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第九話

「うーん……」

 キャロはうなっているが、裕樹とリアもほとんど同じ気持ちだった。昨日倒したグリボアの所へ行くと、その死骸はなくなっている。それは聞いていたから驚きはしないのだが、問題は地面に残る大きな跡だった。

「蛇?」

「ですかね」

 跡はグリボアがいた辺りで停滞し、その後まっすぐに伸びている。

「俺でも丸呑みにされそうだよ」

 途中でグリボアを呑み込んだのだろう、途中から太くなっていたが、その前も半分程の太さはあった。そこに裕樹が寝転んでも頭と足がちょっと出るくらいの大きさだ。

「どうする?」

 寝転んだまま裕樹が言う。背中がジットリ濡れていたが、森の湿気だけではないだろう。

「このまま行っちゃおう。準備ってもあんまやることないし。リアは戻ってもいいよ」

「いえ、私もぐ……端くれですし、人並みに戦闘はこなせますよ」

 早めに覚悟を決めておかねばならないだろう。リアはすでにやる気である。軍人として芯の部分では差がある。

「イーサン。僕達はこのままバオイヤガムの子供を退治しに行く。君は戻って来た時に道がわからなくならないようここで待ってて」

 少し離れた位置で警戒していたイーサンに声をかける。

「私は行かなくていいのか?」

「うん。大丈夫」

 裕樹的にはいた方が嬉しいのだがそうはいかなかった。リアはナイフの刃こぼれや荷物をチェックしている。あのウエストポーチには何が入っているのだろうか。

「わかった。では何人かで交代してここで待っている。幸運を祈る」

 イーサンが集落に戻る。自分達だけになって少し緊張が解けた。意識していないとはいえ軍人とバレないようにするのは大変だ。

「で、どうやってバオイヤガムを倒すの?」

 土を落としながら聞く。

「多分蛇だもんね……どうしよっか」

 今まで経験と階級でキャロが頼りされてきたが、元々あまり策を巡らすタイプではない。

「当たって砕けろってことで」

「いや、砕けちゃダメでしょ」

「とりあえず進みましょう。ほかにも何か見つかれば作戦も立てられるかもしれませんし」

 バオイヤガムの跡は土が軟らかかったのでその横を歩いて進む。進むにつれて、うるさい鳴き声も段々と少なくなっていく気がする。

「近付いているのかな」

 キャロの声も少し緊張の色を帯びる。裕樹も剣に手をかけていつでも抜けるようにしていた。

「少し、ゆっくり行きましょう」

 腰を落として進む。その必要はなかったが警戒するとなると無意識にそうなってしまう。

 バオイヤガムの跡はある建物の中に続いていた。ピラミッド型のそれは長いこと放置されているのか所々が崩れツタが絡んでいる。

「神殿……かな?」

「まさか、子供じゃなくて……」

「その可能性もありますね」

 だが、冷静に考えれば子供だろうと親だろうと巨大なのは変わらなかった。気休めにもなっていないが。

「とりあえず入ろう」

 果敢にもキャロが入りそれに続く。中は一本道のようだ。先の方に小さく灯りが見える。歩いていると壁の中から何か這いずり回るような音が聞こえるのは気のせいだろうか。裕樹は完全に腰が引けていた。

 通路を抜けると久しぶりの日光が迎えてくれる。中央には高く祭壇があり、森の中でもここだけ日が差し込むようだ。細い階段一本で祭壇へと繋がり、祭壇の周りは水で満ちている。どれだけの深さなのか濁っているためよくわからない。

「ここが封印されてた場所だね」

 意外と広いその場所に、三人別れて調べる。裕樹は壁に沿って進む。壁一面に絵が描かれている。その絵にもやはり蛇のような物がある。

「二人共、ちょっと来てください」

 祭壇にリアが立っている。キャロと二人でその元へ向かうと、呼んだ理由はすぐにわかった。祭壇の中央には細い穴が開いており、長から聞いた話と照らし合わせればここが神殿なのは間違いなかった。

「封印が解かれたのかな……」

 キャロのつぶやきに冷や汗が流れる。中央の細い穴にはかつて剣が刺さっていたのだろう。その時、通路を抜けてから聞こえなくなっていた、這いずるような音が耳に届いた。

「そういやさ……入っていく跡は見たけど出て行く跡は見てないよね」

 裕樹のこの言葉に二人がハッとする。キャロは自重気味に笑っていた。

「反対側から出て行ったのかもよ?」

 そのもしもに説得力がないのは言ったキャロにもわかっていた。音が足下にまで迫っていた。

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