ランクを上げるには犠牲が必要
武器は一応ケガさせないように木製のものを使い、回復以外の魔法も初級を使えとのおっさん教官殿からの指示が出た。まあ、物理を上げて殴られたら同じなんですけどね。私はバットが無かったので棒にしました…ヒノキじゃないよ、エノキだよ。エノキ茸付いてるのあるから4本ほど借りたよ。今夜はきのこ鍋だな。エノキ茸は回収しました。
さて、ここで残念なお知らせです。木製の矢に鏃無かった。殺傷能力皆無な矢とか意味ナッシングですよ。これは不正の臭いがする。というか、魔法が初級のみってのは力量的にあるが、木製使用なんて設定あたい用意してない。そんなのおかしいよって事態である…おっさん、中古の味はどうだったんだい。中古で許されるのはゲーム買う時だけだ、内容は初物ですからね。というわけでギルド査定官アイリスにチクっておこう。
とはいえ、エノキの棒だけで倒せる相手だから戦闘は大丈夫だす、問題ないだす。後、圧倒的な不利に至っているというのに危機感の無いおバカちん2人には後で説教だべ。
というわけで互いのパーティが所定の位置につく。ビッチーノさんは何故か高みの見物よろしく土で作られた丘の上でヨロレイヒーである。実質4対4を気取っているんでしょうか、いいえこちとらオラだけで事足りるってばよ。パーティの連携が大切…連携が大切なら後衛を守る配置してくれよ。こっちは前衛と後衛に均等というのにあっちは4人とも前だぞ。誰もヨロレイヒーを一緒にしていない物量作戦じゃねえですか。
連携ってなんぞや…ああ、おっさん教官殿を体で買収して勝つためなら汚い事をするって事ね。そんな連携ならしなくて結構。真のパーティならそんな連携しなくても圧勝のはずである。
「それでは戦闘開始っ!」
変態おっさん教官殿の合図で戦闘が始まる。いきなり4人の変態がスクランブルダッシュで突撃してくるが、シャルロッテが事前に発動待機していた氷壁魔法が行く手を阻むように展開する。時間稼ぎである。
朝の打ち合わせでは、その隙に俺がビッチーノに突撃して倒すという算段ではあったがここまで露骨な贔屓をされているとなるとその間に何をされるか分からない…ので、ナニをしときます。
いえいえ、氷壁の横から回り込んで氷壁を砕こうとする4人の男の穴にエノキの棒を差し込むだけの簡単な寄り道ですよ。「「「「アッーーー!!!」」」」とかって声が聞こえる、耳をすませば。その道ずっと行けばホモ道に続いてる気がするが私は行かん。
後は簡単なお仕事です。土の上で高みの見物をしているビッチーノさんに男女平等院鳳凰堂パンチをお見舞いしてやるんです。顔はやめな、ボデーにしなボデーに。でも、直接は面倒なので初級魔法で土の味を教えてやろう。
初級魔法カード、土の手ことアースハンド発動。このカードの効果によってビッチーノの周りの土の山が土の巨大な右手に変化する。更に土の巨大な右手の特殊効果発動、仲間を呼ぶ。これによってデッキから同じカードを場に特殊召喚する。特殊召喚に成功した場合、続けて特殊効果発動、これによってデッキにある土の巨大な右手を出せる限り召喚が出来る。
え、デッキとかカード持ってないから無理だろうって。病みのゲームにそんなの不要ですたい。
ほぉら、足元を見てごらん。それがあなたの末路って事でやっちまいな、ボデーにしなボデーにって贈る言葉を土の巨大な右手たち(現在も増殖中)に伝える。腐ったミカンのようにぐちゃぐちゃになったのはいうまでもない。第一目標達成である。
続いて第二目標、焼けもとい尻木杭に火をがつくである。初級魔法カード発動、プチファイヤー×4。このカードの効果によって氷壁の前で悶えている男4人の尻に刺さったエノキの棒が燃え上がれ燃え上がれ燃え上がれ◯ンダムである。これでは立ち上がる事は一部を除き不可能である。だが、未だに変態おっさん教官殿から終了の合図は上がらない。諦めなかったらそこで命終了ですよ?
結局、尻がモンキーマジックで赤く焼けただれたところでやっとこ教官殿から終了のお知らせが出て我らの勝利である。その間に死体蹴りしていただけの我々…シャルロッテとアイリスは若干引きつつも容赦無かった。だってこれ、戦闘だもの…マールの将来が不安です。戦闘終了した後にビッチーノさんたちを回復させる優しさに包まれたならきっと…突き刺さる冷たい視線は何のメッセージですか?
とりあえず、模擬実戦は終了しました。変態おっさん教官殿の代わりにフの字がやってきました。変態おっさん教官殿は査問委員会にサモンされる予定だそうです。試験で召喚されるケダモノ教官殿はほっといて育つものなんだろうと思う事にしておきます。
で、模擬実戦に合格したのでダンジョンに入れる許可状が出るらしいです。ダンジョンに出会いを求めるつもりはありませんから紐ください。誰がヒモ男やねん、フの字。
ダンジョンに行けるようになれば様々な依頼もあるのでランクアップには最適らしい…金色ウサギには劣ると思うのですが。え、そんなの出来るのお前だけだって…そんな事言うならウサギ肉返せよ。
結局、ダンジョンの許可状しかくれなかったよ。もっと学園らしい事したいが、それは難しい様子。座学がしたいですと土下座したら無いと言われた。模擬実戦をしたいですと土下寝したらもう要らんだろと言われた。
楽しい学園ライフは犠牲になったのだ。ダンジョンに楽しさを求めてもようがすか…あ、さっさとランク上げて卒業目指せってか。フの字に優しい言葉を期待した私がアホでした。
「辛勝するのが現実的かと思っていましたが、こうもあっさり勝った上に許可状まで出してもらえるとなると驕らないように努めないとなりませんわね」
「むしろ、ソールに奢って恩を売るべき」
戒めのシャルロッテとワイをダメ男にしようとするアイリス。それに比べて…
「ソールさん、冒険者同士の怨恨って大変なんですよ。ダンジョンなんかの目の届かないところで復讐されたらどうするんですか。だいたいパーティの連携がなっていません。あんな魔法が使えるなら遠距離から対応しても良かったのに…」
「パーティの連携がなってない以前に使えない矢をどうやって使って勝つおつもりだったのかお聞きしたい。実際、シャルロッテは氷壁に加えてエノキの棒への刺激提供、アイリスは雷撃魔法や拘束魔法を使っていたのに、あんさんは傍観者の日々にさよならしなかったじゃないでありんすか。冒険者の怨恨結構…負け犬に手を噛まれる程度の力量でこの世界生きてなどいけないじゃあーりませんか」
これはマールの再教育が必要ですん。せめて水の魔法使って攻撃出来るように特訓ですわ、洞窟ダンジョンで…え、ダンジョンに洞窟を求めるなって、洞窟ではないダンジョンしか無いのかよと。森と湖と旧市街ですか……湖で水着シーンの到来ですね。え、肌寒いから泳がないだって………おのれ、ディケイ◯。