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オクタグラム チェインテイルズ  作者: 紅満月
10章 新訳・都市編
155/371

それは悠久からの再会。有給取ってますか?

真夜中、オラは偽魔王ちゃんを魔王城のテラスに呼び出したん。真意を聞くために…



「うどんか指輪か、どっちか選ぶのん」



テーブルに2つの品を提示する。片方はあの指輪、もう片方はエビ天、かき揚げ、お揚げなど豪華具沢山のっけ盛りうどんである。



「お主、わらわをバカにしておるのじゃ…」



迷う事なくうどんに手を伸ばす…いや、バカじゃん。という事はもう指輪なぞ要らぬという事である。では、遠慮なく砕くのです。それで終わりなのだす。と、指輪を取ろうとしたが…



「わらわは魔王じゃぞ。どちらかだけなどという事はあり得ぬ」



うどんだけでなく指輪も掻っ攫っていった。あ、さいですか。強欲な魔王は座ってうどんを食べ始めた。むしろ、食欲な魔王である。まあ、食い終わるまで待つべや。ちなみにおかわりもあるんよ。夜食にしては豪勢である。うどん魔王は3回おかわりしました。完食です…というか玉切れだい。最後は具無しの素うどんだったが普通に食ってた。



「さて、改めて真面目な話をしよう。その指輪の事は聞いているはずだ。アイリスはそれで前世の記憶を完全に取り戻した。そして、その力も…不完全な魔王、チェリア・キルシュ・ブロッサム。時間が掛かりすぎた…そして、いくら力を取り戻したからといっても君の望みは叶わない。それが神の力の影響だ」


「ソール、お主…」



魔王であるチェリア・キルシュ・ブロッサム…その種族としては時渡ときわたりの民という特殊な能力の持ち主であり、その能力は御察しの通り時を戻す能力である。が、今世のチェリアはその能力を使えない。能力の無い時渡の民として生まれ、虐げられ、それでも魔王となった。魔族を統べる王である彼女は誰よりも魔族を愛し、慈しむ優しき王であった。


しかし、魔王城は突如として異世界へと転移する。その中で彼女を含めた全ての魔族がこう考えた。「もしも時を戻せたなら」と…だが、彼女はその力を持っていなかった。仮に持っていたとしても結果は変わらないだろう。そして、この地で生きる事になった魔族たち。



「もしかしたら、魔族たちはお前が魔王でなかったらと考えたかもしれない。だが、お前が魔王となり慕って付いてきたのはあいつらだ。今のままで変わらなくても良いんじゃないか…むしろ、それを使って記憶を取り戻した瞬間、お前は魔王である事を辞めるのは目に見えて明らかだ」



そうである事を望む自分と望まぬ自分…そんな事より選ぶのはチェリアというただただ優しい魔王が幸せに一生を過ごせる事。それには俺は不要なのだ。居てはいけない…居なかった方がまだ幸せだと知っている。だってそうだろう…前世のチェリアは常に苦しんでいた。


桐生柳を殺した事を罪と背負い込み、ソレイユを守れなかった事を悔やみ続け、キッシュの死に絶望し…結局、ソレイユと同じ道を辿ったのだ。世界を巻き戻すという形で何度も何度も…そうさせたのは俺たちの罪だ。生きた屍を殺したところで得られるものなんて無いし、バカ娘の為にした事を責めるつもりも無い。そして、バカな男を一途に愛しただけの女をまた苦しめたくはない。


だから、やっぱりあの指輪は要らないのだ。



「だから、返せ。その隷属の指輪を…魔王にそれは不要だろう?」


「………断るのじゃ。魔王には不要でも、わらわには…チェリア・キルシュ・ブロッサムには必要なのじゃ。この指輪も、前世も、力も…そして何よりお主がなのじゃ」



そう言ったチェリアは指輪を左手の薬指にはめていた。本当にバカな魔王である。というか、光に包まれてメタモルフォーゼしとるん…何それ、ワイそんな機能付けてない。変身するのは猫小僧だけで十分だす…とか思っているうちによく知るロリ魔王ちゃんと化した。しかも翼付きである。ハイパーロリ魔王ちゃん再誕である。



「本当にお主は…そんな悲しげな顔をされて愛されておらぬなどと思うとでも考えておったのか。わらわはキッシュ…いや、今はソールであったの。あんな風に言われて、惚れぬ女がおるものか。ましてやかつての事とはいえ、わらわ自身の事であるなら尚更じゃ。しかも泣きながら言われて心にグサグサ刺さったのじゃ」


「はて、何の話ですのん?」


「はぐらかすのが下手くそなのじゃ。言いたい事は山ほどあるのじゃ…でも構わぬ。今はただ…少し抱き締めさせるのじゃ」



そう言って抱き付いてくるチェリア…まあ、終わり良ければ全て良しという事にするのん。全然良くない気もするけど、そんな事言ったら殴られるの目に見えてるから言わない。後、こっそり隠れて見てるイリスが怖いとかも言わない。


とりあえず、これからの事を考えないといけないん。蒟蒻者も集めて集会待ったなしなん。どうせマザコンなイリスも付いてきて魔王軍ガタガタになるの待ったなしなんなー。新しいカリスマが求められているんや。これ解決せんとまこぴー倒して次行けないっす。






という事で、蒟蒻者たちを叩き起こして事情説明…無論、イリスも参加しとります。指輪も強請られました…七色に輝く虹の指輪とか魔法カード使って何とか用意出来ました。



「人を夜中に叩き起こしてノロケ話ですの。いい根性してますわ」


「同感です」


「ホントにゃ」


「ほったらかしの癖に、他の人とよろしくなんてずるいのです」



こちとら連日でうどん屋した後に街づくりしてたのに差し入れすら無かったのに何言うてくれてまんねんである。もうしばらく寝とらんわ…ワイじゃなかったら過労死しとるんなー。



「ママが加わらなければ、ソールは絶対に手を出して来ないのに理解出来てない。こいつら、自分からアプローチしなくなって久しいのに図々しい」


「確かになのん。ロールキャベツ作る素振りすりゃありゃしないのん…何処かの大食らいはオラの飯でなくとも良さそうだし、猫はコンビニおにぎりで満足し出したし、サーモン娘は寿司屋に通ってるのは聞いてるのん」



店に足繁く通っていたのはアイリスとイリスだけなん。チェリアは多忙という出不精で引きこもりでも持ち帰りうどんは食べてたん。出前やおにぎりの味を伝えてこなかったのもマイナスポイントなんな…途中から嫌になって品質落として市販品使い出しても何も言わなかったのん。



「そこはお主もお主だと思うんじゃがの…まあ、お主としてもまだまだ思うところがあるのであろう。じゃが、それは思い込みじゃぞ。キッシュがした事は間違いであるも神復活という結果を見るに完全な間違いとも言い切れなんだ。どのみちわらわたちはキッシュを失う未来しかなかったのじゃ」


「そんな詭弁はどうでもええのん。今はソールとして、飯炊き係として…そして何より魔王の後釜を決める必要があると思ってるのん。ここで魔王の後釜をこの中から選んでも構わないんじゃないかなと思い始めたのん」



オラのサポートするわけでもなく、魔王軍のためとか言って楽な仕事に逃避してたんなら後釜魔王だって出来ると思うんなー。別にこれからの魔王軍を率いるのは魔族である必要ナッシングだし。

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