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「ほ、炎怖い…炎怖い…」
「や、やめてください。ヴァンと同じ属性で戦うのは…」
「し、進級するから手伝って欲しいと言ったのにこれはあんまりですよ…」
1年の進級試験は担任の腐女子が相手だ。忘れた人も居るだろうから改めて紹介しておこう。四天王最弱の蒼炎のヴィオレだ…その2つ名の通り炎属性の魔法を使う。まさか、ここまでカタタ・マーキンの影響があるとは思わず正直引いてる。反省はしてない…カタタ操った時にちょっと魔法を使い過ぎたのは確かだ。
練習場での簡単な試験だというのに先が思いやられる。まあ、パーティ構成が悪いのもあるが…フィルムット、アイリス、イフォルマくんは全員魔法を主体とする後衛タイプ。辛うじてフィルムットが光の剣を魔法構成して接近戦が可能。イフォルマくんのミスリル装備はさっきの戦いで全損してしまったのだから仕方ない。他の生徒を庇う姿はまさに英雄だったから良いんだが…
俺も一応パーティに入っているがサポートがメインだ。俺が加わったらオーバーキルしてしまうから、まだ生きて楽しみたいからと腐女子先生に懇願されてしまった。ダメだこいつ、腐ってやがる…やり過ぎたんだと思った。後で嬉々として語りそうだからコテンパンにして欲しいがこの状況ではなぁ…
「あらあら皆さん。さっきの威勢はどこにいったんですか?」
煽るがおっとりした口調で言われても緊張感が足りない気もするが、3人は混乱というか恐慌状態だ。なんだ、この豆腐メンタルパーティ…まあ、カタタとの戦いは集団心理とか憤りが表立っていたから出来た事であり、本当の魔王にあんな感じで行っても「赤信号、皆で渡れば集団自殺」なだけだ。チェリアはそんな事しないだろうけど。
ちなみにチェリアは後処理があるからと部屋に戻って行ってしまったのでこの場には居ない。後処理も大事だが…いや、余計な事は考えまい。
「立て、お前たち。戦争では仲間が裏切るのも目の前で死ぬのもよくある話だ。試験だから、担任だからと手加減してくれると思ったら大きな間違いだ。親しくすればする程、人は同時に恨み辛みを感じやすい…嘆くのは後でも出来る。今は立て…立って目の前に居るゴキ腐リを駆除しろっ!」
じゃないと昼飯が不味くなるのは確定だ。というかチェリアと落ち着いて2人で飯食わせろよと思うが、耳年増なロリ魔王が興味を持ってくれるのは悪くない。但し同性愛…てめぇはダメだ。同性愛自体は否定しないが余計な知識を与えるんじゃない。チェリアが穢れる。
「ゴキ…ゴキの方が嫌。潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す…」
あ、ヤバい。初号機暴走し出した。いや、ダミー人格とか無いはずだけれども。ちなみに装備はナイフだ。刀とかライフルとか槍とか与えた方が良いだろうか…残酷な天使になりそうでお義父さん心配です。
そんな事を思っていたら、アイリスはヴィオレに向かって突進して行く…後衛が単独で先走るのは悪手なんだが、男共が役立たずだから何とも…
「ゴキ、ゴキは嫌ですぅ〜」
あ、ゴキ腐リ扱いで錯乱してるのがもう1人居た。更に手加減無しで火球を生成してやがる。これは本物が出たと思ってやがる…というか、相手=ゴキと互いに思い込んでやしてないか、これ?
俺は2人の間に入るよう駆け出す。あんな火球を食らったらアイリスは間違いなく即死…しかも蘇生不可な死体消滅パターン間違い無しだ。間に入ったら両方のダメージ食らうわけですがね…数値式じゃなかったら即死ものだろう。大丈夫と分かっていても、チェリアが大泣きするまで想像出来た。後、ヴィオレ減給。
アイリスを追い越し反転して抱き止める。その際にナイフが腹に刺さる。悲しみの向こうへ行きそうな激痛だが数値的にはチェリアのビンタよりダメージ少ないんだが、これどうよ?
「ぁ…」
その直後、背中に迫る熱気と少しずつこんがり美味しく焼けている感覚と痛みが…バッドステータスにヤケド付きましたわ。というか、これ終わったら貧乏なキャラみたいに背面裸じゃね?
世界の嫉妬を凝縮したようなその熱さと痛みに耐えると同時にバッドステータスに気絶が付き、俺は意識を持っていかれた…
気が付くとそこは見知らぬ…地べただった。天井じゃないのかよ、普通。まあ、気絶する直前、フィルムットとイフォルマくんも余波で軽く炙られていたから運び出せる人は居なかったんだよな。
「とりあえず、いつまで泣いてるんだよ。お前は」
気が付いたのは耳元でさっきからグズグズ泣いているロリ魔王の所為だ。泣く暇があるなら顔を横に向けて気道確保しとけや。後、ちゃんと治療しろや。せめてここは膝枕だろうと…そんな事を思い上体を起こすと、泣いていたのはチェリアではなかった。
「キッシュ…キッシュ…キッシュ…」
そいつはチェリアによく似た顔立ちの銀髪紫眼の少女だった。フードから顔出すイベントは3年になってからだろうがよ、アイリス…というか、お前に刺されてもいるんだからうつ伏せじゃなくて横向きに寝かせやがれ。とりあえず、自分で魔法掛けて治療しよ…
数分後、完全復活…とまではいかなかったがヤケドとかは回復した。完全じゃないのは制服の背中側が完全にダメだったからだ。ズボンは無事で尻丸出しは防ぐ事が出来た。これは奇跡と言えよう。後頭部ハゲてもなかったし…これは永遠の謎という事にしよう。考えてたらハゲる。
それはさて置き、未だ泣き続けている義理の娘をどうにかしないといけない。とりあえず、頭を撫でる。チェリアより一回り大きいから撫でごたえはある…撫でごたえって何だ?
「キッシュ…だいじょぶなの…」
「大丈夫だ、問題ない」
後方で炙られてのたうち回ってる男2人に一番良い治療を頼まれそうだが、男はちょっと我慢しろ。親バカと言われても構わない。アイリスが落ち着くまでこうしているつもりだ。
そういえば、後ろで魔力枯渇起こして倒れていたバカ教師も居たんだっけか…あっちは放置しておこう。とりあえず、一応倒した扱いになるんだろうから2年へ進級出来るはずだ。手加減してなかったバカ教師は減給で済まないだろうが。
その後、アイリスが泣き止んだくらいに騒ぎを聞きつけてきたチェリアに事情を話したら大泣きされた。アイリスより泣き止ますのが大変だったのは言うまでもない。この似た者親子め…というか、はっきり言っていいか。親子丼フラグ立ってるよな、これ?
結局、チェリアが泣き止んでヤケドに苦しむ2人を治療した。闇属性以外が使えると発覚したが些細な事だ。ただのチートだから気にすんな。で、その後には今回の件に関しての調査委員会なるものが発足。まあ、勇者を殺しかけたともなれば当然だわな…チェリアはやる事が多過ぎるとボヤいていたが、お前が一番ヤらなきゃいけないのは…
で、ゴキ腐リ教師は1年の生徒に対して加減せずに魔法ぶっ放したので減給に謹慎の上、担任から外された。それだけだと授業以外は更にゴキ腐リ化するのは明白なのでアチェロに調教させる事にしたが「プレイが増えるんですね」などと言ってやがった。あいつ全然反省してない。腐りきってやがる…
という事で、俺が担任をやらなきゃいけなくなったのだ。まあ、ゲームではその展開あったし、2人+αならなんとか出来ると思って快諾した。どうせ釘バット作る以外暇だし、あいつらを鍛えるには最適だ。更に教師用の上着は少しだけ防御力高いし、空いた時間でチェリアをからかう事も出来る。損は無い。
そんな事をベッドに横たわりながら考えていた。「というわけじゃから、教師用の部屋に移動するのじゃ」と引っ越しを命じられて荷物をアイテムボックスに出し入れの往復で堪えた。今日は色々あったし…というか、ここはチェリアの部屋に移動して初夜を迎える展開ではないのかと小一時間問答していたのが一番堪えた。あいつ、「まだわらわは指輪を渡しておらぬから夫婦ではないのじゃ」とか言ってやがった。表ストーリーではヴァンがシャルロッテに渡していただけで結婚云々言ってたからあれで良かったと思い込んでいた俺のミスだ。ミスった。最後の瞬間、ヴァンの洗脳解いて絶望の断末魔言わせときゃ良かった。胸くそ悪い…おのれ、カタタ・マーキン。
まあ、売り言葉に買い言葉で婚約破棄を言い出したら「少しだけ待つのじゃ。絶対用意するから捨てないで欲しいのじゃ」と泣きつかれた。それに今日は色々立て込んでるから無理でも数日中には押し掛けるらしい…チェリアの部屋には機密書類とかもあるからあちらを作業部屋にして云々と言っていた。あいつからかうとやっぱ楽しいわ。
そんな事をニヤニヤしながら思い出していると視線を感じた。振り向くとそこには寝間着姿で枕を抱えた…アイリスが部屋に居た。うん、チェリアじゃないのかとも思うがフラグ回収だよ、これ。後、なんで引っ越したばかりの部屋を知っている?
「キッシュ…怖いから一緒に寝て」
間違いなく、トルスから俺に攻略対象移ってますわ。というか露骨過ぎる…トルスの時はまともに会話するのも出来ないとか言ってたのに。
「…年頃の娘がそんな事をするんじゃない」
一応、義理の娘になるわけだが貞操はしっかりしろと思うわけだ…据え膳ならおかわりしますが。服脱ぎながらベッドダイブの技を覚えなきゃいけない。
「先生になったなら、相談乗って」
そう言われると困る。だが、そんな甘い考えで教師と2人っきりになるから猥褻事件が起きるんだと説教せねばならない。それで2人っきりになるから仕方あるまい…あれ?
「相談出来る人、他に居ない…1人ぼっち、寂しい」
そういう時はエア友達を作れば良いんだよ…では論破出来ないよな。事情知っているわけだし、そう仕向けたわけだし…それにあれだ。あんな炎見たからひきつけ起こしても困る。
これは早めのイベントだと考えれば良いんだよ。不倫じゃないよ、ハーレムだもの。初の添い寝を娘に奪われたチェリア、ざまぁ。