ドラゴンとスライムがやらかした事
とりあえず、いつまでもドラゴンの棲家でのんびりしているわけにもいかないのでリンドウの案内で集落の方へやって来た。炎の鞭の件は一旦お預けだ…鞭を見て興奮する変態ドラゴンの所為でな。チェリア以外、今のところろくな連中居ないな。残りもこんなのばっかだったらどうしよ…
「とりあえず、オレの家に泊まってください。ここには宿とかは無いんで」
「うむ、かたじけないのじゃ」
「リン、ありがと」
嫁たちとリンドウの関係はまずまずだ。まあ、父の旧友とその娘という事だから警戒はされてない。それは構わないんだけど…
「……もう脱いで構わないか?」
「あ、はい。でも外出の際は必ず着てくださいね。その着ぐるみっていうの」
集落には女性しか居ない。それは話した通りだ…女の方が柔らかいからドラゴンの生け贄になりやすいんだってよ。確かに嫁たちは柔らかい。だから俺は硬くなる…そんな下ネタはどうでもいい。
そんな女だらけのパラダイスに男が入ったらどうなるか…捕まって種馬ではなく大パニックだ。ワニ以上のパニックだ。俺の妄想通り食われるなら先にいただきますされた女性も多いらしい。無理矢理はあかん、女は愛でるもんだ…だから、俺はアナロベアになってここに入った。男性恐怖は仕方ないね…でも、別の意味で怖がられてた気もするんだ。こんなに愛くるしい姿だったというのに、何を怖がるのか分からないよ。
「部屋の方は多くないので雑魚寝になってしまいますが、ご飯の方は期待しててくださいね。土ミミズを飼育しているんで、お肉には困りませんから」
土ミミズ…最初に貰えるミミズ型のモンスターだよ。まさか食用ミミズだったとは。探しても見つからないわけだよ。食われてた…まあ、進化しても中盤までしか使えないからな。食う方が利用価値あるもんな。食いたいかと聞かれたら微妙だが…
「ミミズは食べ物じゃないのじゃ…」
「果物でいい…」
嫌な顔してる嫁たち。うん、まあ気持ちは分かる…でも、カップ麺を無理矢理でも貰わなかったお前たちが悪いんだ。この世界はそういう世界だ。諦めろ。
で、リンドウ手製の晩飯が振る舞われる事になった…時差ボケかな。さっき食べた気もするんだけど…認知か。アルツハイマーか?
いや、都市を出たのが食後だったからだ。うん、間違いない…目の前の混沌から目を背けたいからボケただけだ。どうして蠢いてるんだろう…というか、ミミズの活け造りは無いと思う。ハンバーグだろ、せめて。ビクンビクンしてるぞ…しかも、頭残ってるから再生するんだってこれ。なんてホラー…
「…キッシュ…食欲無いのじゃ」
「もうお腹いっぱい」
嫁たちは逃げようとしている。まあ、気持ちは分かる。俺だって逃げ出したい…でも、期待に満ちた目で見る嫁候補を裏切れない。だけど、涙が出ちゃう。男の子だもん…
「あの…やっぱりダメですか…」
育ってきた環境が違うから食文化は否めない。ミミズ食ってみたり、マヨネーズがあったりするのね…あるだけで安心出来るマヨネーズ。俺、これ食ったら目の前の嫁候補を食うんだ…
恐る恐る箸を伸ばして切り身を1つ掴む。そのまま刺身醤油を付けてマヨネーズ乗せて口へ………マグロっ!
マグロの味がする。間違いなくマグロだ…いや、ハマチの方が好きなんですけどね、俺は。蠢く頭さえ無ければ最高だと思うよ。だが美味い、美味いぞ。うーまーいーぞー…箸が止まらない。ルネッサンスも止まらないっ!
しかし、箸を進めていくうちに嫁たちの視線がどんどん冷ややかになっていくのも理解出来た。そらそうだよな…やっぱ料理出来ないより出来た方が良いよね。え、違うって…ミミズに似たようなものを嬉々として舐め回すくせにナニ言ってんの?
とりあえず、食った。蠢めく頭に残飯与えておけば3日ほどで体復活するらしい…今度は唐揚げとか良いかもしれない。鶏胸肉はマヨネーズに漬け込んだらパサつかず美味しく食えるからその応用で何とかなるはずだと言ったらリンドウが喜んでた。もう嫁にしよう…襲いたい、その笑顔。
食後、俺たちは改めてこの世界の現状を教えてもらう事になった…というか、リンドウの両親の離婚原因を知りたいという事だ。
「あー…えっと。父上と母上は仲が悪いというわけじゃないんです。ただ、父上が人間の女の人ばかり助けているのに嫉妬して、母上が『それなら私はモンスターを助ける』と言って出て行った次第で…」
「何故そうなるのじゃ…」
「弱いモンスターはテイムされてもいつかは放逐されるんです。野良になった子たちは元々の野生モンスターに比べたら生きる術を知りません…エサになるのが目に見えてますから」
この世界…というか、ゲーム時代から負けたモンスターはエサになるのがこの世の摂理だった。弱肉強食という奴だ。俺は焼肉定食より生姜焼き定食の方が好きだ。
ただその仕様は大会以外の戦闘に置いても適用される。早い話が負けたらテイムしていたモンスターは食われる。敗北は即死である。プレイヤーもガツガツ食われて目の前が真っ暗になる…ポケ○ンってこんな事をされていたんだなと。え、違うって…なら、バトルして負けたらどうしてそんな事になるんだよと。でも、それは悪い事ではない仕様でもある。食った分だけ強くなるという奴だ…どうにかこうにか勝てば相手のステータスを奪える仕様をゲームでは採用していた。そして、俺は最初のモンスターだけでエンシェントドラゴンを倒す事に成功したわけだ…
閑話休題。まあ、現代の話に置き換えたらエンシェントドラゴンはDVなどの女性被害者の保護、ミス・ライムは動物愛護をしているようなものというわけだ。それ自体は褒められた行為だと思う。どうしてそれを一緒に出来ないのか…本当に仲良かったのか。仮面夫婦じゃないのかと。
「どうして、女の人もモンスターも、一緒に助けない?」
うちの現新妻も当然の疑問を抱く。横取り40萬だが構わない。可愛いから許す。
「あ、えっと…混血対策とか危険を伴うとかもありますけど、一番の原因は土ミミズの扱いで揉めて…」
リンドウ曰く、食用ミミズとして飼い殺しにしているのをミス・ライムが気に入らないようなのだ。だからプレイヤーに貴重な食料を渡すことが出来るのか。というか、単に好みの問題な気がする…人は食わなきゃ生きていけないのだし、頭あれば復活するだけマシと思うか殺して食うかの違いだ。スライムが何を食うのか知らないがそんな違いだろう。
というか、その前に混血対策とかって言わなかったか?
「人と魔物で子ども出来るのか?」
「も、勿論ですっ。公にはされていませんが、そういう人は沢山居るんです。人間に化けれるモンスターだって人の社会で生活していますし、平和に暮らしているんですよ…でも、素性がバレて混血は奴隷にされたり、殺されたりするんです」
何か、思ってたより重い話だな。ここは作れますから作りましょうで構わない話ではないのか?
「ふむ……つまりじゃ。炎の鞭を悪用すれば、先程キッシュがしたような事が容易く行えるという事じゃな。混血や人間に化けたモンスターを炙り出せるという話じゃ」
現新古嫁がとんでもない事を言い出した。その発想魔王だわ、ドン引きだわ…いや、俺も考えはしたんだけどね。というか、この世界の王族って竜の血を受け継ぐとかって設定あった気もするんだ。それやったら優勝者がこの世界牛耳れるんじゃね?
「……はい。両親もそれを心配しているんです。でも、何も出来ないって…オレが悪いんです。モンスターのくせに、他のモンスターをテイムしようだなんて思ったから…ぐすっ…」
「ママ、リン泣かした」
「そ、そんなつもりは無かったのじゃ…」
新しい嫁いびりか、チェリアの姑根性も大概にして欲しいものだ。まあ、リンドウだってこの世界の一員なら憧れるだろうさ。10年以上も世界各地を旅出来る放蕩者に憧れるよな…取っ替え引っ替え現地ヒロインと旅が出来る。黄色いネズミを使って仲良くなってスカートの中までゲットするなんて羨ましいよな。
「仕方ない…リンドウ。お前がその大会で優勝すれば良いだけの話だろ。まだ始まっても終わってもいない事で泣くな」
俺はそう言ってリンドウの頭を撫でた。俺がリンドウのテイムモンスターの振りしてアナロベア無双するだけの簡単な話だろ。それで炎の鞭と神魂の欠片と新しい嫁を手に入れるだけの簡単なお仕事ならやってやるさ。
それに、大会中にも相手のテイムモンスターを横取りする事も出来るのがこの世界の特徴だ。何かの拍子にリンドウが他の男のものにさせられないよう見張っておかなければならないわけだし…女や魔物を保護するのは構わないが、ちゃんと娘に向き合ってやれよ。モンペが…
もしかしたら、王国の大会で初戦敗退して奴隷になるんじゃないかと思えてきたわ。だから怒り狂うんじゃねぇの、お前ら…で、プレイヤーに討伐されるとか。裏ストーリーでさえリンドウの事は大会以外で何も出てないわけだし。表裏で違うのはリンドウがどちらに引き取られたかとかだけかもしれない。親子仲はそんなに悪くないだろうし、幸せ家族計画して再婚させてやりますかね。
というわけで、今回のクリア条件は…
「リンドウのテイマーマスター」
「ドラゴンとスライムの仲直り」
「新しい嫁と目一杯もげる」
の3本です。次回も見てくれるかな…じゃんけんぽん。うふふふふって感じにしようと決めた。後でドエムドラゴンのところに行って宣言してこよう。




