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再生された世界の穴倉で

世界は終わりを告げようとして失敗してる。誰にも止めらは………出来ちゃったという展開で、ゲームの理からも設定からも離れ、神の支配からも逃れた世界。


その片隅で村人Aこと、キッシュ………はほぼ水分と同じ割合で狂ったソレイユのものだったから、俺と同位体と考えるのは違うと思うが、意識の4割は俺だったはずだ。


とはいえ、ほぼ主導権はあったわけだからキッシュと名乗っても構わないのだが、それで元嫁たちに見つかって幸せになってました、寝取られましたでは複雑なものがある。別名義でいこうと思う。


ソール・クーヘン……太陽であり、柳であり、呪文でもあるソール、キッシュの語源であるクーヘン。いまいちだが、パッと思い浮かぶのはこの程度の語彙しか持ち合わせてないから仕方ない。



「という事で、俺はソール・クーヘン。ただの記憶喪失者だ」



現在、俺は何処かの廃坑らしい洞窟内に居た。目の前には5人の惨殺騎士と皆さんお久しぶりのコランダムベアの死骸。そして、黄色い水たまりに鎮座しているウィローの元妻が居た。






かつて、俺の意識が2つに……もしも心が2つに割れて1つをウィローに預けていたから旅立てたんやな。そう思う事にしよう。


ともかく、他の四天王とは異なり1人のツンデレフルスロットルな王女を嫁にしたのみである。いや、まあ最初は解剖とかして寝取られヒロインへの復讐してやろうかと思ってたんだけどな。アイリスよりこいつだったからな、先に気に入ったの。


ともあれ、ウィローとしての俺は地下で神魂合体をしつつ学園長代理やら四天王筆頭として頑張っていたんだよ……






「わ、わたくしはエスラント王国第3王女、シャルロッテ・ドゥ・エスラントですわ……この度は助力していただき感謝します………」



半ば茫然自失ながらも、助けられた事には感謝の意を述べる………というが、ちゃんと苗字あったんやな。王国の名前もあったんやなと。


展開としてはありきたりもありきたり。転生した先で悲鳴がしたから駆けつけるとアナロ…コランダムベアが唸りあげて今日も騎士を貫いたって展開。それを一欠しました。いや、爆発してないけども。


神エスカリボルケイン強過ぎ、もうこれ一本でいいんじゃないかな。



「王女様がこんな所で何をなさっておいでですか?」


「……それはこちらのセリフですわ。ここは王族直轄の宝石坑道………いえ、あなたは記憶喪失と仰いましたわね。それに命の恩人ですわ…咎めるのは無粋ですわね」



ふむ。ツンデレておる……少なくとも俺らが知るおバカ勇者ではあるのだが、下に広がる水たまりのせいで尚更滑稽に見えなくもない。が、弱くてニューゲームしている俺には水魔法で洗い流してやる事とか出来ないんだ。むしろ、神エスカリボルケインが無かったらコランダムベアに勝てなかったと思う。あ、コランダムベアの毛皮で再びアナロベアになれるじゃん。こんな布の服という初期装備とはお別れ出来ますぞ。



「わたくしの話でしたわね……わたくしは今、王族としての試練を遂行中でしたの。この坑道でそれなりの宝石の原石を手に入れる……それが王位継承の条件ですわ。ですが、護衛の騎士を失った時点でもう……」



ふむ。つまり、目の前のおバカ勇者…もといシャルロッテはゲーム開始前の状態。つまり、何も出来ない王女様が騎士に守られ坑道攻略中だったわけだ。それが、世界が元通りになってコランダムベアが湧いて出たから、さあ大変。ご覧の有様だよって展開か。


確か、設定らしきものではシャルロッテはこの試練をクリアしているはずだ。そして、勇者として学園に送られる………で、あの結果か。


表なら魔王を倒した勇者として帰還し、後に戦でかつての仲間である片玉と殺し合う。裏ならコランダムベアに貫かれて…いや、それは俺のせいか。


どのみち、NPCだった彼女に幸せな未来は無かった。が、ここは既にゲームから完全に離れた世界。それに……



「勇者になって魔王を倒すとか夢を持ってるなら諦めんなよ」



熱くなれよ、米食えよ。あ、かつ丼食べたい。とりあえず、修造しく応援してやる。諦めてしまったら、そこで試合終了なんだし。試合ってなんぞ?



「……やはり、記憶喪失なのですわね。勇者になるのは皆の憧れです。けれど、魔王もその勇者の一角……倒すなどと考えるのは旧式の勉強をしていた僻地の発想ですわよ」



誰がド田舎出身やねん。近くにはスーパーも無かった住みにくい環境だったのは認めるが、コンビニくらいあったし。


だが、言質は取った。魔王な勇者なんてそうそう居ない。というか魔王である事を公表しておられるのじゃロリ。


会いに行くべきか否かは後で考えよう。今の自分の容姿がどうなのか確認も出来てないし、偽者扱いされたら愛情が枯渇する可能性は高い。キッシュとしての残滓はあまり残ってないのだから分かるかどうかも怪しいし、分かるとしたらボコ殴りの刑は免れないと思う。だが、やった事に後悔は無い。


とりあえず、今は目の前の隠しキャラ嫁をどうにかしてやるのが優先事項である。


護衛をしてやり宝石を見つけるのに付き合うか、命の恩人だからと言うこと聞かせて……………あれ、コランダムベアの目って宝石ですやん。


やったねシャロちゃん。怪我の功名だよ…死人出たけど。とりあえず、眼球抉ってアイテムボックスに放り込もう。騎士の死体共々な……それはもうもう騎士たんじゃない、ただの肉塊なのん。パンパン。


いかん、まだアホな子の影響を受けてる。とにかく、別に逆らうなら王国民ごと倒して経験値にする事だって可能なんだから選ばせてやろうかと思う。再び嫁になるか別の道を歩いていくのかだって強制はしない。


とりあえず、ノブレス・オブリージュくらいは果たさせてやろうと思う。守る為に死んでいった騎士への弔いくらい出来ないで王女を名乗る資格はないと思うし。



「そうか、僻地か……」


「べ、別にあなたの事を虐げる意味ではありませんわ。記憶を失ってもそのような歪んだ教育を受けているというのは参考になると思っての事ですわ」


「いや、まあ取り繕わなくて構わないんだけどな。とりあえず、宝石ならコランダムベアの目を使えばいいし、騎士たちを回収して弔ってやらないといけない。どうやら俺には収納の魔法があるようだから任せてほしいが……どうだ?」



俺の提案にすぐさま頷くシャルロッテ。まあ、逆らう必要もなければ未だに腰が抜けて………え、もしかして、この聖水に濡れたおぜうさんを背負ってここから出なきゃいかんのですか。業界人じゃないからご褒美にならないんですが、それは。


だが、まあ俺の記憶の中には何度も生きたまま解剖した彼女の記憶があるから平気ですけどね。そのお陰で勇者が何かってのも理解出来たわけだし、結果オーライですがね。


どうしてそんな行動に走ったのか今ならはっきり分かる。壁を殴りたいような感じで寝取られてたの知ってたからだろう。アイリスの次にシャルロッテが良かった。え、チェリアは別格ですよ、勿論。


俺が居なくなった世界にどんな影響があったかどうか。それをまずは知らなければいけない。その為にシャルロッテの地位を利用するとしよう。


ついでに、兵士から成り上がってみるのも悪くないかもしれない。え、シャルロッテは馬になるんか……どうでもエイト。

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