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アバター巣窟…違います、すくつです

脱獄して再び車でぶいこぶいこ言わせる事数十分…え、ぶいこぶいこ言わないだって。あ、車っていってもイノシシに荷台繋いだ馬車ならぬ猪車ですよ。ああ、カツレツ食いたい。猪が隕石にでも衝突したら食ってやるのである。え、無理言うなだって……そうだった、パン粉無かったわ。


傍若無人な嫁がパンが無ければパン粉を食えばいいじゃないとか言うからだ……なんて有りもしなかった幻想を考えつつ獣臭を耐える私は私は私はキッシュ。おゲロなんてさよならねって事ですん。ゲゲゴボオエ…





「どうして味方と敵が居るのか。そこが問題なのじゃ」



チェリアの言葉は的確だった。義体の意識は大別して3つに分かれている。純粋にこの世界や新しい生を楽しもうとする者たち、悲観している者たち、目的を持って動いている者たち。わたくしたちの味方になれば敵対する者も居る。保護している者や、逆に処分した者も……


その中でクレアという義体は別格の強さを誇っていた。シノノメと皐月雨が育てたという点だけではなく、キッシュの…いや、ソレイユの親友だからこそという強さを持っていた。それは義体のみならず心もという意味で。


でも、選ばれし者の義体とそうでない者の義体は強度が異なる。つまり、キッシュの体は特別なものであるという事…逆に言えば、神魂の欠片が無ければ義体は大したものじゃない。そこを利用されてわたくしたちは奪われてしまったのだけれど。


それでも、クレアも劣る義体程度になるはずだった。カスミが余計な事をしなければ。


そもそも、わたくしたち勇者は世界を超えて連絡を取り合える手段を持っていた。ソレイユを欠いた後、それぞれの考えは分かれた。わたくしたちの多くがソレイユの幸せを願った……リーダーとして世界を救った代償があまりにも酷かったからだ。でも、その方法はあまりにも非人道的だと拒む仲間も居た。その最たるのがカスミだ。


静観を決めたのならまだしも、カスミは反対した。今思えばそれは唯一正しかったのだろう…別の世界の人間を探し出す事だけでもかなり難しい。更にそれを呼び寄せる為には禁忌を…ソレイユを苦しめた方法を使うしかなかった。しかも不完全な形で。


その結果が今であり、多くの意識を持った義体の生存であり、女神ソレイユがわたくしたちを怒る事にも繋がった。



「皮肉なものよ。わたくしたちが描いた箱庭の……ソレイユを封印から解き放つ作為が影響した。わたくしたちに味方するのはそこまで辿り着けなかったかそのストーリーを知らなかった者ばかり。敵対するのは、わたくしたちが暗黒騎士団であったと気付く察しの良い連中で、転生したらか倒さねばという歪んだ感情を持つ一部。他は些細なもの………但し、クレアはそれとは別の理由で敵対している。一部の義体も同様に」



それこそがゲームという形で作り出した欠点であり、キッシュという存在が特別な証そのもの…



「義体の耐久性じゃな………じゃが、わらわたちの力ではそれが限界のはずじゃった。稼動は4年が限界じゃと………まさか、いや女神なら可能か」



チェリアも気付いたようだ。義体の元となったのはボケ天使の部下、つまり女神と関わりのあるものだと。女神が…ソレイユが何か細工をしたからこそ今も動いている。それに加えてわたくしたちと敵対する意思を持たされていたならば…


キッシュ並みの敵が五万といるという事でもある。ましてや、そのキッシュが今居ないという現実……いくらキッシュの素体がアホ天使の近親者といえど、女神に洗脳される可能性だってある。


まずやらなきゃいけないのは……






はいよ、キッシュです。ゲロインならぬゲーローゲロヒーローみたいな村人です。神魂の欠片も無いただのアバターです……髪の毛は青系だけど皮膚は普通ですん。でも服は嘔吐色ですねん………着替えたらええんやないかってか。とりあえず、ヴァンキッシュの時の服着てみたん。この世界に合わないんなー。


という事で、猪車で連れてこられたのは女騎士が捕まってそうな洞窟の真ん前……中に居たのは掲示板の危険・注意人物として貼り付けられる程の悪徳プレイヤーばかりでしたん。PKは仕様に無いから危ない輩ではないが、詐欺師メインのロクでもない連中ですわ。


ペット育成詐欺師とか、バザー売買詐欺師とか、コバンザメ詐欺師とか、育成詐欺師とか………オラ、結婚詐欺師じゃないんだってばよ。むしろ、前世は世界中から詐欺されてたような底辺くんですぜ。


まあ、嫁の為に詐欺師になるんですがね。仲間のふりして内部からじわじわと……あれ、オラとてつもない悪人じゃないですか?



「我が名はヴァンキッシュ。君の名は……え、前前前世のじゃないん。今の名前で構わないん…はあ、痛い名前ですね。え、食べ物の名前には言われたくない…よかろう、戦争だ…………って回想してみたん」



覚えていますか、手と手が触れ合った時…じゃなくて、デルタった時云々のお話を少し前にしたのを。あれやったら洞窟が崩壊しました。ほうかい。


計画破綻…どーしてこうなったん?


とりあえず、詐欺師一派はこうして壊滅した。ストーリー詐欺とか言うなし。底辺で働いとっても犯罪行為に手を染めなかったのはオラのプライドたい。そして、オイラは犯罪行為をする輩を倒すなら犯罪行為でも厭わないんなー。矛盾していようがいまいがそれがオイラのジャスティス。


というわけで、ミンチよりは酷くないけど肉塊になった詐欺師集団を再利用して第3軍を作ろうと思うん。程良く色んなスキルを得ているオイラに掛かればゾンビ集団なんて作れますからねー…え、片玉の時にやってるから知ってるって。さいですか。



「さあ、我がしもべたちよ…マン○ン知らんけど、よみがえれーなん。鮮やかにー、れっとぜあびーらいと、りばいぶあそうるなのですよ。バスが転落したって生きられるんだから大丈夫なのですよ。高く飛べ高く空へ高く蹴れ高く声を上げるのですよ」



という事、肉の欠片を集めて夢を飾り祈る…ではなく、フュージョンジ○ックして巨大異形アバターの完成なん。タ○ラントですか、バイオバイオ。


この調子ではぐれアバターを倒してゾンビ化していこうと思う。そして、嫁たちにけしかける…犠牲は出るだろう。アバターのみにではあるが。で、神魂の…クソ女神の欠片が加護となり、クレア以外のアバターは分解されてしまうのであろう。え、○プリカみたいな展開じゃないかって…ええやん、それで妹が助かるならお兄ちゃんらしい事してやるん。それに、どのみち些細な事だと思うんなー…


遅かれ早かれ、全てが無かった事になるのであるならば異物は取り除かれるべきですねん。特にオラのような世界にコント…ではなく混沌をもたらすような存在は不要だと思うん。


だって、そもそもキッシュって響きは某聖なる焔なキャラにインスパイアされたん……だから、巻き込んでアバターとバタバタ倒れても良いと思うんなー。そいで、妹と双子嫁だけがええ感じで生き残ればハゲ天使も余計な事考えんやろ。育毛とか増毛とか頭部の皮膚移植とかロクでもない事考えそうで困る。


でも、ロクでもない事やっちまうのは勇者一行全員に当てはまる事だと思うん。ましてや、シノノメと皐月雨なんてロクでもないアバターの代表格なんよ。つまりオリジナルもロクでもしちでもないん。話の繋がりが見えないなんてつまんねー事言うなし。






「お主たちはそれで構わぬというのか?」


「元は同じ存在なんだよ。だったら、付き合いの長い方に譲るのが筋じゃないかな…お兄ちゃんが好きって気持ちは変わらないし、少なくともボクたちが最終選考で起こした次元介入して起こした落雷が余計な悲劇を招いたなら責任取らなきゃ」


「それに、罪という点ではチェリア…あんたも同様でしょ。あんた、何度やり直したのよ……キッシュの為ならまだしも、恨みの対象である人間たちを救う為とかって考えてたんでしょ、どうせ」



そう尋ねたアーちゃんに対して、チェーちゃんは首を横に振って否定した。



「わらわはもう、人間たちを救いたいなどとは思わぬのじゃ。無論、無闇矢鱈と滅ぼす気も無い……ただ、傲慢な人間たちを心底どうでもよいと思えるようになったのは事実なのじゃ。わらわの居た世界でも他の世界でも人間たちも魔族も機械人も傲慢でしかなかったのじゃ…じゃから、擬似的とはいえアバターたちに女神の封印を解かせようとした。そして、世界に多少の干渉を行える程解けた封印をキッシュが解いた時、この世界は本当の意味で終わるのじゃろう…わらわたちすら巻き込んでな」



チェーちゃんの言ってる事は難しい。ただ、ボクたちが分かるのはチェーちゃんの力を使うと未来が変わるのが分かるって事。少し前に世界が完全に消失する未来が見えたのは忘れていない。


お兄ちゃんの消滅に伴う世界群の破滅…それが回避出来たのはチェーちゃんの力以外にありえない。未来が変わる事、その原因の過去、そこへ至る方法…それがボクたちの能力にある。


最悪、チェーちゃんの力を使って義体の魂に体を譲る前に戻ればどうにでもなれる。むしろ、お兄ちゃんの良さを知ってるのはあっちの方…本物かどうかはさておき、お兄ちゃんの事を聞いただけのボクたちよりはマシなはず。



「とりあえず、これはもう決定事項なのよ。それが終わればソレイユは戻ってくる…その結果、全てが滅んでも構わないと決めて行動を起こしたのはわたくしたち。わたくしたちの本当の願いはたった1つ。その為ならわたくしたちの命なんて安いものなのよ」






命を粗末にする奴はオデが再利用してやるん…といった具合にタイランマッキー以外数名のゾンビを指揮しつつ確実にはぐれアバターの地下組織を潰しまくる事数分…まあ、ところ構わず殲滅魔法ぶっ放して死体回収してゾンビ化させてるだけなんですけどね。誰が傘社やねん、叡智なんて持っとらんわ。


だいたい、本当の世界にアバターなんて必要無いん。クレアだけ残して後は消え去るべきだから大丈夫なん。ウイルス抗体…もとい、神魂の欠片があれば何となるかもしれんのん。


偽りの世界はもう要らないと思う。そして、勇者でもこの世界の住人でもない村人軍団は尚更要らない。世界を混沌に導くド外道として新生勇者軍団に倒されるヴァンキッシュを演じましょうかね。



「さあ、茶番劇せんそうを始めようか」



この荒れ果てた大地に、偽者アバターたちの血で潤いをってところなん。

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