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明かされた世界の真実

とりあえず、俺は拳を構える。防具の類いは無いからかなり心許ないが、目の前の魔王はボスの中で最弱だ。



「待て。お主…何か勘違いをしておらぬか?」



頭を抱えたチェリアが命乞いをしてきたが関係無いね…いやいや、裏ストーリー上こいつの存在は必要不可欠だった。だが、自虐趣味がある奴の話を聞いてどうしろとも思う。



「とりあえず、殺してNPCを奪い取る」


「ま、待て、マジで待つのじゃ。だいたい、ここは既にお主の知る『八芒星物語集』のゲームではないわ。あれはあくまで適格者を捜す媒体のようなもの。わらわたちはかつて勇者と呼ばれた者たちなのじゃ。わらわたちと並び立つプレイヤーを捜しておっただけじゃ。お主はあのゲームでボーナスクエストと呼ばれるスライム大増殖事件の中で見事に『神魂の欠片』を隠してあった中から見つけ出した。そこでお主をわらわたちの残った力で召喚させてもらったのじゃ」



何言ってるんだ、こいつ…疑いの眼差しでロリ魔王を見てみるが、信用に値しない。



「そもそもおかしいと思わぬか。わらわたちを倒して書の封印力を弱め女神が復活してどうなるのじゃ…あの部屋を残して世界は何故封印されておったのか。女神が復活してどうなるのかと」



こいつの言っているのは表ストーリーのラストの事だ。箱庭のラスボスを倒したプレイヤーは手に入れた『解放の鍵』というキーアイテムを最初のあの部屋で使う事によって女神を封印から解き放つ…というのがスタッフロール後に行われるシーンで存在する。


だが、そこで終わりなわけだ。裏ストーリーが公開されるまでは箱庭でレベル上げをするとか出来たが期間イベント以外は追加されたイベントもボスたちとの再戦なんてものも無かった。


封印から解き放たれた女神はどうなったのかなんてのも描かれてはいなかった。サイトにある情報にも。


それに、さっきこいつは召喚が云々と言っていた。もしだ…もし、キッシュのアバターに俺の魂が宿るなりした形でここに存在するんだとしたら…



「…1つ聞きたいが、召喚したとか言ったよな。これは夢とかじゃないのか?」


「無論じゃ。ちなみに、召喚の際に向こうのお主の体は消滅したのじゃ。ま、待つのじゃ。拳を構えるでない…お主たちが女神と呼ぶ魔王の所為でアイテムの類いも含めて消滅してしまったのじゃ。お主を強制的にこちらへ連れてくるつもりなど無かった。ケータイとかいうものに注意書きを示して同意してからのはずじゃったが魔王が介入したのじゃ」



信じたくはないがこれだけ必死に言われたら…というか、ここで殴り倒しても仮に女神がラスボスなら手詰まりになってしまう。殴るべきは女神なんだろうし。



「夢でも悪夢だ…ログアウト出来ないのか、これ?」


「出来ぬな。ちなみに、クリアまで他の書への移動も出来ぬ。他の世界に介入した結果、女神はおそらく休眠しておる。それをあちこちへ移動しておれば気配を察知されてお主は消し飛ばされる」


「嫌な設定だ…」



設定ではないと憤るロリ魔王を放置して、俺は考えを巡らせる。仮にロリ魔王の話を鵜呑みにして何故俺なのかという考えはあのゴミアイテムによるものと納得しよう。ボーナスクエストなんてするんじゃなかった…


とりあえず、幸いなのは俺はこうしてキッシュの体で生きている。レベルとかも高いのだからどの程度通用するかはさておきニューゲームのレベル1でない面だけを見ればラッキーだ。


最初に選んだ本がこの『ブレイブ・スクール』だったのも運が良い…というのも、チェリアを除いたボスの何人かは人外で話を信用出来るかと言われたら微妙だ。生理的に嫌なのも居るから信用してなかった可能性は高い。ロリ魔王ほど同情出来るボスが居ないのも事実だし。



「とりあえず、協力するかどうかは強制じゃないんだよな?」


「勿論じゃ。仮に協力しなくとも悪いようには扱わぬ。幸い、ここは学園じゃ。わらわが倒れぬ限りは安心して暮らせる事を約束しよう」


「そうか…」



納得は出来るが、女神や勇者がいつ襲ってくるかは分からないんだからいつまでも安全とは言えない。どちらにしても死を覚悟する必要はあるか…



「すぐ答えを出す必要は無いのじゃ…じゃが、ここで暮らす限り時は進む。また勇者たちと関わりを持っていくのを回避するのは不可能じゃな」


「勇者なぁ…クリア条件は勇者を皆殺しにするだったか?」


「…皆殺しにする必要なぞ無いのじゃ。無力化してくれればそれで構わぬ。不用意に死んでもらっては学園の沽券に関わる。ゲームならまだしも、これは本の中ではあるが現実じゃ。本の登場人物以外の死は永久なるものじゃ…お主は勇者殺しの罪を背負って処刑されれば仕舞いじゃ」



勇者はページを戻すなりすれば復活するが、俺はイレギュラーだから死んだらそれまでか…まあ、ロリ魔王が倒されたら手掛かり消えるしクリア不可になりそうだ。



「…でも、倒さなきゃいけない偽者は居るだろ?」


「偽者か…まあ、勇者たちに女神が介入してくる可能性も考えればお主の言った皆殺しが効率的ではあるのじゃが。その偽者は特に危険なのは事実じゃ…でも、良い案が思い浮かんだ。お主、勇者の偽者をするつもりはないか?」



何処が良い案なんだと思う。表ストーリーとやってる事は同じじゃないかと。事実はさておき、俺がフィルムットの代わりに倒せるよう手配するだけだろ…表ストーリーのフィルムットが本当にそんな事を考えていたかはさておき、俺はそう考えているのだからより質が悪い。


とはいえ、クリアするつもりでないなら1人だけ…早い話がフィルムットを殺せばストーリーとしてはチェリアは死なないのも分かっている。あまりそんな事はしたくないが…友情とか病気の妹のためとかもあるが、わざわざ非リア充のフィルムットだけを殺す兵器を用意するのも気が引けてくる。


やるなら残りのリア充、特に男共だろうと…



「…まあ、構わないが。但し、勇者殺しの小細工をする手伝いをしてもらう事になるが」


「お主とわらわ、どちらが魔王なのか分からなくなってくるのじゃ…」


「安心しろ。勇者殺しの責任は全部魔王であるお前持ちだ」



魔王がやった事にすれば万事解決だろ。何処に居るかも分からない魔王が勇者を狙って現れて倒して消えた。勇者が弱すぎて死んでしまった。死んでしまうとは情けないで解決出来なきゃついでに噛み付いてくる輩を根絶やしにすればいい。大事の前の小事という奴だ。どのみち、ゲームでは勇者は数年まてば新たに生まれてくる設定だったのだから戦争を先延ばしにしてクリア出来たらそれまでの話。


まあ、1人だけこの本から連れ出せるのなら誰にするかも考えてないし暫くは久しぶりの学校生活を楽しもう。



「わらわは勇者殺しの汚名とか要らぬのじゃ…」



死んだ魚の目みたいな顔をして呟いている。魔王らしくないロリ魔王だ。命狙われてる自覚あるのか…というか、表ストーリーではあまりにも唐突な終わり方だったから真実…というか裏設定を聞いておく必要があるかもしれない。


少なくとも表ストーリーでは悪いようにはあまり描かれなかった。描写は多くないが、むしろお助けキャラの立ち位置だったと思う。こっそりと回復アイテムをくれたり、攻略情報を教えてくれたり…その好感が魔王だったと知った途端にだだ下がりしたが様式美だし、むしろどうして魔王軍じゃなかったのかとストーリーバッシングもあって裏ストーリーはそれを元に作られたとかいう噂もあったっけ。まあ、構わない…どうせ仲間にならないんだし。

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