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ツバメ  作者: 湯城木肌
5/5

先にあるもの

 再び攻撃をしかけにいく。

 近づくのをきっかけに鎧の攻撃が飛んできた。ツバメは腰の高さまで跳んで避ける。鎧の攻撃は居合術のような形だが、居合道の達人のような速さはなかった。振り回しているだけのようだ。タイミングさえ掴めれば、初撃をかわすことは難しくない。

 振り切った剣を横目で確認し、二撃目を警戒した。地面に足が着いた瞬間に、地面を蹴って前に跳ぶ。力は上手く乗らなかったが、鎧の懐に入った。戻ってきた剣は空を切るのみで、ツバメには届かない。


「ていっ!」

 後ろに脚を伸ばし、鎧の剣を握っている手に向かって蹴りを放つ。渾身を狙った一撃だったが当たらず、反対に鎧の拳が飛んできた。片足だけでは耐えきれず、地面に倒れる。

「うわっと!」

 横に転がり、振り下ろされた剣を避ける。判断が追い付かない速さの攻撃ではないが、淡々と狙い続けてくるので少しの遅れが命取りになりうる。一瞬も気が抜けない。

 ツバメは今度前に転がり、鎧の背後に回り込んだ。体を反転させ、壁に背をつける。


 小うるさい音を立てながら、鎧は体を回転させる。科学技術では無い不可思議な力で動いているなら、ツバメが背中側にいても体勢を変えず攻撃してきそうではある。兜がないせいか、ツバメには余計にそう感じた。

 鎧が後に関節を動かしにくい性質なのか、動力の性質かは知らないが、鎧は律儀に体を反転させてツバメを捉える。構えなおされていた剣で再度襲い掛かってきた。

 しゃがんでその剣を軽々と避ける。立ち上がり、目の前の様子を見てニヤリとした。


「単純で助かる」

 鎧の放った剣は壁を削り、ツバメには届かず止まっていた。

 ツバメは鎧の胴部分に蹴りを放つ。鎧は上体を折るも倒れず、剣も離さなかった。

「接着でもされてるのかな?」

 余裕の発言が口から出るが、戦闘はまだまだ終わっていない。鎧の攻撃は上下左右の振りに突きを加え、ひたすらツバメを狙ってきた。ツバメはそれを壁際で交わし続ける。避けては壁に傷をつけさせ続ける。

 十数回の攻防の後、剣が壁を深く貫いた。

「おおっ」

 感嘆の声をあげて、ツバメは視線をやる。

 引き抜かれた剣の後には穴ができており、壁の向こうの空間が確認できた。


「ラッキー! 思ってたより薄い!」

 今度はその穴に攻撃がいくように避けて誘導し、穴を広げていく。攻撃が重いのか壁がもろいのか割と早く大きくなる。最終的には切り込みのような傷を壁にいれ、跳び蹴りで開けた。直径30cm弱の穴が壁にぽっかりと出来上がった。

「じゃあね!」


 穴に飛び込み、鎧に別れを告げた。ほっと息をつくのも束の間、新しく見つけた道を進み始める。体力回復のために、とその場に留まっていては鎧がまた襲ってくるかもわからない。突破したものにかまけて浪費するのは好ましくない。

 進みながら周りを観察する。

 見た目は先ほどまでいた空間と然程変わった様子は受けない。天井と壁に加え、床も煉瓦調になっているくらいだ。後は、曲がりながら下っていることを除けば、変なところは見当たらなかった。鎧騎士のような敵も見えず、ひとまずは緊張の糸を緩め、足を進める。


「なんとか突破できてよかったよね」

 自身を労い、体をほぐす。

「推理通りに道があって、よかった」

 ツバメはあてずっぽうで壁の向こうの空間を考えたわけではなかった。

 鎧の存在理由と役割を考えて、壁の向こうに道がある可能性を導き出したのだ。

 鎧の存在理由はおそらく、魔具を守るためだ。そのために近づくものを排除することが鎧の役割だった。そう考えると、近づいてくるものに攻撃してきた仕組みも納得がいく。最初近づいても何も起きなかったのに、壁際に塚づいたら攻撃してきた違いにも説明ができる。魔具に続く道に近づいてきたものを排除するよう命令、あるいはプログラムされていたのだろう。目的が第一でなく、目的のために役割を果たすだけの単純な動きしかしていなかった。だからそこを利用し、壁に穴をあけたのだ。



「本末転倒もいいとこだよねえ」

 うんうんと頷き、ぴたりと足を止める。

「なに、この音」

 上の道から、何やら低い音が聞こえてくる。地響きが、迫ってきている。

 ゆっくりと顔を動かし、後ろを見上げた。顔を引きつらせ、叫ぶ。

「い、岩―!?」


定期と言ったのにだいぶ空きました。

今後も空くことが予想されます。すみません。

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