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告白

 蓮はこれで良かったのかと自問自答しながら、月城が去り見えなくなった後もその先をねめつけた。


 本当はあのような脅しだけでは無く、1発あの顔面に食らわせたかったしそうじゃないとその気が晴れるはずもない。

 しかしそれをするとこちらも学校側の処分が行われ、更に碧にとってあまりいい事にならなのは目に見えていた。

 転校早々トラブルを引き起こしたとなればこれからの学校生活に置いて大きくディスアドバンテージとなりかねない。


 これ以上碧の悲しい顔なんて見たくない蓮は、その事を思うと途端に冷静さを取り戻していく。そして蓮は後ろを振り向き碧を見ると、何事もなく守れた事にホッと一息つくのであった。


 最初は月城という男に脅され、更に周りの観衆からの注目を大いに浴びる事で碧のメンタルが心配されたが、今の様子を見る限り大きな変化は見られずに出会った頃に見たようなパニックになってはいなかった。

 しかし口論の際に目に涙を浮かべていたこともあり、目は少し赤くなっていた為蓮はそんな中でもよく頑張ったと碧の頭に手を伸ばす。


 何時も行ってきた蓮と碧との心の繋がりを示す行動である。


 しかし、無意識に伸ばしたもののいざ行う際に碧と目が合い、ついその手を止めてしまった。


「・・・え?」


 碧は手を伸ばされたのに、何時もの感覚がいつになっても訪れない事に、疑問に思う声が漏れた。


 月城との対応の際には必死で忘れていたが、蓮はこの様な対応が碧に対する好意を加速させているのだと思い改め手を引いてしまったのだ。


 月城同様に蓮もフラれたのだからと、この気持ちはキッパリ諦め未練がましい行動は慎みむべく、その範疇で行える事だけをしようと判断した。


「碧さんも・・・無事で良かった。

 次また月城が来たら言うんだぞ」


 蓮はそれだけ言うと、名残惜しいが寂しそうに笑うと踵を返した。これ以上碧を見ているとまた諦めたはずの劣情が湧き上がって来そうだったからだ。


 そしてこの騒ぎを沈めるべく自らも退場し、出ていこうとした時である。


「ま、まって!」


「っ、」


 そんな蓮を呼び止める声が後ろから掛けられた。勿論碧である。

 碧は月城に反抗した時と同じように、先程の興奮冷めやらぬまま蓮へと大きな声で呼び止めた。


 流石にそれを聞こえないフリするのは無理があったが、それでも蓮は行こうとした。その姿は碧から見れば何かしらの意思表示の表れそのものでしか無かった。


 やはり、避けられている。


 その後ろ姿が、あの日碧の元を離れた蓮の後ろ姿と重なった。碧はその時の悲しみがフラッシュバックのようにのしかかるがあの日のままの碧ではなかった。


 寧ろ碧は悲痛を超えて、段々と怒りが沸き上がる。

 更に月城と相対していた時のフラストレーションが相乗され、ムッとした表情を作ると追い打ちをかける。


「またっ!・・・何処かに行っちゃうの?

 ボクを置いて!」


 悲哀が籠ったその声には、さすがに蓮も足を止めた。しかし未だにこちらを向いてはくれない。でも止まってくれただけで十分だ。


「何で、れんはボクを無視するの!なんでボクを見てくれないの!なんで・・・、れんはそんな悲しい目をしてたの?」


「・・・」


 蓮はそれでも何も答えない。

 しかし言い換えれば碧のその激情を止めるものは何も無く、さらにヒートアップさせることとなる。


「お願い・・・。ボクが何がいけなかったか言ってよ!何でも直すから。れんのためなら何だってするからっ」


 だからーー


「・・・だからまえみたいに契約でいじわるな命令してしてよ!」


 その言葉に、蓮はやっとこちらを向いてくれた。しかし顔は俯いたままで、未だに目を合わせてくれない。蓮も葛藤と戦っているのだ。


 しかし蓮も今の心情と、自身がどれだけズルい人間かをさらけだすのにとてもでは無いが目を合わせることは憚らるのも当然であった。

 そうしてそんな心根の中、蓮は重々しくも言葉を紡ぐ。まるで懺悔を行うように。


「俺は・・・、あいちゃんの為にしたことなんて何もしてない。

 最初っから下心であいちゃんのそばにいたんだぞ?」


「そ、そんなことーー」


「俺はあいちゃんが思うような奴じゃないんだよ!あいちゃんが外に行くことや、いろんな人と話したり笑顔を見せる度に実は嫉妬してたんだ。

 心のどこかではずっと独占していたくて、嫌な気持ちになってた!」


「っ、」


 転校してからもそうだ。

 何処か遠いい所へ言ってしまった碧に、蓮は素直に喜べずにいた矮小な存在でしかない。


「そんな自分が一番嫌なんだよ!

 あいちゃんといると俺が、自分自身が嫌になる。あいちゃんになんとも思われてなかったのに勘違いしていた俺が嫌だ。

 ただフラれただけであいちゃんに当たる俺がもっと嫌なんだよっ!

 だから・・・、だからもう俺の事なんてーー」


「ばかっ、れんのばか!」


 碧は激昂した。

 碧自身なぜ急に蓮を罵倒したのか分からないけど。ありのままの碧自身の心の叫びに任せることにした。

 蓮に碧のありのままを見て欲しかったから。それが蓮の為にも、自分の為にもなると思ったから。


「独占すればいいじゃん!

 れんが思うがままにボクを好きにすればいいじゃんっ!

 それにれんが自分のこと嫌いでもボクはそんなれんがいいんだもんっ。れんの下心も最初っから知ってた。だって知っててつけ込んだんだもん」


 碧は自分でも何を言ってるんだって驚いているけどもう知らない。だってそれがずっと秘めていた心の声なのだから。そして碧は蓮が先程も・・・、そして出会った時にもしてくれたように、蓮の頬に手を当てた。

 そして、蓮本人も気付かずに流していた涙を拭ってあげる。


「蓮が最低ならボクも最低だよ?だったらそれでいいじゃん。けどそうやってつけ込んで利用し合っていて。

 だって・・・、そう言うのが契約だもん。

 それじゃあ、ダメなの?」


「・・・っ」


 蓮はその言葉にずっと呆然としたまま、静かに涙を流し続ける。

 拭ってあげているはずなのにさらに流させるなんて、と碧は自分の至らなさに困ったように笑う。


 でも蓮だって月城から救い出したときにボクを泣かしたのだから、おあいこだなんて言い訳をする。


 そうして無理やり蓮の殻を破ることで、やっと逸らし続けていた顔がよく見えるようになった。


 その顔は前にほんの少し見た悲しい瞳ではなく、何か重荷がとれたような目をしていた。


「・・・やっとボクを見てくれた」


 今日だって目は何度も合っていた。しかし本当の意味で碧を見た事は1度たりともなかったのだ。

 しかし、今こうして本当の意味で繋がることができた。


「れん、ごめんなさい。そして・・・、ありがとう。もう何度目のありがとうか分からないけど何度だって言うよ?」


 碧は微笑む。

 蓮が前に、碧の笑顔を褒めてくれた。

 だからこの言葉は笑顔で言おう。


「大好きだよ、れんーー」


 やっと言えた。

 先程は言えなかった"大好き"という言葉を。


 今ならその言葉の本当の意味も知っている。


 上辺だけでもなく、親愛だけのものでも無い。

 身も心も全てを捧げ、自身のこれからの一生を添い遂げてもいいと言う宣言となる言葉であることを。


 いつもと違う、不思議な感覚だった。

 大好きって、言うとこんなにドキドキするものなんだって。

 今だって碧は顔の火照りが止まらないし、出来ることならこの告白に蓮がなんと答えるのか怖くて逃げ出したいって思ってる。


 でもしょうがないじゃん。

 だってこれ程までに好きになってしまったのだから。


 これまで散々周りに迷惑や我儘ばかり言ってきたんだ。今更それが1つ増えた所で変わらない。


 碧は押しつぶされそうな心とは裏腹に、ニッと笑ってやると、蓮への愛情をもはや隠すことなく発露させるのであった。

書き溜め分がほぼ尽きてしまったので以降は間隔投稿になるか書き溜めが出来るまで投稿は控えるかもしれません…

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