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亡き王女のための……いや、死んでねぇけどな、一応。

脱獄、そして騎士の鎧を一式掻っ払ってシャルロッテと地下……ではなく、普通に脱出した。城門から出たよ、商人の馬車の藁の中に隠れて……古典過ぎて誰も気になりません状態でした。シャルロッテの浅知恵評価しない。


それでもドナドナは続く。城から離れる事数時間……息を潜めて荷馬車が揺れるの止まるまで藁の中で鰹のタタキの気持ちが少しだけ理解出来た。俺、今度ミミズ見つけたらタタキにして食べるんだ。


そんな事はさておき。馬車が休憩で停まっている間に俺たちは藁から脱出して森へと入った。無断で商人の馬車を使ったんだ、金請求されたら股間のを切り取ってやらねばならない。そこまでの慈悲は持ち合わせてない……現ナマが無いともいう。


商人にバレないよう馬車では最低限の会話しかしなかった。護衛に何人か付いてきそうなものだが、既に墓の中……コランダムベアに八つ裂きにされたから仕方ないね。つまり、愛の芽生えないままの逃避行なんです。男女2人森物語……一歩間違えたら遭難です、これ。


そんなこんなで、遠き山に日は落ちたので野宿です。拾った枝やら枯れ草などを積み重ねて燃えろよ燃えろーよ、燃え上がれ燃え上がれ燃え上がれ……え、やり過ぎとか言うな。食料無かったからコランダムベアの肉を焼いてるだけだ。ビバジビエ。



「貴方はこの亡命を隠すつもりはありますの……」


「腹が減ってはどうにもならぬって言うだろ。そもそも、きちんと準備しておかないのが悪い…森の木の実やキノコなんて毒性を考えれば食べられないのくらい考えておけ」



炎でバレるなら既に襲われていても不思議じゃない…イエスジビエ、ノーカニバ。それに、臭い飯ばかり食わされていたんだから今更獣臭い肉食うくらいなんとも思わんわ。何ならここでお前を食っても構わないんですよ、こちとら。


何だかんだ叫んだって、焼いた肉の匂いに腹を鳴らしたシャルロッテはその肉を差し出されたら食べるしかないわけで………



「……というわけで、異母弟の第2王子であるエンブリオ・アルーヌ・エスラントによる王位の簒奪を大臣一派が主導しているらしいのですわ。そもそも姉君たちの嫁ぎ先も大臣らが後押ししたもの。病弱な兄君の妻も大臣の娘……どう足掻いても王国は近い将来、大臣一派のものになりますわ。幸いだったのは、わたくしが出来損ないで利用価値を見出せなかったという点ですわね。氷の魔法しか使えないのなら必要など無い…人望も無い王女には洞窟での死が相応しいという事でしょう」



自虐乙なん。こちとら氷の魔法すら使えないダメダメソールなん。それはさておき、とりあえず鰤男って異母弟が王になったところでお魚王国になるとは限らないのん………つまり、守る価値無い王国の未来を憂う暇皆無なん。どのみち、本の中では帝国と戦争おっぱじめてバッドエンドなんやし。


その考えでいくと、回避不可能フラグってのは多い。亡命しても回避出来る所へ行かなくてはならないわけだ。学園が一番なんだろうけども……どうやら学園そのものが無かったりするんですな、これが。


地形が元々と異なっているのが原因らしく、帝国やら何やらの国境中央に位置していたはずの学園が別の何処かにあるらしい……つまり、移転したんですね。昨今流行りの金と政治の問題ですね、分かりますわ。この周辺国だいたい腐ってるし。


亡命するなら、まず敵対関係にある帝国はオヌヌメしない。王位奪還とか仕組んでシャルロッテを前線に送り込んでの大戦争は目に見えてる…その後は傀儡王になるのも含めて。


神国は論外。聖女ならぬ性女にされてまう。その点で言えば合衆国も同様だな。豚質を取るような国にイエスユーキャンする奴はいねぇ。共和国なんてつく国にろくなのが無いから却下ですん…あ、民国も同様なん。


残りは首長国と公国と連邦なん……金ピカの機体作ってたり、父親ごと撃ったり、白い悪魔作ってたりしそうだから却下なん。オラはプラント派なん。


という事で大国に決定なん。イフォルマくんなら何とかしてくれはるんと違います?



「ならば、亡命なんて手立てを使わずにシャルロッテという無能な王族は死んだ事にしてしまえばいい。これからは一冒険者として生きていくなら追っ手もかかりにくいし見つけるのも多少難しくなる。とはいえ、後ろ盾は必要だろう。とりあえず、大国へと移動するのがベターな選択だ。他の国は当てにすべきではないからな」


「無能な王族……」



落ち込んでる暇なんてないと思うん。それに、無能なのはこっちなん。転生して嫁たちの所へ帰ってめでたいめでたいで終わらんと足し足ししてるん。


ならば、その足し足しを目の前の元現地嫁にもすれば良いだけの話だろうと。シャルロッテという氷の魔法しか使えない王族としてはダメダメな王女も、見方を変えれば最強クラスの氷の魔法を使えるおんにゃのこな訳ですよ。冒険者としてはそこそこええランク行くんじゃないですかね。実際、ゲーム中も攻撃力でいえばそこそこ行けてたし。おバカなのですがね。



「それとも、王になってこの世界を牛耳るか……それが望みなら他の王族を皆殺して座を空けてやらんこともないぞ。そして、それから正義の使者に討ち取られるのも面白いとは思わないか?」


「全くもってそんな気はありませんわ」



超合衆国構想は即否定されたん。妹の目の前で刺し殺さらたらあかんと思うん………あ、あっし妹巻き込んで落雷で死んでましたわ、テヘペロ。


まあ、どのみち王になる展開にろくなのないんですよね。王は魔王だけでええっすわ。



「なら、冒険者として生きよう。そして………思い出せ」



俺はシャルロッテの頭をワシャワシャと撫でる…と同時に力を込める。力といっても筋力ではなく魔力…そして、ウィローと過ごした愛の日々の記憶を流し込んでみた。



「………ソール様、恥ずかしいのですが。それにわたくしは子どもではありませんわ」



そんな能力はオラには無かっただ。顔を赤らめてはいるものの、記憶を取り戻した様子は見られない……あの素晴らしい愛は戻って来んかった。命懸けてと誓った日から素敵な思い出………あ、生きたまま解剖しまくったの思い出したら廃人したったかもしれんから結果オーライやん。


それに、チェリアやアイリス程ではないが撫で心地も悪くない……あ、イルムと蓮華には敵わないよ。最下位はカンナやねん……ロボ娘にキューティクルを与えるのが今後の課題ですね。まあ、いつ再会出来るか知らんのんやけど。


それまでにこの元現地嫁を再び嫁の座に復帰させなければならないと思う。だから、しばらくは撫で回しておこう。


それで落ち着いてくれるなら安いものだ。だって、考えてもみろ……日夜使えない呼ばわりされて、頑張って認めて貰おうとした結果が信頼出来る騎士たちを失うばかりか自らの暗殺に繋がる行為を呼び寄せたわけで、それが単なる王位の簒奪を狙う程度の理由。既にちっぽけで国民からも無価値と思われている1人の少女ではどうにも出来ないレベルにまでなっていて、それでも立ち向かおうとした。


そこに俺という不審だが一応命の恩人という足枷が居た事で恩を返さなければと亡命に舵を切った。でなければ、たった1人で全てを敵に回してでも立ち向かっただろう………その結果がどうなるかなんて嫌でも分かる。ましてや命の重さが桐生柳の居た世界より軽いならば尚の事。


どちらにしても、今の彼女には味方なんて居ない。ならば、俺だけは味方でいよう。ただ純粋に、誰かに認めて欲しくて…それでも誰にも見向きされなくて、だけど誰かの為に頑張ろうとしたのに報われるどころか、その誰かに傷付けられる。そんな事を許されるなどと思っている王国は滅びてええんやで。



「……もう誰かを守る必要なんて無い。その魔法はお前の心を凍らせるものじゃなく、凍り付いた誰かの心を溶かすためにあるんだ。ほら、よく言うだろ…手の冷たい奴は心が温かいって。それと似たようなもんだ」



だいたい、前のシャルロッテは誰よりも仲間の事を思う奴だった……ツンデレだけど。いや、だからこそか。


いの一番に魔王へ突っ込んで行くようなおバカさんの裏には仲間を思っての事もあるだろう。だって、学園長が魔王とかショック大きいだよ。生徒なら尚更だーよ。


後、かなりチョロインだった。ただ撫で回しているだけで泣き出して俺の胸にすがり付いてきた。もう少しツンデレで構わないんやで………とはいえ、精神年齢アラホラサッサーなオイラと女子校生じゃ包容力違うから仕方ないねん。大人の男は一味も二味も違いますぜ…加齢臭的な意味で。まあ、今の肉体は出来立てホヤホヤに近いんですけどね……それもそれでなんか嫌やな。


そういう理屈でいえば、前の俺キッシュから嫁たちを寝取るって事になるのん?


………童帝なんやな、今のワイ。でも、近い将来元現地嫁が新たな嫁となって卒業するの確定だわ。ハーレムの人数が3桁にならんよう気を付けねーとヤバいですわ。


そんな事より、シャルロッテが泣き疲れて寝てしもたわ。寝ずの番しなきゃいけない展開ですわ、これ。襲ったりはしませんよ…紳士ですから、変態という名の。というか、お姫様に火の番が出来るとか思ってないんですわ。早くレベルを上げて物理的なものでキャンピングカー作らねぇとヤバいです。マジで。

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