表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

MAKE OLD STORY

作者: 黒芽

むかしむかしあるところに。


初めの一言がこれになるだけで、どこかわくわくする人間がいる。

真逆に、飽きてきた川の景色や海辺の景色、はたまた桃や亀を思い描き、心底またあれか、とガッカリする人もいるだろう。


では続いて二文目がこうなったら、どう思われるだろうか。


おじいさんとおじいさんがおりました。


おや。ちょっと興味をもちはじめたようだ。

じゃあ特別にお兄さんがお話の続きを読み聞かせしてあげよう。


「日本昔話 ほも太郎」


「聞けるかぁーーーい!!!!!!」


応援団団長に匹敵する甲子園活躍間違いなしの大声をあげて部室に飛び込んできたのは一年の桃山太郎。

焦りと困惑と不安とニキビが入り交じったゴッホの油絵みたいな複雑な表情が広がっている。

にしてもタイミングが悪すぎる。俺がこれから自作の神童話を画面の前のお前らに披露してやろうと思っていたところだってのに。

今からもう一度廊下に戻ってお湯をカップに入れてラーをメンしてきてくれないだろうか。


「浦島先輩、そんな物騒な昔話勝手につくんなくていいです!」

「あ?物騒だと。この愛と感動に満ちた素晴らしき童話を物騒の一言で片付けようと。そう言いたいのかね。」

「愛の形が特殊すぎてNGなんですよ!!この前は全裸郎、今回はホモ太郎ですか!!」

「全裸郎までバカにする気か。だいたいお前はなんなんだ。我らが童話研究部のくせに不満ばっかり言いやがって。野党か?」

「部長が腐女子向け童話しか描かないせいで懲り懲りです。」


腐女子向け?

そんなつまらない童話をつくるはずがない。100歩譲ってもあれはれっきとした幼女向けだ。ロマンスがありあまる幼女向けだ。

そこで誤解をされてしまっては今後語り継がれていく予定の俺氏の童話に傷がつく。


「そこまでいうなら君の手で完成させてくれ。この神と呼ばれるに相応しき完成直前の童話をな。」

「今の発言がおかしいですが。まぁいいでしょう。とことん書き直させていただきますよ!まずは一文目。」


『むかしむかしあるところに。』


「こんなにつまらない始め方がありますか????????」


ちょ、挑発にもほどがある。これこそ名作への第一歩だろう。これを聞いて油断させておいての二文目だ。


「ここは断固として変える気がないぞ。」

「ふがしふがしあるところに。なんてどうですか。」

「..面白いな。採用。」


くっそぉ。俺としたことが。つい名作テンプレートよりも面白さを追求してしまった。

しかしなかなかセンスあるなこいつ!


「ありがとうございます!」

「ふがしふがし在るところに。(主に川越菓子屋横丁。)なんてどうだ。いっきに親近感が湧かないか。」

「いやしかし、それだとあまりにも物語の内容が限定されます。川越の話で面白がるなんて観光ガイドに載せる四コマ漫画のギャグくらいです。ここは一歩引いて地球のどこか。にしましょう。」

「なるほど。地球のどこか、なら世界中の子供たちに受け入れてもらえそうだな。」

「次のおじいさんやおじいさんがおりました、も変えましょう。グローバルな視野で受け入れやすいものをとことん入れていくんです!」

「よし!さらにそこに親しみやすさを加えてネタも入れていこう!」


それから2時間。俺たちは新たな名作を作り上げる為に全ての気力を使い果たした。


_________________

『PEACH BOY RIVER SIDE GLOBAL EDITION』


ふがしふがしinTHE EARTH。

王子様Aと王子様Bがおりました。

王子様AはA地点から時速xmの速さで中間地点となるBのRiverを往復し、ykm歩きます。

王子様AがBのRiverに着いた時間に王子様Bが家を出発し、時速akmの速さでBのRiverを越えてCのCばかり..おっと失礼芝刈りゾーンへと向かいます。

ここで問題です。王子様Aは川で何をするでしょう。

正解。洗濯です。家の洗濯機長時間コースが今朝バグを起こした為に仕方なく王子様Aは川へ洗濯に出掛けました。

川で洗濯する選択。なんちゃって。


王子様Aが川で洗濯をしていると川上からドン小西ドン小西とドン小西似の桃が流れて参りました。

あまりにもドン小西に似すぎていた為に王子様AはTwitterに投稿したくなってスマホの電源を立ち上げようとしました。

すると大変。スマホがRiverにDive。

Diveショック。なんちゃって。


ここで諦めて家に帰ろうとした時、川の中から女神がでてきたった。

※王子様Aが後に2ちゃんねるに【川から女神が出た話を聞いてくれ】という糞スレを立ち上げた伝説はここからきています。


しかし女神様の顔採点をした結果、あまり好みではなかった為に王子様Aはドン小西似の桃だけをそっと持ち上げて家へと帰りました。


家に着くと、まるで大仕事を終えてきたかのような悟った表情で嗅いだことの無い香水の臭いをまとった王子様Bがあぐらをかいて空中浮遊していました。

王....mygod.なんちゃって。


__________


「 .......なあ。桃山。」

「なんですか先輩。」

「まだ序章を読んだだけで言うのもなんだが。」

「「これはつまらない。」ですね。」


なんだ。気が合うじゃないか。こんなつまらない童話を誰が読むというのだ。やけにながったらしい上に、川へ行くだけでこの量は可笑しい。

しかもなんちゃってってしつこすぎる。おやじギャグ入れれば許されると思っているみたいではないか。その割に難しいやつばかり入れてしまった。


「よし。桃山。書き直すぞ。」

「はい!」



今は昔。

世に伝わる昔話を書き上げた彼らもきっと、試行錯誤と苦悩の日々を過ごし、そして伝説をつくりあげたのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ