お買い物
「うそでしょ・・・」
ショッピングモールにきてからまず一件目、ランジェリーショップに着くと更衣室に放り込まれて引ん剥かれた。
そして失礼にも最初の感想それであったのだ。
楓らしからぬ酷い言い様だが男物のトランクスを履いていれば仕方がないだろう。しかしそんな言われようだが碧には関係がなかった。
何故ならこの時のボクは身ぐるみ剥がされた事に放心していてろくに思考は回っていなかったからだ。残った理性で胸を隠して呆然とする。
「ん〜髪に合わせて白もいいけど、やっぱ黒が映えるわよね。それかピンクで可愛いを全面に押し出すのもいいわね。んー、なんでも似合いそうなのが逆に難しいわ」
楓はいつの間にか手にしていた白と黒の下着をボクに当てながら考える。そしてうんうん唸ってから「ちょっとまっててね」とどこかへ行ってしまう。
「・・・・・・」
碧は置いてけぼりにされてしまった。だが少しすれば心が落ち着いてきて、更衣室にある大きな鏡を見る。そこには胸を押えた肌色多めの少女がポツネンとしていた。
「・・・・・・・・・・・・そんなにダメかな」
唇を尖らせて、トランクスの裾をちょんと持ちながらそうに呟いた。
楓が帰って来たのはそれから5分程度後であった。
裸にされて数分放置された事に少し思うところもあったが、実に楽しそうにしていたので怒る気も失せてしまった。
しかし、その手には6着も入ったカゴを持ってきたのには口角がヒクヒクとしてしまう。
「おまたせ、碧ちゃんの好みが分からなかったから色んな色や形のものを持ってきたわ」
あ、なるほど・・・。
どうやら全部試着しなきゃいけないのだと悟った。
「まずコレ、フルからハーフまで、それに多少胸を盛れる物もあるわ。あと碧ちゃんの場合は家にいることが多いことを考えるとノンワイヤー系、ナイトブラの方が合うかもしれないわね」
楓はそう言って代わる代わる紹介しながらカゴから取り出し、そして右から左へと消えていく。
「え、えーと・・・」
今見せられたものの違いが分からない・・・。
チベットスナギツネの様な顔でそれを眺める。
「因みにだけど、どんな物がいいとかってあるかしら?無ければ片っ端から試してみるけど」
ああ、結局全部着けることになりそう。
あと好みとかそんな事言われましても。ボクは先程一瞬だけ見た物を思い浮かべて、それでもやっぱり違いが分からなくて。苦し紛れにここに来た目的を思い出して言った。
「そ、それじゃあ、れんが喜んでくれそうなやつがいいかな」
「えぇー」
そう言うと楓は若干引いたような声を出す。けれど不承不承ながらも楓はその要望で思案し始めた。
「アイツが喜びそうなやつね・・・。
うーん、なんだか人に見せる為に選ぶなんて初めてで変な感じね」
楓はやっぱりに苦い顔をする。
「碧ちゃん、やっぱり下着の事は自分のために買いましょう。そんな理由で買うのもいいけど、これから毎日つけるものだから」
でもそれ以外に選ぶ決め手が無いのだけど。
だってここに来たのも蓮のお目汚しにならないようにする為だし。まぁ下着を見せる機会などないとは思うが、それでもどうせ付けるなら蓮の好みのものがいい。
ボクは自分なりに蓮が喜びそうなものを考える。そして楓の意見を聞きつつ着やすいやつを数点選んだ。
だからと言ってセクシーすぎるものは選べないけど、それでも少しヒラヒラが付いた可愛いやつだ。そして色は楓曰く黒系統の方が意外と透けにくいらしいのでそちらを選ぶ。
黒ってなんだか大人っぽい。試着してみて、ちょっと大胆では無かろうかと思ったけど似合っていると言うしいいだろう。
あとは選んだやつをドナドナ試着を繰り返す。その時ついでに付け方も教わった。これに関しては流石は女性なだけあって、知識量が違かった。店員さんに聞いたり、動画の解説を見てもいいが、やはりそれぞれ難点がありボクには難易度が高かった。
この買い物、色々なことがあったが来てよかったと思えるものであった。
因みにボクの胸の大きさはAと言うものに分類されるみたい。自分でも分かる、多分小さい。
それでも高校生の間はまだまだ育ち盛りのようで、その過程でブラをしないと成長の阻害となるうだ。
正直知識で知って置いてもこれ以上ブラなんて買いに行きたくないので、大きくならないに越したことはないのだがそんなこと楓の前で言えるはずもい。
ついでにと姿見の前で楓が胸が大きくなるマッサージを実演してくれている自分の姿をを眺めながら、無心でそんなことを考えながら、買い物を終えるのであった。
☆
結局買ったのは4着。
本当はもう少し買いたいみたいなのだが、ボクに成長期が訪れて大きさが合わなくなった時のことを考えて控えたらしい。
やはり高校や大人になってからも大きくなる人はいるし、ブラをすると保温効果で成長が促進されるなんて噂もあるらしい。
という碧への表向きな理由。
そして楓には裏の理由もあった。
勿論まだ成長するのではないかと言う理由はあるのだが、その理由に楓が碧の年齢を未だに疑っていることがあった。万が一年齢を偽っていた時、成長するのはこれからという事になる。そのため一応成長期のことを見越しての数だったのである。
しかし最初からいっぱい買われても勝手が分からない為、このぐらいの数で収まったことに碧も胸をなでおろした。因みにその胸には既に買ったばかりのものが付けられている。
少し窮屈だが、それでも時に擦れると痒くなるのが無くなったのでなるほどと納得している。
因みに着用して分かったがショーツに関しては圧倒的にトランクス派であった。凄く違和感がある。それに対してトランクスは開放感もあるし、蒸れない気がする。
が、しかしそれで買い物が終えた事により、ハイ状態となりそんなこと気にならないぐらいに碧は上機嫌である。
「〜〜〜♪」
下着の入った紙袋を振り、ノリノリで歩いていると楓も嬉しそうにしていた。
「碧ちゃん、下着替えて良かったわね」
「うん、楓さん、ありがとうございます」
「いいのよ」
楓はニコニコとしながらボクの手を引いた。
正直下着が買えたことよりも終わったことに浮かれているのだが。
ルンルンルンっ。
買い物したあとの紙袋を振りながらエスカレーターを昇るーーーーん?
「あれ?」
ボクは揺らしていた袋を止めて、頭にハテナを浮かべて上を見る。そこには楓が変わらずほほ笑みを浮かべていた。
あ、あれ?
ボクはキョロキョロとしてみる。気づかなかったが、ここって地下のフロアだったっけ?来た時には下った記憶がなかったはずだ。けどその時はいっぱいいっぱいで周りを見る余裕が無かっただけかも。楓も迷った感じではなさそうだし大丈夫だろう。
ボクはそう仮定すると「なんだぁ」と1人ほっとする。ここ一帯は楓にとって一日之長がある。だから間違えるはずが無い。きっとボクが知らないだけで、楓には何か理由があるはずなのだ。
だからこのまま着いてけばーーー
「はい。到着よ、碧ちゃん」
「ーーーーーはへ?」
ボクが顔を上げると、そこにはマネキンが立っていた。そしてそのマネキンがゆるふわな服を着ているのである。
左右を見ればさらに可愛い服が陳列しており、ボクは一瞬で楓の目的地を悟る。そしてそこが決してデパートの出口ではないかとも。
「碧ちゃん」
「っ、」
ボクがどう楓に抗議しようか考えていると、先制して相手の方から名前を呼ばれた。
「お願いがあるのだけど、いいかしら?」
でしょうね。
しかしここに連行してきて今更お願いという表現、事後報告だと思うけど。
ボクはジト目で楓を見続ける。薄々は感ずいていた。しかし黙って連れてきた事を責めてるという目線を送る。
「私の持ってきた服は小学生の時に来てたやつだから、どうしても子供っぽい物が多いと思うのよ」
ボクは流れで下を見ると、そこにはピッタリに着こなすボクがいた。それはもう専用に買ったかのような着心地である。
「・・・」
これが、小学生に着ていた服。
それを着こなしてしまうボクに言葉を失った。
「だからね、これを機に買い直してみないかしら?下着はともかく、服なら蓮のお気に入りぐらい何となく把握しているわ」
「・・・・・・楓さん、れんの名前出せば何とかなると思ってない?」
ボクは抗議する。
「そんな事思ってないわ。
でも私が持ってきたものだと夏用が多いから、今のうちに秋に着れる服を持っておくべきだし、折角出掛けたのなら必要な用事は一回で済ませたいじゃない?」
「な、なるほど」
そこにはボクは納得する。
確かに貰ったものでオールシーズン凌げる物じゃない。それに下着もそうだがあまり来たい場所では無いので今日で終わらせる勢いの方がいい。
「あと次いでに流行に乗って、蓮を喜ばせられたらもっといいでしょ?」
「・・・・・・・・・うん、いい」
碧は楓の言に完全に納得し正論だと理解していた。しかし今まで言いくるめられっぱなしになっているため、ちょっと表面では不貞腐れながらも了承の意を表す。
それに、楓がボクのことを思ってくれているのは分かっているから。
「はぁ」
碧はため息を着く。
幸い今は戦利品(下着)を買えたことで心理的に余裕があり、気が高揚していた。なのでダダをこねるのを止め、大人しく入ることにした、そうして、碧は導かれるように女性物を取り扱う服屋に行くのであった。
しかし、これまた楓の言葉には表と裏の理由があった。
表の理由としては先程言った通りだが、裏の理由としては勿論碧のファッションショーを合法的に行う為である。
オシャレに気を使う現役JKにとって、これ程の逸材はなかなかに見ない。少し大人っぽいものは合わせずらいとはいえそれ以外ならば何だって似合いそうな碧に、普段勇気が出ず試せていない物を片っ端からカゴに入れていく。
なかなか自分とは合わないガーリーな服もいいし、フェミニンなものもいい。幸いここにはアイドルの衣装かと思うほどの過装飾なものまで揃っている。
がしかしそんな服でも碧に合わせるの着こなせてしまっていた。
やばい、これは止まらない・・・。
「碧ちゃん?」
「へ?」
「・・・ごめんなさい」
「ーーえ?」
楓はそれだけ言い残すと、カゴに全ての服を放り込み始めそれを見ていた碧の顔が引き攣るのは、少し未来の出来事であった。
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