それは変革の影響…あるいはディレクターズカット版
それからしばらくして、縛られた豚ムットくんを連れてやってきた美少女、ミリル・豚食うの・惣菜はさん。え、ブルターノ・ソーザッハだったっけ…細切り肉の事はええんだよ。
「お待たせしました。このブタ野郎が迷惑をかけたのでミリルも疲れました」
何気に口悪くね…あれか、悪役令嬢でもやるのか。子爵だから婚約者とか居るんですかね。あれ、こっちには王女や公爵令嬢居るんやけどどないやろ。え、居るってか目の前に。百合ですか、キマシですかと言ったら睨まれた。どうしてそういう知識をアイリスは教え込んだのか問い詰めたい。
「コホン…えっと、領主依頼の件でしたね。代行ですけれど、その辺りはギルドと確認していますので大丈夫です。ミリルの依頼は…ずばり、そこのソール様との婚姻です」
はて、自分の一人称が自分の名前なのはまだ許容範囲内として、マジで悪役令嬢みたいなノリでなんかふざけた事を言ってきましたよ、このコマンタレブーは。え、それを言うなら細切りタレ豚だって。よし、今夜は焼肉っしょ。
逃避はさておき、そこまでフラグ立てたかなと。そりゃあどんな妹でも可愛い方がいいのではあるが、それはあくまで攻略対象についてである。前世のミリルはモブ中のモブ、しかも単なる豚質でしかなかったのである。好意も無ければどうして人間でなかった、せめてもっと人寄りの亜人だろレベルであった。その結果が今世のこれである。
「金等級冒険者にして、金色ウサギの討伐、温泉の掘削と施設建設、旧市街にある学園の深部探索と単身では難しい事を軽々とやってのけたソール様のようなお方こそ次期領主としてミリルの伴侶に相応しいと思いますっ!」
「「「ちょっと待ったー(にゃ)!!!」」」
ミリルの発言に待ったを掛かる3人と無言で熟考しているアイリス。というか、金等級がフラグでした。やっぱフの字のせいやった。金等級のせいで完全にストーリー壊れとりますやん。まあ、好意寄せられる事自体に嫌悪感とか無いしミリルはオラ好みの容姿です。そう改変しましたし…なんか前にもそういうのあったなー(棒
なんか、当の本人をそっちのけで、ミリルが「金等級の栄誉はあれど爵位には及ばないのです。ですからまず子爵の爵位を得て、公爵令嬢であらせられるマール様と結婚し…」などと口上手く懐柔してるわ。あ、これ追加パターンや…もう退路ほぼ断たれた気がする。本当にどうしてこうなったである。
この一時間後、何故かミリルはチャクラム使いの冒険者(特別待遇星2つ半、バグ仕様)として仲間になったのであった。非常食の豚ムットくん付きで…だからどうしてそうなったである。
とはいえ、婚姻を依頼にするのは無効とアイリス査定官に言われたのでその件は却下である。そらそうだ。そんな雑な依頼があってたまるか。というか領主代行の仕事は誰がするねん…あ、セバスチャンか。そのためのキャラか。
「では、改めての依頼にしましょう。ミリルとしては領主代行として旧市街と新市街の貧富の差を無くして、旧市街の学園の復活を目標にしています。これはご先祖様からの願いであり、我々一族の悲願であります」
そう言って見せてきたのはいかにも古い写真……そこにはよく知る変態たちが写っていた。俺が拾ったあの写真と同じものである。
「この人がミリルのご先祖様たちで、この本がご先祖様の手記なのです」
ミリルが指差して先祖だと言ったそいつは…豚じゃなかった。豚専でもなかった。まあ、御察しの通りシャルとウィローで…ではなく、コランダムベアだった。なんでやねん。養子縁組して子を育てたとか…あのホモグマがですか。股がられて馬の稽古でもさせてたんだろうなと。で、手記を見たが『ま〜 んま ぐままままー ぐ〜 アッー』とか書かれてあった。アナグマなの、穴に入れるクマだったけどもさ。
「とはいえ、まだまだ道半ばどころか歩き始めたばかりです。まずは貧富の差を無くしていきたいのです…そのためには、暗躍している悪い組織の壊滅をしたいのです。皆さんは聞いたことがありませんか…違法薬物の存在を」
ありきたりな展開だが、最早最初の話と違いすぎて何も言えねぇ…しかし、違法薬物ですか。むしろ、どこまでが合法なのかよく分からないんですが。まずはこの世界の法律が何処までを許容しているのか教えてクレメンスなわけですよ。こちとら薬物製造には長けてるウィローくんの知識あります。経験ないけれどギャラとハードで大まかカバー出来ると思います。あ、双子の出番はまだまだ先だったわ。
「それって、もしかして違法座薬の事かにゃ?」
「それですっ!」
ルーチェ先生がケンサコしたら違法座薬がヒットした。まあ、私も分かってましたけども。座薬のどの辺が違法なんですかね。そこが知りたい。原料だって座薬のものだし…もしかして、もしかしなくても大きさ?
「元締めや使用者、使用場所などの特定が出来れば良いのですが…なかなか簡単にはいかないものなのですよ」
「あー……そうだにゃ」
簡単にはいかないようにした張本人が目を逸らしてこっち見てる。え、書類ならこっそり拾って持ってますが要るのん…ああ、要るのね。それ、カタタマとかの名前も書いてるから外交問題に発展する可能性もあるのでしまってたのん。え、別の意味で既にハッテンしてるって。それは知らんがな。
とりあえず、ワイの知る限りの情報も提供してお送りします。一社提供だから費用の見返りあるよね。え、体でお返ししますだって…早速豚を屠殺する準備してんじゃないです。それは非常食ですからもう少し太らせてからにしてくださいです。
「では、報酬は依頼達成と規定の報酬だけでいいのですか?」
「強いて言えば、猫小僧とワンヴァルカンが領主公認の怪盗だと公言すればなお良しなん」
「だからカレイドキャットにゃ」
免罪符である…というか、ワンヴァルカンは何もしてないけど。え、書類を盗んだって。落ちてたものを拾っただけなん。むしろ、拾ってなかったら猿国のエテ公どもの秘密が暴露されてますがな。まあ、今頃別の意味で暴露されてますよ、おそらく。ちゃんと病気対策してんのかねぇ…
この後、領主代行ミリルは領主の軍と自警団を導入して元締めの屋敷や売買所などを家宅捜査し、元締めや幹部級部下、その下っ端を捕縛、使用者などを保護したそうな。その中には猿顔の連中や猿国の連中含まれていたとかいなかった事なかったとか……
で、焼肉はお店でという事になった。屋敷を後にしたワイらは部屋では消臭が大変なので高級焼肉店へとやってきた。ギルドの報告は明日で構わないとのアイリスの進言…フの字、パーティーで酒飲んでたからロクな対応しないんだってよ。というかパーティーのために休暇取ってるらしいから二度手間になるとか。まあ、休暇の行動まで感知しねぇよ。
焼肉焼いたら食べ放題ではなくきちんと金は払います。が、どうしてミリルも一緒なん…え、パーティに加入したのだから寝食を共にするのは当然だってか。え、ホテル生活するつもりなん。領主邸という大きな寝床あるのに…帰る気ありません、結婚するまではですか。ええ根性しとるわ。さすがホモグマが育てた子孫だわ。