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5人の嫁と機械の世界その2

この世界にやってきて早半月…わらわたちは未だ敵はおろかキッシュとも会えておらず悶々とした日々を送っておった。


わらわたちは転移された紫の国のあった土地より北側に面する白の国に拠点を移して久しい。白の国は比較的に地の鎧と思わしき被害は受けておらぬ…隣国の赤の国と青の国、更にそれぞれの隣国である黄の国や緑の国に紫の国を挟んで対岸の国となる黒の国の被害は酷いというのに…もっとも、紫の国の領土の大半は白の国が吸収したからというのもあるのじゃろう。いわば人質が居るので手が出せぬという事じゃろう……あのブランという姫は白の国らしからぬ黒さを持っておる。


そんな事を考えながらも他の国の鎧技師メカニクルや連合に参加しておる鎧装士アーマーナイトなどらから話を聞いた…キッシュの話を裏付けるためじゃ。優勝決定と同時に乱入してきた紫の国の鎧装士アーマーナイトたちと地の鎧らしきものを纏った女王…じゃが、どうやらそれは本物の地の鎧ではなかったようじゃ。そもそも色も武装も異なる。じゃが、その鎧や量産型らしき紫の国の鎧は格段に性能が良かった……キッシュが言うておった事には「デスアー○ーかと思った」という事じゃが意味は分からぬ。


そんな中でブランを中心とし、キッシュたちを軸とした6国連合の前身となる集団は苦戦しながらも女王を討ち取った。までは良かったのじゃがキッシュが去った後に残党が地の鎧を持ち出してきたという見解は誰もが統一したものであった。


キッシュの話と差異があるのは否めぬが、キッシュとて詳細を知っておるわけでも無かろうし目を瞑るのじゃ……が、地の鎧を作ったのがこの世界の民という点は解せぬ。クロバーの出自は本人にすら分からなかった程遥かな昔…女神が作ったと言っておった。その事実を聞かされながらもクロバーは女神を敵として戦い抜いた。じゃからこそ、少しの疑問が生じたのじゃが真実は分からぬ。


それはさて置き、闇の斧を含めたわらわたちの武器は特殊な作り方によって誕生したものじゃ…もっとも、その特殊な作り方以上の事をするキッシュも居るのじゃが。それを易々と出来る者は他には居らぬ…からこそ簡単に作られたなどと言われれば釈然とせぬ。


そして、その作成者の子孫と言い張るのが連合のリーダーと幹部…つまり、キッシュが言うところのNPCなのじゃ。


白の国のブラン

黒の国のプレート

赤の国のコキノ

青の国のアスル

緑の国のグリュン

黄の国のトゥリノ


正直言って、キッシュと同じ意見じゃ…胡散臭い。それはわらわたち共通の認識じゃった。難民の所へ行く以外は常時誰かしらが同行し監視しておる。一方で鎧の製作もしておるようじゃ…


わらわたちに与えられる簡易型の鎧「七変化ランタナ」は連合の一般的な鎧じゃ。しかし、残念な事にわらわたちに合うサイズではないのでサイズ直しに時間が掛かっておる。無論、サイズを測ったのはブラン、コキノ、トゥリノの女性陣によるものじゃ。男共にされたなどとなったらキッシュに見捨てられるからの。


コアはブラン以外の面々からの提供じゃそうな。キッシュのライバルであった鎧装士アーマーナイトの面々は既に倒されこの世には居らぬらしい…そのコアに細工をされたらわらわたちは生きながら人形のように働かされるという懸念はしておるが、その対策は既にキッシュがしておる。


わらわは左手の指輪を見る…少なくとも、これがあれば洗脳などという事にはならぬのは先の戦いで証明されておる。状態異常無効などという付与をしておるようだからの…そんな事をしておるからこそ、キッシュがわらわたちを見限ったとは思いたくない。しかし、何ともいえぬ状況じゃ。


いや、キッシュは残ってあのバッタもんの残党狩りをしてから来るはずじゃ……そして、わらわたちは紫の国の残党狩りか。あまり良い感じはせぬな…じゃが、状況が大和とここでは違い過ぎる。そして、万が一にもキッシュが敵であったなら………わらわはどうすれば良いのじゃろうな…









「やっぱりおかしい」



どんなに難民の所へ行っても水が売れない。1人くらいは飛びつくと思っていたのに…キツネのミネラルウォーターってネーミングが化かしてると思われているのか。あるいは……そう考えるとご主人がこの世界のヒロインの話をあまりしていないのも分かる。


そもそも、ご主人は6人の中から白の国のブランを選んだのは胸だけのはず……まあ、後は最初にくれるコアが光属性だからなんだろうけど。「俺は光の戦士だ〜」とかって言ってた気もする。ご主人だから仕方ないけどね…で、コアを見せてもらったけど普通の宝石みたいにしか見えなかった。


ご主人から貰ったあの砲と剣にある宝石とあまり変わらない気もする…これもコアになるのかな?


それらさておき、ご主人が鎧に執着していたけどNPCの事はあまり言ってなかったのを鑑みてみる。牧場が終わった時、蓮華の母の蓮華……ややこしいけど、母蓮華を狙っているって話はちらっと聞いた。胸が大きくてもキャラさえ良ければ何とかしようとするのがご主人だ。けど、何も言わなかった……むしろ、頼るならご主人の敵であろうプレートが頼れとまで言っていた。単にご主人が闇のコアが欲しかっただけかもしれないけど。


ご主人の代わりに色々調べないといけないかもしれない。ご主人なら何でも調べるけど、あたしは気になる事しか調べない。こっそりとね…








「これで一通りのセットアップが終わりました。後は起動してくれれば完了です」



アスルさんの言葉に従ってオレたちは鎧を起動する。ここ数日で調整が済んだ鎧をオレたちはそれぞれ最終調整に付き合わされていた。アイリス、蓮華、そしてオレで3人目だ……


そして、どれも等しく洗脳の呪いを指輪がレジストしていた。言うまでもなく、胡散臭いとしか思えなくなるレベルじゃない。


そもそも、最早どちらが正しいかは明白だった。チェリアさんは元より、ゲガエルとかいう天使、両親。そして橘一族が…勇者が守ってきた世界を地の鎧となったクロバーという勇者は破壊者として壊す側に立つだろうかと。


だから、こういう結論に達した。「敵は6国連合にあり」と…むしろ、キッシュさんをいいように利用しようと目論んでいる時点で敵だとも思えてきた。従って利用しようというのがオレたちの考えだけど……



「では、リンドウさん…いえ、リンドウ。以降は僕の指揮下に入ってもらいますよ」


「………了解しました」



演技でも洗脳された振りがどこまで出来るのか…勿論、変な命令をされたら振りを止めて殴り飛ばして構わないとは言われている。まあ、コアさえ手に入ればってイルムが言っていたからあと2人分手に入れればどうにでもなるけれど。


オレ、そんなに演技は上手じゃないんだけどなぁ……はぁ……









わっちが緑の国のグリュンの配下の振りをし出してから数日……色々と分かってきた事がある。


連合などと言って地の鎧を抜け駆けして探そうとする緑の国の一団。勿論、表面下での話で、それは他の数国も同様に行っていた。それはまるで………ううん。侵略そのものだった。緑の国は赤の国を。赤の国は青の国を。青の国は黄国を。黄の国は緑の国を…隣国ではないからこそ出来る凶行。この烏合の衆の化けの皮が徐々に明らかとなってきた。勿論、わっちたちがその凶悪な行為に走る事は無い。むしろ、水面下だからこそ愚行を止めている。



「もう十分。これ以上はバレる」


「そうじゃの…とはいえ、イルムの分がまだなのじゃ。黒の国の仔細も掴めぬし…」



4人の鎧技師メカニクルの監視を逃れ、待機場所として使われているテントでわっちたちは今後の事を話し合っていた。キッシュ殿と離れてもうすぐ一月……もうそろそろ我慢も限界だった。わっちが聞いたところによると鎧の勇者が課す題目が無ければこの世界から出るに出られないとの事…わっちの時はつららさんが代行してという事になっていたらしい。つまり、わっちたちはキッシュ殿を捜す為に出奔してこの連合を裏切らなければならない…正直、未練は無い。



「ご主人が居ればどっちが悪者でも楽勝でしょ…ご主人なら、この世界ごと消し去れるだろうし」


「そうされて困るのだが………」



不意に、第三者の声がテント内に響く。そこに現れたのは黒の国のプレート殿であった。








わたしたちは身構える。けれど、プレートは両手を上げて敵対の意思が無い事をアピールしてきた。



「勘違いしないで欲しい。俺はあなた方にも英雄キッシュにも敵対するつもりは無い。むしろ、味方とまでは言わないまでも利害の一致はあるつもりだ……少なくとも、俺は人間だからな」


「…お主はという事は、少なくとも他の連中はそうなのであるな……」



わたしたちが調べた1つの結論…そこには、この世界の多くの人は人間ではなく機械人であるという事。そこにはトゥリノたちも含まれている。機械人は殆ど水分を欲しない…レンの水魔法で出した水を飲んだのは極僅か。そういえば、プレートも飲んでいたのを思い出した。



「今、黒の国は……いや、この世界は紫の国という脅威の皮を被る見えない敵との戦いに躍起となっている。が、そこに絡むのは単純な暴力の連鎖だ。そして、英雄キッシュを擁した白の国が勝ってしまい付け上がった事により、その連鎖は苛烈を極めている」



全ての黒幕はブランなのだと彼は暗に告げた。パパは腹黒嫌いなのはつららの時に分かってる……ちょっと安心した。



「どうしてそこまで理解していて何もしないんですか。キッシュ殿が居ないのであれば真実を公表して戦えば……」


「全ては白の国が元凶…そう言ったところで証拠は無い。仮にあったとしても、それはおそらく英雄キッシュが居なければ解決出来ない程のものであるだろう……例えば、地の鎧とかな」


「地の鎧を白の国が持っておると?」



確証は無いと彼は言う…けれど、かつてパパが倒した紫の国の女王の鎧「銀杏イチョウ」は「七変化ランタナ」はさておき、一流の鎧装士アーマーナイトが使う鎧さえ太刀打ち出来なかったらしい。でも、パパは見事打ち勝った……らしい。


どちらにしても、鎧技師メカニクルの作る鎧には限界がある。それを覆した上で鎧装士アーマーナイトにもなれるパパの存在は稀有という事になる。やっぱりパパは凄い。



「……とりあえず、ブランが今回の黒幕にして最終の敵という見解にしておくのじゃ」



ママがそう言うならそうなんだと思う。パパもそう思うと思う…わたしもそう思えた。むしろ、カタタより露骨過ぎる。三下以下の三下…つまり四下だ。でも、地の鎧がある上で機械の体なら露骨な程の強さを持っていそう。



「なら、プレートからコアを強奪すればここはもう用済みだね…というわけで、寄越せコノヤロー」



イルムは目的の為なら手段さえ選んでこなくなってる。幼すぎるからって未だに鎧さえ貰えてなかったのが一因だと思う。


でも、ずっと着けてないといけないこの鎧より下に着ているパパ謹製の服の方がよっぽど強いから意味無い…それで、イルムはかなり強いから無い方が良いはず。



「きちんと渡すから心配するな。しかし、今後の事をどうするのか聞かせて欲しい。英雄キッシュの事を含めて」



パパの居場所らしき場所は既に特定している。イルムが言ってくれた「神魂の欠片の共鳴」でだいたいの居場所は分かってる。かつての紫の国中央に位置する今は亡き王都…わたしたちが転移してきた場所の地下深く。


そこに2つの反応があった。

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