↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オクタグラム チェインテイルズ  作者: 紅満月
7章 偽典・箱庭編
101/371

ありきたりなオープニング前の小芝居と神様の話


歩いて数時間程で近くの街にやって来れたのは獣人2人の記憶のお陰だった。とはいえ、葵が握手した際に2人の「隷属の指輪」とかいう呪いのアイテムが壊れて自由になれたとか、どれだけ握力強いのよ…よく骨折れなかったわね、あの子たちも。



「さあ、まずはギルドに登録して小銭稼ぎしないと。街に入るお金が必要無かったのは大きなアドバンテージなんだし、荒稼ぎして伝説の冒険者となって………あ、これ厄介事に巻き込まれるパターンなん」



相変わらずテンションがおかしいわね、この子は。もっとも、漫画やら小説やらアニメやらゲームでしか体験出来ない事をやってると思えば普通の反応の範囲に収まるかもしれないけど。


ギルドに登録すると定番の絡みもあるだろうし、先の事もあるからあまり公にしない方が良いと思う。日銭稼ぎならもう少しマシな方法があると思うし…ほら、野盗倒して溜めてたブツをとか。あたしもまあまあ毒されてるわね。


それでも、危険度は高いのは事実。楽にお金稼ごうとしたら非合法かロクでもないのしかないのは世の常よね。とはいえ、いつ追っ手が掛かるか分からない。撃退は出来るけど相手が鼠算式に増えるのは困りものだ。


というわけで、葵の愛蔵書のラノベにあるもう1つの定番に挑みたいと思う。ありがちなパターンだけど、うまく行くかどうか…






元居た世界では私たちのような女子学生の中古の服が飛び交うように買い取って売ってくれる店があるとか無いとか……特に肌着類は高値で売れるとかとか。それはどの世界も変わらないみたいなのん。



「まあ、ありきたりといえばありきたりなのよね。異世界の未知の素材と製法で作られた衣類が高値で買い取ってくれるってのは」


「だからって下着まで売ることはないのん…木綿っぽいパンツは心地悪いのん」



もう1人の衣類提供者が何か言ってるけど、「これからこの世界で暮らしていくんだから贅沢は敵だと思う。だから慣れろ」と言われてしまった……一理ある。それに私じゃ量産出来ないから将来に期待しよう……変な事に使われるだろうけど。


未知の素材は高値で売れたから、私たちの服だけでなくケモノなフレンズの服や武器も買えた……いや、まあ少なくとも旅をする仲間ですからそれなりの武器は揃えておきたいですん。短剣とガントレットですけど……ケモノの牙とか爪とか誇りとか何処へいったん?


そういう私たちの武器は……赤銅の剣ですが何か。大量に買いましたが何か?


え、ゴルフクラブじゃないんだからとか言わないでくんなまし。ただの銅なんて殴ったら形変わるのなんて常識ですたい……というより、銅製の武器って安い。私たちの世界なら銅のためならケーブル窃盗だって厭わない連中だって居たのに。おっととっとサツだぜって展開で捕まったけれども。


ああ、アイテムボックスとかストレージって魔法か能力習得しないと重たいでごわす………はて、同じものを同じくらい買ったミズキッキが1本も持っておらぬではござらんか。さてはあやつ、既に習得済みか。私は出がらし街道まっしぐらやんけ。


どちらにしても多々買わなければ生き残れないから仕方ないん。課金しないとランキング上位にはなれないんなー……はて、ランキングは何処で調べればええのん?



「とりあえず、歩き通しだったし今夜は宿を取りましょう。まともな宿をね」


「オラ、スウィートルームがええんす。バスローブ着てみたいのん」


「そんな宿、ここにあると思うなら探してみろよ」



ミズキッキが冷たいん。さっきから私たちの後ろをコソコソとつきまとう不埒そうな連中が居る事くらいミズキッキだって察してるはずだろにん。あ、金ヅルって思ってるんですね、こっちも。ミズキッキが強過ぎて逆に巻き上げる魂胆なんだろにん。


どうせ定番のギルド構成員同士の喧嘩は治外法権とか色々あるだろうし…やられたらやり返す、現金百倍なのにん。殺してしまっても問題ない、大丈夫だなのにん。






とりあえず、適度に防犯を行なっている宿屋に泊まる事にした。誰かさんは後ろをコソコソとしていたならず者を倒そうと構えているけど、ああいう手合いは放置しておく方がいい。しつこいし、下手に憲兵とか呼ばれたらろくな事にならないでしょ……やるなら街中じゃなくて森とか人目の無いところじゃないと。


それに、いくら銅でも剣を習ってた葵がやったら………ダメだ、鉄パイプで不良を一網打尽にした過去が思い出される。しかも今度は剣だから自重するつもり無いだろうし。まあ、あたしがやめろと言っても無駄だろうね。


そんな事はさておく。防犯もされているし、この宿屋が不審者と繋がってなければ明朝までは安全なはず……追っ手が掛かってたならどのみちだけど。



「まあ、最低限の目的は果たした訳だし……このまま魔族の治る土地にってつもりなんだけどさ、あなたたちは本当に付いてくる気ある?」


「私はここでマヨネーズ商人として生きて行きます。そして、マヨネーズを普及して成金となります」


「あんたは強制連行だから」



それにマヨネーズっぽいソースかかった肉串買って食ったじゃん、ついさっき。ケチャップも菓子類も大概あったぞ。失敗して奴隷落ちするのは目に見えているんだからやめとけ。


葵がダメダメな子にクラスチェンジしているからこそ、正直言えばカルアとシーラには同行して貰いたいけど、それを強いるわけにはいかない。


ここに辿り着く前にああは言ったけれど、脱奴隷にそれなりの武器を手にしたのだから不用意に後ろから不意打ちとか裏切りなんて展開は御免被りたい。



「ここで冒険者やるとか働くとかって選択肢もあるでしょ。カルアもシーラもせっかく拾った命なわけだし、もう奴隷じゃないんだから自由に生きる権利あるのよ」


「ミズキッキ、ここジパング違うから人権とか生存権の話するなんて無意味なん。弱い奴は肉となり強い奴が食う世界なん……焼肉定食を食べたいけど、何の肉が出てくるか分からない世界なんよ」



正論と極論と戯言を一緒くたにするなと言いたいけど間違ってもないんだよね……



「自分たちには……帰る場所なんてありません。自由に生きる術も知りません。ただ、死ぬべき時に死ななかっただけ……今を自由に生きていると言ってもいいと思います」


「ボクもそう思います。こうして生きているのもあの時聞いた神様の声の導きによるものだと思いますし、お二人と一緒に行動する事が今は最善だって…」



神様の声ねぇ………あの肉塊が何かをやらかしていたというなら説明もつく。でも、それなら全員助けなさいよという思いもある。



「私は神なんて信じんのん。ネ申なら信じるのん」


「同じやんけ。まあ、あんな肉塊が神様だなんてあたしも信じたくないけれどもさ……」


「肉塊?」


「何の話ですか?」



ああ、あたししか実物見てないから分からないのか。一から説明するのも面倒だな…


だけど、少し後にあたしは思い違いをしていた事に気付かされる。神様は決して1人ではないのだと。


どうやら、この世界の神はウィロー・・・・という名前の男神らしい。肉塊じゃなく…


ウィローねぇ………和訳すると柳って事になるんですけど。桐生柳……水子になってしまった伯父夫婦の子の名前。これは偶然かしら?







さすが、彼の妹だけあって勘が鋭い。でも、この世界に彼は……桐生柳は関与していない。


彼の魂は既に消滅している。でも、桐生柳の魂は全てが全て消えたわけじゃない。生じたのは桐生柳及びキッシュの魂であり、桐生柳から分けられた大部分は別人として転生させられていた。


ウィローという名前に聞き覚えがあるだろうか…魔王の息子みたいなものとして生み出された人工生命体である。その本質は桐生柳の大部分の魂の転生体だったのだ。


でも、それもかつての話………あの出来事によって消えた全ての中に彼も含まれていた。そして、歪曲された事実の中に神として伝わった。


曰く、滅びに向かう世界を一纏めにした聖人として。


曰く、山々にそれぞれの祖を封じた賢者として。


曰く、人々を救う全知全能の神として。


でも、それは全て虚像と誇張が描いたシナリオ。


そして、彼が大切な嫁以外の家族と唯一認め救おうとした成れの果て。



「さすが、正解をもたらす者として選ばれただけの事はありますね。そして、代行者としてこの忌まわしい世界を壊すには相応しい」


「黙れ肉塊……勇者と女神の成れの果てが真に悔いているなんて思いもしてない。お前は無駄に命を弄んでるだけ」



彼と彼女たちが消え失せた虚無の世界から巻き戻された新しい世界は、この世界は歪みと怨念と差別に囚われていた。


ソレイユの残した大きな怨恨は巻き戻された世界を以前より歪ませた……つまり、狂った王や魔族を始めとした悪を多く作り上げた。


悪人が多い世界…そこにあるのは悲劇の連鎖。それと無法の再来。だからこそ、必要なものがある……



「無駄に命を弄んでいる事を理解しているからこそ、やはり彼の損失は大きかったと理解し策を講じたのではないですか。世界を救わせるという事で叶えさせるために」


「……世界なんてどうでもいい。ただ、あの人が還ってくるなら。だからこそ、わたしたちは今の状態を甘んじて受けている」


「………分かりました。シエル、貴女には勇者たちのサポートを命じます。それが最善でしょう。この歪んだ茶番劇を早く終わらせる為には」


「そんな名前で呼ぶな。わたしの名前は何があったとしても「シエル。貴女は今、シエルという存在をロールプレイしているのですよ。それをお忘れなきよう……でないと、望みは叶いません」………分かってる」



あの人の願いの上で作られたと思い込んでいるあいつに気付かれてはいけない。だからこそ、わたしたちはこの道を選んだ………愚者神ソレイユに挑み消えていったあの2人に代わって。



「まずは集めなきゃいけない。わたしたち以外の勇者を」



そして、方法を探す。託された、この指輪に誓って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。