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水平線の彼方には何があるか知らんからマイル

船を寄越せと喚いたら嫁を娶れとのたもうたゲームがあった。そんな事は言われなかったが、白いババアと腹黒狸が無理矢理仲間になった…種は使わないからな。どうせ離脱するだろ、何処ぞの王子みたいに。


え、船じゃなくて盾だったってか…立ては白い悪魔の専売特許だってばよ。だからババアは黙れ。


後、この船生きてます。妖怪のせいなのね、そうなのね。船妖怪なんぞ要らんかった…せめて、意識を持った宇宙戦艦とかなら良かったのだが、どう見ても幽霊船ですありがとうございました。闇の精霊のダンジョンでもないから病むわぁ。



「それで、あの浮遊島に行って何を企んでいるんですか、貴方は?」


「バルすに決まってるんなー。元がドMなら丁重に殴り潰すのが流儀なん。そして……元の姿に戻してハッピーエンドにしてやるん」


「そんな事が可能ならば、最初から世界の歪みは存在しません」



なんか、私設武装組織みたいな事を言うババアは無視しておくん。そもそも、この世界を含めてハッピーエンドなんてそうそうあるもんじゃないん。あったとしてもハッピーエンドのその先はシングルマザーとかロクでもない続編が描かれてたりたりするん。


そして、この世界自体がロクでもない。異世界から勇者とかいって拉致する事が可能な術があったり、魔王を悪と決めつける風習があったり…上げるとキリがないので割愛するが、その最も最たるものがこの俺を生かしているという現実である。


多分、世界の歪みは俺なんじゃないかなと。今更とか言うなし。もう何回も聞いたとか言うなし。無限ループしてるのは自覚してる。ただ…存在自体消しても復活するとか無限ループじゃなくてバグやろと。


そのバグが何かしでかしたらどうなるか……名人でも出てくるんやないかな? え、そんな小ボケは要らんてか。



「だいたい、世界を歪ませたのは俺とその身内の所為なんだから正すのは仕方ない事じゃないですかぁー。たとえ、それで全てを失うとしても……なんて考えた結果が更なる歪みなわけですが。そもそも歪んでない世界があるなら教えてほしいものだ。自らの主人たる一族を親殺しの連鎖で繋ぎ続けたお前にそもそも言われたくないんなー」



おまゆうなんですな、歪んだむは世の中どこにでもある。むしろ、歪んでない世界なんて無い無い。というか、こいつらと一緒に行動している時点でこれからろくでなし展開しか進めないと思い始めたんですが、それは。


そう思った次の瞬間、俺の目の前の世界が反転した。








そもそも、おかしいとは思わなかっただろうか。


たかが一般市民…もとい、一般村人の俺が都合よく勇者たちから逃げられるものでしょうか?


まっがーれな話ではなく、何故、逃げた先で易々と関係者と出会えてた時点で逃げられていたわけではない事に気付かなかったのでしょうか?


意識操作されていた…否、見ようとしなかっただけだ。真実はいつもひとつかふたつか知らんが、世界なんてあるはずが無いのだ。


何故なら、必要ないものだからだ。



「これが、この世界の……いや、最初から今までの姿か」


そこは、八角形の部屋に8本の柱。8枚の壁と天井。キッシュとして降り立った最初の部屋。ただ違うのは8冊の本はバラバラに解かれておりそのページが羽毛のように散乱しているという点。そして……


案の定、その一枚には挿絵としてチェリアとリンドウ、蓮華の3人がクリスタルの中に閉じ込められてシステムとしてさっきまで居た世界を構成している姿が描かれていた。


おそらく、あのままでいれば3人を殺して世界を終わらせるか、利用して無限ループに陥る展開が待っていたのだろう。


だが、お生憎様だ。



「どうして、この世界の仕組みに気付けたんですか。あなたは」



いつの間にか現れたそれは驚きつつも納得した表情で聞いてきた。


「所詮は本の世界…どう考えても都合良くいく世界だ。都合良く死んだ人間が生き返って、都合良くハッピーエンドになる。だが、どうやら俺はそんなハッピーエンドが大っ嫌いでね」



どれだけ都合の良いハッピーエンドを望んだか。どれだけ都合の良い夢を見て現実から目を背け続けたか…



「でも、俺はそんな夢物語が好きだった奴を知っている。そいつは年相応のお花畑な思考で、いつも明るく生きてきて、最後まで生きようと頑張った……だから、そんな奴が呪いのカス神になっているなんて信じられるわけないだろ」


「………いつから?」


「気付いていたというなら…もとい、気にしなかったという点では最初から。ただし、決してイコールにはならなかった。カス神=イルムなんて誰が想像出来ますか。だが、葵があんな事になるなら、何でもありだったよな」


「…元々、神ごと取り込むような規格外のバケモノだったもの、彼女は。でも、その規格外にあの子たちも成り果ててしまった。全てはキッシュであろうと役割を演じて、更にソールであろうと演じ続けたあなたの責任」



痛い事を仰る。だが、そのそもそもの原因に言われてもな。



「なら、どう演じれば良かった。自分の責任で死んだ女の子に償うのはどうすれば良かったんだ。俺だけが不幸になるなら構わないさ…だが、わざわざ俺を好いた女を異世界へと拐い、その家族を離散させて、本人はその女の負の感情に支配されたなんて滑稽な話を含めて俺の責任だと言うなら最初から消え去る以外に何があったというんだ?」


「っ……」



どうしてそれをなんて顔でこちらを見てくる彼女…イルムことカスミこと日下部菊花。分かりますとも、こちとら悪神ソレイユに魂吸われた際に色々だいたい分かった破壊者ですぞ。誰が人格破壊者やねん。


黙り込んだ彼女を傍目に、俺は床に散らばっている紙切れを集める。


どのみち菊花は事故によって長くは生きられなかったのだろう。だが、少なくとも俺が居た世界ではその事故の理由は俺にあった。俺の誕生日を祝うために訪れた帰りに起きたという明確な理由が。


まあ、そんな事はどうでもええねん。どちらにしても終わった事だ。バッドエンド、別ルートでもデッドエンドな悪役令嬢退場パティーンクラスの菊花の死亡フラグは回避不可能だったと割り切ろう。



「だから、こうするしかないじゃないか」


だから、あれほど、人様に迷惑かけるなと言ったのに…仕方ないタヒんでもらうってスコップどろぼーしたみたいな展開になるんだよ。


俺はカス神の体を手刀で貫いた。

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