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神の真実という名の行き当たりばったりくたばったり

カスミ…否、カス神と対峙する事になった迷探偵キッシュことオイラ。麻酔針が飛んできても無意味なん…死んでまんねんもん。



「世界の歪みは葵に関わった事だ。病んでるあいつを勇者になんてしなきゃいけない事態になったのを、分割する事で解決した。が、負の感情にお前さんは乗っ取られた…そして魔王と呼ばれる存在と化した。それは因果律とか全部ぶっ壊す程の呪いを生んだ…つまり、勇者召喚の原因と結果すらその出来事が生み出す無限ループの産物でしかなかったって事なんやね」


「そうですね。元々彼女を召喚したのは人間の国ですが女神として介入させてもらいました。あまりにも彼女は不安定かつ勇者としては不適切でした。彼女の悪意やあなた…いえ、桐生柳に対する執着心をある程度取り除いたのがソレイユとしての彼女。そして、その負の感情に乗っ取られたのが…あなたが考える通りの事です」



考える通りと言われたが、この魂が宿っていた体の後釜が葵だった事を考えると知っていたというのが正しいと思うん…つまり、オラの前々前世は葵だったんやね。で、女神の名は?


そんなバカバカしい事を考えながらも酢入りショーは続いていく。もはや推理違うもんな…


それからソレイユとなったナイトガンダ…葵の話は割愛しよう。だって、ハゲガエルとかドエムゴンの話は要らんししとうない。


すっ飛ばして結末を語る。カスミが神器と引き換えに失ったのは体…ではなく存在そのものだったという事が元女神から語られた。まあ、生命を復活させるのを引き換えるなんて等価交換しなきゃ無理だもんね。あれ、オラは真理の扉とか持ってたんやろか……二つ名は鍍金でオナシャス。鍍金の村人……オズかな?



「そして、カスミという存在に成り代わった貴様は葵にフュージョンのダンスを教えたんですね。いや、イヤリング渡したか…どちらにしても女神としての復活を目論んだ。が、そうは問屋街が卸さなかった…つまり締め出しですん。自腹営業待った無しですねんって事で神のまま葵は眠りについた。あいつ、幼馴染ポジでも起こしに来る幼馴染じゃなくて起こしに行かなきゃならない方でしたん」



正確には幼馴染ポジじゃなくて義妹の親友ポジだったけども大して差異は無いとめあ。つまり、神の座を追われたらネ申とは呼ばれてもただの人やねん。で、表ではチェリアたちの考えたザル作戦、眠れる森のポンコツ神に目覚まし幼馴染の祝福を…っていう桐生柳召喚作戦に反対しつつも残された不思議パワーで召喚の段取りは整えた。が、いくら神になった葵でも年老いた中年男に起こされるのでは無理があるという事で桐生柳殺人事件に発展。更に都合良くしたいが為に眠っていた葵の体を利用してキッシュという存在を作った。その過程で余った本来の器は巻き添えになったみずきのもんに……つまり、オイラに生殖能力無かったって事なんやな。むしろ、オイラが女人化の可能性を秘めていた。自分の体を調査すればイフォルマくんを女人化出来とったんやね…糸色望した。



「全てはこの世界の人間の過ちです。彼らが彼女を召喚した事によってこそ魔王を生み出し、あなたたちを苦しめた……」


「それは詭弁なん。結果として桐生柳に死を与えて利用したのは貴様なん。それは別に構わなす…ただ、死んではいけない者を巻き込み、チェリアたちの純粋な思いを踏み躙り、桐生柳の魂を掴み損ねた貴様に罪があるん」



今ならはっきり言える。オイラは桐生柳じゃないと……葵の体に残されていた記憶を元に色々な情報とを組み合わせて生まれた偽物レプリカであると。だからこそ、客観的で居られるんだろう。目の前に居るのは葵を連れ去り自身を殺し、みずきさえも巻き込んだ張本人であるというのに殺意の1つも湧いてこない。


だから、巻き込んでやるん……ネ申としての最期の仕事をさせてやるつもりで。



「おそらく、今頃は葵がチェリアたちの告白を聞いてヤケ起こしてチェリアたちも全ての世界も壊してるところなん。桐生柳を自分の手で殺したと思い込んでビックバンでも起こせる勇者王だから間違いなくやってるはずなん………だから、貴様はアホなん。最初から真実を告げておけば良かったん。保身に走った時点でこの世界と共に終わる運命デスティニーなん」


「あの、言ってる意味が…っ………まさか、本当に………」



何故か霊体なのに付いてた腕輪に刻まれたそれぞれの花の文様が黒くなった。起こっただけなん……え、そんな仕様聞いてないて。言ってないし…


まあ間違いなく葵がやりおった。メガ○テしおった。後悔がないといえば嘘になる。だが、葵が復活する事は計算外だったのだ……そもそも、オラは復活した葵に腹パンして勝ち、その上で願いを叶えさせるつもりだったのだ。それを何も怖くないでやったら、蘇った葵に真っ向唐竹割りされたん…


やっぱ、葵最低だわ。


でも、安心してください。これによって目の前のクソ女神の歪んだ威厳をどないかせんといげん。葵が自爆乙したからこいつが否が応でも神なん。ネ申じゃなくて神なん……え、こんな犠牲を厭わないリア充爆破怨霊が神とか終わってまんねん。


まあ、少なくとも歪んでても神は神なん……ご褒美貰わな割りにあわねぇ…



「というわけで神の龍みたいに願いを叶えろなん。葵みたいに過去まで介入して歴史を歪ませられるなら、この半端な意味不明なバッドエンドを回避する事だって簡単なん」


「何を言っているのですか…そんな事をしても何も変わらない。ワタシの守るべき世界はもう………」


「過去に介入してたった1人の人間を消すだけで解決なん。そんな簡単な事も出来んのか、神ってのは……異世界だからとかそんなの通用しないん。ただ1人…桐生柳の存在を最初から消し去れば解決する話なん」



桐生柳を消せば、間違いなくキッシュという存在は消えるだろう。カンナは何とかなるはず…イルムも同様に。何故ならば、真の勇者として葵が頑張ってくれるからだ。多分…


どちらにしても、最初からこれは確定事項だった。想定外な事もあったが、嫁たちを守れって願いは履行不能だし、オラの事忘れてください…うぐぅってのは存在消し去れば消えるんだから覚えてるはず無いわな。



「というわけで、復帰第一弾の汚仕事なん。オイラもろとも桐生柳を消し去れば病んでる葵も居なくなる。召喚されても何とかやっていける……お前さんも神で居続けられチェリアたちも世界も壊れる事も無い。さあ、殺せ…俺の大切な人たちを生き返させる為に」



いまこそ別れめ、いざさらばってな。あ、閉店間際の歌は蛍の光ちゃうねん、別れのワルツやねん。でも、天使にふれたよがええん………俺の知ってる天使はハゲでしたん。






桐生柳という男はボッチのオタでいじめられっ子……いや、それ葵だから。ならば本当の桐生柳という男はどうであったか……まあ、嫌味な奴でしたよ。顔の美醜は個人の見解があるし好みもあるからさておき、奴には常に周りに人が居た……リア充って奴ですねん。


そんなリア充でも悪い女に引っ掛かると落ちぶれるものです……誰とは言いませんが。婚約者に人生を木っ端微塵にされた哀れな道化というのが生前で最も長く根付いた心象となったのは間違いないですよ。


それでも、愚直にも婚約者の帰りを待っていたのは事実。たとえ他に男が出来ていても両親の元へ帰ればそれで良かったと思える程、他人には甘く自分には厳しく…自己犠牲の強いバカな奴だったのは間違いない。それの善悪は別として。


だからこそ、つけ込まれたり利用されたり……婚約者を探す為にブラック企業やらで働き、その賃金を費用に当てた。やがて、婚約者の葬式が終わり生きる目的をも失った彼に残されたのは彼の行為を嘲笑うか彼を更に利用しようとする連中、あるいは見限り見捨てた連中しか居なかったという結果である。


そんな中でゲームやアニメといった非現実に逃げるのは当然だったが、それも割愛しよう。


晩年は外界から孤立…早い話が親と縁切ってボロアパートで蓄えてた貯金を切り崩しながら携帯ゲームに興じるクソニートをやって雷で電撃死したというあまりにも粗末なエンドを迎えたわけだ。


人間1人の影響力というのは小さいようでやっぱり小さい。だが、時たまバカみたいに大きく変容する…桐生柳というあまりにも粗末な人間の影響力は限りなく小さいが、日向葵は別である…まあ、村人と勇者の違いである。


その勇者がたかだか村人の為に人格を狂わせ、世界も何もかも狂わせた。これはちょっとしたでは済まされない恐怖ですよ、まがりまくーれ。


ならば原因を取り除けばいい。消え去った村人は丈夫に出来ていた、ちょっとやそっとじゃ壊れたりなんかしない。でも、消え去った村人は涙で歪んでいた。だから本当は消え去りたかったんだろう…まあ、そんなのどうでもええ。世界に影響なんて無い。影響を及ぼすのは俺が、俺らが愛し愛された愛おしい人たちだ。


さあ、愚かな村人はただ消え去るのみ……長い長い走馬灯という名の妄想だったな。








「全てを受け入れて良かったのか。彼は世界の希望だった。真に召喚しなければならなかったのは桐生柳……彼の思惑によってリセットはされるだろう。だが、逆戻りしただけだ。ソレイユたちが成し遂げた事を今度は彼無しで行わなければならないのだぞ、神よ」



久しぶりに目の前に現れた聖天使がそんな事を告げる。確かに彼の話す物語には嘘も矛盾も含まれ、繋がりも辻褄も合わないものであった。でも……



「これで良かったのです。ワタシたちは多くの犠牲を生み出しました。それは彼によるものも多かった。もっと正しい選択もあったはず。生き残った我々が為す事は彼が願った世界に少しでも近づく事……桐生柳という存在の消えた世界を最初から作り直すのです。まずは彼女たちを助け出します。そして、彼女たちの魂を再び肉体に戻し時を遡ります。今度こそ、争いの無い世界にする為に」


「それは不可能だとまだ気が付かないのか神よ。そして、彼女たちの中には時を遡れば消えてしまう者も居るのだぞ。それを許す程我々は愚かではない……我が娘を消させるわけにはいかんのだ」



魔物の王が顕現し、牙を鳴らしながら威嚇しつつそう告げる。



「守りはします。それが彼の…自ら滅びを受け入れ大切な人を守ろうとしたキッシュの本当の願いなのですから。その為に真なる箱庭に世界を再創造します。全てが等しく過ごせる世界を作る為に」

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