馬鹿な男〜佳絢side〜
「…んッ」
触んなよ
キスばっかりしてさ
どうせあたしとヤりたいんでしょ?
だからこんな態度とってんでしょ?
「ねぇ、ヤりたいなら早くしなさいよ。こっちはハンパなくウザイんだよね。」
「ははっ、相変わらず機嫌悪いね〜〜、佳絢ちゃん。じゃあ服脱げよ。」
ほら、やっぱり
最初は優しくしといて最後はいつもコレ
体だけを求めてくる
男なんて所詮価値のない“モノ”
「佳絢ちゃんとは体の相性いいんだ。俺。」
「ふぅん。あたしはあんたなんか下手すぎてメンドクサイケドね。」
「……あんまなめられちゃ困るんだよね。イチヨ男だし?」
「いい加減にしてよ、気持ち悪い。やっぱやめた、気分悪すぎ。」「……!!てめぇ、いい加減にしろよ!!!!!!」
───いつもお決まりのパターン
私は今日も違う男に抱かれる
いい加減この世界も飽きてきた
あたしまだ高1だし
友達だってたくさんいる
そろそろやめようかな
「……ッ」
はぁ…
ホント下手
全然気持ちよくない
その代わりにモヤモヤはどんどん溜まっていく
最近あたしは、何故かモヤモヤしている
そのモヤモヤの気晴らしも含めてヤっているつもりが何故かヤるたんびにモヤモヤが増えていっている気がする
「どけよ。」
「…あ?」
「あんた邪魔なのよ。あたし、一言もヤるだなんて言ってない。」
「てめぇが早くヤれって言ったんだろ?」
「そのあとにやめるって言ったよね?なに勝手にヤってるわけ?マジウザイんだけど。」
「──ッ!ふっざけんな!!」
ふざけてんのはあんたでしょ。
───そう言おうとしてやめた
そいつはいきなりあたしを殴ったから
はぁ、馬鹿な男
全然痛くないよ?
「──ははッ!あんた、ヤるのも下手なくせに力も弱いんだ?そんなヒョロヒョロな力で殴られても痛くねぇんだよ!!」
バキッ!ボキッ!
「ぐはっ!!」
「手応えなし。弱っちぃの。」
「なっ……!!お前、なんで強いんだよ…!」
「そりゃあ、あたし小さい頃から空手やってて、空手二段の資格?持ってるし。女だからってなめられたら困るんだよね。あははッ!!」
「…っくそ!!!!!」
そう男は言って個室を出ていった
「マスター、今日の男も最悪だったよ。」
あたしは個室を出て、すぐ向かいのバーに行った
「そっかそっか。じゃあ今度俺と…」
「イッヤッだ!ったく、マスターフザケナイでよ!」
ここの店のあたしは常連客だったりする。
夜の町に逃げ込んだあの日
あたしは疲れはてていてもうフラフラだった
そこをマスターが助けてくれたのだ
マスターはまだ22という若さでこのバーを立ち上げている
なかなかのイケメンだ
「マスター、あたし遊ぶのもうやめようかなぁ?」
「それもいいんじゃないの?はい、オレンジジュース。」
「ありがと、でもね、あたしはもう男は信じないよ。」
「いつもそれ言ってるけどさ、どうして?」
「……。」
「あっ、言いにくいことなら無理して言わなくていいからね。」
「……マスターだって男でしょ…。」
「…俺も信用できないかな?俺は信用していいよ。佳絢ちゃんを取って食おうなんて考えてないし。」
「…あたし不味いよ。」
「えっ?あはは!そういう意味じゃないけどなぁ。まっ、いいか。とりあえず俺はそんな気ないからさ、安心してほしいな。ね?」
「…うん。」
「よしよし、えらいぞ!第一俺、奥さんいるしね。結婚8年目♪」
「えっ!?うそっっ!?!?お初に聞いたんだけど!」
「佳絢ちゃん、そういうのは初耳って言った方がわかりやすいよ。」
「ちょー初耳なんだけどっっっ!!それじゃあ、浮気できないよね?マスターは〜」
「何?それじゃ俺以外のやつは浮気するの?」
「……馬鹿な男は奥さんと愛人と分けるんだよ。だから愛人は浮気にならないって。」
「そんなやついるの?それは最低だね。でも、みんながみんなそういうわけじゃないと思うけどな?俺みたいに優しいやつだっているしね。」
「なんか自分の優しさアピールしてるよね。まぁでも、マスターの言う通りかもね。けどあたしには無理だよ。」
「……。」
ごめんねマスター
まだ理由は言えないよ
でもその内必ず…きっと言うから
心からあなたを信じれるまで
だから絶対に浮気なんてしないでほしい
あたしに信じる人をなくさないでほしい
じゃないと本当にあたしはもう…