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オクタグラム チェインテイルズ  作者: 紅満月
12章 新訳・大和編
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巡り合うもの…と〆殴り合う者

屋敷の奥、応接間に通された。板場に行こうとしたら止められた。部外者立ち入り禁止らしいっす。焼肉を所望しておいた。肉提供も忘れず行っておいた。鶏も何羽か提供しておいた。それはええんや。何故か寿司を握らされていた。



「改めまして、わっちは14代目橘蓮華紫苑と申します。紫苑というのは幼名で他の先代と被らないように名乗っているだけですので蓮華とお呼びください。それで皆様方は…」


「我の方からご説明します蓮華様…といっても全員を知っているわけではありませんので、自己紹介をいただけると助かります。まずは、そこで何故か寿司を握っているのがかの悪名高きソール・クーヘンです」


「失敬なん。悪名とか濡れ衣なん。ワイは進んで悪を突き進んでいるん。それを単なる悪い噂止まりにしてもらっては困るん。それではまるでワイが偽悪を演じているかのようではないか。ワイは第1村人という町の名を伝える役を捨てた悪人として料理人目指しているだけなん」


「お主は寿司だけ握っておれ。話がややこしいのじゃ」



うどんじゃないから拗ねてるロリ大魔王は厳しいん。〆さば作るんなー。でも、メインはツナマヨ軍艦やねん。焼肉もあるで…食べ放題の店か、ここは。え、和風バイキングレストランなん、ここ?


で、各々自己紹介を交えつつ互いに自己紹介していく。けものなフレンズが何故か意気投合している。だが、ルーチェと霞ですらオラの中では月とスッポンもといペットと非常食の差はあるん。


ミリルと蓮華もロリ枠で仲良くなっている。ミリル、騙されるな。そのロリ狐はお前と99歳違うんだ。気持ちは分かるが一回りってレベルじゃないんやで。


とまあ、特に女性陣は問題なく仲良くなったようだ…こっちの問題は前途多難である。雪ババアは敵対の意思無しである。つまり、屋敷の中ではオラに敵意を見せるのはへっぽこタヌキと黄泉がえりトメのみである。蓮華からは悪意とか敵意は感じられないが、戸惑いはあるみたいだ。そりゃ、押し掛けて来た奴が家でいきなり寿司握ってるとか意味分からんわな。オラも意味分からん。


霞の攻撃は全てカードでどうにかなる。もとい、豆狸丸は元々キッシュがクボタイトで作り上げた刀である。あいつ使いこなせてない。始めの解除すら出来てない。ちなみに最終形態・絶解になるとどうなるか分からん。それは腹黒狸との絆次第ですん。というかそんな機能あるかも知らん。


とにかく、オラは淡々と寿司を握るだけなん。その手の漫画読んでて良かったである。さすがに寿司屋で働いた経験なぞ無い。サーモン系だけは余るほどあるので炙りやらチーズ乗せやら何でも作ってます。お陰でサーモンマニアが蓮華を連れてやってきた。



「あの、ソール殿…つららさんから話は聞いています。わっちの前世の事、わっちたちが愚かな行為をした事、そして何よりわっちの大切なお方であると」



雪ババアグッジョブである。少しだけ好感度上げておこう。で、つららはきちんと話をしていたようだ。


魔物の王となったリンドウと妖怪の王である蓮華がプルペラントタンクとして付属しロリ魔王の時間逆行に挑むというフルアーマーロリコーンモードには重大な欠点があった。時間逆行すればプルペラントタンクなリンドウと蓮華は魔力枯渇で死に、行わなければチェリア自身が今までの負担による影響で命を落とす。そんな結末だったのだ…そんな感じしてたからオラは正規ルートを破棄して菊花を殴りに行ったわけである。そんな結末、オラは選べるはずもない。


そこまでの仔細を知っているのはオラと菊花と本人たちだけのはずなのだが…不思議ババアなつららが知っていたとしても不思議ではない不思議。不思議が飽和して不思議の定義がよく分からなくなっとるん。


どのみち、そのバッドエンドは回避されたのだ。というか、アレしか方法無かった。そこまでしてオラは幸せなぞ求めたくなかったのだ。償いとか出来るとかは要らない。だから何も言わないのである。責めて解決する話ではないし、終わった世界の話である。



「それはあくまで前世の出来事なん。変な事を雪ババアに吹き込まれたんなー。お薬出しておきますねーなん」



度を超えた説明はやはり洗脳なん。蓮華の熱い眼差し見て思った。こいつは流されやすい生き物なん…何処ぞのロリ大魔王と同類なん。オラは手札から速攻魔法『胸騒ぎの思い出は億千万光年彼方の創作物ストラテジー』を発動。このカードの効果によって雪ババアが語ったオラに関する情報は全て御伽噺だったと誤認する。つまり、灰被りに憧れる女の子レベルの心理状態まで認識が下がるのである。やっぱ雪ババアだ、好感度すぐ下がる。


ちょっと後でジャブろう。嘘大袈裟紛らわしいはあかんと思うねん。そのせいで元先代アホ蓮華の紅蓮が弓引く形になったんではと確信したん。



「あ…えっと。何の話でしたっけ?」


「寿司は中トロ、コハダ、アジって話なん。でも、オラのオヌヌメは切り落としのネタをかき集めて軍艦にしたお楽しみ軍艦と、うどん屋で培ったノウハウを活かした天ぷら握りなん。締めのミルクレープもあるでげね」


「ソール、もっと本格的な寿司作って」



アイリスがなんか言ってるが、回転寿司以外をワイが食った事があるかと。そもそも素人如きが握る寿司にプロのレベル求めんなと。それにミルクレープ美味しいんやぞ。


まあ、蓮華の記憶改竄は成功である。あっちで睨んでる紅蓮なんか知らん。後で、拳で語り合うのは確定してるんやから好きに睨ませておけばええんや。とりあえず、ハンバーグ軍艦と唐揚げ軍艦、ウインナー軍艦とフライドポテト作るんなー。







宴はたけなわ、オラはこっそり屋敷を出ると竹藪にやってきた。タケノコ採取ですん、流しそうめん用に竹の切り出しもするんなー…それより先にトメと殴り合わねばタイトル詐欺である。え、そんなんばっかとか言うなし。あ、おにぎり包む用の皮も採取せねば。



「何故、蓮華の記憶を操作したのですか?」



トメ降臨である。かつての仲間としては認めているのだが、すっかり子離れ出来ないクソ親と化している残念巫女である。鬼の角と狐要素を等価交換した結果、鬼と化した鬼クソトメである。



「そんなの当然なん。夢や幻想はいつか覚めるん…ただただ失望されたくないだけなんなー。別に蓮華が望まぬならばこのまま家族ごっこ続ければええん…親にすら祝福されない幸せなんて、俺は要らない。俺にしてみればお前は鬼クソトメだが、蓮華にしてみれば今は違えど魂は実の親ではないか。自らの手で親を殺した記憶なんて無くて構わない。無い方が良い」



親に祝福されない幸せなんて幸せじゃない。だから、せめて俺の事は嫌ってもいいから親の所に帰って来てくれ…そう声を大にして叫んだ哀れな男がかつて居た。


その男が望んだのは己の幸せでも、最愛の人が己の元へ戻ってくる事でもなく、ただ家族を幸せな形に戻す事だけだった。だが、望みは叶わなかった。


今回とて同じ事である。紅蓮が拒む理由は、己を殺したという娘の記憶を戻さないでというだろう…だが、つららが望んだのはかつての蓮華の幸せ。ならば、対立は目に見えている。


なら、そこで家族ごっこを続けた方がマシなのだ。俺が介入する事によって、破綻するのは必至。だから、これは要らないのだ。



「だから、これが俺の答えだ」



蓮華の指輪…この竹藪の中にあったのを今しがた回収したものだ。だから、こうする。こんな物、無くても良いのだ。むしろ、不要なのだ。家族には。



「これで家族ごっこは続けられる。良かったな」


「なっ…」



記憶を操作出来るくらいなのだ。指輪もろとも前世の記憶を砕くなんて今の俺には簡単な事である。要らないとは言わないが不要なのだ…蓮華という嫁は、もう。


次の瞬間、紅蓮に思いっきり殴られた。バカめ、我輩は最カタである。ダメージなぞ通るものか。

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