琴音の音
ある日。航は校舎の一角で個人練習していた。その時校舎の影から誰か見てるなと思って視線を向けるとそこに琴音がいた
気にせず吹き続けていると琴音がだんだん近づいてくるのがわかった。
航は、ふと思い立った。
気になっていたあの音色。
どうしても、もう一度聞きたかった。
吹くのをやめてケースから別のマウスピースを取り出し
「……吹いてみるか?」
琴音は目を丸くした後、
嬉しそうに顔を輝かせた。
そして、そっとホルンを抱きしめ、
唇を当てた。
静かに、けれど確かな音が校舎の一角にに響く。
あの、美しい旋律。
透明で、温かくて、どこか悲しい。
その瞬間、練習していた部員たちも手を止めてそれを聴いていた。
誰もが、琴音の音に耳を奪われた。
何人かの部員が音をたどって集まってきた
なに?今の?
誰?
音めっちゃきれい
ホルンだよね
航?
なんの曲?
ざわざわと盛り上がりながら集まってきた
琴音は集まってきた部員に驚いて隠れてしまう
しっかりホルンを抱いたまま
航は最初の出会いを思い出して慌てて部員に
「ちょっとちょっと待った待った
琴音が怖がるから」
部員の一人が
「ええ?なに?琴音ちゃんなの?今の?
まさか〜」
琴音はじっとしゃがみ込んだまま固まっていた
航は琴音のそばで
「大丈夫だから
ほらみんな合奏の時一緒にいた奴らばかりだろ」
優しく子供をあやすような話し方で声をかけた
「さあもう練習!練習!
時間もったいないよ!」
航はそういってみんなを追い出した




