水の舞巫女、その真価
牛の二枚舌とかの焼肉パーティーを今夜しようかなと献立を考えている間に辿り着いた川の源泉…なんか、大きな穴から水が湧き出てますん。ついでに魔物も湧き出てますん…デラカオス。
とりあえず、金色銀色ヒヒイロ投網で蓋をした。え、意味分からないって…俺にも分からん。ノリって怖いな…のり弁食いたいです。魚のフライに醤油垂らして食いたいです。どうして魚のボスが居ないんだ。
さてさて。穴は何とか塞ぐのに成功したという事にしておこう。網に杭を打ち込んで固定している…ずぶ濡れっすわ。やっぱり温泉入って帰ろうかな。というか、嫁たちは岸から入ってくる素振り無しですわ。ここは白スク着て水遊びするタイミングなんじゃないかと思いもするが水が紫色だから仕方ないね。
そんな嫁たちを見ていると、おもむろに蓮華が薙刀を構えた。ヤンデレフラグ…ではなく、舞うようだ。そのまま俺の方に突っ込んでくる様子が無かったからそう判断しただけですが…ちょっとヤンデレフラグは折っておかないと怖いと身震いした。ずぶ濡れで寒かっただけともいう。
せせらぎの音と風が木々を揺らす音のみが支配する空間で、蓮華は静々と動き始める…その姿は神秘的に見えなくもない。嘘です、嘘言いました。どうして脳内でスローテンポなレッ○ゴー陰陽師が再生されるような動きなんでしょうか。まあ、巫女だから仕方ないね…なんて前向きな考え方をしておこう。
蓮華が水の薙刀を振るたびに少しずつではあるが不思議な事が起こった…気がしなくもない。というか、微弱な毒ダメージ受けてたん。ここ、毒沼ならぬ毒川の源泉だったわ。さすがの俺でも皮膚吸収とか飛沫を吸い込んだらあかんねん。というか、現代っ子だから泥遊びとか不潔極まりないし、この水にどんな寄生虫がいるのかと思えば蒸発させたくなるん。更に穴から湧き出てる時点で浄化せれてるかも怪しいわけで…
「巨大な浄水器を開発するか川を干上がらせるのが一番いいのだと思う」
近寄って行ってチェリアに小声で言ったら殴られた。ダムも作って治水対策とかもするべきだと言ったらアイリスにうるさいと足を踏まれた。水力発電を力説したらリンドウに白い目で睨まれた…イルムは魔物狩りしてましたとも。
そんな外野の妨害に臆する事も無く蓮華が舞終え、それと同時に水の色が透明になって流れ下っていく……意味分からん。舞って水が綺麗になるなら浄化施設要らん、塩素も要らん。これってミネラルウォーター作り放題じゃね…と思ったが売る相手居ないからどうでもいい話だったわ。
「終わりました」
「うむ、上出来なのじゃ」
何様、魔王様なチェリアが蓮華を労う…その横で俺はワサビ田でも作ればいいんじゃないかなと考えていた。魚が食べたいです、ワサビでステーキ食いたいです。え、そこは刺身だろって…生魚とか怖いわ。寄生虫とか怖いわぁ…
「キッシュ殿、どうでしたか。その…」
蓮華たんがもじもじしながら尋ねてきたのん。素晴らしい水芸だった…って言ったら嫁たちに袋叩きにされそうなん。鰹のタタキが食いたいです。え、刺身危ないって思った矢先にそれかと…ヒスタミンの中毒に気を付けておけばええねん。最悪解毒は魔法で出来るん…そういやまだ解毒してなかったなと。こそっとやりました。
さてさて、ここはどう応えるやら。真の水芸を寝床で教えるってのは無しの方向で…そういう趣味はまだ無い。今後も無いかなと思う。普通にいきますか…
「悪くはなかった…が、まだまだだ。儀式の舞が不要とは言わないが舞うだけが力を行使するという事ではないからな…まあ、力に振り回されてないだけマシではあるが基本的な事が出来てないから仕方ないだろう。帰ったら俺が直々に水属性魔法の指導をしてやろう」
そう告げると蓮華は破顔したわけですが、嫁たちの視線が厳しい。いや、望むなら指導くらいするんですが…俺だってレベル上げとか手伝うよ。夜以外だって…いや、夜のレベルは上がって欲しくない気もするから普通に鍛錬するんだ。
さてと…砂金でも落ちてないかなと川底の砂をかき集めながら帰りますかな。その資金を元手にこの川を三面張りにしてやるんだ。どうせ毒川だったんだから魚も水棲生物も死滅してるんだから治水対策するねん…
「よし、まずはゲル化するんだっ!」
「無理です」
帰った早々、蓮華の指導をする事になったがゲル化出来ないだと…ロリフォーム、化けキツネフォーム、ゲルフォームになってリンドウと一緒に怪獣大決戦をするんだと思っていたのに。まあ、それだと蓮華1人でいいんじゃないかなという事になりかねなかったが。
「パパ、無茶言わない」
「キッシュさん、スライム趣味に目覚めたんですか?」
今後の事を話し合うというチェリアと、タヌキ娘を撃退して仕置しているイルムはさておき、アイリスとリンドウも指導を受けたいと言ってきた…ら良かったんだが、監視メインだそうな。信用無いな、俺…
「ゲル化出来ないなら仕方ないが、水属性の魔法は難しいからな。水というものは様々に変化する。液体、気体、固体は勿論の事…天候で例えるなら雪やら霙、霧や靄とその形状は千差万別だ。雲だって水から出来ているし、その粒が互いに当たる事で雷を起こす事が出来る」
つまり、水属性はチート。更に回復も出来る万能魔法である…やっぱり蓮華1人でいいんじゃないかな。モフモフ可能だし…とはいえ、嫁になったら2人みたいにジト目で睨んでくるんでしょうね。俺、それでゾクゾクする趣味は無いよ…
とはいえ、チェリアたちを捨てるなんて考えは無いな…捨てられる気はしないでもないが。捨てられるといえば目の前で懸命に話を聞く少女も同様なのであると思うわけだ…聡明な俺は色々悟っていたりする。蓮華の名を継ぐ橘家の者はアレを受け継いでないだろと。だから、戦いは免れないなとも…が、それで構わないとは思わない。
だからこそ、目の前の少女は強くならないといけない。勝つ為にも、乗り越える為にも…
「とりあえず、水属性の魔法を極めよう。それに、勇者の血を引くなら何か特別な力だってあるはずだからな。それを引き出していかないといけないよな」
まあ、陰陽とか妖術の類いはあるんじゃないかなと思う。チェリアだって何かある感じだし、アイリスは言わずもがな。リンドウに至ってはドラゴンになったりスライムになったりの仕様…イルムは何も言うまい。俺の嫁たちハイスペック過ぎでワラエナイ…俺もチート欲しいです。何処かにキン○ストーン埋め込んでくれる悪の組織ないかしら?
◇
「やはり、お主が持ち主であったか」
「勿論、そうですよ…そして、魔族と妖怪の不可侵もこの神魂の欠片が持つ不老不死の力を欲した彼らによって破られました。全ては種族の違いから起こった戦いです」
目の前のつららはロータスが妖怪を纏める事が出来た一方で魔族たちを取り纏める事は出来なかったと暗に告げた。魔族たちを取り纏めていた者としては力の無さを思い知らされる言葉じゃな…
「ならば、八部衆の後ろにはあやつらも居るのじゃろう…四神のあやつらが」
「おそらく…ですが、邪魔はさせません。魔王チェリア…この戦いは序章でしかないんでしょう。あなたがやろうとしている事は…」
そう言われたとしても、それはわらわの…いや、わらわたちの総意であったのじゃ。じゃからこそ、見極めた。人は過ちを繰り返さぬものかどうかを…その結果があれじゃ。
「単なる償いじゃ……わらわたちのリーダー、ソレイユ・フルールの命を弄んだ世界そのものへの代償を強いるだけじゃ」
「…ソレイユ様の事は聞いています。しかし、それでは…」
「良いのじゃ…わらわたちの罪はそれほど大きい。おそらく、このままいけばわらわたちは間違いなく死ぬ。封じる事しか出来なかった女神の手によってな…じゃからこそ、封じられた世界を元へ戻すのじゃ。その為にはこの世界は壊されてはならぬ。たとえ魔族を滅ぼしてもじゃ」
正しい事ではない。そんな事は分かっておる…そして、その間違いは全てを狂わせたのも知っておる。申し訳ないとは思うが…その時はまずわらわたちが滅ぼされるのじゃろうな。
◇
雨乞いの踊りというものは何処にでもあると思う。俺の住んでいた所にもあった…それをわざわざ運動会の昼一からやるもんだから、たまに最後まで競技が行えない事もあったわけで。いや、偶然で片付けられない確率の高さだったよ、マジで…
何が言いたいのかというと、まあまあなレベルで水属性魔法を使えたキツネ娘にコツを教えたら雨女にジョブチェンジした。ゲリラ豪雨ですわ、ここら一帯。
何か、何処からともなく現れた月夜の晩にオカリナ吹いてそうな妖怪から傘を渡されなかったらずぶ濡れだったよ…いや、元からずぶ濡れだったけども。後、その妖怪は緑色でした…子ども用の盾と剣の販売しとんやろか?
それはさておき、蛇の目傘だから丈夫だけどもアイリスとリンドウは軒下に避難させておいた。蓮華はお迎えが嬉しいのかピチピチジャブジャブしとるん…せっかくのしっぽが雨で細くなっとるかと思いきや、防水加工してるのか撥水しとるん。ただ、あのしっぽがエネルギータンクと判明したん…少しずつしっぽの数が減っとるし。あれか、ボス倒したらハートの器じゃなくてしっぽの器なんやな…ということは細切れのしっぽとかあるんけ?
それは嫌だな…マジで。そんなのあったら橘一族疑うわぁ。でも、やってそうなんだよなと思う。母を子が殺す事を仕組んでたわけだし…性能悪くてもしっぽは9本以上ありそうだし。あんぱんより嫌な付け替えですん。
「キッシュ殿キッシュ殿。わっちはもっと強くなります。だから、見ていてください。ずっと傍で」
「お、おぅ…」
ゲリラ豪雨から更に強くする宣言でました…床下浸水するんでねぇの。やっぱり治水対策は必要だわ。砂防ダムとかも要るわ…また土木工事せねばいかんのか?
結局、ゲリラ豪雨は蓮華のしっぽが全て消えるまで降り続いた…時間にして約70分。もはやゲリラ豪雨ではない気もするが、床下浸水は辛うじて免れた。不思議な事が起こっていつの間にか屋敷の周りに溝が作られていたからだ。妖怪ぱないの。
さて、問題はしっぽは回復するかどうかなわけだ。モフれない蓮華なんてただのツルペタ巫女なわけだし…これは由々しき事態だ。何処かに○缶落ちてないだろうか。これでは何となく押し倒せないよ…まあ、魔法の使い過ぎで気絶してますがな。




