有題
泡のように消えて行くこの体のどこにそんな物があったのかは分からない。ただ私の体には真っ白な貝の欠片がへその横にあった。
生きる屍はそれ故に私を見せ物に仕立て上げたが、私は自分の裸体を隠す事なく長い長い黒髪と戯れてただけだった。
ある日、生きた屍が豚を連れてやって来た。
私はその日から豚の人形となった。
檻から出た私は、子宮のような小さな入れ物に入れられ、豚は月が三回昇る頃に毎日毎日、私の体の貝を見に来た。
豚は私に問う。
「お前は何者なのだろう」と……
私は豚を無視して羊水と戯れていた。
豚はニマニマと卑劣な笑顔を浮かべて私を見るだけだった。
夜空に星か瞬いて、月が三十九回昇った頃に豚は私の目の前で切り裂かれた。
崩れた豚の肉塊はやはり脂肪と金しか詰まって無くて、私は『やっぱり』っと心の隅で思ってない事を口にした。
豚は食われるべきだったのだろう。
故に始末されたのだろう。そう理解する事にしたが脳が拒んだ為に、忘れる事にした。
五十六回目の夜、豚の体から蛆が沸いて出た。ネズミとハエが辺りを飛び回り、真っ赤な血がどこに繋がっているのかも分からない場所へと落ちていく。
私は相変わらず子宮の中で羊水と戯れていた。ふと羊水の中に豚の目玉が落ちている事に気付いた私は、何となしにそれを掴むと眼球の膜を剥いでみた。
目と目が合う。
気持ち悪いので飲み込んだ。
次の日、目玉の中に目玉が出来た。
一つ潰してみた。真っ赤な血が目玉から流れたが、目を開けると奥にあった目玉が前に出てきた。
しかしながら……この目玉は私の言う事をまるで聞かないので、もう一回潰してやった。
じゃあ次は潰れたままだった。
壱百八回目の夜……
私は羊水に飽きたので生きた屍の元に戻る事にした。
檻の中には人間がブヒブヒと鳴いていて、豚によく似た人間だと思った。
よく見ると片目が無くなっていたので、私の片目を彼にあげると彼の目なのに私が見えた。
私は自分が屍と思っていたのだけれどどうやら屍じゃなくて人間だった。
豚がブヒブヒと笑った。
―完―
有題です。
題名にこのような題名を付けるのは些か不安と言えば不安なのですが……
題名はあると言う事です。
その辺の解釈は個人に任せます。
題名には彼女の名前が付きます。
では……縁がごさいましたらまた会いましょう。




