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8つのしっぽと8つの贖罪…いや、食材

んでんでんで、アイリスに弓を渡して嫁ーズと有能ペットと非常食せんばやまめいさんひんの一行が雑魚ボスを倒しに行くようになって数日が過ぎた。え、レベル上げじゃなかったのかって……イルム無双で簡単レベルアップしてるんじゃ。カンストしてたら経験値分配補正とか無視してがっぽり稼いどるん…タヌキ娘もレベル上がって大変だけどな。身内がボス化とかやめて欲しいよな。え、男の神子がボスになったゲームは遠慮なく倒しましたけど何か?


そういえばあのゲームではロリババア斧使いが好きだったなぁ………禁欲辛いです。嫁は疲労で営んでくれないん。ヤケ起こして鎧のパーツ作りしている今日この頃。クボタイトの刀は封印したん…俺にはエスカリボルゲインあるし、ヒヒイロカネで真エスカリボルケインも作ったん。杖の勇者を名乗ろうと思うん…俺、この戦い終わったら自叙伝作るんだ。



「………今日も牛肉か」


「皆さんが大量の食材を持ち帰ってきますからね」



今日も今日とて雪ババアと昼食なん。しっぽを取り込んだボスが牛、豚、鶏、羊って食えるのばかりだし巨大だから肉ばかり食ってる今日この頃…それより嫁食いたい。


その嫁たちは馬と鰐と蛇と鯨のボス倒しに夢中だったりする…どうして食えそうなボスばかりなのか。後、鯨は色々ヤバい気もするが、子どもの頃にあったスーパーの弁当に鯨の竜田揚げ入ってたのが好物だったから構わない。でも、今考えるとあれは鯨の竜田揚げじゃなくてただのハムカツだった気がしないでもない…


後、何やらキナ臭いというか魔王よめちゃんの知り合いらしいんよね、そのボスたち……でも食える知り合いとかどうなん。美味しく食うけど、俺は牛肉あまり得意じゃないんだよな。カツ丼とか鶏の唐揚げみたいな満足感が無い。そもそも高いし…かといって、鰐と蛇はいかがなものかとも思うのだ。どうでもいいか。



「牛丼…マズイです。むしろ、マズイdeath」


「文句言わずに食べてください」



だって、肉が物凄くマズイんですもの…だいたい、新鮮すぎるんだよ。ちゃんと血抜きしたか、熟成とまではいかんでもある程度は寝かせたかと。







わらわはかつて、魔族を統べる王であった。無論、今でもそのつもりであるし待っておる部下…四天王あやつらたちもおる。じゃが、勇者として旅に出る前にも別の配下がおったのじゃ。


そやつらがよもやこんな事をしておるとは思わなんだ。魔族と魔物は正確には違うのは当然として、魔物にも2つの大別が出来る…1つはリンドウたちのような人に近いものや知恵を持つ在来種。そしてもう1つは…



「ま゛お゛ゔざま゛…どゔじで、どゔじででずが……」


「それはお主が…お主たちが魔物に成り下がったからじゃ。八部衆たる誇り高き魔族のお主たちが妖狐の力に囚われ魔物に成り下がったから引導を渡すのじゃっ!」



魔族と一括りにしてもその種族は様々じゃ。亜人に分類されなかった動物人種、わらわたちのような異端の人種…そして、魔物との混血。八部衆は混血からなる組織の将であった…じゃが、悪意から生まれる魔物に成り下がった。いや、力に溺れそれと化したのじゃ。


人の悪意から生まれた魔物は魔物の王…つまり、わらわたちが魔王と呼んだ女神の尖兵であった。悪意だけでなく女神の恨みは凄まじいものであった…この世界を憎み、恨み、全てを滅ぼそうとしたのじゃから当然じゃな。


そして、最初に滅ぼされたのは我が魔族の国であった。じゃが、生き残りは当然居たのじゃ…この世界の穴はロータスが封じた世界の抜けじゃ。つまり、この地はロータスが最後に封じ守った世界…それを守ったのはロータスから連なる蓮華の一族。滅ぼそうとしていたのは滅ぼされたからと、救われなかったからと暴走し穴の向こうに居を構えた魔族や他の種族が魔物に堕ちて、この世界を蝕んでいった。王であるわらわの失態じゃな…


じゃが、それだけでは無いのじゃろう…勿論、責任逃れはせぬ。しかし、少しは本質が見えておるわらわや仲間たちは知っておる。こうなった本質は、この世界に生きる全ての者にあったのだと。


今はただ、女神を倒す…他の何かを犠牲にしてでも。


わらわはキッシュが「半分倒したんだから強化するのは当然だろう」などと言って無理やり改造した斧を構える……柄が伸びたのはともかく、反対側に鎌を付けられて使いにくいのじゃ。しかし、威力は格段に良くなっておる……あやつ、武器商人でもするつもりなんじゃろうか?


ともかく、わらわは斬った。馬の面をしたかつての部下を……というか、元のしっぽの化身を取り込んで鹿の特徴もある謎生物にしか見えんがの。






帰ってきた嫁たちは新たに倒した生肉ボスを手に戻ってきた……地○ジカに見えた。角あるし、黄色いんだもん…まあ、見事にマミってますけどね。というか馬鹿面でワロタ。ワロタ…スク水のオスとか誰得だよ。嫁たちの目に汚いもの入れたの後悔。次から俺も参戦しようと思う。



「とりあえず、これは食いたく無いでござる」


「贅沢を言うでないわっ!」



嫁が魔王で鬼嫁です…いや、それとなく聞いてはいる。本人からではなくアイリスたちからだ…なんか、食ったらパワーアップするとか言われてるけどイルム以外はあまり受け入れたくないわけよ。心情的にも、衛生的にも。一応、倒したらしっぽエネルギーは蓮華が回収する仕組みになってるらしいんよね…しっぽが6本に増えとるし。でも、ジビエならまだしも半分くらいカニバだからのぉ…今まででマシなのは羊だけだったん。他は牛の頭が2つあったり、金髪豚野郎だったり、半端な粉かけた顔面トリコッコさんだったん…顔だけは好みだったけど、なんか幼い頃のトラウマアニメ思い出して吐いたん。いくら食料ないからってカニバしたらあかんぜ、青タヌキの作者よ。え、タヌキ娘はどうなんだって………どうなんやろ?


とりあえず、雪ババアに解体と処理は任せた…え、股間はくれだって。好きにしろや。という事で、同胞殺しをやってナーバスになっとる古女房を連れて縁側にやってきました。風鈴がなってるん……火山のボスは牛でした。山火事は鎮火しとるから煤けた匂いが風に乗って吹き渡っています。実家よりはマシなん…鶏糞の臭いしないし。



「とりあえず、お疲れサマンサタバサ」


「意味が分からぬのじゃ…」



意味なんて知らない。感じろ…とばかりに座ったチェリアの頭を撫でてやる。蓮華のしっぽが増える度に撫で回してるキシュゴロウさんの撫でテクを舐めんなよ……そこ、俺が陥落されとるとか言うな。モフるのは正義だ。同意はあるし…



「慰めておるつもりか…少し乱暴なのじゃ」


「ランボー結構。慰める程弱い女じゃないだろ。そもそも俺の知ってる事が本当なら色んな意味で強いのはお前だ……俺の事だって他の奴らは責任すら感じてなかったじゃないか。違和感あり過ぎなんだよ、そもそも」


「それはじゃな…」


「知ってる。この世界の設定集とかスタッフのこぼれ話で知ってる……あえて触れてないんだから察しろ」



プレイヤーが何なのか、そんな事は大体知ってるんだよ…予想つく範囲内で収まるならな。そして、このサブリーダーな俺の愛妻が何をやったのかもピロートークとか総合したら分かるわけだ。それはさて置き…



「かつての仲間…だったか。あの勇者たちみたいにはいかなかったんだろ。最早手遅れで、倒さないと穴も塞げない…放置すればすぐに増援が送られる。ありきたりだが、話では他にも仲間だった奴が敵対しようとしているだっけか」



魔族の犠牲はあまりにも大きく、それでも世界の守護をしなければならなかったチェリアはその世界で魔族たちを集めたわけだ。他の世界を見捨てたわけではない。


早い話が民族紛争とかの類いだ。難民になったここの魔族連中は安住の地を探して侵略侵略侵略侵略侵略侵略イ○娘って事だろ…でこちらは民を根こそぎ殺され、相手も撃ったから撃たれただけだ。


別に魔族がこの世界の支配者になるのは構わない…が、それが過去に引っ張られていては話が別だ。それぞれの物語の時間経過は異なる。ここでは1000年以上の時間が経っているのに未だ魔族が見捨てられただとかって考えで魔族は生きている。老害ってやつだよ、それは…


チェリアだって守ろうとした。でも守れなかった…その辛さは痛い程分かる。というか、さっきから照れ隠しで魔王パンチを腹に食らってるが地味に痛い。レベル上げすぎだろ、絶対。



「お前は何も悪くない。誰かを悪者にしたいなら俺にしろ。夫の命令でやりました、だから悪くないって言っとけ」


「そんな事、出来るわけないのじゃ…」



別にチェリアが魔族の国を崩壊させたわけでもなかろうに。皆で仲良く幸せにって頑張って、頑張り続けていたのを見ていなかったからと裏切ったのは向こうの方だろ。手を血で汚して、それでも世界の為と、仲間たちの為と戦った英雄と私利私欲の為に惨殺を繰り返したテロリストは違う。



「説得したんだろ。それでも聞かなかった…なら、楽にしてやるのが主の務めとか思ってるなら間違いだ。斧の勇者チェリア・ブロッサムとして目の前の敵を倒した…俺たちは正しい事をしているなんて無い胸を張る必要なんて無い。罪悪感に押し潰されないようにしとけ……世界の為と戦ったチェリアを否定するような奴は俺の敵だ。それがお前の部下であろうと、仲間であろうとな」


「………無い胸は余計なのじゃ」



そう言いつつも満足気な表情になった我が第1夫人。だから、ここぞとばかりに俺はキメ顔でこういった。



「だから、魔族式の弱肉強食はやめてください」


「それとこれとは話が別なのじゃ。イルムは好んで食べておるというのに」



モンスター娘と一緒に扱われても困るん。食って得たものなんてカロリーと栄養素だけだぞ、マジで…その反面、失ったものは多過ぎる。SAN値とかSAN値とかSAN値とか…そこ、最初から俺はまともじゃないだろとか言うな。


あぁ…土ミミズの味が懐かしい。え、そこは前世の料理じゃないのかだって………俺、食えたら何でも良かったからな。最終的には曜日ごとで同じの食べてたけど…作るの面倒だったからな。


そうか、俺が調理すればもう少しまともなの食えるのか。便利な仕様という簡略化も出来るし。


そんな事はひとまず置いておこう。俺が心配してるのはあれだ…



「俺が死んだ時はカニバリズムしないでください。せめてお墓の前で泣いてください」


「魔族でないお主を食べるなんてありえんのじゃ」



いや、俺からしたら魔族食べるのもありえないんす。俺、ベジタリアンになろうかなと思い始めた今日この頃。いや、野菜の中には意思疎通出来るの居そうなこの世界だから食えるものが無くなりそうだ。今度生まれ変わったらダイオウグソクムシになって絶食するんだ。


そりゃ、ここで食った大半が魔族とか知ったらSAN値直葬ですわ。直葬するのは死んだ時だけで良かったん…というか易々と受け入れてる嫁たちが怖い。いや、チェリアとその娘アイリスなら普通で、リンドウやイルム、蓮華も育ってきた環境が違うから好みの違いなんやろな。俺、ロリは好きだけどセロリは…普通に食えてたわ。余程の事がない限り好き嫌いしてなかったし…いや、カレーラーメンとかダメだったけどさ。そう考えると胃痙攣してないからまだマシか。



「……仕方ない。魔族食べる代わりに寝床でお前らも食わせろ」


「何が仕方ないのじゃ、何が…」



食欲が満たせないなら他の欲で補うしかないでしょ。というか、それくらい理由付けないと蓮華を嫁にしようという気が起きない。孤独な人に付け込むような事は出来んけど悪にでもなるなら、せなあかんのん。


そう考えると、何か虚しいわけですよ。誰もが自分の居場所と生きている意味を探しているだけなんだと。そして、覚えた違和感…


どうして俺たちは女神を倒さなきゃいけないんだろう、と。いや、俺には理由あるけどな…チェリアとアイリスを殺そうとした時点で敵だ。そして、それが神だろうが魔王だろうが人間だろうが同じなだけやねん。


思考が逸れまくっているが、辛い役目なら俺がやればいいだけの話だ。義実家とか無いんだから守る事が出来ない夫なんてただの種牡馬か現金自動預け払い機ですやん。


それに、かつてとか言っても仲間は仲間。戸惑ったら救えないものが多過ぎる。失うのはSAN値だけで十分だす。

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