『ガン・オブ・バレット』導入
『ガン・オブ・バレット』
新たなる武器、銃の導入と共に開かれた新しいステージ。それには機械仕掛けのアイアンメイデンに導入されていたロボットバトルを発展進化させたプレイヤー同士の戦い、所謂PvPが導入された。
ストーリーもそれに準拠して、PvPを繰り返しポイントを得てランクを上げる事により進行していく。ランクを上げる時にはPvPではなくNPCのボスを倒すという進行法ではあるが…まあ、順当なものであろう。
だが、これが「死銃」と呼ばれるに至る根本的な欠点があった。
このストーリーでは銃と拳、鎧以外の武器に下方修正が掛けられる。つまり、レベルを上げて物理で殴るのと防御力は保持されるが、剣とかで斬るより銃でパンパンしろよにぃって事だ。普及させる為のクソ仕様ですよ、分かりたくねぇ…更に魔法も回復系以外は阻害されるという酷い仕様。だからこそロボで手に入れた鎧が役立つ。むしろ、無いと酷い目に遭う。
クソ仕様はさておき、ストーリーの話だ。プレイヤーはガンマンとして個人あるいはパーティ、もしくは複数のパーティあるいは個人からなるチームに所属してそれぞれ同規模の銃撃戦を行う。それを主催しているのがコロシアムのオーナーであるおっさんこと、トーザ・マペットを最終的に倒すのが目的である……いや、その目的理由がさっさと倒して銃以外の武器を普通に使わせろ。出ないとお前をムッコロさんって事なん。ヘイト集めてるんなー。
そして、おっさんの前には色々立ちはだかるボス…裏ストーリーではその中の1人あるいはパーティ、チームとなってプレイヤーたちをパンパンするのが目的となる。銃で相手を狙い撃つじぇって事やねん。銃マニア向けのストーリーなんやけど……オイラミリオタじゃないからよく分からないよ。パンツじゃなくてもパンツァーもよく分からないよ。
さて、このおっさんが勇者である……はずもない。マペットいうとるやん。操り人形なんよ。裏ストーリーでは出ないラスボス前のセミラスボス…にして、ラスボスのガトリングガンより強い銃と何物にも負けぬ最強の拳を持つ双子、アレアとカレア。容姿は金の髪にそれぞれが左右対象に眼帯をしている……何処ぞの黒うさ軍人と5番目みたいな容姿です。そして、操り人形は出るのに裏ストーリーでは出ないという不思議です…突然セミラスボスとして現れて倒せるわけないって強制負けイベントを起こす困ったちゃんたちです。
でも、オイラと仲間たちは倒してしまったんですが。バグってハニったんでしょうか…いやいや、きちんとバグ技でレベル上げまくったのと最強装備揃え過ぎてたあいつらが悪いん。オラはカンナと一緒に後方支援してただけなん。どうしてあいつらあんな強さのボス相手に互角な戦い出来たんやろ…
だから、牢屋行きフラグ立たなかったので現在再現中やねん………なんでやっ!?
◇
わらわたちが眠っている間、勝手に転移させた事の仕置としてキッシュには牢へ入ってもらったのじゃ。
「キッシュの奴、少しは抵抗すると思っておったのじゃが素直に行きおったな」
「いつもは殴り倒すのに、それしなかったからじゃない?」
イルムの指摘はもっともなのじゃ。殴ったところで解決する話でもなければ懲りぬのは目に見えてある。それに転移した先が銃撃戦の真っ最中でわらわたちの乗った戦車を庇いながら奮戦していたと聞けば怒る気も失せるのじゃ。
そこへ救援に来たのがわらわたちのかつての仲間…
「それにしても、ざまぁないわね。あいつに任せてグースカ寝てて…それであの仕打ちは無いんじゃない?」
「あはは…アーちゃんそんな事言っちゃダメだよ。どちらにしてもこの世界の不安定はボクたちの責任なんだから。むしろ、間に合って良かったと思わないと」
亜人族の勇者にして銃の勇者アレアと拳の勇者カレア。こやつらはわらわたちの共犯者であり、切っても切れぬ戦友という関係じゃ。
おそらく、カレアのもつ未来視の魔眼の力で全滅を回避する為に駆けつけたというところじゃの。じゃが、この世界が不安定というのは聞き捨てならぬ。アレアのもつ過去視も併用すれば回避は確実。それに……
「………待て、お主たち。神魂の欠片はどうしたのじゃ?」
「そ、それは……」
柄にもなくアレアが狼狽した…訳ありのようじゃの。
◇
臭い飯はまだですか?
後、この世界に食い物あるんだけどロクなのじゃないから…いや、単に嫁たちと運動してから転移してドンパチしてたから飯食ってないだけですねん。リボルテックシューターに変形する細工してなければ真エスカリボルケインで倒せなかったん。真エスカリボルケインは杖と銃と剣の属性を持ったハイブリッド武器に該当したから助かったん。
嫁たちの中で使えるのは鎧のみです…が、鎧の一部を武器に転用出来るから強いん。つまり、オラが未だに最弱ですん。だから、未だに牢をぶち破れないん…確か、ストーリーでは助けが来てラスボス戦に行くん。でも、腹ペコやねん…
その時、気配を感じたん。少なくとも嫁たちとは違うん…
「キッシュ、助けに来たぞっ!」
「兄貴、無事か?」
はて、何処かで見たオレンジ頭と緑頭なん………ああ、シノノメと皐月雨っぽいんなー。というか、オラは助けに来られる状況違うん。助けに来るならカツ丼とピザと蕎麦とミックスグリルくらい持ってくるのん。
「とりあえず、メニュー持って来いなのん。オラを助けたかったら腹満たさせろなのん」
「うわ、変わってねぇ…」
「兄貴、相変わらずだよな」
お前らのその反応も相変わらずなのん。何よ、その呆れ果てた風な顔は…チャット時代の顔文字と大して変わらない反応なんて見とうなかった。
だいたい…
「助けに来たって何様のつもりなのん。オラは今、嫁たちと日々を楽しく過ごしとるのん…嫉妬か、嫉妬なのか。爆発させるつもりなのか?」
「いや、違うし」
「ボクたちは兄貴の嫁になる為に来たんだ」
ホモォ……ああ、錯乱しました。別に同性愛に対する偏見とかは無いんよ。だからロリコンも認めろって話だけで。え、ダメ……別にタッチせんし。うちの嫁はロリババアばかりやし。
とはいえ、オイラは掘ったり掘られたりするのは芋だけでええん。いくら友達だって蹴る事が出来るキッシュくんですよ、オラは。
「キッシュ、変な事考えてると思うけど違うからな。きちんと説明するし」
シノノメがそう言うなら聞いてやらん事もないん。ただ、食い物が伴うべきなん…手持ちの携帯食料でええから寄越すが良いなのん。
◇
全てをというにはわらわは知り過ぎているので簡単に説明をする事にした。アイリスたちには後で説明せねばならぬの…じゃが聞かなければ良かったと思う事態であった。
「……義体に奪われたじゃと。そんな事があるものなのか……」
「それが事実なんだから仕方ないでしょ。カレアもおんなじ……しかも厄介な事に義体は他の元プレイヤーの義体をも率いてこっちの義体軍団との戦争をしているのよ。自分たちが本物だ、だから体を返せってね」
こちらにも元プレイヤーの義体は沢山あるという事じゃが…ただ、どれもこれも本来ならゲーム終了と同時に魂の繋がりが切れてただの肉塊に還るはずだったのに、まるで生きているかのように動き続けておるという。それは想定では決してあり得ぬ事じゃ。
そして、その現象はアレアとカレアが使っていたのも同様という事じゃ…そもそも2人には該当する者を、すなわちキッシュを探すという役割があった。いや、押し付けたと言った方が正しいのじゃ。
それぞれの役割についてはともかくとして、キッシュの仲間としてキッシュを導いた…その結果がそれではあまりにも不憫じゃの。
◇
「…つまり、テメェさんたちは魂を移した際に女神に本体乗っ取られたって事なんなー…え、何それ。そんな特殊能力あるならオイラ、ツインテ幼女になってレスキューしたいわ」
「いや、マジな話だからな」
マジマジマジー○言われても、中身が幼女なマッチョマンとか微妙ですたい。シノノメがこっちを睨んでるけど、普通は逆だろ…中身おっさんな幼女とかならよくある展開だけどよ。
だが、全てを疑うには至らない根拠もある。実質リーダーにしてわりと強いはずだったのにこいつらに敵わなかったザコリーダーが居るんだよ……オイラだよ。
というか、こいつら実装前からやたらと強力な武器とか銃とか使ってたし…もはやチーターでもビーターでもなくビチターなんと思ったのはオイラだけだよ。
だが、さっき会った金髪眼帯の双子嫁が乗っ取られたというのにも釈然としないものを覚える。違和感があったなら魔王嫁が気づくはずなん……むしろ、前の世界で似たような展開だったから疑り深くなってるのに通用せんと思うん。
というか、よくある展開なん。ゲーマー舐めんななん…どちらかが偽者なんてありきたりな展開ではなく、どちらも本物という名のレプリカと燃えカス、あるいは肉体と精神の分かたれた存在だと思うん。さすがに偽者は無いんじゃないでしょうかね。親友だった連中の体を奪ってボドボドにする女神なら殴るじゃ済まさんぞ、ワイは。
だが、解せんのはそれがシノノメと皐月雨にのみ適応したのではないという点だ。こいつらと組む前、あるいは表ストーリーを終えてレべリング眼で組んだ連中などなど…もしも、俺と同じ境遇だったら集団転生ストーリーに早変わりですぞ…村人Kには荷が重いん。オイラはココでリタイアするから誰か代わりに女神倒してこいや、オラはハーレムと生きる。壁だけは沢山用意してやるんなーって展開で構わないよね?
まあ、そんな展開になるわけないですよねー…
「…全員が全員、お前ら本体と争っているって感じじゃなかったのん。プレイヤーのアバターにも勢力があるのじゃろうなん」
少なくとも双子嫁がレスキューに来た時点で争っていた片側は撤退戦に移行したん…あれ、じゃあ明らかに目の前のこいつらの方が敵ジャマイカ。
いや、表ストーリーを準拠しているならコロシアム側に属する方が敵性勢力ですけどね。正直、悩むわー…どっちの敵になっても味方になってもメリットないん。いや、仲を取り持つ方がええんやけどな。トリモツは煮るので頼むん。
「……1つ尋ねるのじゃねん。アイツももしかして居るん?」
「…ああ、アイツ。アイツね…勿論居るけど。というか、『あずさ○号で旅立つのん、ばいばいありがとさいなら』とかって勝手にパーティ抜けてったのそっちだろ」
「それは仕方ないんなー…ガセ情報に惑わされたのも悪いけどお前らと行動共にしてたらくぎゅうたち育てられへんかったし。まあ、アイツが居るなら仕方ないん。お前らに助けられる事にするん…嫁たちに置き手紙しておくんなー…『少し自分を見つめ直す旅に出ます。え、鏡見ろとか言うななん。臭い飯用意してないのが悪いん。良い麦とろ飯を用意して待っているのん。追伸、俺はホモォじゃない』…これでええのん」
ではでは、脱獄するとしようかのん。嫁たちならどうにかなるべや。むしろ、嫁たちよりも肉親と推定されかねないアイツが居るならどげんかせんといけんだがね。
では行くですか。サブアバター「クレア」の元へ。




