バルバツム連邦との関係を強調。自分ならポデレス大統領以上に軍事、経済両面の援助を引き出せると訴え、予備選を通過。


 ◆ミェーフ 姓は「毛皮」の意。

 アーテル人。男性。力なき民。キルクルス教徒。二十六歳。

 最年少の大統領候補。無所属。

 若い世代の浮動票を狙い、新しい世代による新しい国づくりをアピール。ネモラリス共和国に対しては徹底抗戦を呼び掛ける。

 バルバツム連邦を新たな形態の植民地支配を狙うものとし、ラキュス地方全体のキルクルス教徒の連携によって平和と経済発展を為すべきと訴え、予備選を通過。


 ◆ヒュムヌス 姓は「讃美歌、頌歌」の意。

 アーテル人。力なき民。キルクルス教徒。

 安らぎの光党の大統領候補。そこそこ人気のベテランの歌手兼作曲家。主な支持層は、音楽家とそのファンで老若男女幅広い。

 バンクシア共和国やバルバツム連邦で見た「真の信仰」を説く。真っ向から星の標と現大統領の戦争推進を批判。

 魔法使いへの差別を解消し、ランテルナ自治区民の人権侵害を解決して、真の民主主義国家になるべきと呼び掛け、予備選を通過。


 ■外交官など政府高官■

 ◆イーニー 呼称は「霜」の意

 ネモラリス人。力ある陸の民。男性。フフラクシヌス教徒の主神派。【渡る白鳥】学派。外交官。駐アミトスチグマ王国ネモラリス共和国大使。

 戦争開始後、国内外に於いて微妙な立場に立たされ何かとストレス。本国の予期せぬ動きで周辺諸国との関係調整に冷や汗を掻き、本国と難民の板挟みで対応に苦慮する。八方丸く収まって欲しい。

 ラクエウス議員経由で、インターネットを使った情報発信を入れ知恵されて実行中。両輪の国や科学文明国に駐在する他の外交官らと連携するが、駐在武官とは距離を置く。


 ◆スメールチ 呼称は「竜巻」の意

 ネモラリス人。力ある陸の民。男性。フフラクシヌス教徒の湖の女神派。

 ネモラリス共和国の国連大使。国連本部のあるバルバツム連邦サンデラエ市の事務所に駐在する。

 職務上、インターネットでの情報収集にそこそこ詳しい。


 ◆ザミルザーニィ 呼称は「氷結」の意

 ネモラリス人。力ある陸の民。男性。フフラクシヌス教徒の湖の女神派。

 外交官。駐ルニフェラ共和国ネモラリス共和国大使。

 駐在国がアルトン・ガザ大陸中部に位置する科学寄りの両輪の国の為、科学文明やインターネットにも馴染む。


 ◆ザトヴォール 呼称は「(かんぬき)」の意

 ラクリマリス人。力ある陸の民。男性。フフラクシヌス教徒の主神派。

 外交官。駐ネモラリス共和国ラクリマリス王国大使。元貴族。

 駐在国で勃発した内戦やアーテルが仕掛けた戦争にも動揺せず、情報収集と観察を続ける冷静で職務に忠実な人物。


 ■リャビーナ市民楽団■


 ◆国会議員 ラクエウス 現在の呼称は「罠」の意。

 力なき陸の民。キルクルス教徒。九十歳を越える老人。

 リストヴァー自治区選出の国会議員。クフシーンカの弟。

 幼い頃に竪琴の才能を見出(みいだ)され、家族と離れて寄宿学校で本格的に音楽を学ぶ。若い頃は、ラキュス・ラクリマリス交響楽団の竪琴奏者として音楽を生業とした。

 半世紀の内乱中に妻子を失う。

 自治区への移住後、交響楽団時代の人脈を駆使して国会議員となった。

 リストヴァー自治区の生活向上の為に命を懸けて尽力する老議員。

 魔哮砲の使用継続に反対を表明し、首都クレーヴェルの議員宿舎に軟禁された。

 両輪の軸党の蜂起に乗じ、クラピーフニクと共に宿舎を脱出。スニェーグ宅に匿われる。

 女装してリャビーナ市民楽団に紛れ込み、罹災者支援コンサートに出演する。

 直接の武力に依らずラキュス湖南地方に平和を取り戻す活動に参加、アミトスチグマに亡命。

 ネモラリスの国会議員として、非公式に難民キャンプの視察を行った。

 アイドルグループ「瞬く星っ娘」を脱退した四人に歌の指導をする。

 若い頃の呼称ハルパトールは「竪琴奏者」の意。変装時の呼称、ハルパトーラは「竪琴奏者(女性)」の意。


 ◆スニェーグ 呼称は「雪」の意。

 力ある陸の民。白髪の男性。ラクエウスよりほんの少し年下の老人。

 リャビーナ市民楽団のピアニスト。クラピーフニク議員の協力者。

 午前中は大きな音楽教室の外部講師、午後は飲食店でピアノの生演奏。割と忙しい。毎日に張りがあるからか、髪こそ白いが、実年齢よりずっと若やいで見える。

 老婦人シルヴァの親戚で、ランテルナ島に隠された別荘の場所を知る人物。


 ◆オラトリックス 呼称は「祈る者」の意。

 力ある陸の民の女性。六十代半ばくらい。

 リャビーナ市民楽団のソプラノ歌手。【歌う鷦鷯(ミソサザイ)】学派の術者。クラピーフニク議員の協力者。

 情報操作と拡散の一環として、ネモラリス共和国内で里謡調査を進める。

 アミトスチグマの難民キャンプにも度々訪れ、【道守り】など呪歌の指導を行う。


 ■ネモラリス共和国 ネモラリス島 北東部の住民■

 ◆校長先生

 湖の民。男性。ネモラリス島北東部、カーメンシク市から二つ東隣の農村在住。

 小中一貫校の校長。直近の二百年中、村で唯一クレーヴェルの大学を卒業。

 村人たちにキレイな言葉遣いを指導した。村の子供たちに外の世界を教えたい。


 ◆カーラム 呼称は「絵筆」の意。

 湖の民。男子中学生。ネモラリス島北東部の農村在住。

 小中一貫校の中学二年生。四人だけの学級で唯一の男子生徒。


 ◆メーラ 呼称は「白墨(チョーク)」の意。

 湖の民。女子中学生。ショートカット。ネモラリス島北東部の農村在住。

 小中一貫校の中学二年生。責任感が強い。早くに父を亡くし、母、兄と三人暮らし。兄の看護の為、夏休み中は王都ラクリマリスの施療院に滞在した。


 ◆コルチャーク 呼称は「針茸(ハリタケ)」の意。

 湖の民。ネモラリス島北東部の村在住。

 農業青年。【畑打(はたう)雲雀(ヒバリ)】学派。メーラの兄。

 双頭狼に襲われた際、妹を庇って尻尾の毒蛇に咬まれた。王都ラクリマリスの施療院に入院。足を切断して再生する治療を受け、無事に退院。


 ◆スモークウァ 呼称は「乾果(ドライフルーツ)」の意。

 湖の民。女子中学生。ツインテール。ネモラリス島北東部の農村在住。

 小中一貫校の中学二年生。割とミーハー。


 ◆フヴォーヤ 呼称は「針葉樹の葉」の意。

 湖の民。女子中学生。三ツ編ロング。ネモラリス島北東部の農村在住。

 小中一貫校の中学二年生。委員長タイプのしっかり者。


 ■自治区民■


 ◆仕立屋の店長 クフシーンカ 呼称は「睡蓮スイレン」の意。

 力なき陸の民。キルクルス教徒。一人暮らしの老婆。九十歳以上。気前がいい。

 リストヴァー自治区の団地地区で仕立屋を経営したが、ネミュス解放軍と星の標の戦闘で店舗を失い、廃業した。

 アミエーラの祖母フリザンテーマの親友。ずっとお互いに助け合う。

 自治区選出の国会議員ラクエウスの姉。繋ぎ役として一目置かれ、顔が広い。

 大火に見舞われたバラック地帯の罹災者支援活動を弟の支持者らと共に行う。

 自治区を訪れた呪医セプテントリオーに三十年来の秘密を明かし、弟とアミエーラに宛てた手紙を託す。

 「星道記」の技術書部分を含む聖典をサロートカに託し、自治区から送り出す。そろそろ色々なことを若者たちに譲りたい。

 キルクルス教の聖典の内、星道記(せいどうき)の後半を修めた縫製分野の「星道(せいどう)の職人」の資格を持つ。


 ◆サロートカ 呼称は「甘草カンゾウ」の意。

 力なき陸の民。キルクルス教徒。仕立屋の針子見習いの少女。大地の色の髪。

 リストヴァー自治区のバラック地帯の生き残り。大火で身寄りを失くし、教会に身を寄せた。

 正直者で信仰心が篤い。無学な自分をよく(わきま)え、あまり役に立てないことを気に病む。

 クフシーンカ店長に「星道記」の技術書部分を含む聖典を託され、ラキュス湖地域の真実を知る為に呪医セプテントリオーと共にリストヴァー自治区を出る。

 ラクエウス議員らの直接の武力に依らずラキュス湖南地方に平和を取り戻す活動に協力、呪医セプテントリオーらと共にアミトスチグマへ移動する。


 ◆ウェンツス司祭 呼称は「風」の意。

 力なき陸の民。キルクルス教徒。四十代前半の男性。

 リストヴァー自治区の東教区(バラック地帯)の教会の責任者。団地地区在住で通勤だった為、大火に巻き込まれずに済んだ。

 自治区内の弱い人々をいかに守るかに腐心する。

 本業の傍らフェレトルム司祭の通訳を行うが、あまりに過激な物言いはやんわり意訳する。


 ◆老いた尼僧

 力なき陸の民。キルクルス教徒。クフシーンカ店長よりは若いが高齢の女性。

 リストヴァー自治区の東教区(バラック地帯)の教会に通う尼僧。

 団地地区在住で通勤だった為、大火に巻き込まれずに済んだ。

 慈悲深い性格で、大火の前から私財を削り、自治区内の弱い人々に少しずつ菓子などの食べ物を提供するなど、暮らしを支える。


 ◆ヌーベス司祭 呼称は「雲」の意。

 力なき陸の民。キルクルス教徒。四十代前半の男性。ネモラリス人。

 リストヴァー自治区の西教区(団地地区と農村地区)の責任者。

 団地地区在住。前任者は行方不明。恐らく、星の標に殺害された。星の標への対応に苦心する。

 ネミュス解放軍との協定により、星の標への再教育を行う。フェレトルム司祭の通訳も行うが、あまりに過激な物言いはやんわり意訳する。


 ◆新聞屋

 力なき陸の民。キルクルス教徒。三十代後半の男性。黒髪。

 リストヴァー自治区の聖光新聞の専売所の責任者。妻と小学生の息子が一人。

 仕立屋のクフシーンカやラクエウス議員と懇意にする。


 ◆区長

 力なき陸の民。キルクルス教徒。五十代半ばの男性。

 リストヴァー自治区の団地地区在住。自治区の区長。

 半世紀の内乱中は銃を執って戦った。

 キルクルス教原理主義を標榜する「星の標」のリストヴァー支部団長。

 タブレット端末を密輸。インターネットでアーテル、ラニスタと秘かに通じ、武器の調達などをする。密かに妻子をアーテル領に逃がした。

 ネミュス解放軍と和平協定を結んだ。


 ◆酒屋

 力なき陸の民。キルクルス教徒。五十代半ばの男性。

 リストヴァー自治区の団地地区在住。区長の腰巾着。

 半世紀の内乱中は銃を執って戦った。

 キルクルス教原理主義を標榜する「星の標」のリストヴァー支部の幹部。密かに妻子をアーテル領に逃がした。

 星の標に家族を殺された者たちの報復で家と店を焼かれた。辛うじて一命を取り留めたが、入院中。


 ◆大工

 力なき陸の民。キルクルス教徒。四十代半ばの男性。

 大学生の娘が居る。共通語が堪能。リストヴァー自治区の団地地区在住。

 キルクルス教の聖典の内、星道記(せいどうき)の後半を修めた建築分野の「星道(せいどう)の職人」の資格を持つ。


 ◆大工の娘

 力なき陸の民。キルクルス教徒。リストヴァー大学の女子学生。

 学業の傍ら、クフシーンカらが提案した壁新聞の発行などに携わる。自治区をよくする為、大学の仲間と共に積極的に教会ボランティアなどの活動をする。

 父は「星道の職人」の資格を持つ建築職人で、家庭は比較的裕福。


【バンクシア共和国の関係者】

 アルトン・ガザ大陸北部に位置し、キルクルス教の聖地がある信仰の中心地。

 教義に基づいて大学や研究機関などが集まり、科学文明圏に於ける知の殿堂でもある。


 ◆大聖堂の司祭 フェレトルム司祭 本名。「担架」の意。

 力なき陸の民。バンクシア人。男性。三十代半ば。キルクルス教徒。額が後退気味。首都にある精光ルテウス大学の神学部卒。キルクルス教社会の最高学府出身で、正真正銘の信仰エリート。

 大聖堂から、ネモラリス共和国リストヴァー自治区に派遣された司祭。西教会に滞在。共通語しか話せないので通訳必須。

 信仰一筋の熱血漢。キルクルス教の信仰を利用した過去の植民地支配を謝罪し、大聖堂が一般信者に伏せる事実を広く知らしめるべきだと考える急進派。

 自治区民に道を教えてもらってからはクブルム街道に通い、ネットで収集した情報を礼拝の雑談として自治区民に伝える。

 キルクルス教圏には呼称を付ける習慣がない為、本名。


 ◆大聖堂の司祭 若手 レフレクシオ司祭 本名。「反射」の意。

 力なき民。バンクシア人。男性。二十代半ば。キルクルス教徒。茶髪。

 キルクルス教社会の最高学府「精光ルテウス大学」出身。正真正銘の信仰エリート。ラキュス湖周辺の紛争地域に派遣された司祭の中では最年少。信仰一筋の熱血君。

 大聖堂から、アーテル共和国のルフス光跡教会に派遣された司祭。共通語しか話せないので通訳必須。

 ルフス光跡教会が双頭狼に襲われた際、どさくさに紛れてヂオリートに刺されて入院した。

 キルクルス教圏には呼称を付ける習慣がない為、本名。


 ◆大聖堂の司祭

 力なき民。バンクシア人。男性。三十代前半。キルクルス教徒。金髪。

 キルクルス教社会の最高学府「精光ルテウス大学」出身で、正真正銘の信仰エリート。

 大聖堂から、ラニスタ共和国最大のジンクム教会に派遣された司祭。信仰一筋の熱血さん。共通語しか話せないので通訳必須。


 ■アミトスチグマの関係者■


 ◆協力者 マリャーナ 呼称は「南東風」の意。

 湖の民の女性。アミトスチグマの夏の都在住のお金持ち。アミトスチグマ人。

 ラクエウス議員らの直接の武力に依らずラキュス湖南地方に平和を取り戻す活動に協力。彼らに住居と食事を提供し、活動拠点として使わせる。

 総合商社パルンビナ株式会社の役員。湖上封鎖が解消されないと貿易が滞って困ると言う経済的な理由もあり、ラクエウス議員らに力を貸す。


 ■ラクリマリス王国 王都ラクリマリスの関係者■


 ◆詩人ルチー・ルヌィ 呼称は「月光」の意。

 王都ラクリマリス在住の詩人。湖の民の男性。午前中は船着き場の誘導員として働く。

 「すべて ひとしい ひとつの花」の歌詞の編集に協力。


 ◆ギームン 呼称は「讃美歌」の意。

 陸の民の男性。ラクリマリス人。長命人種。赤毛。

 王都ラクリマリスの第二神殿に勤める神官。【導く白蝶】学派。葬儀だけでなく、慈善コンサートの差配もする。

 王都第二神殿付属合唱団の聖歌隊責任者。【歌う鷦鷯(ミソサザイ)】学派ではないが、歌に詳しく、テノール担当として歌う。


 ◆クリューチ 呼称は「泉」の意。

 湖の民の男性。ラクリマリス人。

 王都ラクリマリスの第二神殿に勤める神官。結婚式担当。【渡る白鳥】学派。

 王都第二神殿付書庫の司書当番もこなす。


 ◆国際政治学者

 トポリ大学の教授。ネモラリス人。ネーニア島出身の力ある陸の民。男性。

 地元有力紙に寄稿した後、ラクリマリス王国に亡命。

 ラクリマリス王国の王都で非公式会合を呼び掛けた。職業柄、共通語が堪能。


 ◆プンツォーヴィ外務次官 呼称は「緋色」の意。

 力ある陸の民。ラクリマリス人。明るい赤毛の男性。

 老眼鏡が必要なお年頃。フラクシヌス教の主神フラクシヌスの信者。

 ラクリマリス王国の外務次官。ギター演奏が趣味。歌手ニプトラ・ネウマエのファン。


 ◆呪医

 湖の民の男性。年配。【青き片翼】学派も使える【有翼の蜥蜴】学派の外科医。

 王都ラクリマリスの西神殿にある施療院の呪医。


 ◆シストス 呼称は「ヤブカラシ」の意。

 力なき民。ラクリマリス人。男性。隠れキルクルス教徒。

 政策秘書。所属はラクリマリス護憲党の国会議員ヤグアールの事務所。

 ヤグアール議員は、シストスが隠れキルクルス教徒だと知らない。

 ネモラリス共和国の隠れキルクルス教徒、秦皮の枝党の国会議員パジョーモクらと通じる。

 密かにアーテルに渡り、ルフス光跡教会で匿われたが、礼拝堂が双頭狼の襲撃を受けた際、魔装兵ルベルらに助けられ、パジョーモク議員と共にネモラリス領に連行された。

 北ザカート市の廃ビルを修繕した拠点で軟禁中。

 ヤブカラシは「藪枯(やぶか)らし」の意。藪を覆って日照不足で枯らしてしまう蔓植物。


 ■瞬く星っ娘/平和の花束■


 ◆アルキオーネ

 力なき民。女性。十八歳。アーテル人。

 アーテルのアイドル歌手「瞬く星っ娘」のリーダー。長く艶やかな黒髪。勝気な目をした少女。

 メローペが魔物に襲われてから、アーテル共和国の二重規範に嫌気が差し、コンサートで暴露。「瞬く星っ娘」の引退を宣言した。

 元護衛の女性が手引きし、ラゾールニクらの協力でアミトスチグマに亡命。

 現在は、ラクエウス議員らの許に身を寄せ、音楽ユニット「平和の花束」のリーダーとして活動中。

 積極的に【歌う鷦鷯】学派の呪歌を練習し、【魔力の水晶】を使って難民キャンプで【道守り】の結界構築の手伝いをする。


 ◆エレクトラ

 力なき民。女性。十七歳。アーテル人。

 アーテルのアイドル歌手「瞬く星っ娘」の一員。土色の髪の少女。

 メローペが魔物に襲われてから、アーテル共和国の二重規範に嫌気が差し、コンサートで暴露。「瞬く星っ娘」の引退を宣言した。

 元護衛の女性が手引きし、ラゾールニクらの協力でアミトスチグマに亡命。

 現在は、ラクエウス議員らの許に身を寄せ、音楽ユニット「平和の花束」として活動中。

 

 ◆タイゲタ

 力なき民。女性。十六歳。アーテル人。髪は麦藁色。眼鏡っ娘。

 アーテルのアイドル歌手「瞬く星っ娘」の一員。メローペが魔物に襲われてから、アーテル共和国の二重規範に嫌気が差し、コンサートで暴露。「瞬く星っ娘」の引退を宣言した。

 元護衛の女性が手引きし、ラゾールニクらの協力でアミトスチグマに亡命。

 現在は、ラクエウス議員らの許に身を寄せ、音楽ユニット「平和の花束」として活動中。美術が好きで、バザーのポスター制作などを手伝う。


 ◆アステローペ

 力なき民。女性。十六歳。アーテル人。金髪。年齢の割に豊かな胸。

 アーテルのアイドル歌手「瞬く星っ娘」の一員。メローペが魔物に襲われてから、アーテル共和国の二重規範に嫌気が差し、コンサートで暴露。「瞬く星っ娘」の引退を宣言した。

 元護衛の女性が手引きし、ラゾールニクらの協力でアミトスチグマに亡命。

 現在は、ラクエウス議員らの許に身を寄せ、音楽ユニット「平和の花束」として活動する。


 ■アーテル共和国の首都ルフスの関係者■


 ◆スキーヌム・ファンドゥム 名は「琥珀」、姓は「道理、正当なこと」の意。

 力なき陸の民。ルフス神学校の高等部一年生。宿舎でロークの隣室。同級生。アーテル人。

 眼鏡男子。引っ込み思案なせいで友達は少ない。

 何事にも真面目で、「瞬く星っ娘」の聖歌アレンジを受け容れられない。

 幼い頃、ひょんなことから魔力を持つことが判明。力ある民を産んだ咎で母は星の標に火炙りにされた。祖父と父の手で、捨て子同然でルフス神学校に入学させられ、実家では居ない子扱いされる。

 冬休み、ロークに唆されて家出し、ランテルナ島の地下街チェルノクニージニクの呪符屋でアルバイトをして生計を立てる。

 孤独な者(アル・ファルド)の筆名で、人気小説「冒険者カクタケア」シリーズを執筆する小説家の顔を持つ。


 ■ランテルナ島民■


 ◆呪符屋 ゲンティウス 呼称は「竜胆(リンドウ)」の意。

 湖の民の男性。おっさん。【編む葦切(ヨシキリ)】学派の職人。

 ランテルナ島の地下街チェルノクニージニクにある呪符屋の店主。店に名はなく、竜胆の看板が目印。

 初対面のファーキルの身を案じ、色々忠告してくれた。ぶっきらぼうだが何かと親切。行き場のないスキーヌムをアルバイトとして雇う。


 ◆クロエーニィエ 呼称は「(布地や皮などの)裁断」の意。

 力ある陸の民。黒髪でごつい体型のおっさん。

 ランテルナ島の地下街チェルノクニージニクにある魔法の道具屋「郭公(カッコウ)の巣」の店主。【編む葦切(ヨシキリ)】学派の職人。服飾品が得意分野。ファッションセンスに難はあるが、腕前は確か。

 自作の魔法の服や装飾品の他、ヤミの委託品も販売する。

 ラキュス・ラクリマリス王国時代は騎士で、呪医セプテントリオーと同じ騎士団に所属。調達任務が主の後方支援だったが、戦闘もこなした。

 素材調達の為に長期間、店を閉めることがある。鱗蜘蛛を倒せる実力の持ち主。


 ■ネモラリス政府軍■


 ◆ネモラリス政府軍将軍 アル・ジャディ・ラキュス・ネーニア。

 湖の民の男性。フラクシヌス教徒で湖の女神派。ネモラリス人。

 ネモラリス政府軍を統括する。半世紀の内乱後に就任した。

 長命人種。実年齢は五百歳余り。外見は、四十代後半から五十代前半くらいに見える。精悍な顔立ち。

 半世紀の内乱後の情報インフラの不備で、アーテル・ラニスタ連合軍及びキルクルス教団との情報戦に敗北したことを認めた。インターネットの重要性に気付き、その普及と国民教育の必要性を痛感する。

 気さくな人柄で、気軽に一兵卒のルベルを食事に誘った。

 前任のウヌク・エルハイア将軍の遠縁の親戚。

 呼称のアル・ジャディは星の名「殺人者」に由来する。

 湖の女神の血を引く名門、ラキュス・ネーニア家の分家。


 ◆ルベル 呼称は「赤」の意。髪の色からそう呼ばれる。

 力ある陸の民。男性。フラクシヌス教徒。兵学校を卒業して数年の若者。ネモラリス人。実家はネモラリス島北東部のウーガリ山中にあるアサエート村。

 ごつい体格で厳つい顔。黙っていると「怒ってるの?」と聞かれやすい顔立ちのせいか、恋人などは居ない。

 ネモラリス政府軍の魔装兵。末端の兵卒。【飛翔する蜂角鷹(ハチクマ)】学派の術を修め、偵察などを主な任務とする戦闘員。

 一応、【急降下する(ワシ)】学派の術も使えるが、制御が苦手で攻撃が当たり難い。剣技もあまり得意ではない。

 ネーニア治安部隊、水軍の守備隊、魔獣駆除部隊、水軍の守備隊、アーテル潜入特命隊など状況に応じて次々転属させられる。

 魔哮砲の存在が気になり、戦争に関する報道発表などの情報を精査した。

 アーテル軍の攻撃を受け、魔哮砲が行方不明になった後は捜索に加わる。ムラークの遺言に従い、魔哮砲を止める決意を固める。

 クーデターが起こったが、国民とは戦いたくない。

 シクールス陸軍将補の命令を受諾し、魔哮砲と【使い魔の契約】を結んで操手となる。

 現在は、ラズートチク少尉と共にアーテル潜入特命隊として活動。インターネットでの情報収集も担う。最近はタブレット端末の扱いにも慣れてきた。

 軍服は魔法の鎧。


 ◆工兵班長ウートラ 呼称は産まれた時間で「朝」の意。

 力ある陸の民の男性。フラクシヌス教徒。ネモラリス人。

 ネモラリス水軍の防空艦ノモス工兵第二班の班長。【飛翔する鷹】学派。戦闘も可能な武器職人。

 艦載レーダーなど機械類の点検と整備を担う班のひとつで、艦が破損した場合の応急修理なども担う。


 ◆工兵マールト 呼称は産まれた月で「三月」の意。

 力ある陸の民の男性。フラクシヌス教徒。ネモラリス人。

 ネモラリス水軍の防空艦ノモス工兵第二班の班員。【編む葦切】学派の道具類職人。機械いじりが得意。魔法使いの職人としての腕も確か。

 防空艦ノモスの機械類の点検と整備が主な任務。兵学校で武器の訓練は受けたが、基本的に戦闘には参加できない。


 ◆工兵マーイ 呼称は産まれた月で「五月」の意。

 力ある陸の民の男性。フラクシヌス教徒。ネモラリス人。

 ネモラリス水軍の防空艦ノモス工兵第二班の班員。【穿(うが)啄木鳥(キツツキ)】学派の土木職人。使用経験は岩盤爆破用の発破だけだが、爆弾・爆薬の知識は豊富。

 防空艦ノモスの機械類の点検と整備が主な任務。兵学校で武器の訓練は受けたが、基本的に戦闘には参加できない。


 ◆工兵ナヤーブリ 呼称は産まれた月で「十一月」の意。

 力ある陸の民の男性。フラクシヌス教徒。ネモラリス人。

 ネモラリス水軍の防空艦ノモス工兵第二班の班員。【飛翔する燕】学派の気象予報士。

 防空艦ノモスの機械類の点検と整備が主な任務。兵学校で武器の訓練は受けたが、基本的に戦闘には参加できない。気象衛星に興味を持ったことをきっかけに人工衛星にも詳しい。

 雑誌などで科学文明国の情報を集めるのが割と好き。


 ◆ラズートチク少尉 呼称は「密偵/斥候」の意。

 力ある陸の民。男性。ラクシヌス教徒。長命人種。ネモラリス人。【(いつわ)郭公(カッコウ)】学派。陸軍情報部所属の密偵。

 タブレット端末を使いこなし、インターネットリテラシーが高い。戦闘にも長け、任務を非情にこなす。

 暗い金髪にも明るい茶髪にも見えるハンパな髪色。中肉中背でこれと言って特徴がなく、冴えない風貌のおっさん。


 ■ネミュス解放軍■

 ネモラリス共和国の首都クレーヴェルでクーデターを起こし、国会議事堂と議員宿舎、FMクレーヴェルを除く放送局を手中に収めた。

 政府軍との戦闘を継続する傍ら、市民の懐柔を図る。


 ◆ウヌク・エルハイア将軍

 湖の民の男性。フラクシヌス教徒で湖の女神派。長命人種。

 旧ラキュス・ラクリマリス共和国軍設立から半世紀の内乱末期まで、軍を統括していた。百戦錬磨の軍人。

 半世紀の内乱中は、人種に関係なく、ネモラリス島に住む湖の女神派の信徒をキルクルス教徒の攻撃から守った。内乱末期に家族を喪い、「守る者が居なくなった」と引退。

 ネモラリス共和国とアーテル・ラニスタ連合軍との戦争中、現政権の横暴に立ち向かう為、「ネミュス解放軍」を組織し、決起した。

 暴徒化したデモ隊にやめるよう呼掛け、鎮静化させて回ったところ、首都を中心にデモ隊が彼の許に集まるようになった。クーデターの件は、ラジオのプロパガンダで知った。

 無断でネミュス解放軍の責任者に担ぎあげられたが、自分が手を引けば、神政復古を目指す野心的な身内が後釜に座り、却って他民族への迫害が悪化する為、仕方なく解放軍の将軍を続ける。

 カピヨーらのリストヴァー自治区襲撃作戦を知り、自治区まで止めに行った。

 呼称のウヌク・エルハイアは「蛇の首」の意。

 湖の女神の血を引く名門、ラキュス・ネーニア家の有力な分家。


 ◆クリュークウァ支部長 カピヨー 呼称は「槍」の意。

 湖の民の男性。フラクシヌス教徒で湖の女神派。長命人種。ネモラリス人。

 血気盛んなおっさん。【急降下する(ワシ)】学派の魔法戦士。

 旧ラキュス・ラクリマリス王国時代は騎士で、地方領主でもあった。現在も当時からの城砦に住み、地元の政財界に顔が利く。

 共和制移行時の軍の再編で退職。ネミュス解放軍に参加。クリュークウァ市内の同志を束ねる。リストヴァー自治区襲撃作戦の指揮官。


 ■ネモラリス人の有志ゲリラ ネモラリス憂撃隊■


 ネモラリス政府軍に共闘を持ちかけられ、代表者のオリョールが受諾。これによって復讐に主眼を置くゲリラの三分の二が離反した。

 オリョールは、政府軍の意向に従う穏健派としてネモラリス憂撃隊を維持。本拠地をかつて治療拠点として使用したランテルナ島の別荘に移す。

 政府軍に従わず、離反した復讐派は個別のゲリラ活動に戻り、北ザカート市内の武器庫兼訓練拠点を引き続き本拠地として使用する。


 ◆警備員 オリョール 呼称は「狗鷲(イヌワシ)/勇士」の意。

 力ある陸の民の男性。髪と瞳は明るい土色。【急降下する(ワシ)】学派を修めた魔法戦士。

 医療産業都市クルブニーカで製薬会社に雇われた警備員。元は森へ素材の採取へ行く薬師の護衛だった。

 現在は、ネモラリス人の有志ゲリラに参加し、アーテル領内で破壊工作を行う。

 リーダー的な立場だが、何となく流れでそうなった為、自覚がない。

 アーテル本土の拠点を破壊された後は、ネモラリス領の北ザカート市の廃墟に移動。森林地帯で魔獣などを狩り、呪符や魔法の道具の素材を集め、武力を蓄えた。

 アクイロー基地襲撃作戦では、陽動部隊の一員として少年兵モーフと共に戦う。

 作戦からの帰還後、ピナティフィダとアミエーラを襲ったゲリラを殺害。呪医に宣言した通り、ジャーニトルとクリューヴを除いてゲリラの生き残りを始末した。

 ネモラリス憂撃隊を組織し、アクイロー基地襲撃作戦の犯行声明を出した。

 政府軍の意向に従う穏健派としてネモラリス憂撃隊を維持。本拠地をランテルナ島の別荘に移す。


 ◆呪符職人

 力ある陸の民。小柄な男性。一人称「僕」。【編む葦切(ヨシキリ)】学派の呪符職人。

 ネモラリス人の有志武闘派ゲリラに参加し、呪符の作成などで後方支援を行う。

 穏健派としてオリョールと共に政府軍に従う。


 ◆手伝いの老婦人 シルヴァ 呼称は「森」の意。

 力ある陸の民の女性。老婆。ネモラリス人。スニェーグの親戚。

 半世紀の内乱中で(ちか)しい身内の大半を失い、今回の魔哮砲戦争で息子夫婦と孫を奪われ、ゲリラ活動に身を投じる。

 親戚に「難民支援」と称して別荘を提供してもらった。負傷者の看護と別荘の管理、情報収集や物資の調達、勧誘などを担当。

 ランテルナ島の無関係な寝たきり老人宅を情報収集の拠点として使用する。

 老人の世話をしつつ、市井の噂話やアーテル領内で発行される新聞や雑誌で情報収集。また、ネモラリス共和国内やアミトスチグマの難民キャンプなどで、武闘派ゲリラに参加する者の勧誘活動も行う。

 ネモラリス憂撃隊分裂後もゲリラの勧誘を続け、本人の様子を見て穏健派と復讐派に振り分ける。

 最近は【渡る白鳥】学派の術を修行中。


 ▼各勢力の行動指針など

 挿絵(By みてみん)


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野茨の環シリーズ 設定資料
シリーズ共通設定の用語解説から「すべて ひとしい ひとつの花」関連の部分を抜粋。
用語解説01.基本☆人種など、この世界の基本
用語解説02.魔物魔物の種類など
用語解説05.魔法☆この世界での魔法の仕組みなど
用語解説06.組合魔法使いの互助組織の説明
用語解説07.学派【思考する梟】など、術の系統の説明
用語解説15.呪歌魔法の歌の仕組みなど
用語解説11.呪符呪符の説明など
用語解説10.薬品魔法薬の説明など
用語解説08.道具道具の説明など
用語解説09.武具武具の説明など
用語解説12.地方 ラキュス湖☆ラキュス湖周辺の地理など
用語解説13.地方 ラキュス湖南 印暦2191年☆「すべて ひとしい ひとつの花」時代の地図と説明
用語解説19.地方 ラキュス湖南 都市☆「すべて ひとしい ひとつの花」時代の都市と説明
地名の確認はここが便利
用語解説14.地方 ラキュス湖南 地理☆湖南地方の宗教や科学技術など
用語解説18.国々 アルトン・ガザ大陸☆アルトン・ガザ大陸の歴史など
用語解説20.宗教 フラクシヌス教ラキュス湖地方の土着宗教の説明。
用語解説21.宗教 キルクルス教世界中で信仰されるキルクルス教の説明。
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