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ありのまま、わがままに

遠洋漁業してたら下から潜水艦が激突してきたでござる…って事に近い状況になってるキッシュくんです。え、唐突過ぎるだろって…


いや、まあ魚を求めてこっそり抜け出して海にやってきて、木材で作った舟に乗って波の間に間に漕ぎ出したまでは良かったんですよ。ある程度岸から離れた所でヒヒイロ投網を構えて投げ入れようとした瞬間にゼ○ットじいさんみたいに鯨に丸呑みされたん。しかも、巨大な鯨なん…え、ここは夢を○る島ですのん?


なんてボケるのはこれくらいにしておこう。魚を求めていたのは事実ではあるが。


もし、最後のボスを倒して帰ったらタヌ雪がありのままに攻撃してきて少しも寒く無いけどゾッとする展開になるのは間違いないわけですよ。だが、それを味わうのは誰か…蓮華だって話。ここで本日のイルムの行動をおさらいしてみよう。蛇を倒して帰ったらタヌキ娘が襲ってこなかった件と言ったらお分かりいただけるだろう…つまり、蓮華が在宅していたらイベント回避したんやね。そこで俺が鯨を倒して帰ったらタヌキ娘と雪ババアのイベント回避の可能性が生まれるわけですよ。根拠無いけど…


だから、こうやって遠洋漁業の振りしてわざわざ食われてやったわけ。脱出方法も考えないままに…無謀とか言うな、無策なだけだ。それにどうせ穴の事もある…きちんと投網は食われる前に投げ入れましたとも。おそらく穴を封じる事は出来た。後はこの鯨を内部から倒せば済む話…で、脱出失敗してもこの鯨と一緒に海底深くで眠りについてしっぽ揃わないまま旅は終わるって事やね。あら、自己犠牲で万事解決出来るやん。


いや、転移出来ますがな俺…美談にならなかった。このまま鯨の内側から少しずつ食べていって暮らすのも悪くないんでないかとも思うが嫁たちが倒しに来ては本末転倒。さっさと倒して帰りますかな。にしても、この手の巨大魔物ダンジョンって普通の魔物がどうして住み着いてるんですかね。というか、寄生された上で食い荒らさらてるんのとちゃいますか?






1人でウネウネと動くダンジョンを歩くのは気持ち悪りぃ…だが、嫁たちが一緒だと触手とか出てきてアーンな事フラグだったから1人で良かったなどと思いながらも進む。まあ、触手状の魔物は居なさそうだけれども…その代わり魚の魔物も居ない。腹いせにそこら辺の肉壁を抉って焼いて食う…魚っぽくないので萎える。後、とっても不味いです。部位が悪かったんだろうと思う事にした。俺、来世は小島の野良猫になって漁師から魚もらって生きるんだ…


口から喉、喉から食堂…いや、食道の肉壁を食べたが不味かったので胃の方へは進まない。消化されないように注意せねばならぬし、こういう時の定番は心臓か脳をぶち壊すと相場は決まっているわけだ。後は寄生虫を倒すか…


まあ、どれでも結果は同じですがね…これがただの鯨じゃなかったらの話ですが。ボスだよな、これ…フェイクってオチないよな?


いや、無かったようだ。一度口まで戻ってきたが他にルートは見当たらず…吶喊するしかないんね。まあ、どうにかこうにかすれば消化液とか防げるけどもさ。







食道の先は広場でした。土管のが横に積み重なって中央に置いてあったん。え、歌でも歌わないといけないん?



「遅かったな、愚かな冒険者よ」



土管の上に人魚……もとい、胴体だけ人間体の鯨の妖怪が現れた。しかもオス…需要の無いムキムキ野郎。色んな意味で食いたく無いです…


ここは普通の人魚で良かったところだよな、おい。それにせめてメスだろ。担いで重石代わりにしてクリアして後々賢者になるパターンだろうよ…あ、イルムに人魚モード覚えさせればええんか。



「貴様が話に聞く魔王様を誑かした男だというのは分かっている」


「やらないからな」


「魔王様を洗脳して自分のものにするなど浅ましい男よ」



話が通じてません。俺はノンケだからやらないのに魔王様を洗脳していると言う鯨顏…洗脳違う調教だと言いたいが、似たようなものだな、うん。というかこっちが本体なんだろうか…なら、このダンジョン鯨はなんなんすか。食っちまったじゃないかよ…不味かった理由が何となく分かったわ。


さてさて、チェリアの話では八部衆は元々もう少しまともな魔族だったそうな。全員顔はまだしも人型だったのだが、頭が2つになったり完全に魔物になったり異形の化け物になったん…なら、人型の化け物がしっぽを吸収したら巨人になって全裸で「シンゴーシンゴー」言いながら駆けれるんやろか。


第二のエンディング回避方法…味方の敵は敵の敵パターンである。悲しいけど、これ戦争なのよねってやつだ。俺がラスボスになってタヌキ娘と雪ババアはチェリアたちと共闘。俺の屍を乗り越えて勇者一行は次の世界へ行っちゃいなよってパターンだ。え、自己犠牲が過ぎるって…タヌキ娘と雪ババアを殺して立ち塞がるよりはマシな案だと思うんだがな。


どのみち、犠牲にならなきゃいけないなら俺は進んでそうなるつもりだ…それは前世から変わらない俺のポリシーなんて生易しいものじゃない。単に嫌なだけだ。



「さあ、鯨野郎…潮吹く暇も無く倒してやるよ。お前らが繰り返してきた悲劇の元凶を食い止めてやるから覚悟しろ」



遠慮はしない。俺はエスカリボルゲインを構える。鯨のタタキって美味いんですかねぇ…エスカリボルゲインは万能トゲトゲ杖だからミンチより酷い仕上がりになるんです。3分クッキングで美味しく仕上がりました。え、戦闘シーンは無いのかって…一方的な蹂躙を戦闘シーンとは呼びません。突いて倒れたところをひたすら叩いてミンチにしただけですし…鯨ハンバーグも作りますか。メンチカツとかも良いですな。


さて、しっぽエネルギーはどこじゃろホイ。タタキを食べて分かった…このダンジョン鯨そのものだわ。え、先代をカニバしてしもたん俺?


鬱だ、巨大化しよう…








数時間が過ぎ、わっちたちは捜索を日の出からにしようと決めた。キッシュ殿の無茶の話は聞いたけど、そんな事よりキッシュ殿が居なくなるのは嫌だった。まだ出会って数日だけどわっちは嫁になりたいと決意した。


あの月夜にわっちは救われた。だからまた縁側に座って空を見上げていた。今夜は新月で月の明かりは無いけれど星が輝いていた。そんな中…



『チリン……チリン……』



何処からともなく鈴の音が響いてきた。そして、足音も…



「キッシュ殿?」



他の方々は夜明けに備えて既に休んでいるので外に居るのはキッシュ殿だけだ。だから、声を掛けた。でも、返ってきた言葉は…



「14代橘蓮華。その命、そして力…貰い受ける」



あの人の声だけど、何故か邪な力を帯びたものだった。そして、現れた姿は…漆黒の神官装束に黒いキツネの面、それに黒いキツネのしっぽを垂らした異形のキッシュ殿だった。







巨人になれませんでした…どちらかといえばカープファンだったからなんですかね。でも、しっぽエネルギーはゲットしましたよ。アクセサリーとしてですが。という事で俺は悪にでもなるという事でダークサイドに堕ちてみました。というか、しっぽって単なる魔法力+100の強化しか出来ないでやんの…まあ、適性とかあるんやろうけど。付けても魔物化しないわけだし…とりあえずカラースプレーで黒く染めたん。で、ミンチより酷い鯨肉はボックスに入れて、即席の神官装束とキツネ面作ってダンジョン鯨から脱出して屋敷に入ったん。そしたら、縁側に蓮華が居たから戦線布告ですわ。最初にタヌキ娘が出てきたら吸収するつもりだったから助かったなと。



「キッシュ殿…闇に囚われてしまわれたのですか?」



誰がダークフレ○ムマスターやねん。まあ、闇属性魔法使って暗黒神官になりきってますが…魔王様ほんけ出てきたら一発でバレますがな。でも、それくらいの茶番でええねん。タヌキ娘と雪ババアの事を有耶無耶にしとけば上等。というわけで演技続行なり。



「我はヴァンキッシュだ…魔族に仇なす妖怪の長よ。我に従い共にこの世を支配するのなら命は救おうではないか」


「ヴァンキッシュですか…」



何その呆れたような視線は。無いなーって思ってるんだろ…俺もそう思う。他に良いの咄嗟に思い浮かぶわけないじゃない。適当ですよ、適当。



「14代目よ。我に従いて全てのしっぽを捧げよ。お前の持つ8本と従者がそれぞれ持つしっぽを捧げ我を完全なる大魔妖怪として覚醒させるのだ。さすれば、お前から全てを奪ったこの世界を自由に出来よう」


「………え、どういう事ですか?」



やはり、まだ聞かされてないのか。だろうとは思った。さて、どう真実を隠蔽しつつ適当でっちあげようか。まあ、適当な神話とかくっ付けよう。



「かつて、初代橘蓮華はこの世界を守るために己の身を砕き穴を塞いだ。それが8つのしっぽだ…それと同時に3つのしっぽを用いて自らを守る者、自らを導く者、そして自ら振るう武器を作り上げた。そうなれば勇者としての力は発揮出来ないただのキツネ娘でしかない。だが、今のお前には最盛期の初代をも超える力がある。それを我に全て捧げよ。お前の従者2人を殺して」


「なっ…」



まあ、適当な事言ったが伝えなきゃいけない真実を伝えたと思う。強さの為に犠牲にしろと言ったんだし…そういうアニメあったなと。仲間と最強の防具を両天秤に掛けてって展開。俺さ、思うわけよ…守りたいものは何ですかって。世界を敵にしても滅ぼしても守りたいものの為なら自分の事はどうでもいいんだよな…つまり、守りたいその笑顔ってやつよ。



「それが出来ないと言うのなら、我を倒してみせよ。お前が母をその手で殺めたように」


「……キッシュ殿…」


「我はヴァンキッシュ…キッシュなどではない」



蓮華が潤んだ瞳で見つめてくる。まあ、タヌ雪を犠牲にするか、俺を犠牲にするかの選択を迫っているのだから仕方ないけどもよ…だから巨人になりたかったんですが。まあ、ちょい言い過ぎた感はあるけども、蓮華は誰かの為に敵を討っただけだし、その相手が母だっただけの話だ。なら、それが俺でも結果は変わらないはずだ。



「好きな人を見間違えるはずないじゃないですかっ!」



おぅふ…突然の告白でござる。いや、そういう展開求めてはいないんでござるが…好感度アップし過ぎだろ。で、嫁にしたら冷たい目で見てくるようになるんすよね……どうしてそうなるんだと。逃避してます、全力で。予定が狂ったんだもの…勿論、その刃を向ける相手の話だ。タヌキ娘と雪ババアに向いてはいけない…自分の恋愛ごときで親愛をぶち壊せる奴は大嫌いだ。前世の俺はそれで痛い思いしたわけだし…


そうか、俺は自棄になってるのかと思い至る。嫁たちに冷たくされ、目の前でまた家族崩壊しようとしている奴らを見て…最強である必要が何処にあるのだろう。フュージョンジャ○クで飛べなくてもフロー○で飛べれば良くねって話なのだ。え、意味が分からないだって…ハブられるの良くないって事やねん。



「だからこそ、わっちは大切な人を殺したくない。霞もつららさんも…キッシュ殿たちも誰も…」



やれやれですよ。そこまで言ったら次の一手が手に取るように分かってしまうのですよ…逃げの一手。誰も死なせない為に自ら死を選ぶって展開っす。今の俺そのまま…解決法はあるんです。が、意図してやったわけじゃないんすよ…俺は死ぬ気はあったけど死ぬつもり無かったし。え、言ってる意味分からんて…天使魔法とかで自己回復出来るん。きっと首から食われても回復出来るはずなん…もう何も怖くないですな。


さてさて、母蓮華から託された身としてはバッドエンドは回避しないといかんでしょ、いかんでしょ。茶番再開しますか。



「欲の無い奴だ。最強を求めぬのか…立ちはだかるものを薙ぎ倒し、己の手で世界を支配したいと思わないのか。貴様の母が、その母たちが繰り返してきた支配の道を」


「キッシュ殿の声で悲しい事を言わないでくださいっ…母様も婆様たちも最強なんて、世界の支配なんて求めてなかった。ただ、守りたいものがあったからそうした結果ですっ!」



まあ、それは俺だって分かっているさ。でも、分かってない奴が居るから困るんじゃないか…守っている気になって、やってる事は最低最悪の事ばかりなタヌキ一族と雪ババア、お前らの事だ。そもそも、蓮華が母を殺したのは何故だ…悪しきキツネを倒して平和な暮らしを手に入れたいって思ったからだろ。母蓮華と同じように。そう仕向けられながらも今も迷っている。誰が悪かったのかも理解していながら…それが愛ってもんなんだろう。


知っているか、蓮の花言葉は「清らかな心」「離れゆく愛」「救ってください」なんだぞ。それを「離れゆく愛」だけで終わらせちゃダメに決まってるじゃないか。



「ならばその信念、貫き通せ。その命が尽きる時までな」



そう告げた刹那、俺は間合いを一瞬で詰める。で、蓮華に必殺の一撃を食らわせましたとも…鯨の肉を口移しで食らわせるという暴挙ですん。ずきゅーんってやつです。お面は取ってますよ勿論…ファーストキスは鯨肉の味とか軽く死にたくなるでしょう?


こうして、キツネ娘は九尾狐の力を得ましたとさ。めでたしめでたし………あら、カラーリングしたしっぽ残ってる。イルムにやるか。

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