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ママと私の曲

部活帰り航は質問攻めに

当然琴音のこと

最初は誰もなかなか信じられなかった

航が琴音との最初の出会いのことを話すとだんだん納得していった

そこで今度練習の時に琴音にもう一回吹いてもらおうと言うことになった


「航君ちゃんと琴音ちゃんに頼んで」

「頼むぞ航」

そんなこと言われたら断れない航だった




だが――


曲は一曲きりだった。 琴音が演奏できるのは。


そして、誰も知らない旋律だった。


終わると琴音はにこりと笑って、

航にホルンを返した。


「これ、ママと私の曲。」


嬉しそうに、そう言った。


「他になんか吹ける?」


それにも琴音は


「ママと私の曲」


しか返事が返ってこない

そもそも琴音は楽譜が読めなかった

そのうちあれだけ盛り上がってたことも嘘みたいに誰もがいつもの部活に戻っていった

それからはしばらくは琴音は部活に顔を出していたがだんだん来なくなった

琴音の担任と部の顧問の先生の間でなにか話があったことはなんとなくわかっていた

ただそれだけだった

それをどうこうできるほど誰も琴音に関心はなかった



「ママと私の曲」


航はその言葉の意味を、

このときはまだ、深く考えなかった。


けれど、心のどこかに引っかかるものを抱えたまま、

日々は流れていった――。


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