表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/31

出会い

「ありがとうございましたー」


 店員の明るい声とは対称に、ゲッソリとした碧が店を出る。因みに楓もホクホクな満足気の顔である。


 結局あれから小一時間はいた気がする。ボクは服について解説されたり、着させられたり。ピンクのフリフリドレスのようなものからボーイッシュなショートパンツまで様々なものを着た。

 良くあれだけの品揃えがあったものだ。

 最早感心の念を禁じ得ない。


「これで冬までは心配することは無いわね。

 またその時は一緒に行きましょうね」


「・・・ん、んん」


 碧は曖昧な返事を返す。


 流石に今回で季節外れの冬服は買いきれなかった。次のシーズンである秋物なら変えたのだが、やはりこうなるのかと諦めの境地である。


「今日1日頑張ったわね。

 あとはどうする?なにか日用品で欲しいのがあったらよるわよ、それにご褒美にフードコートで何か食べましょうか」


「あぁ・・・そっか」


 ボクはその言葉で時計を見ると、ちょうど午後一時を針が指していた。なんか色々と衝撃な事がありすぎて忘れていた。お腹がすいていなかったのに、認識すると空いてきてしまう。


 ご飯か、何食べようかな。

 ボクはここのショッピングモールには来たことはあったが、フードコートに立ち入ったことは一度もなかった。というか外食やお買い物という楽しみをあまりしないので、どんなのがあるんだろうと想像しながら楓について行く。


 フードコートに行くにつれ、段々とご飯の広告を目にするようになった。

 和食や中華、それにハンバーガーショップとか色々あるみたい。


「今日は何でも奢るわよ。

 これでもバイトしてるから資金は心配しないでいいわ。それこそお寿司だって構わないわよ」


 楓はその後に「回転するやつだけどね」と可愛らしく付け足した。さすがに学生で値段の書いてないお寿司屋さんなど行けないもんね。

 勿論そんなつもりは毛頭なかった。


 でも、本当にどうしよっかな。

 ボクは「うーん」と悩んでいると、どこからともなく甲高い声が響いた。少し大きな音量にビクついてしまうボクは何だ何なと身を縮こませ、出来るだけ楓の体に身を寄せる。


 ボクが楓の後ろでキョロキョロとしていると、遠くから何かフワフワした茶色い物が飛んできた。


 なんだろう、あれ・・・。


 目を凝らしてよく見ると、それは何かを叫んで手を振っているのが分かった。ここでやっと人であると認識する。


「ーーでっ、ーーり!」


「あ、果歩ちゃん」


「?」


 遠くから響く声に、楓が初めて聞く名前を出した。どこか親しみのあるような呼び方に、友達なのだろうと推察する。


 だけど、よくこんな所で目立つことを。

 お陰でボクたちにまで視線が集まり、顔を楓の背中に半分隠れて視線を阻む。


「楓ひさしぶりぃー、夏休み入って初めてだよね!」


「そうね、といってもそんなに夏休みに入って経ってないけどね」


 いつの間にかすぐそばまで来ていたその声の主と、楓が親しげに話す。2人はそんな挨拶以降も、学校の事や夏休みの予定についてを女子高生らしくキャッキャとははしゃぎ談笑は続く。


 ボクはその間必死に影を消して楓の背中に隠れていた。でも多少は気になるのでチラリと覗いてみる。


 するとそこには可愛らしい童顔の少女がいた。

 容姿はセミロングのくせっ毛な茶髪をしていて、背はちっちゃめなのも相まって可愛らしい。ボクよりは大きいけど150cmと少しぐらい。全体的にフワフワとしていて、森ガールといった印象を受ける。

 小さいもの同士、少し親近感が湧く。しかしその少女を観察しているととある一点に視線が釘付けとなる。


 すごい・・・。


 美少女が揃って話しているからか、人通りの多いこの場所では視線をよく集めている。しかし多くの人(特に男)の人は最終的に彼女のその部分に視線が吸われていた。

 正直そう言うのに興味は薄いボクでさえ、今も話す度に揺れるソレに目がいってしまう。


 そう、すごい揺れるのだ。それに大きい。胸が。


 さっき、楓に胸の大きさを測ってもらったからか、ちょっとだけ興味関心が強いボクは推察で大きさを測定する。


 あれは・・・、多分E?いやFぐらいあるかも。

 顔は幼げなのに、ボクと違って絶対小学生とか間違われなさそう。


 未だに楓に同級生なのか疑われている身からしたら少し羨ましい。

 ボクはジーっと見ていると、この輪にまたしても新たな人物が加わった。


「はぁ、はぁ。

 果歩、・・・はやすぎ」


 少し小走り気味に遅れて一人の女の人が来る。言葉足らずな言い方で、若干息を切らしながら登場したのは果歩と呼ばれた少女とは対照的な少女であった。


 その人はショートヘアのクールな雰囲気の人であった。背は高く感情の起伏があまりない。可愛いよりもかっこいいが先に来るような女性である。因みに胸は小さめ。ボクよりはでかいけどね。


 ・・・だめだ、先程までそんなに話をしていたから女の子を見てもそういう目で見てしまう。碧は反省する。


「あら、和葉ちゃんもいたの」


「ん、果歩が買い物行くって言うから。その付き添い」


「ふふ。果歩だけだと危なっかしいからね」


「もーっ、2人してバカにしてる!私だってお買い物ぐらいできるもん!」


 果歩が必死に2人に抗議する。

 しかし和葉と楓は笑い合うばかりで発言の訂正はしなかった。それだけに果歩はプンプンと不機嫌だ。


「和葉ちゃん。因みに今日はどうかしら?」


「合流するまでナンパに捕まってた。危うく連れていかれるところだった」


 その言葉に果歩はギクリと言う反応を見せ、苦し紛れに言い訳を始めた。


「あれはっ・・・。

 み、道が分からないっていうからっ、だから教えてあげようとしただけなんだから」


「「はぁ」」


 2人同時にため息をついた。

 果歩も流石に責められる心当たりはあるのか、「ぐぬぬ」と悔しそうに視線を泳がせる。


 そして、泳がした視線の先にボクがいた。


「・・・あ、」


「っ!!」


 果歩は目を見開き、そしてパァっとか表情が変わっていく。

 ボクは拙いと持ち前の危機管理能力をもって逃げ出そうとしたが無駄に終わる。それよりも先に果歩の手が伸びボクの手を掴んだのだ。


「何この子っ!かわいい!!」


「ひぃあっ!?」


 まるでお化けでも出たかのような声が漏れる。


「ちっちゃい!目もクリクリしてて可愛いしほっぺも柔らかいっ。楓って妹いたっけ?」


「あぅぁ・・・っ」


 ちょっ!や、やめっ、やめ!


 ボクのパーソナルスペースなど無かった。

 一瞬で距離をゼロにすると果歩はボクの頬っぺをこね始めたのだ。

 うぅ、そんなにするとウィッグがズレる。でもその手を払う事も出来ずに、体を強ばらせてされるがままに嵐が去るのを待った。


「こらこらこら、止めなさい!

 この子はそう言うのダメだから。ほら、可愛いのは分かるけど自己紹介からしなさい」


「あ、そっか。

 うん。じゃあ私は新崎 果歩。楓のクラスメイトなんだ、よろしくね」


 ボクの頬から手を引き、一歩下がるとぺこりと頭を下げた。そして今度はボクの番だとキラキラした目で見てくる。


 押しが強い・・・。


 赤くなった頬を擦りながら、果歩という少女のことについて考える。


 ボク、この人苦手かも。

 距離の詰め方といい、何もかもペースが絶望的に噛み合わない。


 しかし悪い人では無いということは分かる。ボクは振られた自己紹介に答えるべくなんて返すか考える。


「・・・」


 えっとー、うーん。

 あれ、こういう時はなんて言うんだっけ。先程の出来事で頭がよく回らない。さらに急いで答えを出そうとパニック状態に陥りかける。


 ボクは俯きながら、小さく「・・・・・・・・・碧、です」とだけ告げた。


「あい?うーん、碧ちゃんでいいよね?」


 ボクは視線を泳がせたままコクリと頷いた。因みに「ちゃん」付けはもう慣れたので構わない。楓に言われた時は抵抗があった碧だが完全に受け入れていた。


「碧ちゃんは挨拶できて偉いね!お姉ちゃんと買い物に来たのかな?」


「え、それ、は・・・・・・その」


 や、やっぱり勘違いされてる。


 ボクは誤解を解くためになんて言おうか考えているとやっと助け舟がきた。勿論舟の主は楓である。


「果歩ちゃん、碧ちゃんは私の妹じゃないわよ。それに歳も私たちと同じだから」


「えっ!同い年!?」


 果歩が大袈裟なまでに驚いた。

 いや、見れば後ろで和葉という女性も「マジか」と驚きの表情を作っていた。


「ええ、色々訳があるからあまり詮索はしないでくれると助かるわ」


 そして楓はそう言って全てを片付ける。

 果歩達が勘違いする要因は主に楓に引っ付くその姿と言動、そして容姿である。

 言動については簡単には説明できない「訳」という言葉で誤魔化したのだった。


「碧ちゃん、彼女はさっきも言ってた通り私のクラスメイトよ。因みにだけど家は洋菓子屋さんをしているわ。今日のお土産でカステラを食べたでしょ?

 実はあれ果歩ちゃんの家のものだったりするのよ」


 えっ、あれを売ってる所なの?


 今たまに思い出すだけで幸せになれるあのカステラを作ったのが彼女の家の洋菓子屋さんだなんて。


「他にもビスキュイのケーキなんかが美味しいわね。次はそれを持って行こうかしら」


 ほー。

 碧の果歩を見る目が変わった。

 是非に仲良くしたいものである。だから・・・、こうしていつの間にか頭と顎をサンドして撫で回しているのは我慢しよう。


 膨れっ面になりながら耐えるボクに楓は「はぁ」と何度目かのため息を吐いてから話を進める。


「じゃあ次、和葉ちゃんお願い出来るかしら?」


「ん、分かった」


 どうやら今度は彼女の紹介があるらしい。

 ボクは気持ちを入れ替えて聞き入る。


「橘 和葉。よろしく」


「・・・あ。よ、よろしく、お願いします」


 ぺこりと頭を下げた。

 最初自己紹介が短すぎてまだ続くものかと思うってしまった。とは言っても苗字も無しに名前だけの自己紹介のボクが人の事を言えたことでは無いか。


「和葉ちゃんも私達のクラスメイトよ。あと果歩とは中学の時からの仲で手網を引いてるのが彼女よ。果歩ちゃんが暴走したら和葉ちゃんに言ってね」


 なるほど、いいことを聞いた。

 ボクは心の中に最重要リストと位置づけメモをする。それに対して「もーっ!」と隣で果歩が毎度のように怒るがスルーされる。


 何だか果歩の扱いが分かった気がする。

 結局果歩の抗議は届くことは無く、話は別の物にうつり変わっていく。


「あ、楓」


「なにかしら和葉ちゃん?」


「そう言えば、彼氏さんはどう?浮気相手は見つけられた?」


「っ、もう。茶化さないで和葉ちゃん」


 え、彼氏?

 少し興味深い話題が始まり楓の顔と和葉の顔を交互に見る。しかし自分から話を促すことも出来ず聞き耳を立てた。


「だって朝起こしに行くって、ただの幼馴染は普通しない」


「それは、まぁ蓮は世話のかかる奴だから。和葉ちゃんにとっての果歩みたいなものよ」


 れんっ!

 どうやら2人の話題にしているのは蓮の事だったらしい。そうだよね、楓のクラスメイトって事は、蓮の知り合いの可能性だってあるのだ。

 ボクでも知る人の話題が出るとさらに興味が出る。それに否定はしてけど楓の彼氏だなんて・・・。

 やっぱり、そういう関係だったりするのだろうか。


「ふーん、でも生理用品買ってたのは解決した?てっきり楓の為に買ってたと思ってたけど違うみたいだし」


 ギクッ


「そ、それは・・・」


 楓が視線を逸らした先にボクがいて、慌てて更に別方向へ逸らした。そのあからさますぎる仕草に和葉の目も碧に向いた。


 いや、ボクを見られても・・・。


 何処かで聞いたことのあるような事件である。心当たりはありすぎる。

 しかしここでボクを見ても説明など出来ないし、居心地悪そうに楓に身を寄せるだけである。


 というか、あの事件の情報提供者は和葉だったことを碧は今更ながらに気がついた。


「んー。・・・ま、解決したならいいや」


 多分、楓のことをからかってやろうという気持ちだったのだろう。しかしどうも一癖ありそうな真相に、悪い事になって無ければ良いかと話を流した。

 それに楓とボクはあからさまにホッと息を吐く。


「ねーねー、なんの話?」


 しかしこの微妙な間に空気を読まず果歩がほじくり返そうとした。けれど和葉は「なんでもないよ」と無理やり終わらせた。


「そうだ、楓達はこの後用事はある?なければ買い物でも一緒に回る?」


 和葉が新たな話題を切り出した。

 果歩の興味はそれで直ぐにうつり変わったようで「確かに!一緒に行く?」と続けた。


「これから碧ちゃんと一緒にご飯に食べに行くところよ」


「ご飯?そっかぁ、まだだったんだねー」


 果歩がその回答にちょっと落ち込んだ。


「逆に私たちさっき食べたばっかなんだよね」


「あら、それじゃあ流石に厳しそうね」


「うーん、残念」


 果歩はお腹をさすり、満腹具合を確認したがダメだったらしい。


「仕方ないから今回は諦めましょ。それに私たちの買い物は終わったところだし、碧ちゃんを家に送っていかなきゃ」


 楓がボクの頭を撫でて言う。

 多分気を使ってくれたんだなぁと察する。確かにスケジュールが噛み合わなかったのもあるが、ボクの活動限界が迫ることを気遣ってくれていた。頭を撫でられ揺れながら楓の優しさに感謝する。


「悔しいなー、せっかく碧ちゃんと遊べると思ったのに。

 それじゃあ今度こそは一緒に遊ぼうね」


 果歩が膝を曲げて目線を合わせてそう言った。

 果たしてそんな日は訪れるのだろうか?そんな疑問が湧くが、そんな愚直なことを言う訳にもいかない。

 ボクは頷きながらら「うん・・・また、ね」


 とだけ返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ