第1章 覚醒&弱い自分上書き 第1話 弱い自分を、初めて上書きする
「うわっ……死んだ?」
俺――佐藤 悠真は、トラックに轢かれて死んだはずだった。
真っ白な空間。足元に何もないのに、ふわふわと浮いている。
前世の記憶が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇る。
32歳、無職、引きこもり。
ゲームと小説とアニメだけが生きがいだった。
異世界転生チートものばかり読んで、「俺もあんなスキル欲しい……」と何百回つぶやいたか分からない。
その願いが、叶うなんて――
「お目覚めですか? 転生者様」
突然、目の前に美しい女性が現れた。
銀色の髪を腰まで伸ばし、純白のドレスを着た女神。
微笑んでいるのに、どこか冷たい目をしている。
「私はこの世界を管理する女神、リリアです。
あなたは交通事故で死亡され、異世界への転生権を獲得しました。
幸運ですね。通常は抽選なんですが……あなたは『特別枠』です」
特別枠? 俺が?
リリアは指をパチンと鳴らした。
すると、目の前に半透明のステータス画面が浮かび上がる。
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名前:佐藤 悠真
年齢:0(転生後)
職業:なし
レベル:1
筋力:E 敏捷:E 耐久:E
魔力:E 知力:E 魅力:F
運:D
スキル:なし
特殊スキル:【状況適応上書き(Adaptive Rewrite)】 Lv.1
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「……は?」
俺は思わず声を出した。
特殊スキル? しかもこんな長い名前。
しかもLv.1って……弱そうじゃね?
リリアがくすくすと笑う。
「ふふ、驚きましたか? このスキルは非常に珍しいものです。
効果は――任意の場面・状況を指定して、自分の能力値・容姿・耐性などを『1つだけ』即座に上書き変更可能。
初期制限は1日3回。上書き中は他のステータスは固定されますが、解除は自由です。
……まあ、弱い自分を毎回上書きして、最強になれる……というチートですよ?」
弱い自分を……上書き。
その言葉が、脳みそに突き刺さった。
前世の俺。
いつも「弱い」「ダサい」「何もできない」と自分を責めていた。
学校でも会社でも、強い奴らに笑われ、女の子に相手にされず、ただ部屋でチート小説を読んで現実逃避するだけの日々。
あの弱い自分が、
このスキルで、
毎シーン、
上書きできる。
「リリアさん……これ、本当に使えるんですか?」
「ええ。ただし、最初は1日3回だけ。
成長すれば回数が増えますし、Lvも上がります。
それでは、転生先の名前と外見を決めてください。
……あ、ちなみに前世の記憶はそのままです。現代知識も使えますよ」
俺は即答した。
「名前は……悠真のまま。
外見は……一旦、元のまま。
でも、すぐに上書きするから」
リリアが優雅に手を振る。
「では、転生します。
頑張ってくださいね、弱い自分を上書きする勇者様」
次の瞬間、世界が白く弾けた。
――そして、俺は森の中に立っていた。
周囲は深い森。鳥の鳴き声と、遠くでゴブリンらしき鳴き声。
体は10歳くらいの少年。服はボロボロの麻のシャツとズボンだけ。
ステータス画面はまだ視界の隅に残っている。
【残り上書き回数:3/3】
俺は深呼吸した。
「よし……まずは試すか」
心の中で、はっきりと命令を下す。
「状況適応上書き――発動。
現在の場面:ゴブリン遭遇前哨戦。
対象:筋力。
変化前:E → 変化後:SSS(この戦闘中のみ)」
ピコン、という電子音のような音が頭の中に響いた。
【上書き実行】
対象:筋力
変化前:E → 変化後:SSS(この戦闘中のみ)
残り回数:2/3
体が熱くなった。
筋肉が一瞬で膨張し、まるで何年も筋トレを積んだような感覚。
握った拳が、鉄の塊みたいに重い。
すぐ近くの茂みから、緑色の小鬼が飛び出してきた。
ゴブリン。レベル3くらいか。牙を剥き、棍棒を振り上げる。
「ギギャアアア!」
普通のFランク少年なら即死級の攻撃。
でも、今の俺は――
「弱い自分は、もう過去だ」
一歩踏み込み、拳を振り抜く。
ドゴッ!
ゴブリンの頭が、西瓜みたいに吹き飛んだ。
一撃。文字通り一撃。
血と脳漿が飛び散る中、俺は静かに笑った。
「はは……マジかよ。これが……上書き。」
ステータス画面が自動で更新される。
レベル:1 → 3
筋力:SSS(上書き中)
残り回数:2/3
森の奥から、さらにゴブリンが数匹、こちらを睨んでいる。
でも、もう怖くない。
俺は拳を握りしめ、独り言を呟いた。
「次は……容姿をイケメンに上書きするか?
それとも耐性を?
……いや、まだ2回ある。
弱い自分を、全部上書きしてやる。
モテて、楽して、
強いヤツを、
見下してやるよ。」
その瞬間、俺の新しい人生――
「状況適応上書き」を使った、
本当の意味でのチートライフが始まった。
(第1話 終わり)
次回予告(第2話)
ゴブリンたちを全滅させた俺は、近くの村へ向かうことにする。
そこで出会ったのは、元クラスメイトの少女……?
「悠真……? なんでこんなに強いの……?」
上書き回数残り2回。
次は容姿を上書きして、彼女の反応を見てみようか――




