不可解な日常、ありふれた惨状
高級な宿屋というのに出歯亀しようとする輩は多いが、見せつけるプレイは趣味じゃない…という事でもげながらも監視の目を事前に潰しておく戦いが嫁たちの知らないところで繰り広げられていたりする大会4日前。
王都に来たのが更に4日前だから俺たちの爛れた生活も折り返しというわけだ。朝起きて、体を洗って宿屋の1階で飯を食う。嫁たちが寝不足で昼寝している内に新たにやってきた出歯亀たちの目を文字通り潰して俺も仮眠。起きたところで遅めの昼食を済ませ1回戦…後、ルームサービスで食事を頼み嫁たちが休憩している間に新たな出歯亀たちを潰しておき2回戦3回戦へと続く。
いや、俺だって連日するつもりは無かったさ。だが監視の目も途切れない上にこれだ…
「6人目の犠牲が出たそうじゃぞ」
チェリアは朝食を食べながら朝刊を読んでいた…まあ、構わないんですけどババくさい。それより、話した内容だ…大会に参加するはずの選手たちが次々と何らかの方法で大会に参加出来なくなっている。
例えば、宿屋が火事に遭って焼死とか、水死体で見つかったとか、ここへ来る途中で消息不明とか、闇討ちされてモンスターを奪われたとか、貴族の娘さんと妻子持ちのくせに不倫して文化だとか言い張って投獄されたとかだ。最後のは自業自得だけど…
で、今回の犠牲は…
「何度も何度も魔法で目を傷つけられた事による失明に暴行の跡もあるそうじゃ…意識不明らしいのぉ…」
嫁たちがこっち見る。安心してください、俺はカラシとワサビのチューブでしか攻撃してませんよ。きっと犯人はポリ○ンですよ、俺じゃない。俺ならまず片玉にする。新たなる武器、エスカリボルゲインで…ケインじゃないよゲインだよ。穴に突っ込んでもいいんだよ…何その酷い使用法。
「俺はこの宿屋から出てない。俺はニート生活を満喫しているんだ。むしろ、俺なら選手狙うなんて姑息な真似はしない」
「あー…そうじゃったの」
「ん、納得」
「じゃあ、残りの中に犯人が…」
「それなんじゃが…2人程辞退したら奴がおるらしいの」
チェリアが記事を指差して見せてくる。当初の予定だと10人の参加者だったらしいが既に6人脱落。更に王国の将軍と宰相が辞退したらしい…ゲーム中では準決勝と決勝で当たる強キャラだぞ。そいつらが辞退って…逃げたな。いや、事態収拾か…あるいは更迭されて行方不明だったりして。
「残ったのはオレたちと…ここの王子だけですね」
「俺は悲しみと怒りの王子、バイオロボアナロベアァッRXに進化すれば良いんだな」
「パパ、意味不明」
ただのチートや、ア○トのトリニティフォームみたいなもんやで。いや、パーフェクトスト○イクの方がええのんか…とりあえず、メタル化待った無し。バイオの方は無理だな…それっぽい魔法使おう。
さて、今回の犯人は王子という事が誰が見ても確定してしまったわけだ。国家権力使えば暗殺だろうが何だろうが可能なわけだ…それはもう、門番使ってリンドウを何が何でも大会に参加させたいとか…ゲーム中でもこの王子が黒幕なんじゃね?
とはいえ、ゲーム中では出てこないんだよな王子って。存在すら明らかになってないんですよ…でも、この手の王子ってだいたいろくなんじゃないよな。権力振りかざして冒険に巻き込んだものの旅の踊り子に恋して無責任に仲間捨てて離脱するとかさ…うん、王族は潰す。但し、大会でだ。
こういう場合、だいたい容疑者扱いされて無理矢理連行とかされそうだが俺たちはここに着いてから1回たりとも外出していないのだ。宿屋の人間もそれを知ってるから牢獄ルートは無い。あったらこの国終わっとら。
「一応、門で追加の参加者を募集するようじゃが…これでは出たくもなくなるというものじゃ」
「むしろ、俺が暴れた方が死者出なかったんじゃね?」
「パパ、前科あるからダメ」
未だに役所の件を持ち出すアイリスたん。でもな、あいつら倒さないと物語進まなかったんやで。必要な犠牲というやつだ…俺だって自分の目的を邪魔されなければ悪の組織とかどうでもええんやで。誰が好き好んで正義の味方とかせないかんのん…
まあ、休憩の最中に放火しようと忍び込んだ奴とかは倒したんですけどね。ここの防犯対策雑過ぎて高級という言葉が聞いて呆れるわ…まあ、ゲームでの宿屋なんてチェックインしてないのに部屋入り放題のアメニティグッズ取り放題だからな。え、薬草とかアメニティグッズ違うん…なら掃除してないのね、酷すぎる宿屋泊まるのやめます。ここは王国が費用持ってるから大会終わるまで楽しみますがね。
という事で、食事を終えて部屋へ戻り監視の目を潰す。穴へチューブを差し込んで出す…安心してください。賞味期限切れのチューブですよ……卜部さん家にあったのを貰ったんだ。ハゲガエルの頭皮を滅ぼすために使うの忘れてたん。今日も壁の向こうで悶えてるみたいなんなー…そろそろ飽きてきたから接着剤で穴塞ぐん。まったく、高級宿屋が聞いて呆れますなー
さて、パワーアップパーツを作りますかな。モチーフはウォーグレ○モンとメタルガル○モンやな…え、オメ○モン違うんかって。それならガオ○ング派ですよ俺は。嫁に飛び掛かりたいが我慢しよう。嫁が休んでいる時に襲撃とかあったら守るのは俺だし…最近、ちょっと寝不足だな。3回戦以上していたらそうなるわな…麻雀面白いです。でも、脱衣じゃないからちょい不満です。まあ、俺がビリにならなきゃお楽しみモードになるんですがね。
閑話休題。パワーアップパーツを改めて作りましょう。用意するのはこちら、リグナとチギリの餌集めの時に拾い集めたオリハルコンとタイト鉱です。ミスリルでも十分なんですが、ヒヒイロカネを手に入れたら使い道無くなるから奮発しておこうと思いましてな。タイト鉱は精製に成功すれば通常のアダマンタイトではなく上位のクボタイトになりますからな。その塊で刀作ると形状変化するらしいん…いや、クボタイトの精製成功率が低すぎて俺は持ってなかったけどな。
とりあえず、オリハルコンを都市で手に入れたリボルバー式拳銃と混ぜるん。後、アダマンタイトで剣作るん…エスカリボルゲインは使わないんなー。トリニティですけん…でも、俺は平成ではオンドゥルが一番好きなんだよね。今夜からはトランプで遊びますか…後、暇だからアイリスの弓だけでも改造しとこ。ついでに嫁の防具を作ろう…銃も魔法銃にしておこう。リボルバーは魔銃で資金にするつもりだったから大量にあるん。
結果、護身用にするにも十二分な戦力が整ったのだ…コランダムベアの皮が後3つあれば不思議な事が起こせたのにね。残念ですよ…
というわけで夕刻、新しい装備品を試着してもらった。前衛系の戦士スタイルの嫁が居ないからビキニアーマーとかは無理だったよ。いや、そんなの着けさせる趣味は無いけれど…ローブ系の服に胸当てやら色々の軽装ではあるが、個人的には戦隊ヒーローになりたい気もするんだが1人足りない。
「お主、裁縫をするのは構わないのじゃが…こうもサイズがピッタリだと微妙な感じになるのじゃ」
「パパの才能?」
「単なるチート能力です」
さすがにそこまでサイズ把握しているわけじゃないし裁縫しているわけじゃない。でも可愛い嫁には綺麗にしといて欲しいものです。後、リンドウはモンスターマスターになりそうな服装ですねん、若干色は違うけどね。ドエムゴンの断末魔は「ぬわー」一択ですん。
「あの…これで大会に出るんですか?」
「せやで。ちょっとダサいけど防御力は一級品やで」
嘘くさいとリンドウは見てくるが、防御力は一級品やで。ダサいけど…後、鞭は無効らしいからテイム出来ないのは昨夜のプレイで証明されてしまっていた。ゴミアイテム恐るべし…鞭の勇者になってたよ、リンドウしゃん。まあ、打たれる側なんですけどね…勿論、俺はしとらんで。アイリスの方向性が最近よく分かりません。
「こういうのを貰うと試したくなるのじゃ…」
「パパ、街に出たい」
「容疑者扱いされて捕まるのがオチだから引きこもってろ。ちゃんとトランプも作ってるし」
他に将棋とチェスと…とにかく沢山あるのだ。大会まで何事も無く過ごさなきゃいけないのだよ。確か、ゲーム中では王都に着いたらイベントも無く過ごしていたのだ…が、色々イベントすっ飛ばして来たから何が起こるか分からんのだよ。
その考えの通り、翌日の朝刊に王子の急逝が載るのだった…いや、犯人は俺じゃないぞ。俺はババ抜きで一番になって嫁たちともげとったん。




