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残りし者への賛美歌、残せし者への鎮魂歌

「…つまり、残留思念ってやつですね。そうですね」



先代蓮華を悪霊退散しようとしたら、出来なかったんだど。イルム殺してオラも死ぬべやと言ったら、そんな説明してきた…つまり、オラは神父様の格好になって悪魔払いしなくてもいいんべか?



『おそらく少しの間だけこの体を借りてお話するのが限界でしょう…そして、しっぽの残留思念であるわっちは分かたれてからの事は何も知りません』



つまり、バックアップですね。分岐点セーブですね…中か外かの選択肢でCG回収するの面倒だよね。え、全然違うって?



とりあえず、義母蓮華とはいえ嫁蓮華を産む前に分かたれたしっぽの…早い話が記憶喪失して攻略対象の生娘ってわけだが残念、霊体だって事だ。つまり、これはイルムのパワーアップイベントなんだな。どこまで強くなるねん。



『キッシュ殿。この世界は歪んでいます…そして、この世界を生んだものも歪んでいるのでしょう』


「ご先祖が歪んでいるって言いたいんだな、知ってます」



むしろ、介入しておかなきゃいけない程歪んだむ。7本の剣もいいけど銃も捨てがたい…が、俺は嫁の電池として生きる。イルム背負わされそうだな…まあ、負ける未来は今のところ見えないから構わないんだが。



『ご先祖様もそうですが、勇者と呼ばれた存在そのものが歪んでいるのです…世界を救うつもりが世界の要であった女神を封じた。その再現をわっちはの一族は何の迷いもなく繰り返しているのです…まるで戒めのように』


「なるほどポン」



俺は手を叩いて納得する。橘一族は真性の自虐思考の元で生かされていたのですね。ロリババア、ハゲ、ドエムに続いて自虐思考…確かに歪んどるわ。ロリババア以外は救いよう無いです。残りの勇者たちはどうなのか不安ですねん…裏ストーリー知ってるから大概察してるけどさ。



『だからこそ、これは遺言です。キッシュ殿…どうか歪みを正してください』


「2回も遺言言うとか図々しいな、お前」



歪みを正したら不しか残らねえって漢字遊びしてもいいよね…というか、歪んでる俺に世界の歪みとか言われてもなぁ。ねじ切れるんでないか、世界とかが。別に歪みを正すのは構わないんだけどもさ…正しい事は人それぞれだからなぁ。



「娘を頼むってならまだしも、世界を頼むとかってどれだけ横暴やねん。世界の事なんて俺も正直どーでもええねん。嫁に危害を加えようとしたクソ女神を殴るだけだっての」


『……そういう人でしたね、キッシュ殿は。やられたらやり返す…その所為でどれだけ振り回されたか』



それはただヒヒイロカネを低確率でドロップする魔物を狙い倒していただけの話だと思うん。他のパーティメンバーにはバカスカ出るのに俺には出なかったのが悪いん。お陰でろくな装備作れなかったから鎧はアダマン止まりだったわけだし。俺って運が無かったなと思うわけですよ…まあ、その装備の数々すら何処かに消えていったわけで。だが、希望はあるかもしれない。



「とにかく。歪み云々の話はやれたら出来る程度だ…そもそも転生なんて歪な事をしてる俺自体が元凶の1つみたいなものだし」


『転生ですか……わっちたちと似たようなものですね』



何か変な事を言い出した。亡霊蓮華曰く、橘一族の祖先ロータス・シトラスは12のしっぽ持ちの化けキツネだったわけだが、その子は並みの化けキツネなわけだ…が、それでもしっぽはあった。で、初代の9本を足したら何本になるかって話だ。つまり、今の嫁蓮華は足されただけで自分の力を覚醒していないわけですねん。そして、それは初代以外の歴代蓮華にも言える事…それって劣化しとるだけやな。



「何処が似とるんやっちゅうねん」


『受け継ぐという点においてです。1媒体でしかなかった義体に魂が宿っているのですから』


「義体言うなし」



クボタイトと某死神は俺には無関係です。ちょっと都市に戻って子ども出来る体が確かめなきゃいけない気がしてきたの…というか、目を背けてるけど俺自身の謎も沢山あるわけで。それを知ってるのは魔王嫁とハゲとドエム…後、故人の自虐キツネに他数名。まあ、チェリアは知っているんだろうけど問い質す気も無いし構わんですけど。



「で、娘に会ってやるのか。今なら感動のご対面出来るぞ…蓮華も喜ぶはずだ。仮に残留思念だったとしても」


『それは………無理でしょうね。考えてもみてください。わっちは1人で子を成せる生き物でしょうか。そうでなければどう子を成したのか……何年も孤独でいた本体ならまだしも、残留思念ですからね。無理矢理作られた子を愛しいと思うものでしょうか…』



いきなり重い話になった。少なくとも身近に男は居ないわけで、プレイヤーとだってそんな話は無かったなと思い至る。というか、先代の父は、祖父はって話になっていくとややこしい話になってくるわけだ。アイリスとは違った意味で、これ伏線ですねと思うわけですよ。次回、裏ストーリーは父と娘の戦いってところですねん。で、おそらく父は魔族なんですな…



「あー、うん。辛辣な言葉は要らない。俺の嫁を傷付けるなら毒親だって倒すからな」


『それでこそキッシュ殿ですね。ではわっちはまた眠りに就きましょう…』


「イルムのパワーアップイベントは何処やねん」


『ありませんよ?』


「人の大事な嫁候補の体を拝借しといてレンタル料も払わないとは………やれ、イルム」


「あいさー『え、ちょっと待っ…』待ては無い」



イルムが泥ママから慰謝料をもぎ取ったようだ。しっぽが9本になったし、悪霊退散したらしいから普段のイルムに戻った。というか、何しに出てきたんや?


世界が歪んでるのなんて知ってるし、蓮華の父が誰でも構わない………俺の親って誰になるんやろか?


まあいいや。考えるの止めてイルムのファッションショーならぬフォームショーの続きやろう。きっと、使い道はそんなに無いだろうし…鎧と銃がこの先メインになっていくからなぁ。それ無くてもイルムならどうにかしそうで怖いけれど。









で、更にショーを続ける事数十分が経過…何か、猥褻な事をしていると勘違いされて風呂から出てきた嫁たちに叱責されとるワイが居るん。そんな事したいけど節度はあるん。ヘビ・ワニ・クジラのビニラフォーム(仮称)で神秘の魚になったイルムも悪いん。人間はみんな大変なん。



「もう少し我慢出来ぬのか、お主は…」


「パパ、破廉恥」


「キッシュさんにしては我慢していたと思ってましたが…そういう事をしていたんですね」



3人の視線が死線のようなのだ。自分でも言ってる意味分からん…とりあえず、イルムに手を出しても不都合無いとは思うんだ。さっき蓮華に指輪渡した時、一緒に渡したんだもの…ネトラレ怖いですからね。でも、まだ手は出してない。出したら嫁たちに飽きそうな展開になりそうですからのぉ…だってイルムはこんな叱責しないもの。



「ご主人、ワガママな汚嫁たちは躾けておくから、蓮華と一緒に初夜を楽しんできて」



ドラキラフォーム(仮称)になったハイパーイルムたんが3人の前に立ち塞がる…ボス戦ですね、分かります。という事で俺は蓮華の手を取り部屋を飛び出した…部屋の外は真冬並みに寒かったが気にしない。






「チェリアたち、嫉妬は見苦しいって思わないの?」



あたしはご主人と蓮華が部屋を出て行くのを見届けた後で、そう声を掛けた。



「それはキッシュが犯罪的な事をしておるからで…」


「言い訳無用。ご主人が犯罪的な性格なのは誰でも知ってるし、さっきのだってあたしの鎧作りの参考って言ってた。犯罪的に見ようとするからそう思うんだし、それがご主人を傷付けてるって思わないの?」


「それは…」


「………あたしが未だ嫁候補で甘んじている内にその態度改めないと取るよ。ご主人の横も、その命さえも」



これは本気。それを感じ取った3人が震え上がる。でも、ここまでご主人を否定する必要があるのかとも思う……もしかしたら、アレはあまり良くないものなのかもしれない。あるいは、あちらか。どちらにしても神の曰く付きなんて信用出来ない。







「そうですか。母様の残留思念……」



蓮華の間…というか部屋に移動中、俺はさっきの出来事を話した。まあ、大した事でもなければ誰も得しない話だ。蓮華の覚醒の件……知らね。どうとでもなる話だし、覚醒して肥大化したら泣く。間違いなく発狂する。駄肉は要らない。



「まあ、たちの悪い亡霊みたいなもんだよ。お前が産まれてくる事に嫌悪すらしていたらしいからな…変な期待はしなくて結構だ。それに外見はイルムなわけだし」



ロリ同士のイチャイチャは構わないけど、母と娘の感動的シーンには端から見ると思えませんぜって事やね。それに支社の使者は試写で死者したって事やね…言いたかっただけです。死者の事は生きている奴が勝手に解釈すれば良いのであって、都合良くすればどうとでもなるものを今更何だかんだ言われたら蓮華が悩むだけだろ。


考えてもみろよ、あの残留思念は蓮華の存在を恨んでるのに本体はその蓮華が倒したって事だろ…対面させてたらろくな展開になってないぞ。イルムに処理させて良かった良かったって話にしよう。


さて、そろそろ現実逃避から戻ってこようと思う。既に蓮華の部屋に辿り着いてはいるのだ…が、問題が1つ。蓮華が引っ張り出してきたのは由緒正しい布団。何でも、代々使ってきたもの…ただのボロボロ煎餅布団ですよ。ダニだらけにしか見えんし、それで初夜を迎えるのは御遠慮願いたい。



「キッシュ殿……そうですよね。残留思念なんか関係無いですよね。今はわっちと2人の時間です慰めではなく夫婦として今宵は楽しみましょう」



ボロ布団を見ていた事が災いしてキツネ嫁に押し倒されたでござる。エキノコックス怖いです、ダニも怖いです…後で浄化魔法掛けとこうと思いつつ夜は更けていくのであった。半ば自棄で。

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